パーティの途中で抜け出したことは、骸が幻覚を使わなくてもみんなにばれていたらしい。
そりゃ、隼人がいなくて骸がいないとなれば予想はつくか…。
俺は苦笑して、戻ってくるなりみんなに頭を下げる羽目になった。
リボーンはリボーンであきれた顔をしていて、何か言う人がいるのかと思えばそんなことはなく、骸の早く寝なさいという妙に仕切った態度でその場は収まってしまった。

「なんか、もっといろいろ言われると思ったんだけど…」
「俺もな…あんなに順応性が高くなってるとは思ってなかったぞ」

リボーンも身構えていたらしいが、拍子抜けしたようだ。さすがに俺も呆気にとられてしまった。
このままリボーンは自分の部屋に行くかと思えば、違う方向へと向かう。

「どこにいくんだ?」
「ああ、ちょっとな。お前は部屋に居ろ、すぐにいくからな、中に出されたかったら身体綺麗にしておけよ」
「っ…ばっ、ばかっ」

あからさまな誘い文句に、俺は一気に顔に血が上るのを知って、リボーンに叫ぶも気にした様子もなく歩いて行った。

「少しは考えて発言しろよ…誰が聞いてるかもわからない…の、に」
「偶然ですね、綱吉くん」

恥ずかしくもうれしく思っていたが、気配を感じてぎぎぎと音がしそうなぐらいのぎこちなさで振り向けば笑顔で語尾にハートが付きそうなほどに機嫌のいい骸がそこにいた。
こいつは今すごく面白がってる。
あの顔は面白がってる顔だ。
逃げようと足に力を込めた次の瞬間には肩を掴まれていた。

「ひぃっ」
「お化けを見る目でみないでくださいよ」
「なんだよ、リボーンを引き入れるなって言っても無駄だからな」

誰に何と言われようとも俺はリボーンのことを手放すつもりはない、と睨めばそんなこと誰が言いましたかとため息をつく。

「逆に安心したんですよ」
「なんで?」
「僕たちでは、やはり君の抱える闇をすべて聞き出すことはできないようですからね」
「…骸」
「君がアルコバレーノを手放したと聞いた時には取り乱してしまいましたが、失念していました。君は、本当にあきらめることのできない人間だということを」
「けなしてるのかよ」
「めっそうもない、ほめてるんですよ」

骸の言葉には何か毒がある気がするが、本人は素知らぬふりだ。
結局、俺は守護者を頼りきることができなかった。
誰よりも信頼しているし、頼りにしている、けれど、やっぱり彼らは大切な仲間でそれ以上ではなかったのだ。
俺の苦しみを打ち明けて、同情してほしいわけではないからだ。
リボーンは、的確に状況を判断してくれる。
俺が折れた時は、支えてくれるという安心感。
俺はどうしても、みんなの前では強がってしまうところがあるんだと自分でわかった。

「なにより、君は大人になりました」
「どういうことだよ?」
「そのままの意味です。それでは、これで」

僕もやることがあるんでした、と離れていこうとする骸にせめてもの意趣返しを思いつく。

「なら、骸も早く大人にならないとな」
「?」
「白蘭から逃げ続けてるって聞いたけど?」
「なっ、なぜ君がそれを」
「まぁ、ボスの権限ってやつ?」
「そんなものないでしょうっ!?」

いきなり怒り出した骸に、図星かと笑う。
一向に捕まらないと嘆いていた白蘭に、この赤くなった顔を教えてやりたい。
素直になれないのは、俺も骸も一緒だと思うのだ。

「白蘭が報われるといいな」
「君はっ、わかってていってますね!?」
「はいはい、俺が白蘭に電話しないうちに早く戻ったら?」

チッと盛大な舌打ちをおいて、骸はカツカツと盗み聞きしていたと思えないほどの足音を立てて歩いて行った。
俺は笑って、部屋に戻る。
リボーンを迎えて、そして、離れていた時間を埋めるために。



一年半ぶりぐらいにボンゴレに戻ってこれたが、綱吉が来なければ俺はこの地を離れる気だということを言ったらあいつはどうしたんだろうか。
いや、いくら俺が離れたところであいつは追ってきただろうな。
そう確信してしまうぐらいには、あいつは必死だった。

「よぉ、元気か?」
「リボーンか、綱吉くんには許してもらったのか?」
「…ああ、そんなところだ」

挨拶もなしで部屋に入るが、九代目は特別気にした様子もなくワインを片手にソファに座っていた。
リボーンもどうだというのを断って、俺は頭を下げた。

「世話になった」
「そんなに改まらなくていい」
「けじめだ、もう俺はあんたの部下じゃない」
「…そうだな、仲良くやってくれたらそれでいい」

これからは頼んだよ、と笑われて俺はようやく笑えることができた。
正直、ツナを支えきれるかは不安だ。
あいつはよく見ていないと何を考えてるか時々わからない。
けれど、俺だってあいつと一緒に居たいと思ってしまったのだ。
離れられないことは、お互いにわかった。
なら、どうやって一緒に居続けるのか、だ。

「離れたらどうなるかわかったなら、心配はいらないだろう?」
「なんでだ?」
「離れる悲しみを知ってしまったら、もう手放せないからなぁ」

人間は臆病だと笑って、早くいってあげなさいと促された。
俺はもう一度頭を下げて九代目の部屋を出る。
ツナの部屋に向かう途中自分の部屋ものぞいてみたが、少し埃っぽくなってたぐらいで変わりはない。

「沢田綱吉は、その部屋に一度も入らなかったよ」
「ヒバリ」
「君を思い出すのが怖かったんじゃない?」
「迷惑かけたか?」
「いや、まったく手がかからなかったよ。手がかからな過ぎて、つまらないぐらい」

いつの間にか俺の後ろにいたヒバリは笑って腕をくんでいた。

「こっちが迷惑するぐらい甘やかしなよ。でないと、ここまでした意味がない」
「そんなこといっていいのか?」
「まぁ、三年までは許してあげるよ」
「三年?」
「蜜月はもって三年だろ?」

ヒバリはそういって歩いて行ったが、俺は首をかしげた。
三年は、少々長いんじゃないのだろうか。
誰の入れ知恵なのかは明白だが、これは訂正しない方がいいのかもしれないな、と改めて思い背中を見送った後ツナの部屋に向かう。
部屋に入れば、ツナはシャワーを浴びている最中だった。
何だかこの部屋に入るのも懐かしく、そういえばいつも常備していたものは残っているのか不安になった。
なければ何かで代用すればいい、そんな軽い気持ちでいつものものが入った引き出しを開けてみるとそこには新品のものが置かれていた。
もちろん、用意したのはツナだろう。

「くくっ、そんなに期待させてどうすんだあいつは」

こんなに待ってましたと言われれば、今日は久しぶりだし控えめにしてやろうとした気持ちはどこかに消えてなくなってしまうだろう。
いや、もうなくなった、準備万端だ。
男はオオカミなんだ、仕方ねぇ。
上着を脱いで、ネクタイを緩めた。
ツナがあがってくる気配がして、そのまま寝室へと入ってきた。

「えっ、リボーン案外早かったんだな」
「ああ、すぐに終わったからな。ツナ、こっちにこい」

手を伸ばせば、そこに手を置いてツナはおずおずと向かってきた。
別れを告げた時とは正反対のおびえた視線。
そんな顔をするぐらいなら、あんなことをしなければよかったんだ。
ツナにはそれが必要だったことは察することができるが、俺の気持ちも考えずにあの結論に至った結果に俺は怒りたい。

「ツナ、まず俺に謝れ」
「は?」
「とりあえず、傷ついた俺に謝ってからだ」
「…傷ついたのか?」

ふてぶてしく言ってやるが、ツナは俺をじっと見つめてそんなことを言ってくる。
愛してるとまで言った相手から別れを告げられれば誰だって傷つくに決まっているだろう。
この鈍感はここまで鈍いのか。

「恋人にフラれて、傷つかないやつがいるわけねぇだろ」
「俺だけじゃ、なかったんだ」
「お前より俺の方が傷ついてんだ、慰めろ」

なんだその自分勝手な言葉は、
人の気も知らないでそんなこと言いやがる。

「俺がお前に惚れてるのに、どうしてそんなこと思う?お前だけだと思うな、バカツナ」
「ん…ごめんなさい」

やっぱりお前はまだまだ足りてない。
俺がいないとだめだな。
ツナの手を引き寄せて腕の中に倒れてきた身体を抱きしめる。
身体が少し濡れているなんてものは気にならない。
触れたら、最後だった。
俺はそのまま身体を反転させツナをベッドに組み敷いた。

「リボーン…?」
「たまってんだ、抱かせろ」
「俺も…我慢できない」

お互いにかみつくように口づけた。
力任せなせいで歯がかちかちとぶつかるのに、唇だけでは足りなくてシャツを第一ボタンを外すと同時にそのまま頭から抜き去った。ツナは俺のベルトに手をかけていて、その間に俺はツナの胸をいじった。

「んぁ…んっ、でる、かも」
「早すぎだ」
「でもぉ…」

ベルトを外した音を聞いた瞬間足から下着と一緒にズボンを引き抜いてツナの自身を見ればもう勃起して、先端を揺らしていた。
先走りもだらだらとあふれて、もう三擦り半も笑うぐらいにすぐイってしまいそうだ。

「どうする?このままこするか、咥えるか、いれるか」

腰を抱き、後ろを確認すればもう十分なぐらいにほぐれていて、きっとシャワーを浴びながら感じていたんだなということがわかる。
三択から選ばせようと聞けば、ぎゅっと抱き着いてきた。

「いれて、ほしい」
「なんにもしてねぇぞ?」
「いい、入るようにした…から」

求めるままにもう一度ツナをベッドに寝かせて自身を宛がう。
すると吸い付くように秘部が開閉して、それに合わせるように挿入し始める。

「ひぁ、ああっ…ああっ、だめ…もう、いくっいくっ」

待てという間もなく、全部入れ終えたとたんツナは白濁を放っていた。
呼吸も荒く、一度止めるかと少し休ませたら腕をぎゅっと握って濡れた目で俺を見つめてきた。

「たり、ない…もっと、もっとほしい…りぼーん、止められない…たすけ、て」

ひんひんと泣き出して、中が俺を容赦なくしめつける。

「おい、待てツナ。もう少しゆっくりだ」
「やっ、やぁっ…これ、おれのだから…ひぃ、ん…」
「泣くか喘ぐかどっちかにしろ」

駄々をこねるように首を振って、泣きながら俺を見つめて手を伸ばす。
抱きしめてやれば、ますます涙は止めらないらしく目を真っ赤にしながら気持ちいいと繰り返した。

「ごめん、なさい…リボーン、ごめん。俺、すっごくリボーンのこと欲しかった…ずっと、ずっと一緒に居たかったから…」
「あーもー、わかった…とりあえず、満足するまでしてやる。覚悟しろ」

これ以上そんな煽り文句は聞いていられないとキスで唇をふさぎ、止めていた抽挿を開始した。
とろけたように柔らかく俺を包み込むようにして締め付けてくる。
途中から涙も止まって、縋りつくような手をとった。

「ツナ、愛してる…あの時は仕方なく離れてやったが、次はないぞ」
「んっ…俺も、もう…離してやんない」

女とくっつくチャンスをくれてやったのに、と笑うツナにそんなものは随分と前にいらなくなったものだといってやった。

「おら、もう話はいらねぇだろ。感じてろ」
「あっ…ふあぁ、やだ、またイく…でるっ」
「我慢する必要ねぇだろ」

奥へと突き上げればぎゅうぎゅうと締め付けてくる。
全体をこすり付けてやれば、甘い声を上げて白濁を放った。
もうツナの体液でお互いの腹はべとべとになっていて俺はそれをぬりつける。
俺も我慢が利かなくなってきた、この熱の吐き場所は一つしかなくてツナを抱きしめた。

「まだ、いけるだろ?」
「んぅ、リボーンが…だしてくれるまで」

けなげに頷くさまがかわいくて、ますます激しくしてしまいそうになる。
久しぶりの身体にそんなに無理を強いることはできず、今度はゆっくりと揺さぶった。

「ふ、ふぁ…あっ、あっ…」
「ツナ、キスしてろ」
「ん…んぅ…ふ」

言うとすぐに唇へと舌が入り込んできて、俺の舌を気持ちよさそうに吸っている。
頭を撫でると甘えたような声を上げて、俺の首に腕を回してもっと密着した。
ゆっくりと動きを早くしていく。
擦り、突き上げるスピードが速くなると呼吸が苦しくなったのか離れて、あられもない声が上がる。

「出すぞ?」
「ん、いつでも…いい」

きて、とささやく声とともに俺もツナの中に白濁を放っていた。
ツナの身体を抱きしめて、ベッドに倒れ込む。
ツナの腕も俺の背中に回ってきた。
そっと撫でる動きに妙に安心する。
柄にもなく俺は不安だったようだ。
ツナにフラれて、一人でやってきて…クリスマスの時に言った言葉は嘘じゃない。
こいつが必要としなくなったら俺は…きっと、その存在さえもなくなってしまうんだろうな。
いつも自信たっぷりなのは、虚勢。
そうやっていなければ、きっと悲しみにさえも耐えることができないだろう。
どうやってでもお前が必要だった。
一人でいながら、見つかるのを待っていた。
女々しくてそんなことは絶対に言わないけれど、俺の方がツナなしでは生きていけないんだ。




リボーンと現実逃避した数日後、正式に書類を作成しリボーンをボンゴレ専属のヒットマンとすることに決まった。
我ながら完璧な書類を眺めて俺はにんまりと笑顔。

「なんだ気持ちわりぃな」
「あたりまえだろ、ちゃんと自分で何もかもできるようになった証だ。これがその証明だよ」

リボーンの前に書類を突きだして見せるが、特に興味を示す様子もない。
視線だけはしっかりと文字を追っていて、間違っているところを探しているようだ。
失礼だなと思いつつ、好きなだけ見ればいいとリボーンに渡した。

「あとは、リボーンの迎え入れる式みたいなのしないといけないの?」
「別にいい、そんなことやる意味ないだろ。俺は出戻りなんだからな」
「…まぁ、そうか」

じゃあいいや、と興味を失くして外から騒がしい足音が近づいてくるのに顔を上げた。

「綱吉さんっ、骸と雲雀止めてくださいっ」
「もー、またぁ?最近ずっとだろ、もういいよ。俺はもう相手にしません」

隼人何とかしておいて、と駆け込んできた右腕に言うとそんなぁと泣きそうな顔をする。
少し前まではこんなこともなく、毎日が目まぐるしくも平和だと思っていたのに…。

「何が二人の闘争心を駆り立てるんだろ…」
「明らかにお前が原因だ」
「えー?わからないよ」

リボーンのあきれた声に、俺はふぁと連日の夜更かしで眠気眼をこすり隼人はどうしようかと悩んでいて、仕方ないなと腰を上げた。

「守護者って自覚はどこに行ったんだよ…」
「お前がそんなんだから、あいつらもそうなるんだろ」
「どういう意味だよ」

リボーンの声を後ろに聞きつつ、部屋を出る。
この前より少し明るくなったような視界に、嬉しくなり、結局二人が喧嘩していてもそんなに嫌じゃない。
何もかもが順風満帆、一番欲しいものを手に入れた俺には何も恐れるものはなかった。



END





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