パロ | ナノ

 声が届かない…

『…ということだが、いいか?』
「へ?う、うん…大丈夫」

目の前には俺のいつも作業している画面が広がり、俺の耳にはリボーンの声が聞こえてきていた。
けれど、次はどんなメロディーで作って行こうかと一瞬悩んだ隙にリボーンの話しは終わってしまったようだ。
同意を求められて、聞いてなかった…なんて言えるはずもなく俺は誤魔化すように頷いた。
そうして、少し考えた後、そうか…と言われてその日は通話を終了した。
なんだったのか、また改めて聞いてみればいいと、そんな安直なことを考えていたのだが、その日以降、リボーンからの連絡は一切途絶えることとなった。





俺がそれに気づいたのは、一週間経ったある日のことだった。
課題に追われ、次の曲の編集作業を続けていてすっかりと忘れていたのだ。
それは特別おかしいことではなかった。
リボーンだって大学が忙しければ平気で連絡してこないし、歌っている間も詰まった時ぐらいしかメールをしてこない。
それは俺達にとって、普通のことだったのだ。
それに疑問を持ったのは、リボーンが生放送をしていなかったということだ。
俺と連絡は経っても、週一でやる生放送は必ずと言っていいほど続けていた。
時間があれば毎日のようにやるが、忙しいときは週一必ず生放送はやっていた。
それが、今週なかったのだ。俺は声が聞けなくても、ここで聞ければいいやと思っていただけに不安になる。

「なんでリボーンいないの?」

なにか残していないのかとツイッターやコミュニティ、掲示板にブログ、書き込みそうなところは全部調べてみたがそんなことは一言も書かれていなかった。
なんでいないんだろう…。
俺は生放送を始めた、リスナーに聞けば何かわかるかもしれない…なんて、安易な考えだった。

「皆、リボーンどこに行ったか知らない?生放送もやってないよね?」

ツナは知らないのか?、俺もしんらん、リボーンいないとかいつものことじゃね?、とコメントが流れてきてそれもそうかと、納得しかけてそうじゃないと説明した。
この放送はあとで消すことになるだろうなと、それだけを覚悟でリボーンと色々連絡とっていて、予定は結構把握していること、など話して、改めてそれが一切なくて不安だとそういえば、コメントは心配なものへと変わる。
リアルとか忙しいのかも…、こっちにこれないときもあるよ〜、あんまり束縛しちゃだめだよ、と流れて一部では美味しいです、と流れてきたが俺は頭を抱えたくなった。
だってそれって、誰にも内緒で姿をくらましたってことじゃん。
とりあえず、この生放送はタイムシフトを残さない旨を伝えて、終了ボタンを押した。

「はぁ…どこに行ったんだよ…」

呟くも、まだ一週間だ。
一週間相手の声を聞けないだけで不安に思うなんて、それはどうなんだと自分に言い聞かせる。
最近、リボーンにべったりだった気がする。
少し、距離を置いてみるのもいいかもしれない…というか、もうすでに折れそうなのだが…。
でも、こうなってしまったものは仕方がないのだ、リボーンからの連絡があるまでは…も少しだけ待ってみよう。そう思うことで自分を納得させたのだった。




そう思った日から、俺は課題がひと段落したということもあって曲を作りまくっていた。
リボーンのことを考えると寂しくなるからそれをどこかにやりたくて、全て曲を作ることに注いだ。

「…できた…」

この前はアップテンポな曲だったからとバラードを作った。
そうしていつもの手順でアップする。
イラストは骸にお願いして手掛けてもらっている、最近ずっと頼みっぱなしで少し疲れたと言っていたから他の人にお願いすることになってしまうかもしれない…。
しっかりとアップされているかと確認のために俺は曲を聞きに行くともうすでにコメントが書き込まれていた。
そこにはなんだか寂しそう、とか、感動するとか書かれていて、自分はそこまで感情的に作ったものじゃないのにと思って聞いてみるとリボーンの曲になってしまっていた。
これでは、俺がすごくリボーンに恋焦がれているみたいだ。

「なんで、忘れたいのに…」

俺のどこからmおリボーンが消えない。
少しの間だけ、リボーンを忘れて自分のしたいようにしようとしているのに…どうしてここまでリボーンばかりなのだろう。
こんなに、切なくて…寂しくて、触れてほしいなんて思うのは…初めてだ…。
もう、今日が終わればリボーンが俺と連絡をとらなくなって二週間になる。
相変わらずツイッターもブログも全滅、リスナーのリボーンの生放送を聞いていた子ですらも、生きてるよね?と不安を口にするほどだ。
本気で、いなくなってしまっているというのは…考えにくい。
むしろ、俺が聞きながしたあの会話に何かあるのだろうとそれだけを考えていた。

「俺は何を聞けなかったのだろうか…」

別れ?いや、それならもう少し改まってくれると思う、テストとかそういう関係?それぐらいだったら、二週間もそもそも休まない。
ネットにつなげない状況ってなんだ…リアル…彼女ができた…とか。
考えた途端、手の甲にぽたりと落ちてきたものに俺は驚く。

「わっ…泣いてる…」

ぽたぽたと流れるそれに俺は慌てて涙を拭うのに止まることを知らなかった。
そのうち嗚咽が漏れて、パソコンを見れなくなった。

「ふぅっ…なんで、いないんだよぉ…おれ、なにかした?リボーン怒らせること…しちゃったのかよ…」

ごめんなさいと一人部屋で泣き崩れて泣き続けていた。
一時間ほど泣いた時だった、ぽんっと音がして俺は顔をあげる。
触らなかったせいでスクリーンせいバーになっているそれをそうさして、トップ画面を表示した。
すると、リボーンがスカイプにあがった音だった。
俺は慌ててイヤホンをさすとリボーンへと着信をかけた。

『もしもし?』
「もしもしっ、リボーンどこにいたんだよ…おれ、すっごい心配して…」
『は?』
「だって、リボーン何も言わずに消えるんだもん」

ツイッターにも生放送もいなくて心配したと、また泣きそうになりながらも何とか声に出して主張した。
すると、はぁとリボーンの方からため息が聞こえた。
なんだと耳を澄ませていると、ツナ、と少し怒った声が聞こえる。

「…はい」
『俺は、こうなるまえに二週間ほど留守にすると言っておいた。そして、時間がなくなるかもしれないから、お前だけは知っていてほしい…と』
「え…?」
『まぁ、返事からしてまともに聞かれている気はしなかったけどな』

まさか、そこまで真剣に考えていたのかと笑われると同時に聞けよとつけ足して、リボーンは話してくれた。
リボーンは大学の旅行で海外に行くことになっていたらしい、けれど、バタバタしていて結局言うのが前日になってしまい、俺には生放送でリスナーにも伝えてほしいことと、掲示板にも書き込んでほしいとお願いしていたらしい。
そして、返事を聞けば大丈夫だと言ってもらったのでリボーンは次の日旅立ったのだという。
…ということは、俺はリボーンのコミュニティでリボーンがいないことと、掲示板にリボーンは今情事で出かけていると、それを伝えなければならなかったのに、なんてことをしてしまったのだろうか…。

「ごめんなさい…」
『掲示板見た瞬間、予想ついたから大丈夫だ。それに、二週間もなにもなかったら寂しかっただろ?』

優しい声でいわれて俺は泣きそうな声でうん、と頷いた。
だって本当に、俺はリボーンだけになってしまって…一人じゃ生きていけないかもしれない。

『今すぐに会いに行ってやりたいが、もう終電は終わったしな…』
「いいよ、今すごく情けない顔してるから…」

むしろ来てくれない方がいいと言ったのに。なら今度改めて会いに行くと意地悪く言われてしまった。
けれども、俺がアップした曲を早速聞いているらしくリボーンはこんなにたくさん、と喜んでいた。

『ツナの気持ちが伝わってくる…俺も、ツナのことばかり考えてどうしようもなかったぞ。たとえ、どこにいても』
「リボーン…」
『だから、俺は前の日とは言え伝えたんだ。次からはちゃんと俺の話しを聞いておけよ』
「うん、ごめんね…ありがとう」

リボーンの言葉はちゃんと聞くからと約束して、その日の通話は終わりになった。
けれども、確実に俺の心は満たされていて、安堵にため息が漏れた。

「よかった…よかった、リボーンに嫌われてなくて…」

リボーンに見放されてしまったら本当にどうにかなってしまいそうだと苦笑を浮かべて、思い知ったのだった…。
今度からはあなたの声、聞き逃さないから。
だから、嫌わないで…だから、俺のことをずっと、考えていてね…。




END

加納 琉姫様へ
歌い手×ボカロPパロの切甘でした。
もしかして、ツナリボ希望だったのでしょうか。
ボカロP×歌い手と表記されていたので、間違いだったのならいいのですが、ツナリボ希望の人だったらすみませんでした。
完璧に読み間違えていたんですけど、間違えてたのなら一報ください。
ただちに書き直させてもらいますのでっ。

素敵なリクエスト有難うございましたっ。






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