俺が犯してしまった一つの失敗
とある日のこと、俺とリボーンは見回りにと街へと繰り出したのだがそこで俺はいろんな女性に話しかけられた。
それはもう年頃な人からばあさん、子供、年齢問わず話しかけられてちょっとデート気分を害してしまったかと心配したのだが。
『さっさとしろ、鼻の下伸ばしてんじゃねぇぞ』
『…もっとさぁ…』
『なんだよ?』
『なんでもない…』
俺はリボーンの恋人のつもりだ。
リボーンもそのつもりでいる、と思う。
けれど、嫉妬されないというのも何となくつまらない…というか、そういう独占欲も欲しいと思ってしまう俺は欲張りすぎなのだろうか…。
それから暫く悶々と考えてしまって、正直仕事も上手くできなくて逆にリボーンを怒らせてしまった。
そして、俺は数日良く考えた。
こんなことで頭を使っているのを知られたらまた怒られるのだろうが、これは俺にとっても大切なことなのだ。
「よし、リボーン嫉妬作戦」
ぐっと俺は拳を握りしめて、数日をかけて考えた作戦を実行することにした。
これにはもう一人、人が欲しいのだが見つかっていない。
だが、明日からリボーンは遠征にいってしまって近くにいない。
猶予は今日しかないのだが、どうするべきか…。
すると、廊下から足音が聞こえてきた。
そして、その足音が誰か知っているから俺は顔を上げて立ちあがるとドアを開けた。
「おや、どうしたんです?」
「骸、ちょっと…協力してほしいんだけど?」
「ほう…どんな楽しいことがまっているのでしょう?」
声をかけただけでその先を予測しているかのようなその言葉に、俺は呆れたようなため息をついてちょっと後悔しかけた。
が、それぐらいのタフさがなければ、この作戦には向かないので骸ぐらいでないといけない。
そして、骸に事の経緯と今から協力してほしいことを相談した。
「…また、くだらない…」
「そういうなって、俺達にとってこれは結構重大な…」
「綱吉くんだけでしょう?」
「でも、確かめたいんだって…お願いだよ、骸」
なかなか、うんと頷いてくれない骸を説得するように顔の前で両手を合わせた。
骸は少し渋って、渋っているのをちらりとみやれば満更でもない顔をしていて、そういうところはこいつの優しさが垣間見れるのだ。
普通なら、こんなお願いなんか一言やりませんといえばいいのにはっきり拒否しない骸も悪いのだ。
そうやって俺に利用されてしまうんだなと、心中では少し笑ってその体制のままでいると上からため息が聞こえてきた。
「一回だけですよ」
「やったぁ、一回だけで十分」
骸の言葉に喜んで、ならさっそくと段取りを話し始めた。
骸は気が早いと言ったが、なにしろ時間がない。
リボーンが嫉妬に狂うなんて、本当にあり得ることなのか…それだけを確かめたいのだから。
「それにしても、そんな簡単なことで嫉妬するんですか?」
「するよ、してくれないと困るけど…」
「しなかったときのことをよく考えて今回の計画を遂行してくださいね」
「異論はない、このままやるから」
「はいはい、僕はとんでもない組織に入ってしまったようだ…」
「なんだよ、俺以外は頭いいんだぞ?」
「君が、頭が悪いのが問題なんですよ」
バカはこれだからと言われて、もう何も言えなかった。
ばかでもいい。
いや、ばかだからこそそういう形を求めてしまうのかもしれない。
愛されている証拠が欲しいなんて、子供じみているとは思うが、それぐらいはっきりしてくれないと俺は不安だ。
このままリボーンに愛され続けてもらえるのか、とか。
リボーンの気持ちが冷めてしまったのか、とか。
俺だけが逐一反応してしまうのか、とか。
思うところはたくさんで、リボーンはこんなこと微塵も思わなかったりするのかと思うと、気分は少しずつ沈んでいってしまうのだ。
だまりこんでしまっていたのだろう、突然頭を撫でられて顔をあげれば骸が苦笑を浮かべていた。
「そんなに考え込まずとも、明確な答えはいつもだしてもらっているんじゃないですか?」
「な、にそれ?」
「君が鈍感なんでは?」
「そんな、え…え?」
「僕は結構、アルコバレーノは嫉妬してばかりだと思いますがねぇ」
骸の言葉に俺は混乱する。
いつリボーンは嫉妬して見せたというのだろうか。
俺が鈍感…?
超直感をもってしても鈍感なところはあったりするが、まさか…そんな。
「それに、あんな計画たてるまでもなく…こうしていた方が、早いですよ」
骸が言いながら俺に覆いかぶさってきて、俺が立ちあがったソファに押し倒してきた。
え?と思う間もなく、おあつらえ向きにドアが開かれて俺からは背もたれが視界を遮っていて誰が入ってきたのかわからない。
骸はそのままドアの前に立っていると思われる人物へと視線を向けた。
「これはこれは、アルコバレーノ」
「ちょっ、リボーン!?」
クスリと笑って呼ばれた名前に俺は驚いて身体を起こそうと思ったら肩を押さえつけられてできない。
計画と違うじゃないかと視線を向けるが、骸はこちらに目を向けることなく笑みを浮かべていて、俺もリボーンの反応を見てしまう。
というか、ここからじゃ本当に見ることができなくて俺は身体を起こそうと骸の腕に手をかける、が俺がそれをするまでもなく骸の身体が俺の上から退いた。
「まったく、乱暴だ」
「お前が、俺のものに手を出すからだろ」
「手なんて出してませんよ、それに僕はお願いされただけですからねぇ」
骸は怪我をする前に俺の上から逃げて、俺に視線を合わせてきた。
俺はぎくりとして、こちらに歩いてきたリボーンの視線が向いているのに合わせることができなかった。
なんでばらしちゃうんだよっ。
骸のばか、こんなことでばれるならもう少しマシな方法でネタばらしの方が良かった。
俺の内心とは裏腹に、チッと舌打ちが聞こえたかと思えばリボーンは拳銃をとりだし、容赦なくぶっ放した。
幸い防弾ガラスになっていたため、弾がめり込んだだけで済んだのだが…これは、雲雀さんにも怒られることになってしまいそうだ…。
「さて、僕は逃げるとします…それでは、綱吉くんarrivederci」
「え、あ…ちょっ、骸っ」
一人だけ逃げるなんてずるいっ。
そういいたいのに、俺が手を伸ばそうとした時には骸は幻覚を使って逃げてしまった後だった。
残された俺は、リボーンと目を合わせることもできず俯いていた。
これは想定外の出来事である。
リボーンが近づいてきて、俺の顎に手をかける。
優しく上げろと言われるのかと思えば、無理やりグイッと視線を合わせてきた。
「おい、どういうことか…説明できるよなぁ?ボス」
「……ハイ」
今まで見た中で一番見たくない笑顔がそこにあって、俺は背筋に冷たいものが流れるのを感じていた。
けれど、怒りの念を纏ったリボーンに逆らえることもできず尋問されるままにしっかりと答えそのたびに、リボーンの怒りのボルテージを上げていくこととなっていったのだ。
「もう、許してー」
「は?許されたくてあんなことしてたなんて都合よすぎるだろ」
「だってぇ…」
だんだんと険しくなっていくリボーンの気配に泣きごとを言えば、冷たい声が一蹴する。
逃げたい、すごく…逃げたい。
俺にも幻覚が使えたら…なんて場違いなことを思うぐらいにはリボーンが俺を追い詰めてきていた。
逃げようにもソファに座っている俺にリボーンが覆いかぶさってきているので無理。
このまま痛みを伴う行為に持っていかれてしまうのかと不安に思えばジワリと視界が歪む。
「そもそも、リボーンが嫉妬してくれないのが悪いじゃん」
「開き直りか?」
「…いいよそれで、俺はいつも不安で…さみしくて、男同士でこんな関係だから…尚更、なにか確かなものが欲しいって思う…それは、ダメなこと?」
「っ…そう言えばいいだろ」
「…う」
自分に素直になってリボーンを見つめると、リボーンの腕が俺の背中に回ってきた。
暖かい温もりに俺の心が一気に満たされて、俺も思わず抱きしめ返していた。
「お前だって言葉が少ない。俺は普通に嫉妬ぐらいするし、あの時はお前だって普通にボスとして振舞ってただろうが」
「それは…そう、だけど」
「それで一々嫉妬だ何だって、心が狭いと思うだろうが」
「それでもいいよ、それでも…よかったよ」
お前は嫌じゃないのかといわれて、首を振る。
嫌なわけがなかった。
限度を超えてしまうのはちょっと困るが、そうやって見せてくれた方が楽だ。
そう、口にすると、ならそうする、と不器用な声が返ってきた。
「ごめんね、リボーン」
「許さねぇ、今日は覚悟しろよ」
「は?…待ってまってまってっ、そこは俺もごめんって言うところだろーーー!!」
「言うわけねぇだろ、だからお前は詰めが甘いんだ」
ニヤリと、悪魔の微笑みが浮かべられた。
その時ばっかりは、いくら鈍感な俺でも逃げなければいけないと思ったがリボーンにあっさりと抑え込まれて次の日、俺は立つことさえも困難な位身体に教え込まれたのだった。
END
棗さまへ
リボーンに嫉妬をさせようと画策するツナ、で書かせてもらいました。
ありがちの展開過ぎて、ちょっと面白みがなくなってしまったかもしれませんが骸を出せてもらえて嬉しかったです。
ツナの考えていた計画すらもめちゃくちゃになってしまったのですが、これもこれで楽しんでもらえたらな、と思います。
気に入らなかったら書き直させてもらいますので遠慮なくどうぞ。
リクエスト有難うございましたっ。