Please kiss me
「今帰った」
「おかえり、リボーン」
俺が帰るとツナは仕事をしていた。
順調に進んでいるようで関心と手元を覗きこみ確認する。
しっかりやっていることが分かればただいまのキスをしようと顔を近づける。
が、さらりとかわされて目の前に机の中から取り出された書類が置かれる。
「はい、これリボーンの仕事」
「俺の仕事は片付いてただろ?」
「追加」
言われて目を通せばツナの言うとおり俺の仕事の追加だった。
疲れているのにまだ働かせるつもりかと仕方なくそれを受け取れば、自分の机に放り投げて自室へと向かった。
まずは身体を洗うことから始めたい。
硝煙臭いのは慣れているがツナが嫌がる。
それにさっきキスをかわされたのもきっとこれのせいだ。
キスごときでなんだと言われるかもしれないが、これは大事なことだ。
キス一つで恋人の機嫌がわかるのだから。
ちなみにあれはグレーだな。
気分で嫌だったのかもしれない。
シャワーで頭からお湯を被りながら考える。
いや、キスすることにこんなに執着するのもおかしいと思うかもしれないがキスは一つのコミュニケーションだ。
仕事をするために早々浴室から出れば頭を拭いて別の服に着替える。
資料も見ないといけないから最初に倉庫に行ってくるかと、部屋を出た。
「おや、アルコバレーノ帰ってきていたのですね」
「骸か…お前もいるなんて珍しいな」
資料庫に行けば骸が先にいた。
骸は驚いたように俺を見ていたが、いつも遠くの方へ行かされているのに比べたら俺の方がここにいる確率は多いだろう。
「いえ、クロームが体調を崩しまして。どうしようもないので切り上げてきたのですよ」
「お前…二股はよくねぇぞ?」
「ふたっ…どっちも、違いますっ」
クロームも心配してフランには好かれて、こいつは周りからモテているのに気付かない。
なんて不憫なんだとおもうが、こいつにしたらツナ一番なのだから仕方ないのか…。
まぁ、渡すことなんてしないがな。
資料をとりだして中を確認し、出口に向かって行こうとしたところで俺は足をとめた。
「ところで、ツナはなんか機嫌悪いのか?」
「いえ?別に変わった様子はないですが」
「そうか…」
骸から見て機嫌が悪いように見えなかったということはそんなに気にすることじゃないのか?
なら気にすることもないのかと結論付けて俺は資料庫からでて執務室へと向かった。
執務室に戻ると、獄寺が運んできたコーヒーが置かれていた。
俺は椅子に座ってそれを味わうと書類のほうにサインを書いていく。
ツナはというと獄寺と楽しそうに話している。
あれだけ集中して仕事をしていたのだ。
別に咎めることもないと思いつつ仕事をして、時間を見ればまだおやつの時間を過ぎたところだった。
意外にも自分は早く帰って来たのだなと感じて出来上がった書類をツナの机に置いた。
獄寺はもう部屋をでていったあとだ。
「ツナ、できだぞ」
「ありがとう」
普通に書類を受け取るのを見れば隙有りとばかりに一気に距離を詰めた。
が、触れたのはさっき自分が処理した書類だ。
「……てめぇ」
「う…だって……」
我慢ならずつい呻くような声を出すと申し訳なさそうな声が聞こえた。
しかも言いわけを始める雰囲気だ。
ってことは故意に避けてたってことかっ!?
怒りそうになるのを抑えてツナの言葉を聞くために少し顔を上げる。
書類の向こうのツナはなんとなく頬が赤い気がする。
「だって…リボーン、キス許したら止まらなくなるだろ?」
「………」
「まだ昼間だし…それに、一ヵ月シてないし……俺だって、キスされたら仕事どころじゃなくなりそうで」
つまり、止まらなくなるからキスしたくなかった。
そう言いたいのだ、きっと。
あれだけ心配して、理由が止まらなくなる?
そんなの、止められなくていいだろ。
「ツナ…今すぐ、仕事を速攻で終わらせるのと明日にずらすのとどっちがいい?」
「え…選ばなきゃいけないの?」
「選べ…今すぐにだ」
命令口調で言うがツナは決めかねているのかなんなのかわからずもごもごと言い淀んでいる。
まったく、そんなに選べないのだったら俺が選んでやる。
「さっさと済ませてたっぷり可愛がってやるよ」
「んっ…んんっ…ふっ……言ってることとやってることが違う」
書類をとり上げ顎を引き寄せると戸惑っているうちに口付けた。
咥内を舐めあげて歯列をなぞってやるとそれで感じたのかピクリと反応しはじめる。
だが、それ以上はすることなく離れると唾液で塗れた唇を慌てて拭いながらツナは恨めしそうに呟いていた。
「目の前にニンジン垂らされたら食べたくて馬は走るだろ?それと同じだ。人間なにかご褒美があると思って仕事すると違うんだぞ」
「本当かよ…」
「勘だ。だが、俺は効果あると思うけどな」
「ふぅん」
ツナは興味なさげに呟いていたが、仕事が終われば触れるという先入観は効果があったようだ。
俺は自分のことをするために少し席をはずしていたが、夕食時になれば仕事終わったと嬉々として報告してきたのだ、
やっぱりたまってたんだなと感じつつ、食事を済ませた後二人で俺の部屋に来ていた。
「したいんだろ?」
「ご褒美に沢山してくれる?」
「もとより沢山するつもりだ、あれだけあからさまにキスをかわされつづけてたんたからな…」
「ごめん、これからはちゃんと説明するから」
まぁ、恥ずかしかったと言われればそれまでだが言ってくれる方が良いのでツナの言葉には頷いた。
「これから約束しろ」
「なにを?」
「その一、帰ってきたらキス」
「う、うん」
「その二、行く時もキス」
「え…」
「その三、寝るときもキス」
「ちょっ…」
「その四、起きた時もキス」
「リボーンッ」
「その五、好きだと思ったらキス。わかったな?」
「…………どうせ、否定も受け付けないんだろ?わかったよ」
俺の無理難題を戸惑いながら結局は受け入れるこいつが可愛いと思う。
馬鹿になっているなと感じるも、仕方ないだろう。
実際こいつは可愛い。
ニヤリと笑えば恥ずかしそうにキスをしかけてくる。
「今日は積極的だな。もう我慢できなくなったのか?」
「好きだと思ったらキスって…いま言ったじゃん」
ああ、本当に可愛い。
どうしてくれようこの生物は。
自分で適当に言ったにも関わらず最高の約束をつきつけてしまったことに、今更ながら実感させられた。
さぁ、今日はどんな方法で抱いてやろうか。
何でも、お前の望むままに…。
END
雨宮様へ
なかなかキスさせてくれないツナにキスしようとがんばるリボーンという内容になってましたでしょうか?
最後思いっきりのろけてしまいましたけど、変なリボーンになってしまった気が…。
気に入らなかったら書きなおしいたしますのでっ。
リクエストありがとうございましたっ。