パロ | ナノ

 必要だって思わせて

久しぶりの一人きりの休み。
何故かリボーンのところに行く回数が増えて、一人でいる時間が少なくなっていたところの日曜休みというのは妙に安心できる。
なんというか、リボーンといるときはいつも心を揺さぶられていつもなんとなく緊張している。
だからか、こうして一人でいるのがやっぱり安心できるのだ。
一緒にいれば慣れるとか言うけれど…そんなのは、無いと思う。

「だって、かっこよすぎるよ…」

あの顔はどうやってみても慣れることはなさそうだ。
頬を両手で包みながらディスプレイとにらめっこ。
寝起きで朝食を食べつつ、最近の動画を眺めていたところだ。
休みの日、どこにもでかけることがなければネットサーフィンをしている。
こうしているだけで時間はすぐになくなってしまうから、注意しなくてはならない。

「あ、リボーンの動画アップされてたんだった」

昨夜遅くにアップしていたのを思い出せば早速と見に行く。
珍しく俺の曲ではない歌。
アレンジしてのものらしくアレンジコロネロという説明書きを見てしまえばちくりと胸を刺す。
最近リボーンの近くに行くようになって、俺はどんどん欲張りになっていく気がする。
いろんなことを許されて、いろんなことを共有させてもらうと心も狭くなる。
確かにコロネロという人はすごく上手くアレンジしてくれる。
俺のアレンジされた曲を聞いても、リボーンが歌いやすいようにを考えられた曲調で、悔しいほどだ…。
今回の歌もすごくかっこいい。
コメントからもかっこいい、似合ってる、コロネロさんアレンジ最高、と沢山の称賛の声が流れている。
俺はその曲をパソコンに入れた。
作業中に何度も聞きたくなるけれど、嫉妬というものは醜い。
きっとすごくいい人なんだ、リボーンと前から仲良くしているみたいだし。

「あー、だめな思考だ」

こんなことを考えているとだんだんそんなことしか考えられなくなる。
そうして、作っていく曲もなんとなく暗いぐるぐるとしたものが出来上がってしまうのだ。
俺はそういう感情に結構振りまわされてしまうことがある。
別に咎める人もいないし、知られているわけじゃないからいいけれど後で自分が聴き直したりすると酷いものだと思うんだ。
あまり見ている気がしなくて、ネットを閉じると作業画面を立ち上げる。
この前やりかけた曲の続きをと途中までできた曲を開いた。
改めて聴き直すと少し音が足りない気がする。
シンプルにするつもりはなくて、もうすこしアップテンポで音もたくさんにしたい。
ギターはあるから、ピアノの音を入れてみようか。
少ないと思ったところにタンッ、タンッ、と入れていく。

「冬だし、しっとりしたのも良いけれどノリがいいやつもいいよね」

そう思いながら続けていくが、サビの辺りまで来て手が止まる。
ケータイが鳴り、リボーンが生放送を始めたことが告げるものだった。
急ぐものでもないし、と覗きに行くために再びネットにつなぐ。

『昨日あげた曲流すぞ』
『リボーン眠いぞ、コラ』
『宣伝なんだから仕事しろ』
「あ、コロネロもいるんだ」

さっき自分が嫉妬した人物の声が聞こえてきたと思えば、つい聴き入ってしまう。
こんな声してたんだとか、なんか本当に親しげだ、とか…もう、ホント、なんなんだよ。
コメントも俺のところと比べ物にならない位流れてきて目を回してしまいそう。

「もう、リスナー全員に嫉妬するって…なんだよ」

こんなに自分が浅ましいものだと初めて知った。
大体、リボーンと出逢うまで他人と必要以上に仲良くした人もいなかった。
いつでも適度な距離を開けて、ただ何にも関心がないふりをして。
静かに、過ごしてきた。
オタクだってばれたくなかったし、理解なんてもってのほか。
一人暮らしをして、曲を作り始めた。
暇をつぶすつもりだった、けれど沢山の人が自分に興味をもってくれて、ネット上だということはわかっていたけれどその距離が心地よかった。
なんでも言い合えるのとはちょっと違う、顔が見えないからこそ自分の好きなものを好きだと言えるその環境がよかった。
そして、リボーンに出逢って…いろんなものが変えられた。
人間の醜い部分を突きつけられた気分だ。
それなのに、離れようなんて思わないのがいけない。
その間にも二人は楽しそうに話をしている。
なんだか、いつも俺が一緒にいるせいか一人締め出された気分で、見ているのが辛くなってくる。

『あ、そうだった、リボーン今度CDだすんだろ、そっちの宣伝は良いのか?』
『ここではしなくていい、つーかお前はそれを言うな』
『なんでだ、コラ』
『あ?なんでもいいだろ』
『俺もツナPに会ってみてぇなぁ…溺愛してんだろ?』
「はぁ!?」

コロネロが言った一言にコメントが荒れた。
すごい量でつい、前が見えないと言ってしまいそうなほど。
今のは爆弾発言だ、っていうかなんでそんなこと…。

『うっせぇな…それは言うなって言っただろうが』
『あ、秘密だったのか…聞いてたらどうするんだ。コラ』
『ツナは…スカイプついてないし、大丈夫だろ』

俺はすかさず確認した。
そう言えば朝起きてから繋げてなかったんだと思えば、ここにいるのもなんだか別の意味でいたたまれない。
リボーンとコロネロは荒らぶるコメントは無視して話を進めているし。

「もー、みてるんですけど…」

ここでちょっとコメントしてみたら、気づくだろうか。
いや、リボーンの場合コメビュつけてない時があるし、知られないかもしれない。
ちょっと悪戯してみたい気がしてきた。

『俺もツナPとお近づきになりたいぜ、コラ』
『何度も言ってんだろうが、近づくなタラシ』
「タラシって…ホント、仲良すぎ…のけ者にするな…と」

一言書くとそのままコメントした。
沢山の流れに混ざって流れるそれに、意外にもいち早く気づいたのはリスナーだった。
ツナさん来てるww、みられてるぞ、コメント隠せ、まじでww、といろんなコメントが流れた。

「わ…リスナーさん見てたのか…っていうか、よくみてるなぁ」
『は?来るわけないだろ、あいつ……げっ!?』
『これがツナP?』
「げって、なにそれ」

すぐに気付いたらしくリボーンは変な声をあげた。
思わず見れた取り乱した姿につい笑ってしまった。

『いるなら呼んだ方が良いんじゃねぇか?』
『スカイプあがってねぇから無理だって、つーかそのままでてくんな…聞いててもいいから、でてくんな』
「なんでそんなに頑ななんだろ…別にいいけど」

よくわからないリボーンの言葉に首をかしげつつも、コロネロと話をしながら延長することなくその枠が終わった。
俺はすかさずスカイプを立ち上げた。
するとすぐにチャットが飛んできてさっきのホントにお前だったのか、と聞かれた。
俺だったよ、と返すと通話が来た。

「えっ…ちょっと待ってよ」

俺は焦ってヘッドフォンをつけるとマイクを繋げた。
そうして通話ボタンを押すとリボーンの声が聞こえる。

『ホントか?』
「嘘ついてどうするんだよ、今作業してたから忘れてたんだ」
『そうか…あのな、俺がコロネロとツナを会わせたくないのは…俺の勝手な感情だからだ』
「勝手な感情?」

俺はよくわからなくて、弁解してくれるみたいな言葉に首を傾げた。
別に俺は嫌な思いとか、最初だけだったし…気にしてないけど…。

『アイツ、お前と交流持ちたがってんだよ…だから、絶対相手すんなよ?』
「それって…嫉妬…?」
『悪いか』

まさかと思ったことを肯定されて俺はつい笑ってしまった。
向こうではリボーンがばかにされたと思って悪かったな心狭くて、と喚いている。
そんなことない、だって…俺の方が…。

「俺も、コロネロに嫉妬したんだ」
『は?』
「リボーンと仲良くするから…俺すごく、嫌な奴だった」

こんな気持ちが自分の中にあるのだと気づいて、最低なやつだと思ったけれど…リボーンも同じ気持ちだなんてわかってしまったら、いいかなんて短絡的に考えたらいけないんだろうなぁ。
リボーンは俺の言葉を静かに聞いていて、何か反応がないのかと耳を澄ます。

『別に、嫉妬しない方が問題だろ?』
「え、そんなこといっちゃうの!?」
『恋人なんだぞ、ツナは俺が誰かと仲良くしてて仲良すぎてたら怒って良いし、嫉妬もしていい…遠慮なんかすんな』

隠されて平気な顔された方が寂しくなると言われて、不意にリボーンを抱きしめたくなった。
どうして、こんなにも嬉しいことを言ってくれるんだろう。
一人が良いなんて言ったけれど…こういうときは居てくれないと困る、なんて言ったら怒られそうだ。

「リボーン…今度、ぎゅってして」
『んな可愛い声で言うんじゃねぇよ』
「うん、意識した」

えへへ、と言ってやれば本当に悔しそうなうめき声が聞こえてくるから、リボーンが俺のものなんだなぁなんて唐突に思う。
俺もリボーンのものなんだけど…。
次に会う約束をして、名残惜しい会話は終了した。
さて、作業に戻ろうとさっきとはまったく違う心持ちで俺は曲を作り始めたのだった。



END

くぅちゃんへ
歌い手×ボカロPパロでツナの嫉妬でした。
なんだかいつの間にかリボーンも嫉妬したっていうね(笑)
コロネロを出したのはちょっとした遊び心です、キャラ崩壊とか…目を瞑ってくれたら嬉しいです、はい。←
他の部分なら書き直し可能ですので。(笑)
改めて、リクエスト有難うございましたっ。






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