存在価値と無限の愛


「それでは、今日はこの辺で」
「あのっ、待ってください」

この日はいつもの会議だった。
ボスは俺のはずなのに、好き勝手に決められていく事例に俺は思わず口を開いていた。
傍に居たのが隼人だけというのが幸いした。
きっと、リボーンだったら一人ぐらいは帰りに死んでいたことだろう。

「どうしたのだね、デーチモ」
「これには、負担が大きすぎます。いくら俺達でも」
「何を言っているんだ。君たちはいるだけで良いんだ。まさにボンゴレの象徴、君にはそれだけの価値しかないんだからな」

たくさん、私たちの為に働いてくれよ。そう、小さく囁かれた言葉は隼人には届かなかったのだろう。
それでいいと思った、こんなこと意地でも聞かせたくないから。
俺は放心してしまいそうな思考を必死で働かせると屋敷へと戻った。
その間、しきりに俺のことを隼人は心配してくれたのだが半分ぐらいは頭に入っていなかった。
俺の存在価値がそんなものだったなんて、聞かされただけで建て前がなかったら殴り飛ばしていた。



「十代目、どうかお願いします」
「いや、本当に大丈夫だから」
「いえ、そんなに酔っている十代目を一人の部屋になど帰せませんっ」
「どちらかというと隼人といる方が色々と大変だと思うし、平気だから」

俺は帰るなりウォッカとジンをロックで煽った。
美味しくはない、もともと酒に強いわけでも好きなわけでもないのだから飲んだって気持ち良くもなんともない。
ただ、あんな言葉を投げつけられて平常心を保っていられるかもわからなかった。
それに、少し酔ってしまえば何かと楽になるかと思っていたが、そう甘くはない。
妙な緊張が残っているせいかどれだけ飲んでも俺にしては珍しく酔うこともできなかったのだ。
そろそろリボーンが帰ってくるのを知っているので部屋に戻ろうとすれば、隼人が心配そうな顔で引きとめに来る。
別に隼人と間違いがあるわけじゃないが、きっと帰ってきたリボーンの気の立った矛先が向かうのが隼人になってしまうと言うわけで…それだけは、なんだかかわいそうなので避けたかった。

「十代目ぇ」
「そんな声出しても駄目だから、片づけはお願いしてもいいかな?」
「わかりました、片づけは任せてください」
「うん、じゃあお願い」

隼人を無理やり丸めこむとドアを開ける。
すると去り際に隼人が俺を呼びとめた。

「あのっ、十代目は…今でも十分頼もしいですよ」
「…うん、ありがとう」

優しい笑顔を向けられて俺もその笑みに返せば、そのまま自室へと戻った。




一人になると途端の襲ってくるスラッシュバック、それと余計な妄想。
気分が沈んでしまっているからか否定的なことしか考えられてない。
ボンゴレのボス、とだけの存在価値だと言うなら一般市民でサラリーマンだったら俺の存在価値はどこにあるのだろうか。
俺自身を見もしない奴らばかり、反吐が出る。

「おい、ツナ…どうした?」
「ん…リボーン…」
「何だ、酒飲んだのか?」
「リボーンだ」
「ったく、口も酒臭くしやがって」

ベッドにうつぶせにしていたら誰かが入ってくる気配がするがそれを探らずにいれば身体をコロリと転がされて仰向けにされる。
するとリボーンがいて、俺は両手を伸ばした。
口を開いたことでわかったのだろう、なれないものを飲みやがってと毒を吐きつつ抱きしめてくれる。
温かい身体、仕事帰りだと言うのに息が乱れた様子もない。
仕事は滞りなく終わったのだろう。
するすると肌を滑る手の感触に背筋が震える。
リボーンは、俺をそんな風に見たりしない。
そう、わかっているはずなのに頭の中ぐるぐると嫌なことが渦巻く。

「リボーンも、俺を道具みたいにしか思ってないのかなぁ?」
「ん?…ツナ?」
「リボーンも、俺の存在価値なんてボンゴレのボスってとこだけなのかな…」

リボーンが俺の様子に気づいて手を止めるが、それが逆に俺を煽った。
どんどん悪い方へと思考が向かっている。
止めるすべも、ない。

「俺が、ただ…いれば、いいのかな?」
「何言ってんだ」
「だって、そうでしょ?最初はリボーンだって俺をこのボスという座に座らせたかっただけじゃ…っ」

ゴツッと鈍い音がしたと思ったら俺の頭に頭痛が襲ってくる。
リボーンは拳を作っていて、殴られたんだ…と他人事のように考えていた。

「ツナ、何があった。俺に全部話せ」
「何もないよ、今日は会議があって」
「何もなくねぇだろ。なら、今言ったことお前の本心なのかよ?」
「だって、そうじゃん…そうでなきゃ」
「それ以上言ってみろ…今度はゲンコツなんて生易しいもんじゃ済まさねぇぞ?」

最近のリボーンじゃ珍しい脅す声。
本気の怒りに身体が竦んで指一本動かせなかった。
それでも絶えるようにキュッと唇を噛んでいると、服をはぎ取るように脱がされた。
俺の弱々しい抵抗なんて抑え込んで無理やり足を開かせてくる。
そこにサイドテーブルの引き出しを開けローションをとれば直接そこへ垂らされる。

「ひっ…つめたっ……ゃ、やだ…」
「んなの聞くか」

この後を予想して怯えた声を出すが即答されてビクッと身体が縮まる。
怖いと思うのに、容赦なく俺の秘部へと自身を突っ込んでくる。
最初は引き攣るように痛みが走ったが、いつものように中を擦られると中は柔らかく絡みつき動きを助ける。

「あっ、ああっ…やだぁ、ひっ…うぅっ…ふああっ…」
「そう言ってるわりには、絡みついてくるじゃねぇかよ」

こんなのは嫌なのに…どうして…俺は何か失敗したのだろうか。
作業のように動いて快楽よりも不快感しかない。
リボーンが好きで、不安なのに…怖い、怖い。

「や…やだ…やだぁ…やあっ、りぼっ…リボーン…やだぁっ、怖い…ひぃん…」
「ツナ…?」
「もっ…やっ……リボーン、りぼーんっ」

震える手を必死で伸ばして背中へと腕を回して抱きついた。
嗚咽をみっともなく漏らして、本気で泣きだせば気押されたのかリボーンの動きが止まる。
こんな恐怖させられようと俺はリボーンしか縋るものがない。
俺のこと、ボスとしてしか存在価値がないなんて言わないで。
それ以外もちゃんとみて、俺をちゃんと抱きしめてよ。

「……全部、話すなら止めてやる」
「話すから…抱きしめてて、おねがい」

長い沈黙の後ぽつりと漏らされた言葉にそれは嫌だと首を振って唇を求めた。
もう、このちぐはぐな頭は悪い方向にしか考えられないらしい。
どうしようもなくなって、俺は仕方なく今日あったことを洗いざらい吐き出した。
吐きだしている時に酔いが自覚できたのか気持ち悪くなってトイレへとリボーンに連れて行ってもらった。

「っ…ふっ…はっ…」
「少しはすっきりしたか?」
「…ん……さっきより、らく」

胃の中のものがなくなればさすがに吐くものもなくなってやっと楽になれた。
濡れタオルを額に乗せられて、それでもリボーンは俺を抱き寄せてくれる。
俺は涙腺が緩むのをしって、胸に顔を埋めた。

「ごめんなさい、酷いこと…いった」
「そうだな、もう二度とあんなこと言うな。ついでに言えば、存在価値なんて関係ないだろ?お前は俺のものなんだから、他人の評価に左右されるな」

傲慢な言葉、だけどヒリついた俺の心にそれは優しく溶け込んで暖かくしてくれる。
素直にうなずくと髪を梳かれて意識が朦朧としてくる。
でも、どうしようか…と考えながら目を必死で開けていると掌にそっと視界が覆われた。

「もう寝ろ、今は余計なこと考えるな。そのかわり、明日ヤらせろ」
「…わかった、今度は…怖くしないで」
「優しく抱いてやるよ」

リボーンの優しい声に誘われるように目を閉じて、暖かい温もりに安心して意識を手放した。
不安になったら、助けて。
俺の様子にすぐに気付いて。
きっとお前には、たくさん無理を強いてるのに何一つ文句言わない。
これは、どっちが゛もの゛なのかわからないね。
いつか、俺も同じだけ返せたらいい。
同じだけあいしてる、と大好きを…。




END
For You
新しい話し、で裏でした。
指定はなかったので好き勝手に書かせてもらいました。
本当に好き勝手やっちゃってます。
こんな話もたまには書きたくなりますね。
リクエスト有難うございました!





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