イタリアに来てから一年が経とうとしていた。
毎日のようにやることは山積みで俺はいろんなところに向かわされ、そこでいろんな経験をさせてもらった。
今はキャバッローネファミリーにきていて、ディーノさんと会うのは久しぶりだったのだが、そんな懐かしさなんかに浸る暇もなく今抗争の真っただ中なのだと説明され、なぜかそこにいた雲雀さんとコンビを組ませられている。

「まったく、足手まといは要らないって言ったのに…」
「すみません」
「そう思うならちゃんと動いて、ここじゃ気を抜いたら最後だよ」

いくらボスでも守りきれないからね、なんて言われたら恐怖で身体が固まる。
俺は雲雀さんに守られるようにして一室で待機していた。
外では銃撃戦のために弾丸の飛び交う音が響いて、耳をふさぎたくなるような断末魔が聞こえる。
俺たちのしてきたこととは違う、本気の命のやり取りだ。
いや、俺たちだってそう思ってあの時は戦ってきた…けれど、そんなのは遊びの一部だとでも思わせるかのように今の状況は危険だった。

「ディーノさんはどこに」
「あの人のことだから、きっと前線だ…部下の言うことの一つでも聞けばいいのに」
「今思えば、それってすごくボスらしいですよね…俺なんか守ってもらうことしかできない」

部下を誰も犠牲にしたくないから…自分のドジなところが部下の前では発揮されないという話は今だからよくわかる。
こんなところに居たら、そんなことすら考えることもできなくなるから。
誰も殺さないために、自分ができる最大の武器を使う。
俺にはそれができるのか…?
できないことはないが、ボスが自分から死ににいくようなへまは絶対にできない。
ディーノさんはそんなたくさんの覚悟をもって誰よりも前に行く。
そんな俺の考えを読み取ったかのように頬を殴られた。
唐突に走った痛みに俺はその場に尻もちをついてしまった。その殴った張本人である雲雀さんを見れば、すごく怖い表情で俺を見下ろしていた。

「君は、何もわかっていないんだね。今まで何をしてきたのかな、そんなんじゃ本当に足手まといだよ」
「ひばり…さん」
「いつまで箱入りボスを演じるの、もうここまで来たんだ後戻りなんかできない。今君にできるのは覚悟を決めて全部に向き合うことだろ」

そのための一年間だっただろう、と言われて息を呑んだ。
まさにその通りだった、ここにきていろんなことを知った。
たくさんのすることのない経験を積んだ。
それは、俺をボスにするための覚悟をみていたのかもしれない。

「君は君の望むボスになればいい…あの人やユニ、ザンザスをみて君は何を思ったの。どんな風になろうと思ったんだい…今更、逃げるなんて選択肢は僕が選ばせない」
「逃げません。俺は、みんなと一緒に、成長します」

きっと、俺はディーノさんみたいに無鉄砲になれない、ザンザスのように一人強くも慣れない、ユニみたいに優しくもなければ炎真くんのように支えてくれるようなボスにはなりたくない。だったら、俺はみんなと一緒に成長して作り上げていく。
まっすぐに雲雀さんを見つめれば、ふっと肩の力を抜いてくしゃりと頭を撫でてきた。

「その覚悟、忘れないように」
「はい」

とにかくいつまでもここにいるわけにはいかない。
俺たちも応戦して相手を圧倒しなければこの戦いは終わらないのだ。
雲雀さんが差し出してきた手を取って立ち上がり、ドアの前に行く。
幸いもう銃撃戦は遠のいていた。

「それと…君は、弱くない。僕が認めたんだからね」
「へ…?」
「いくよ」

雲雀さんからのうれしい一言に聞き返せばそれはさらりと無視されて、合図とともに俺と雲雀さんは部屋を飛びだした。
まだ戦っているところを応戦しながらディーノさんのところを目指す。

「そういえば、雲雀さん…ずっとディーノさんのところにいたんですよね。なにしてたですか?」
「…秘密だよ」

くすりと笑ったその顔はどこかきれいに見えて、とたん恥ずかしくなった。
聞いちゃいけないことも含まれているのだろうかと戸惑えば変なこと考えないでと額をデコピンされる。
なんでばれたんだろう…。
昔はよくリボーンに俺の考えていることを知られてしまったのだが、まさか雲雀さんまで…!?

「君は本当にわかりやすい表情をするよね」
「え!?そんなに出てますか!?」
「僕たち限定でね」

その限定ってところがよくわからない。
が、先を行ってしまう雲雀さんを追いかけるのがやっとでその考えはすぐに頭の隅に追いやられていった。

「ツナ、恭弥無事だったんだな」
「僕はあなたの方が心配だったよ」
「あっという間に終わりましたね」

ディーノさんに追いついた時にはキャバッローネの方が圧倒的に有利になった後だった。
近くには敵のボスもいて、怪我をしている。

「あとはこいつを捕まえるだけだ」
「や、やめろっ」
「お前が来ないと、ここに爆弾を仕掛けて全滅させる…どっちがいい?」

もちろんお前も道連れだ、とディーノさんは見たこともない顔で脅しをかけた。
そこにいる誰もが、マフィアの人間だった。

「わ、わかった…だから、もうあいつらは…」
「よし、じゃ来てもらおうか。ロマーリオ」
「ああ、わかった」

ディーノさんは離れて俺の方に来ると見えないように盾になりそのまま車へと向かわせられた。
雲雀さんは一瞬だけ不本意そうな顔を見せたけど、車に乗り込むとディーノさんも一緒に乗った。

「ツナ、幻滅したか?」
「…いえ、これが普通なんだと思います。当たり前なんだと、思います」
「そうだ、これが俺たちの普通だ」

走り出す車の中ディーノさんが苦笑した。
雲雀さんはそれに口を出すでもなく腕を組んで話を聞いているようだった。

「お前はこうなるな、なんて俺が言えることじゃないけどな…俺たちはツナに期待してるんだこれからを変えてくれるボスだろうって」
「そんな…」
「まぁ、ほどほどにって感じにだからそう構えるな。現実は俺たちは教える、けど…それにとらわれないボスになってくれ」

ほどほどといっておきながら、それは期待のし過ぎだろうと俺は二の句が継げなかった。
そしたら、前に乗っていた雲雀さんの肩が小刻みに震えていて目を見張ってしまう。
あの雲雀さんが笑うって、貴重すぎるっ。

「あの、雲雀さん」
「なに、文句あるならその人に言えば」

僕を巻き込まないで、と一括されてしまった。
いや、あんた今笑ってただろう!?
さすがのポーカーフェイスで振り向いた時にはもうそんな面影はなかった。

「こら、恭弥自分のボスだろうが」
「あなたは口出さないで」
「いいんです、こう見えて雲雀さんはすごく頼りになりますから」
「…はぁ」

雲雀さんのあきれたため息が聞こえてそれが照れているからだとわかるから、俺はなんとなく安心することができた。
そして、車の外の景色がいつものキャバッローネに戻る道じゃないことを知る。

「え、今からどこに?」
「ちょっと早いけどな、時間的にはちょうどいい。ツナ、最近リボーンに会えてなかったみたいじゃねぇか」
「…な、なんでそれを」
「イタリアに来て一年か、これからも大変だと思うけどな…自分にご褒美も必要だと思うぜ」

にやりと笑ったディーノさんは何かをたくらむ顔をしていて、自然と少し身を引いた。
けれど、車が到着した場所はとてもありふれた場所。
都会の駅だった。

「これだけ人がいりゃ、好都合だ。ツナ降りろ、そこのカフェで待ってる」
「誰が?」
「ここまでお膳立てしてんだぜ?誰が、なんて質問は受付ねぇよ」
「僕より頑張ってるみたいだからね、今日は目を瞑ってあげるよ」

言われるまま俺は車を降りて、ディーノさんたちは引き返していった。
一体何なんだと不思議に思いながらカフェに入り、中を確認する。
店内はにぎわっていて、けれど二人掛けのテーブルに一人だけ異質を放っている人間を見つけた。
といっても、俺には慣れ親しんだものだけど。
俺はその席まで歩いていくと新聞を広げている男からそっとそれを取り上げた。

「久しぶり、リボーン」
「よぉ、少しはボスらしくなったか?」

リボーンはいつみてもなんの変わりもなく、リボーンだった。
俺は少し泣きそうになって、反対側の椅子に座ると疲れた、と本音を零した。
正直こんなつらいこと、平気でやっている自分が信じられないぐらいだった。
それを口にすることもできないし、頼りになるリボーンはいなくてどうにかなりそうだった。
すると、少し乱暴だけど優しい手が俺の頭を撫でる。

「本当はもう少しお前はやることがあるが、ディーノが作った時間だ。無駄にすることはねぇ」
「え、どこに行く気!?」
「そりゃ、決まってんだろ」

リボーンは俺の手を引いて立ち上がるとカフェを出た。
決まってるってどこにだ、と聞いてもリボーンは口を開こうとせず連れてこられたのは歓楽街のラブホテルだった。

「ちょ、本当に入るのか!?男同士だぞ」
「いまどきそんな小さなことで入ることを止めるほど客の顔なんざみてねぇぞ」

俺は驚くがリボーンはそのままフロントに歩いて行った。
俺はさすがにそこまではいくことができず後ろから見ていたが、リボーンは鍵を持ってエレベーターに乗り込み俺はあわてて飛び乗った。
とたん、腰を抱かれてキスを仕掛けてくる。
遠慮のないそれに俺はたっていることができず、リボーンにしがみつくようにスーツを握りしめた。

「ん、んん…りぼ…」
「つな、好きだ」
「ま、まって…まだ…」

部屋にもいっていないと押し返そうとするが、力が入らず自分の身体も反応し始める。
こらえることができないと首を振れば、抱きかかえられエレベーターがつくなり部屋まで連れてかれた。
入った途端、今度は俺からキスを仕掛ける。
リボーンにキスをされて止まれるわけがない。
必死に知らないふりをしてきたのに、ここで熱情を呼びさまさせられてしまった。

「まだなんじゃなかったのか?」
「もう、いい…から…はやく」
「そう急かすな」

ベッドにおろされて自分から服を脱いだ。
リボーンも早くと服を引けば、変わり身の早さに戸惑いつつも服を脱いでいく。
あらわになっていく裸体に俺は目が離せなくなって…唇を舐める。

「あ、がまん…できない」
「そんなお前は初めて見るな」

自ら指を舐めてリボーンの前で足を開いた。
リボーンの目が俺のそこに釘付けになっている、恥ずかしいと思うのに煽られてくれるのが嬉しくて、そこに指を埋めていた。
一本入れて中の様子を確かめ、大丈夫そうだと二本目を入れた。
広げるように指を開くと息を呑む音が聞こえる。

「ねぇ、はやく…はやくぅ」
「自分でしてんだろ」
「やっ、リボーン…じゃ、なきゃ…」

それで満足できるんじゃないのかとからかわれて首を振る。
そうやって苛められるたびに中がキュンキュンと自分の指を締め付けていて、恥ずかしさに顔を伏せようとしたがそれすらも許されなかった。

「もっと見せろ」
「だ、からっ…りぼーん」
「お前の泣きそうな顔、好きだぞ」

目じりに浮かんだ涙を舐めながらそんなことを言われて、怒りがわき起こる。
こんなにも俺はリボーンがほしいのに、なんでここまできて焦らされなきゃいけないんだ。
睨み付けると、宥めるようにキスをされた。

「悪かった、あまりにも必死だからついな」
「ついでいじわるするなっ」
「お前がほしいのはこれだろ」
「ァッ…っ」

泣きながら訴えたらそこにわざとらしくこすり付けられる熱いものに、自然とねだる声が出た。
指を抜いてリボーンのそれを優しくなでる。
何もしなくてもここまで硬く太くなっているのは、リボーンも俺と同じように禁欲してたからって思ってもいいのか?

「あまり煽るな、きついのはツナだぞ」
「いい、から…それ、ちょうだい」
「ったく、とんでもねぇな」

肩を押されて、俺はベッドに横になった。
覆いかぶさってくるリボーンは俺を見ていて、先端が含まされる。
ゆっくりと入ってくるそれに息を吐いて受け入れていく。
いつもよりずっと中が固いせいかリボーンを感じることができて身体を震わせながら呼吸する。
苦しくて、手を伸ばせば優しく指先にキスをしてからませて握られた。

「リボーン、はいってる…すご、おくまで…きちゃう」
「つな、エロいこと言ってんのわかってんのか?」
「なに…とまんないで、はやく」

飛んでるな、とリボーンがあきれ交じりに言うのに俺はその意味がわからず首を傾げる。
すると、一気に押し込まれて息が止まり頭の中が白くなった。
余韻に浸る暇もなくそのまま動かれて俺はリボーンの手を痛いぐらいに握りしめる。

「ふぁっ、あぁあっ…やぁ、あぁっん」
「吸い付いてくる…しめんな」
「む、りぃ…あついの、きもちーの…ぁあぁあっ」

遠慮なく動かれて俺の頭はもうまともなことなんて考えられなかった。
欲望のままに自分からも腰を振ってしまって、リボーンも同じように腰を振っていた。
どんな言葉を放ったかなんてものもわからなくて、ただ終わった時には溜めこんでいたものは何もなく、どろのように眠ったことは確かだった。




目覚めると知らない天井で驚き身体を起こしかけて、誰かに拘束されていることに気づいた。
隣をみると、リボーンが寝ていて安堵し身体の力を抜く。

「そっか…昨日の」

リボーンとの逢瀬を存分に楽しんでしまったことを思い出せは恥ずかしくも、すっきりとした気分でため息を吐いた。

「早く戻らないと…でも、もう少しだけ」

これで離れてしまったら、またあえなくなる。
そう思って、リボーンの胸にすがった。
離れたくない、傍に居たい…これっきりじゃなくても、毎日のように顔を合わせられないことが寂しい。

「りぼーん…」

声が震えて、抑えろと思っても涙があふれた。
鼻をすすれば、リボーンの手が俺の頭を撫でてくる。

「泣き虫だな、ツナ」
「リボーンにだけだもん…」
「そうだな、俺だけだ…誰にも見せるな」

ここだけで泣け、と優しく言われてますます涙が止まらなくなった。
俺にとっての安息の地はやっぱりリボーンの傍で、これ以上離れていることはできないとしみじみ思った。
それと同時に、決意した。

「リボーン、俺と…契約して」









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