パロ | ナノ

 真実を知りたくて

最近気になることがある。
ツナのアップされた動画を眺めて、俺はため息をついた。

「また、同じ絵師か」

ここ最近の動画に使われているイラスト。
名前はムク、と簡素なもの。幻想的でどの曲調のものでもぴったりと当てはめてくるあたり、ツナのことをよく知っているのだと俺は思っている。
よく集まるイラスト投稿サイトや、その他の投稿サイトで検索をかけてみるが一つとして引っかからない。
ツナに聞けばいいのだが、こんな子供みたいな嫉妬心で教えてくれと言うのは少し気が引ける。
そう思って今まで来ていたが、もう知らぬふりもできない。

「気になる…」

こいつは誰なのか…ツナの生放送でも紹介しない位なのだ。
一体どういう繋がりがあってこんなにも沢山のイラストを使っているのだろう。
俺は仕方なく、スカイプに繋いだ。
念のため生放送を確認して開かれてないのを見ると、早速通話ボタンを押す。

『もしもし?リボーン、どうかした?』
「昨日、あげた曲あるだろ」
『ん?あれがなにかあった?』
「いや、何もないが…」

無邪気な声に俺はこんなことを聞いてもいいのかと少し不安になる。
こんなことをして、心の狭い男だと思われないか…。
これまでも、自分の理想をぶちこわすようなことをしてきた自覚があるだけに言い淀む。

『じゃあ、何?』
「…その、あのイラストは…誰が提供してるんだ」

結局促す声に白を切ることはできなくて思いきって聞いてみる。
そしたら、あああれねと何でもない様な声が帰ってきた。
てっきりすごく綺麗だろと言ってくるかと思っていただけに意外な反応だ。

『俺のファンの人?俺が切羽詰まってるといつもあの人に頼んじゃうんだよねぇ』
「そんなに都合がつきやすいのか?」
『うん、っていうか俺のために時間開けてくれる人』

若干辟易したような声でツナは言って、コミュニティあるから教えようか?と聞いてきた。
そいつと交流を深めようと思ってもないため断ろうとして俺ははっと思いとどまった。

「俺だってコミュニティ探して見つからなかったんだぞ?」
『ああ、あれ偽名だから…っていうかハンネのハンネというか…俺のに提供するときはまた違う名前でやってるんだ。探しても見つからないよ』
「なんだそれ」
『そっとしておいてもらいたい人だから、あ、生放送してるや…一緒に見ようよ。どんな人かもすぐにわかるよ』

ツナの誘いに俺はそうだなと頷いた。
百聞は一見にしかず、チャットで送られてきたURLを繋ぐと、そのまま生放送画面へと飛んだ。
絵描き放送をしているらしく画面には線画のイラストがあった。
もうペン入れを済ませてあるのか色をつけ始めていた。
リスナーは少なめだ、絵描き放送自体あまり目だたないものだから同じイラストを描く人間か純粋に絵描き放送が好きできているかの二択ぐらいしかないだろう。
まぁ、絵描き放送などしたことがないから内情はわからないが…。

「こいつか?」
『そう、名前は骸。知ってる人しか知らない俺の準専属イラストレーター』

ツナが言うなり、向こうからカタカタとキーを押す音が聞こえた。
すると、骸と紹介された絵師が気付き『珍しいですね』と声をあげる。
そこでようやく気付いた、そいつが男だということに。

『これでわかってくれた?』
「ああ、水彩画じゃ特定しにくいな」
『それもわざとだよ、女の人が描いたようにもみせることができる…無駄な能力だって言ってるけどね』
『君がここに来るなんて、明日は嵐ですか』

骸が喋り、ツナが返事をする。
やり取りはなんとなく親しい友人を想像させた。
こんなにもネットでの繋がりだけでも仲良くなれるのだと感じて、微笑ましくもなる。

『生意気だろ?これでも二つ年下なんだ』
「そうなのか」
『これでリボーンの悩みは解決した?』
「…ああ」
『よかった』

ツナに嫉妬が見破られていたのを知ると恥ずかしくなってそっけない言葉を吐くが、ツナは心底安堵したような声をだしていた。
なにをそんなに心配されるのだろうと首を傾げる。

「どうかしたのか?」
『んー?』
「俺はそんなに不安を煽ったか?」
『…うん、ちょっと怖くなっちゃった』
「なにがだ?」
『もしかしたら、リボーンはいらないと思っちゃうんじゃないかって。俺はリボーンが大事で、絵師さんや歌い手さんがついてくれてるけれど…でも、一番はリボーンだから…そんなことで嫉妬しないでよ。揺れないでよ』
「ごめん、ツナ」
『いい、俺が我儘なだけなんだ…俺が、一人で怖くなってるだけ』

大丈夫だというツナは少し弱々しくて、俺はそっと骸の生放送を消してツナの声に耳を傾ける。
一人でいるせいだろうか、ツナはとても寂しがり屋だ。
それは最近俺がツナの部屋に行くようになってから知ったこと。
あまり放っておいたり、自分だけが忙しくしていると寂しいと言ってくれるようになった。

「怖くなったら言ってくれればいいんだぞ?ちゃんと俺が慰めるからな」
『すぐにこれないくせに?』
「お呼びとあらば、いってやる」
『そんなことしてほしいわけじゃない』
「知ってる」

ツナはただ俺のことを試したいだけだ。
本当にしてほしいなどとは思ってない。俺の気持ちがちゃんとツナに向いているか知りたいのだ。
可愛いわがままだろう。

「俺は納得した、お前がちゃんと俺を見てくれているってことに。ツナもだろ?」
『うん…』
「なら解決だ、そんな不安そうな声をだすな。俺が行きたくなるだろ」

クスクスと笑って言えば、わかったよとふっきれた声が聞こえた。

「なら、次は昨日アップされた曲を歌ってやる。俺の美声、聞きたいだろ?」
『美声とか、自分で言うの?』
「お前が好きな声だろ?」

わざと声を潜めていってやれば雰囲気が変わったのが伝わってくる。
いっそ、今から会ってくれと言われた方がこちらとしては嬉しいのだが、なかなかそこまでは素直になってくれない。
まぁ、そこまでの我儘を許してしまったら今度こそどうしようもなくなってしまうのはわかっているから無理にとは言わない。
言わないでいいことも、あるのだ。

『そ、そんなこと言っても…ナルシストなのはわからないんだからな』
「ナルシストな男が好きなやつは誰だ?」
『俺だよっ、悪いかっ』
「悪くねぇ、かっこいい告白だ」

言いきった言葉に俺はニヤリと笑って、恥ずかしいこと言わせるなと喚くツナに俺も好きだぞと言ってやる。
向こうから言われたのだから、こちらからもしっかりと言ってやらなければ。

「俺も、ツナが好きだぞ」
『リボーン…』
「不安になるなら何度でも言ってやる、何度でも示してやる」
『リボーン、かっこいいね…』

惚れるだろとおどけて言えば、ツナは笑ってくれた。
これで大丈夫だろうと安心して、今回ツナの作った曲を流す。

『それ、俺の』
「ああ、早く覚えなきゃな。一週間以内にはアップするぞ」
『ホント、リボーンって俺の曲好きだよね』
「お前もな」

お互いにお互いを好きすぎると笑って、スカイプを切った。
どちらにしろ生放送で会うことはできるし、こうして話すこともできる。
それでも足りなければ、会えばいい。
俺達は遠い様でいて案外近い場所にいれている。

「ったく、少しは俺のことも信じてみろ」

一人自嘲気味に呟いてさっき教えてもらった骸のコミュニティに行けばまた生放送をしていた。
少し覗いてみるかと中に入れば、さっきより色鮮やかな画面が広がっていた。
これも一つの才能かと笑って、綺麗に整えられていくイラストを眺めていたのだった。



END

菜緒様へ
『ずっと想われていたい』より、動画のイラストにヤキモチを妬くリボーン。
ということで書いてみました。ツナが描いたとは描いてなかったので、描いていたのは骸と言うことにしてしまいましたが、よろしかったでしょうか?
果てしなくリクエスト内容を無視した形に出来上がってしまって自分自身戸惑ってます←
もし、ツナが描いたことにしてくれということであれば書き直しますので遠慮なくどうぞ。
このたびはリクエスト有難うございましたっ。






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