パロ | ナノ

 止まれない衝動

正月からこっちずっとお互いに忙しくて、生放送にも顔を出すこともできなかった。
俺の方はようやく落ち着いてきて久しぶりにパソコンをつけた。
リボーンは少し前から生放送をしていたのだが、俺はずっといけず終いだったのだ。
俺はさっそく動画サイトに接続したら、コミュニティの掲示板が更新されていて首を傾げる。
リボーンは動画をアップした時ぐらいしか記事を書かないのだ。
コミュニティをクリックしたら、そこに表示されたのはリボーンが今風邪で生放送ができないというものだった。
時間を見れば今日のもの。
俺は時計を確認して、ついでに学校の予定も調べた。

「よし…」

俺は財布とケータイを鞄に入れて戸締りを確認すると部屋を出た。
リボーンの部屋に行くつもりで駅に行き、何も食べていなかったらまずいなとスーパーに寄ってフルーツ缶をかごに入れた。

「あとは、ご飯…卵…シイタケ、タマネギ…ニンジン…少し鶏肉…」

中身を確認してこんなものかとため息をつくとレジに。
スーパーを出ると次は薬屋にはいる、総合風邪薬と冷えぴたを買ってでるとリボーンの住むマンションへと向かった。





「くそっ…」

頭がだるい…関節もところどころ痛みを訴えている。
熱があるのだろう、咳もたびたび出て何か食べないと、と思うのに身体が動かない。
とりあえず、綱吉に知らせるためにコミュニティの掲示板に書いておいたが、あいつは目を通したのだろうか。
ここのところずっと音沙汰もなかったが、ツナも体調を崩していた場合あれは見られないだろうな。
直ったら消しておくかと目を閉じて寝ようと思った時だった。
突然インターフォンが聞こえて、通販でも頼んだか?と不思議に思いながら身体を起こして玄関へと向かった。
だるい身体を引きずって鍵を開ければドアが開いた。

「きちゃった」
「…は?」

そこにはにっこりと笑ったツナがいた。
幻覚か…とうとう俺にも末期症状が…。

「リボーン?大丈夫?なんかすごく顔赤いけど…」

ツナの手が伸ばされて冷たい手が俺の額に当てられる。
その冷たさが気持ちいいなと目を閉じかけて慌てて開けた。

「はあっ!?なんでお前がここに居るんだよ」
「あ、やっと気付いた」

会いたかったと抱きついてくるツナを引きはがした。
今の俺に抱きつくなんて風邪がうつるだろ。

「何してんだ、移るから帰れ」
「帰らないよ、ほら…薬とかもってきたから」

俺の静止も聞かずツナはどんどん中へと入って行く。
訳がわからない、なんでここにツナがいる。いやこの前ここを教えたが…。
あれだけ外に出るのヤダ、俺は引きこもりなんだよおおぉっ、とイベントに行くにも一苦労だったツナが易々となんでここにいるのか。

「何しに来たんだ?」
「看病、一人だと辛いだろ?案の定なにも食べてないみたいだし、俺がご飯作るからリボーンは寝てて、普通に話せてるってことは喉は大丈夫そう…ああ、加湿器はしっかりやってるんだな」

ツナは言いながらスーパーの袋からなにやらガサガサといろんなものをテーブルに並べている。
俺が立っていると、リボーンはベッドと腕を引かれて再びベッドへと戻ると額に冷たいものがくっつけられた。

「冷えぴた、熱の頼もしい味方です。はい、寝てー」
「おい、本当になんでここにいるんだ」
「だから、リボーンが一人じゃ寂しいだろうなって…さっき見てきた。大丈夫俺泊る気だから」
「そういうお前だって、風邪なんてひけねぇだろうが」
「俺は実家で栄養たっぷり取ってきたから大丈夫、移らないよ。それに二、三日なら付き合える」

ベッドに寝かされ頬を撫でてくる。
そうして、布団をひきあげてしっかり肩までかけて、優しく笑みを浮かべた。

「会いたかったんだ、リボーンが動けなくて一緒にいれるって思った。最低だろ?」
「つ…」
「リボーンはちゃんと寝て、すぐに作るから」

言いかけた言葉を遮るように言われて、俺は何も言えなくなる。
一つため息を吐けば、また笑ってそっと離れた。
俺の部屋自体そう広いものでないためキッチンに立つツナの背中が見える。
なにやら買ってきたものを切っているようだ。
手際のいい動きに同じ一人暮らししているのに大きな差があるなと苦笑が浮かぶ。
俺はと言えばいつも作業の合間に食べれればいいという感じなため、自分で作ることはまずない。
それに引き換えツナはよく作っているらしいことをよくツイッターで呟いている。
トントンとこぎみ良い音が聞こえてきて、なんだかそんな生活の一部が安堵を伝えてくる。
一人じゃないんだと感じて、瞼が重くなる。





ふわっと鼻腔をくすぐる美味しそうな匂いに自然と目が開いた。
そこには俺の顔を覗き込むツナの顔があって、じっと見つめる。

「キスしたい…」
「…だめだ。どうしたんだ?」
「ご飯できたけど…食べれそう?」

ツナの言葉を一蹴して何をみているんだと聞いてみたら、さっきからの美味しそうな匂いはそこからだったらしい。
身体をおこすと玉子雑炊があった。

「お粥の作り方わからなくて、これでも食べれそう?」
「ああ、雑炊と同じようなもんだろ…食う」
「食べさせてあげようか?」
「してくれるのか?」

ツナはからかいの気持ちで言ったのだろう、俺がにやりと笑って言い返すとぱちくりと目を瞬かせた。

「そう切り変えすか…あざといな…」
「どこがだ」

ツナはそのまま盆を渡してくるかと思ったのだが、スプーンを手に持つとふーふーと冷ましている。
俺は少し恥ずかしくなり、ついツナの手から取ろうと手を伸ばした。

「食べさせてほしいんだろ」
「いい、自分で食う」
「なに遠慮してるんだよ。いいじゃん、この際だからさせてよ」
「しなくていい、ツナ…止めろ」

どうしても止めてほしくて耳元で囁いたら途端力が抜けた。
その手からそっと盆をとりあげ、自分で食べ始める。

「もう、俺がしようと思ったのに…」
「自分で食える」
「変なところで照れ屋なんだから…」

つまらないとその場を立ってキッチンへと戻ってしまった。
お互い久しぶり過ぎてどうやって接していいかわからなくなってしまっているのだ。
それに俺は風邪をひいていて、ツナに移したら悪いと思うのにアイツは手加減を知らない。
しょうがないなと思いながら雑炊を一口食べると塩辛くなく、薄すぎない丁度いい味。美味しいと思うと同時に心がほっこりと温かくなるようだ。

「フルーツとか食べれそう?桃缶とかかってきたんだけど」
「今日ここに居るんだろ?」
「…まぁ、いるつもり」
「なら、あとでいい」
「そっか、じゃあ薬」

水と薬をもって戻ってきたツナに手を伸ばした。
そういえばさっきからツナの行動に驚いてばかりで重要なことを言い忘れていたのだ。
腰を引き寄せ、ぎゅっと抱きしめた。

「どうしたの、リボーン?」
「ありがとな、来てくれて」
「…うん、早く元気になってね」

嬉しそうな笑顔を見て、自分がこんな身体なのを呪った。
ツナがここに居て、俺がこんなんじゃ何もできない。
いや、そもそも俺が風邪をひかなかったらツナはここにこなかったのだから呪うのははたしてどちらだ…。

「薬…飲ませてくれるか?」
「キスしていいの?」
「これだけだ」

口移しとかこつけてキスをする口実にする。
相手に触れたいのは俺も同じだ、風邪がうつったら困るだろう。
一回だけとお互いに確認して、ツナは薬を口に含み水と一緒に口移してくる。
薬を飲み、けれど離れがたくて舌を伸ばした。
俺の熱い舌に絡まってくるツナの冷たい舌、夢中になっているとトントンと肩を叩かれる。

「っ…は、やり過ぎた」
「もう…リボーンがっつきすぎ…」

こてんと額を肩にあててくるツナの身体を抱きしめた。
くそ、と心の中で毒づく。
こんなに良いシチュエーションで触れられないなんて。

「寝るか、さっさと熱下げるぞ」
「うん、俺手握っててあげようか?」

治ってからだというのはわかっていて、名残惜しいが離れれば俺はベッドに寝転ぶ。
ツナは傍に居たいらしく近くにあった座イスを持ってくるとそれにちょこんと座る。

「なら、頼む…ああ、あと…」
「ん?何?」
「唄えよ…」
「えっ…なんで、えっ!?」

目を閉じていった言葉に戸惑っているらしい気配が伝わってくる。
その反応すら可愛いなと思いながら、もう一度唄えと言った。
ツナは俺の歌声がいいとか言うが、俺だってツナの声が好きなんだ。
たまには特権で聞かせてくれてもいい気がする。

「お前の歌声聞いたら…よく眠れる気がする」
「そんなこじつけ…」
「つーな」

わざと甘い声を出せば、うーんうーんと悩んだ後、渋々わかったよと言ってくれた。
握ってくる手をぎゅっと握って唄えと促した。
すると、俺とは違う少し高めのキーで歌い始めた。
同じ歌でもこうも印象がかわるものなんだなと感じながらも心地よい眠りにいざなわれる。
次に目覚めたときには少しでも体調が良くなってますようにと祈りながら、俺は眠ったのだった。





しっかり眠ったのを確認して、俺はリボーンの顔を覗き込んだ、
良く眠っている、リボーンが風邪じゃなかったらもっと甘えれた気がするのに。
けれど、リボーンが風邪だったから俺はここにきたわけで…。

「もう、早く良くなってね」

少しだけいつもより甘えたがりなリボーンもかわいくて、ついくせになりそうだと苦笑を浮かべた。
でも、俺がまず思うのはよくなったらもっと甘やかしてもらおう、とそれだけだ。
握った手の甲にちゅっとキスをおくりながらリボーンの寝顔を見つめていた。






END

みら様へ
111111ヒットおめでとうございますっ。
そしてリクエスト有難うございました、ボカロP×歌い手パロの続編又は番外編。
で、今回は風邪ネタにしてみました。ありがち過ぎてすみません。
気に入らなかったら書き直しますのでいつでもいってくださって構いませんです、はい。
このパロ気に入ってもらえて書いてる側としてもとても嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。






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