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 俺の感情



男なんてと思っていたのは、結局ただの偏見だったらしい。
パソコンをいつものごとく忙しそうにつつきながら頭では場違いなことを考えていた。
といっても、まだ身体の関係すらもない状態だが。
自分ではおっかなびっくりな状態でツナの身体に触れたのだが、案外それを受け入れられている自分がいて、今でも信じられないぐらいだ。
ツナとの関係はあれから細々と続いていた。
恋人、というだけあってあった時には食事をし、たまに少し外を散歩してから近場のホテルでひと時を過ごした。
抱いてやるといったのに、なんでかタイミングを逃しまくり一ヶ月経とうというのにまだその一線を越えてはいない。
その理由の大きなところに、ツナをイかせたあとすぐに寝てしまうのがある、
会うときはいつも隈を作り、眠そうにしていることが大半なため出して疲れたら寝てしまうのは当たりまえだ。
これではしたくてもできないわけだが、本人はどうにもコントロールできないらしく朝起きるときょとっとした目で俺を見ていることが多い。
その顔にも何だか癒されてしまい、結局それで俺も満足しているために強制的に乗り越えようとは思っていないのも一つの要因だろう。

「まぁ、結局あいつの恋人ができるまでだからな」

夜な夜な出歩いて性欲を発散させる男を捜し歩くのなら、本気でこいつだと決めた男を見つけてほしいと思っている。
ただ、一緒にいる時間が長くなればなるほど、なんとなく自分の中に情のようなものが湧いてきて、できることなら早く決着をつけてもらいたいとも思っている。

「リボーン、こっちの資料も頼む」
「ああ…って、こんなのが上にとおると思ってるのか?」
「は?いつもこれで通してたけど?」

渡された資料を見て、青筋が浮かぶようだった。
同僚の当然のような言い回しに、この会社はどうなってるんだと仕方なくその資料を受け取り入力していく。
毎日こんなことの繰り返しだ。
しかも、今の時期忙しくなってきてツナと会うこともできなくなってきていた。
忙しくなる、とメールしてからツナからはわかったといういつものそっけない返信だけで、一週間は経過している気がした。
いつも三日に一度会っていたのがこれだけ放っておけば、誰かほかの奴を見つけているかもしれないという不安も芽生えたがそれはそれで、いい傾向じゃないかと自分を抑えこんだ。

「ったく…」

チッと舌打ちして、何にイラついたのか自分でもわからなかった。
ツナの仕事は飲食店で働いているのだと前に教えてもらった。
生憎俺の会社からは距離があり、昼休みに足を伸ばすこともできない。
働いている姿をみたいなと思ったが、それもできずつまらない思いをしたのだ。

「今日は早く終わらせて帰る…時間が合えば、ツナと会うのもいいな」

最近寝不足気味で珈琲を飲み下しながら、小さくつぶやいた。
そうやって自分に言い聞かせれば、少しでも早く終わりそうだなと感じて。




自分の宣言通り、その日は少し遅くなったが帰れることとなった。
まぁ、残っている仕事もあるため明日も目の疲れと格闘しなければならないのだが、仕事が終わってしまえばそんなものは頭の片隅に追いやった。

「チッ、あいつは仕事か」

ツナに連絡を取ろうと思ったが、さっきから何度かけても出る様子はなく、忙しいならあきらめた方がいいな、と思った矢先のことだった。
俺の目の前に、待ちをしているツナがいた。
いつもの場所で、前と何ら変わりなく、ほかの男に声をかけられて嬉しそうにしている、
少し隈が見えるその顔はいつものツナで、男と腕を組んで近くのホテルへと流れるようにはいっていった。
そりゃ、そういう奴らは何度言っても聞きはしない。
煙草を愛用している奴に今すぐ止めろといってもできないように、セックスホリックでもあるツナに一週間の時間は長すぎたようだ。

「俺とじゃ、満足できねぇのか」

いや、ほかの男と決定的に違うものが俺とツナの間にはあった。
それを越えたら、ほかの男と同等になれるのではないのだろうか。
自分の湧き出る欲望に歯止めが利かなくなっていた。
その日はそれ以上ツナに連絡することなく、深夜遅くに電話出れなくてごめんというメールが一通着ただけだった。
朝になり、俺は今日会おうとメールを送り返した。
いつものように出勤し、昨日の続きをしていると次のメールが入った。
そこには承諾の言葉と、昨日無視をしてしまったから今日食事をおごるという言葉が続けられていて、それは要らないとすぐに返していた。
食事よりお前がほしいと思った。
変わらない何かを欲するように、俺は乱れそうになる呼吸を整える。
まだ、だ。
仕事が終わるまでは、平静を装わなければ。

長いように思えた仕事を終えると、待ち合わせた場所へと向かった。
すでにツナはついていて、俺を見つけるなり嬉しそうに手を振っている。
珍しくツナの目には隈が見当たらず、きっと昨日寝れたんだろうと考えると抑え込んでいたどろどろとした感情が湧いてくる。

「ご飯、どうする?」
「いらねぇ、今からホテル行くぞ。腹減ってるならコンビニで何か買ってこい」
「えっ、なに…リボーン機嫌悪い?」
「なんでもねぇぞ」

驚くツナに適当に返事をして、おなかはあまり空いていないという言葉を聞くなりホテルに引きずるようにしてはいった。
ベッドに押し倒し、俺は鞄を近くのソファに放りネクタイを解くとツナの服に手をかける。

「え、え…ちょ、リボーンっ!?」
「いいだろ?抱かせろ」
「っ…いい、けど」

服を無理やり脱がせば、驚きながら抵抗してくる。
俺はツナを見つめて、足を開かせた。
間にローションを垂らすと、俺の本気を知ったのかツナが怯えた目をする。
それを無視して、後ろを慣らしていけば俺の手首を掴んできた。

「なんだよ?」
「怒ってるなら、しない」
「…ツナ」
「俺は、セックス好きだけど…そうやって、なげやりにされるのは嫌い。ちゃんとしてくれなきゃ、嫌だ…それとも、それがリボーンの愛し方なの?」

まっすぐ、見つめられて言われてしまえば、さっきまで感じていた苛立ちが静まっていく。
無理やり開こうとした指を抜いて、ちいさく謝る。
怒りに任せて抱いたところでどうなる。

「抱かせてくれ」
「本当に?途中で、嫌になったりしない?」
「しない、気持ち良くさせるようにはする…だから」

いくらツナが今の関係で満足していたとしても、いつか終わりは来るだろう。
いつか、恋人を作ってしまうまでは…俺のものにしていたい。
そこまでおもって、俺はいつの間にかツナが好きだったんだと気付いた。
きっと、ほかの男ではこうならなかっただろう。
どうして、あんなことを言ってしまったのか…。
自分の言葉に後悔してももう遅い。
最初から何もかも間違えていた。

「わかった、じゃあして…優しく、してね」
「ああ…」

掴まれていた腕を解放される。
信じてくれたその言葉に嬉しくなって、優しくキスをした。
優しく肌を撫で、つんと主張する突起を指先でくりくりといじれば身体を揺らめかせる。

「敏感なんだな」
「…ん、いつもは…ちがう」
「ほう?」
「あぁっ、ふぁっ…それ、しちゃ」

自身を握り、扱けば逃げるように身体が離れる。
それを許さず腰を抱き、後ろに指を差し込むと暖かくゆっくりと飲み込んでいく。

「んんっ、ぁっ…」
「いいところ、あるんだろ?」

慣れていないから教えてくれ、と意地悪くいってやるとうるんだ瞳で睨んだ後、ぼそぼそと呟いた。

「あさいとこ…そこ、こするの、と…おく、されるのが」
「こう、か?」
「ひぁぁっ、ふぁっ、いいっ…それ、きもちいっ」

言われた言葉通りにすると反応が変わり、俺は面白くなってツナがいいところをずっと刺激し続けた。

「やぁあ、あぁん…だめ、そんな…しちゃっ…」
「逃げるな」
「だめっ、だめぇ…っ」

あんまりすると怖い、と切れ切れに言われたけれどもう少しだと絆してますますしたら、身体を弓なりに反らし、白濁を放った。
中はぎゅっと締め付けて、緩やかな痙攣を繰り返していた。

「はぁ、はぁ…だから、いったのにぃ」
「きもちよかったのか?」
「これみて、気持ち良くないとおもうんだ?」
「いや、ならよかった」

苛立ち紛れに言われて、俺は笑いながら指を抜いてそこに、自身を宛がった。
入れるぞ、と視線で問えば、こくりと頷くのを見た。
ゆっくりと入れていけば、気持ちよさそうにツナは息を吐き出して、ベッドに手をついている俺の手にすりっとすり寄ってきた。

「リボーン、気持ちいい?」
「ああ、なかなか…癖になりそうだ」
「それなら、よかった」

甘酸っぱく笑ったツナにもう一度キスをして動き出す。
ツナは甘く喘ぎ、絶妙に締め付けるのでさっきまで我慢させられていた俺はすぐにでも言ってしまいそうになり、耐えていると俺の頬に手を伸ばしてきて嬉しそうに笑った。
こっちの経験で言えばこいつは上級者なのかと悔しく思って、激しく抽挿を繰り返した。

「ぁっ、あぁっ、もうだめ…いく、ね…またいっちゃうっ」
「いけよ、俺ももう…限界だ」

最後は案外あっけなく、それでも満足いく結果を収めたのだ。



ツナが眠った後俺はしばらく考えていた。
結局同じ立場になったところで、俺がツナに近づけたのかと思えばそうではなくて、お互いにお互いのパートナーができるまでという約束は変わらない。
時限爆弾つきの関係は、どこか苦しくてどうしてこんな思いに気づいてしまったのだろうかと後悔した。

「少し、距離を置くか」

出逢ったばかり、お互いに忙しい身である上に会わないと決めてしまえばますます俺たちは離れてしまうだろう。
そして、ツナに素敵な相手ができればいい。
そしたら、この自分の思いも振り切れるだろう。
勝手に結論付けて、その日俺はいつも朝まで一緒にいるにもかかわらず日が昇る前にツナをおいてホテルを出た。



続く





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