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 英語の意味は正しく理解しましょう


幼少期、からかって遊んでたやつが高校生になって再び目の前に現れた。
俺のことは全く覚えていないようで、むしろその方が好都合だった。
懐いてくるままに構っていたせいか、あのときの綱吉はというと俺が離れるだけで泣くほどだったのだがそれから距離を置いた。
子供のことだからすぐに忘れるだろう…と。
でも、母親は違った。俺のことを覚えていたというか、俺が大学生になったとたん勉強を教えてやってほしいと申し訳なさそうに街で会ったとき言われたのだ。
それまで俺だって高校生で主婦が出歩く時間帯には外を歩けなかったので会うこともなかったのだが、大学というのは時間が不規則になりがちだ。
昼間外を出歩いていたら、久しぶりと話かけられついでに綱吉の成績についても教えてもらった。
酷いもので、社交辞令のつもりだったのだろうが、俺はまた綱吉に近づけると少し喜んだのは内緒だ。
久しぶりに会ってみれば案の定俺のことをすっかり忘れていた綱吉。
でも、それでよかった。下手におぼえられていて嫌悪を見せつけられていたら、あんなに楽しく家庭教師もできなかっただろう。
教師を目指しているのかと言い当てられた時には少し驚かされたが、そういえばあいつは昔から勘がよかったと思い出したら懐かしさを呼び起こした。
それと同時にどうして俺だけがあの時の言葉を覚えているのだろうかと理不尽さに綱吉を煽るようなことまでいってしまった。
これでいいと思えていたのに、どうしてそうやって自分の黒歴史を呼び起こさせるようなことをいってしまったのかといまでも少し後悔をしている。
俺にとってもあれは黒歴史だ。綱吉のあの言葉で自分の気持ちを自覚してしまったんだから。
むしろ、俺にはそういう性癖でもあるかと思って綱吉から身をひいたのもある。
再会して、それが単なる年下好きというわけではなく綱吉本人が好きなのだと確信してしまったというおまけつきだが。

「よし、行くか」

時計を見るとそろそろ家庭教師の時間だと立ち上がる。
俺の家から綱吉の家まで徒歩五分とかからない。
綱吉の学校が終わると同時に家を出るとちょうどいいのだ。
走って帰ってくるようになって脚力もついたらしく最近では俺が座ると同時だから少し早くなったようだ。

「あれも、集中力高めるためにしてることだしな。一石二鳥か」

頭の回転を上げるには少し運動をした方がいい、綱吉には内緒で走ってくるように言ったが案の定あの単純な頭には有効だったようだ。
中間テストも点数が上がってたし、このままいけば合格圏内に入ることはできるだろう。
何より、綱吉が勉強をする気になっていることが成績アップの根元であることは確かだ。
勉強することはもちろんだが、やりたいと思う気持ち、興味があってより集中力と記憶力が上がる。
少しずつだが、成績が上がる度に褒めることでやる気につながる。もっとひねくれていたらこの勉強法はできなかっただろうが、綱吉は昔のまま素直で正直だ。

「なにも、変わってない」

母親の教育がよかったのは目に見えてだ。
聞く話によれば学校でもドジなりに友達もいるようだし何不自由もないのだろう。
それと同時にそんな綱吉の生活にこれ以上踏み込んではいけないという気持ちもある。
大人しく三学期になったら俺は俺で大学の方を優先しなきゃならない。
綱吉には二学期が終わるのを区切りといったがそれ以上一緒にいることはないだろう。
それに、もし思い出しでもしたらそれより先にこれを終えることだってある。
あんなことを思い出してしまえば、近くに居たいと思うわけがない。
沢田家のチャイムを押すと母親が出迎えてくれる。

「今日もよろしくね、リボーンくん」
「こっちこそだぞママン」

いつものように玄関に上がり用意していたのかお茶を持って綱吉の部屋に案内される。
少しのお菓子を置いてもう少しで帰ってくると思うからと部屋を出て行った。
それと同時にドアの開かれる音。
駆け上がってくる綱吉の足音に少しの違和感を感じた。

「はぁ、はぁ…疲れた」
「お帰りだぞ。それと早く教科書を開け」
「横暴―」

いつも通りのやり取りをやりつつ綱吉は俺の前に座ると鞄を漁り今日の宿題と俺の渡した問題を机の中から取り出した。
俺が作った問題でも少しは成績に貢献できるかと渡してやっているが、このごろ正解率も上がってるし上々といえるだろう。
いつものようにテーブルに教科書とノートを広げて勉強を始めるのを俺は回答された問題に目を通しながら見ていた。
窓の外から子供の声が聞こえる。綱吉の家は静かだ。俺の家は無音だった。
防音が聞いているから窓を閉めてしまうと何も聞こえないのがつまらなくてあえて窓を開けて過ごしていた時もある。

「最近は九割正解だな。なかなかだぞ」
「それ褒めてんの?」
「ほめてるだろ」

点数をつけ終えた問題を綱吉に返してやる。
不満を訴えながらも満足げな顔は隠せてない。
可愛い奴だなと思ってすぐに考えを改める。こういう感情は要らないものなのだ。
友人関係も良好、そのうち彼女だってできるはず。
まぁ、この時期から彼女を作られたたまったものではないが…。
俺は綱吉の家に置いてある漫画を手に取り開いて読み始めた。

「あのさ、リボーン」
「なんだ?」

遠慮がちに声をかけられて、また少し違和感。
顔を向ければ、やっぱいいと首を振る。

「わからないところがあるなら素直に言っておけよ」
「あ、それは大丈夫」

綱吉が何を言いたいのかわからないが、勉強の事なら素直になれよといえば首を振る。
どういうことなのかわからなかったが、追及しても口を開くわけでもないので俺は再び漫画に視線を落とした。
何か言いたいことがあるのは分かったが、それがなんなのかはよくわからなかった。
どうせ碌でもないことだろうとあきらめて、綱吉が宿題が終わったと声をかけるのを待った。



「リボーン、終わったけど」
「じゃあ今日の奴だ」

勉強の終わった合図を聞いて作った問題を渡した。
そして俺は綱吉から教科書を取り上げ、そこから問題を抜粋して新しい問題を作っていく。
綱吉のレベルに合わせるなら教科書を直接見た方が速いのだ。
それに、高校の問題ならここから出すのは当たり前だからだ。
こうして少しずつこいつに勉強する能力をつけさせる。そうすれば、この習慣が身について残り一年でも知識を身に着けることができるだろう。

「…リボーン」
「なんだ、さっきから」

綱吉はまた俺を呼んだ。
いい加減にしろと顔を上げれば、さっきとは違い俺をまっすぐに見つめる瞳。
俺は小さく息を飲んだ。そうして、俺は気づいた。
こいつ、思い出したのか…?
綱吉の俺を見る目が少し変わった…ような気がするのだ。
遊びでからかい好き画のかもしれない。綱吉の記憶を刺激することを俺は無意識に言っていたのかもしれない。

「俺、思い出した。あと、これ」

綱吉が恥ずかしそうに机の中から取り出して見せてきたものに俺は頭を抱えたくなった。
綱吉が俺の頬にキスをしている、そんなものが残っていたなんて…。

「あのさ、嫌だったよな…?それに家庭教師も…」
「…いやだったら、引き受けてねぇだろ」

遠慮がちな綱吉に、俺はするりと言葉にしていた。
素直な綱吉に身体が逆らえない。

「じゃあ、俺は思い出してもよかったのか?俺はリボーンが分からないよ」

からかっているだけじゃないというのは既に伝わってしまっていたらしい。
そうだ、わからないようにしていた。
俺の気持ちだって、なにもかも、誤魔化し続けてきた。
でも、ここで一つ線を引いておくのも大切なんじゃないだろうか。あと残り一ヶ月ほど…選択はこいつに全部委ねる。

「別に思い出さないでくれなんて言ってないだろ?」
「リボーンは、俺の事どう思ってるんだよ?」
「ライクかラブで言えば、ラブの方だ」


続く





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