背中合わせ
「ったく、もう終わりか?」
「ぐっ……ゆ、るして…くれ」
あっけない。
この一言に尽きる。
人を呼びだしたのだから少しはやりがいのあるのを期待していたのに、結局出て来たのは五十人程度の敵のみ。
他に何かあるのかと警戒してみるが、何もなさそうだ。
命乞いをする男の手から拳銃をとり上げる。
カチリ、安全バーをひいて銃口を向ける。
この手の命乞いは苦手だ。
妻や子供の名を口にする、その前に俺はさっさとそいつの口を塞いだ。
「胸糞わりぃ…」
誰ともなしに呟いて拳銃を捨てて自分のはホルダーにしまった。
俺はもうここにいたくなくて足早に本部へと帰った。
好きだなんて、今更言えるわけがない。
言う前に愛人はごまんとよってきたのだから、いざ自分が口説く側になれば何もできない。
あいつの腹の内を探ることも躊躇われ、いつの間にかこの想いを抱えたまま、そのままでいいんじゃないかと考えた。
今のところ、あいつは恋人もいない、愛人もいない、中学の時に片思いしてからなにもない。
ここまで付いてきたのだ、今更離れるなんて…ないだろ。
「おかえり、リボーン」
「ああ…脅迫状だけどな、全滅させて来たからもう良いぞ」
「やっぱり全滅させてきたんだ」
「当たり前だろうが、出る芽はつぶす。そうでなきゃ、こっちがやられるんだぞ」
「そうだけど…」
敵でも優しくあろうとするツナに、俺は呆れたようにため息をついた。
聖人君子と勘違いでもしているのだろうか…いや、もうこっちにきて何年だ…そんなバカなことあるはずがない。
敵は敵と割り切らなければならない。
俺はツナの頭を手で小突いた。
「余計なこと考えんな。俺が帰ってきたことに喜べ」
「それは嬉しいけど…まぁ、いいか。うん…」
苦笑を浮かべるツナにまだ納得していないことがうかがえるが、知らないふりをした。
俺以外の心配をするのが気にくわない。
「言っておくが、俺は確かに強い、自分でも胸を張って言えるほどだ。だけどな、待ってるやつがいないとこに戻って来たって意味なんかねぇンだよ」
言った瞬間ツナがハッとしたように顔をあげた。
俺を見てくるのが嫌で慌てて視線を逸らす。
「ごめん…違う、嬉しいよ。お前がここに戻ってくるってわかってるから言えるんだ。リボーンがいないと、俺は何もできない」
だから、そんなこと言うなよ。小さく囁かれたそれはツナも俯いているせいで上手く聞き取れなかったが、震える手が俺の手を握る。
ツナは無意識だったのかパッと手を離そうとしたが、今度は俺が握った。
「なんっ…」
「うっせぇ、黙ってろ」
こんな気持ち、わからなくてよかった。
お互い顔を隠しあって、それなのに繋いだ手は離さないまま。
磁石のようにくっついてしまった手は、一体どうしたら離れることができる?
お互い背中を預けられるはずなのに、今は後ろを向けない。
だめだ、と頭の中で警告音が鳴り響く。
それでも、俺は顔をあげた。
すると、すぐに視線は合わさって
ツナは口をあけた
「_____。」
END
For You
互いに片思いですれ違い、でした。
すれ違…ってない、気もするんですが……すみません。
なんか、思考がぐちゃぐちゃして読みにくいかもしれません。
もっと文章うまくなりたい。
名も知らぬ貴女へ、リクエストありがとうございました。