◎ 華護
「あのっ…ちょっ……」
「いいじゃねぇか…ちょっとぐらい触らせてくれたって」
「嫌だって、触るなってばっ」
俺がリボーンに身請けされてもう五ヵ月ほどが経とうとしていた。
身請けされた時は、リボーンがなんの職業についていてどんなところに住んでいるかなんて話したこともないからここに連れてこられた時はどうしようかと思った。
日本家屋を目の前に見てヤクザかもと思ってしまったのはまだ新しい記憶だ。
だが、ヤクザではなかった…かろうじて。
俺は目の前のむさくるしい男にご飯を押し付け、尻を触っている手を振り払った。
見ず知らずの男ではない、つい最近運ばれてきた男で腹には立派な銃痕がある。
そう、リボーンの職業は医者なのだ。
単なる医者ならよかったが、普通のそれなら俺を身請けすること自体できないだろう。
リボーンは人に言えない傷を負ったものを治す。
闇医者だった。
「なーにやってんだ?」
「うっ…」
「リボーン」
「このまま息の根止められたくなかったらそいつに手ぇ出すな」
「す、すまねぇ」
部屋に入ってきて状況をみたリボーンは問答無用で男の首に聴診器を巻き付けて締めあげていた。
しかもなんだか本気が滲んでいるのは気のせいだろうか…。
男が何もしないと言いきると仕方なく緩めて解放していた。
「お前も、簡単に触らせてんじゃねぇよ」
「触らせたくてしてるわけない、俺はご飯運んできただけなのに…」
俺はと言えば、何のとりえもない元娼妓。
患者にご飯を運ぶことや呼ばれた時リボーンの代わりに容体を聞きに行く程度しかできない。
それでも、リボーンが鬱陶しいといって俺を追い出すことはしないでいてくれるので俺は少しぐらいは手助けになれているのかなと思う程度にはこの生活に馴染んでいた。
最近ツナがこの生活に慣れてきたようで、俺の手伝いをしたがる。
俺は手伝われることに嫌な気分はしないが、ちょっと目を離すとすぐこれだ。
危機感がないというのか、触られ慣れているからかツナは負傷している奴等に対して酷く無防備だった。
そのうち、痛い目を見るんだと思いつつも放っておけない。
変な話だ、俺はここで一人暮しているだけで満足だと思っていたのに。
金には不自由していない、俺ほどの名医なんてここらじゃないからな。
そんなとき偶然にも出会った綱吉。
こいつが欲しいと思った、何を差し出しても、俺はこいつを俺のものにしたくなっていたんだ。
そんなこんなあって、今は落ちついた生活をしている。
ヤクザもんやら人には公言できない奴らしかこない場所だが、ツナの顔はいつも楽しそうに笑みを浮かべていた。
「ツナ…こい」
「な、なに?」
でも、それとこれは話しが別だ。
俺の物である身体を他人に触らせるなとあれほど言っておいたのに。
「仕置きだ」
「なっ…ちょっ……えっ、やだっ…あぁぁつ」
部屋から出るなり引き寄せて腰を撫でながらズボンの上から秘部を撫であげる。
それだけなのに、耳元で腰に来るような甘やかな声を響かせて俺に縋ってきた。
こいつには、俺しかいない。
それだけで独占欲が満たされる。
「な、なにするんだよ?」
「…こいつを入れてあいつらに飯を運んでやれ」
頬を赤くているツナに俺が取りだしたのは小さなバイブで、それを見せつけるように確認させた後、徐にツナの腰のあたりから手を差し入れてバイブを押し込んでやる。
それを身体を震わせて感じていたツナにもう終わりだと手を離して元通りにしてから身体を離した。
「っ…なんか……いやらしい」
「お前が誰にでも身体を触らせるからだろう?」
こんどそんなことさせていたら、と言いながら俺はポケットに入っているスイッチを入れた。
「あっ!?あぁぁっぁぅっ…やめぇっ、やあぁあっ…イくぅ…」
立っていられなくなるぐらいの愉悦を感じて俺に縋りつきながら足をがくがくを震わせていた。
質悪いな…自分で思うほど独占欲が強いと感じる。
それもそのはずだ。俺はあそこ…遊郭でこいつが他人に抱かれるもの嫌で一刻も早く身請けしたくてたまらなかったのだから。
俺はそんなツナに笑みを浮かべてイく寸前でスイッチを切った。
「ぁっ!?…やだ、ねぇ…イかせてよぉっ…ああっ、リボーン、りぼーんっ…」
「もう触らせないって言えるか?」
「いえるっ…」
だからお願い、見つめられて俺は引き寄せられるように口付けていた。
元より飯を運ばせるなんて脅しに決まっている。
第一こんな顔を他の誰かに見せるなんて誰がするか。
耐えられず揺れる腰をやさしく撫でるだけで感じた顔を見つめていると、くしゃりとゆがませて泣きだした。
「ねぇ…ねぇ、あやまるからぁ……ふぅっ…う…んんっ…」
開発された身体は暴走を始めてもう触ってと訴えるようにツナは謝った。
苛めて自分に依存させるなんて…と思いながらもそんな自分が止められない。
俺はそれに答えるように腰を抱き寄せ、廊下だというのにツナの背を壁にあずけさせてズボンを脱がせば足を抱えた。
「くれてやる、上手に食べろよ?」
「んっんっ…たべう…あっ、あふっ…ああぁぁっ!!」
中から蜜液にてらてらと光るバイブをとりだして、ぽとりと落とした。
片足で身体をささえながらの挿入は締めつけが激しく、入れただけでツナはイった。
俺はそのままで止めるつもりはなく両足を待ちあげると壁に背をあずけた状態のまま揺すりあげた。
「やあぁっ、へん…おかしく、なっちゃ…あぁっあふぅっ…ひあぁっ…やめっ、あたま、へん…あぁああっ、こわいっ…りぼーんっ」
「俺は、ここにいるだろ?」
「ああっ、うぁあっ…りぼーん、りぼーんっ…あたま、まで…きてるぅ…もう、だめ…あぁぁっ!!」
ぼろぼろと泣きだしながら身体を貫かれているようで全部感じると肩に爪を立ててくる。
それを無視して突き上げていると、中を急激に絞りとるような動きをしだした。
「出さずに、イったのか?」
「はあぁっ、もう…もおっ…いけないっ、もうでないぃっ」
ドライでイったのを見ればニヤリと笑ってツナを眺めると、自身を自分で弄りだした。
「でないんじゃなかったのか?」
「だって、だってっ…ださないと、おかしくなっちゃ…あぁっ、イきたい…イきたい、のにっ…りぼ、ん…たすけてっ」
先端をひっかいて出そうとしていて、見ているこっちが痛くなってしまう。
ツナの手をやんわりととり上げると自分の肩に戻し優しく包み込むように握った。
それだけで腰に来るような甘い声をあげる。
しっかりつかまっていろと視線で言って、扱きながら腰を使う。
「あぁっ、イくぅ…いってい?ね、いっしょ…いって…?」
「ああ、中に出してやるから…こっちで感じろ…」
あまり声が響かないようにツナの唇をキスで塞いで、腰を打ちつけるとあっけなく掌に白濁を溢して、ぎゅうっと締めつける中に放っていた。
「あっ、はぁっはぁっ…はっ…はぁっ…」
「次から、触らせるなよ」
「ん…わかった……」
抱えていた足をおろして自身を抜くとずるずると脱力したように抱きつきながら、俺の言葉にツナは意識が怪しくなりながらも頷いたのだった。
そのあと、俺は意識を失ったツナを風呂に連れていき綺麗に身体を洗って清めた後布団に寝かせた。
最近よく眠れていないから良い機会だと俺は寝顔を見つめていた。
ツナの寝不足は、きっと俺にある。
「やりすぎだったら、まだいいんだけどな…」
ここに来てからというもの、ツナは何か自分の居場所を探しているように見える時があった。元より、ここはツナの居場所なのだが、まだ自分の落ちつけるところがわからないのだろう。
それもそのはずだ、娼妓でいた時間がながかったため、家族でいる(というより、少人数でいる)ことに慣れないのだ。
そう思うと、ここに連れてきたのは少し早すぎたのかもしれないとさえ思ってしまうのだ。
泣きはらして赤くなった瞼をそっと撫でてキスをしたところで、家の呼び鈴が鳴った。
俺は、立ちあがり玄関に向かう。
「…誰かと思えば、お前かディーノ」
「よお、恭弥から手紙預かっててな。ツナはいるか?」
「いるに決まってんだろ、でも今寝てる」
「そか、でも直接渡せって言われてんだ。待っててもいいか?」
雲雀の言うことは絶対と公言するくらいに惚れている男はそういうなり中に入ってきた。俺は仕方なくツナが寝ている隣の部屋にディーノを招き入れたのだ。
ここなら襖一つで様子を見に行ける。
変な輩がツナに目を付けないとも限らない。ここは手負いとはいえ、そう奴らが群がる場所に変わりはないのだから。
「どうだ?ツナとの生活は」
「…唐突になんだ」
「いや、俺もそろそろ恭弥を自分のものにしたくてなぁ…でも、なかなか受けてくれねぇんだ」
あいつ抱かれるのは嫌なはずなのにと呟くディーノも何か雲雀に思うところがあるのだろう。
思い悩む同士、無言の時が流れた。
そして、そんな空気を立ちきったのは寝ていたはずのツナだった。
突然後ろの襖が開かれ眠気まなこのツナが立っていたのだ。
「りぼーん、いた…」
「どこにも行くわけねぇだろ?」
「ん……」
言いながらツナは俺が座っているのをみればまだ眠いのか膝に頭をあずけてそのまま腰に抱きついてきた。
俺は猫のような仕草に髪を優しく梳いてやる。
居住まいをただせばそのまま眠ろうとしているので、慌ててディーノに目を向ける。
「ツナ、恭弥から手紙だ。預かってきた」
「ん?ディーノさ、ま…?」
「いや、ディーノで良いから」
ほらと手紙を出されて受け取っている。
ディーノにも気づかない位寝ボケているのか様が抜けていない。
朦朧としながらもかさかさと開けて読み始めている。
覗き込むとツナを心配する言葉が書かれていてやっぱりこいつは皆に思われているのだなと感じる。人買いの場所であってもあそこは、ツナにとっては故郷なのだから。
暫く読んでいたがそっと手紙をしまってそれを抱きしめたまま目を閉じた。
「なんだ、返事は良いのか?」
「ディーノさん、またくるって書いてあったからゆっくり返事書く」
「あはは、また俺は遣いか。いいけどな、会う口実ができるから」
「お前……」
ディーノに冷めた視線を向けるも、ツナは満足そうな顔をして眠り始めた。
心なしか、寝顔が安らかに見える。この手紙で、少しはツナの気が落ちついただろうか。
「じゃあ、俺は帰るな?」
「おう、帰れ」
「ったく、幸せもんだな、お前らは」
俺の悩みなんか知らないと言わんばかりに、それじゃあと皮肉を言い捨ててディーノは帰って行った。
再び二人きりになった部屋で、俺はツナの寝顔を見つめていた。
「ツナ…あいしてる…」
囁いて浴衣では寒いだろうと俺の上着を身体にかけてやる。
ぎゅぅとしがみついてくるその手を離したくない。
ずっと守って、大事にして、閉じ込めて、俺だけに溺れればいい。
少しずつ、お前にこの場所がすべてなんだと思わせてやる。
時間はこれからも、沢山あるのだから…。
悩みからも苦しみからも、お前を丸ごと護ってやる…。
END
For唯様へ