パロ | ナノ

 お前と…

冬も深まり、本格的に寒さがやってきたなとしみじみ感じながら俺は上着の襟を立てた。
部屋で仕事をしていたが、最近はよく会社に顔を出せと上司から言われてしぶしぶ顔を出し始めたらそのままずるずると会社に通う日々を続けさせられている。
うんざりとしながらも、家に帰れば暖かい部屋と夕食が待っている。
なにもないことに慣れていた俺が、こんなにも誰かがいることに幸福を感じるようになるなんて思ってもいなかった。
それは全て、綱吉のおかげだということでもある。
駅前はイルミネーションと人で賑わい、もうすぐイベントだとはやし立てている。
いつもなら、そんなものと無視をするが今年は自分から何か贈ってやろうかと考えた。

「あいつは、俺がクリスマスに何かを用意するとは思ってないだろうしな」

いい機会だ、ここで一つあいつを喜ばせてやろうじゃないか。
俺は思いつきに満足げに笑うと、早速近場の雑貨屋に入った。
中に入るとたくさんの雑貨が並ぶが、綱吉はどんなものがいいだろうかと店内を見渡した。
身に着けるものから日用品までプレゼントを前提としたものが並ぶ。
特にクリスマスとあって、たくさんのものが置いてあったがどれも綱吉に会うと思えなかった。

「どんなのがいいんだ…?」

考えてみれば綱吉が俺にわがままを言ったことなどなかった。
何かがほしいはもちろん、あれが嫌だ、これがだめだ、はあまり聞いたことがない気がする。
好き嫌いもあまりない…俺は綱吉のことをあまり見てやれていないんじゃないんだろうか。
プレゼントを選ぼうとしただけなのに、思いつくのは自分の至らなさばかり。
女ができたことはあったが、こんなことをしようと思ったのは初めてだ。
もちろん、家族の誰かに何かをもらったこともない。
だから、何を上げたら綱吉が喜ぶのか、まったくわからなかった。

「今日は帰るか」

結局その日は選びきることができず、家に帰ることにした。
少しばかり遅くなったが、許容範囲だ。
二人で住んでいる部屋に帰ると、先に帰っていた綱吉が出迎えてくれる。

「おかえり、すぐ用意するから待ってて」
「ただいま」

綱吉の言葉に頷きつつ、上着を脱いでハンガーにかける。
綱吉はエプロンにワイシャツという帰ってすぐに夕食の準備をしているという姿で心が温かくなった。
綱吉はこうして少しずつ、俺に何かを与えてくれる。
それは目に見えるものじゃなくて、少し難しく知ろうとしなければわからなかったものだ。
俺は椅子に座る前に味噌汁をゆっくりとかき混ぜている綱吉を背後から抱きしめて腕に閉じ込めた。

「なに?」
「キスしろ」
「はいはい」

今日は甘えただな、と笑って俺が言ったままに綱吉は唇を突きだしてきてちゅっと触れるキスをすると味噌汁にまた意識を向けている。
最近こいつは俺の扱いを覚えたらしい。
だが、そうしていれば俺が納得すると思っているなら大間違いだ。

「綱吉、俺を見ろ」
「火使ってるんだから、あまりかまえないって」

もう少し待ってくれというのをだめだと吐き捨てると少しの抵抗を見せたが抑え込み口づけた。
さっきの触れるだけのそれではなく舌を入れて咥内を舐め回し、舌を吸い上げた。

「ん、ん〜…ぷは、ちょ…も、ぅ」

口答えしそうになるたびに唇を奪って、身体から力が抜けるのを片腕で支えながらもう片方の手で火を止める。
腰のあたりを撫でると、びくっと揺らす。
そろそろかと唇を離せばとろけた瞳が俺を見つめている。

「ばか…なにするんだよ」
「味見だ」
「するまでもないだろ…っ」

今さらだと言い返されて、小さく笑えばシャツの中に手を入れる。
このままなだれ込んでしまえと胸の突起に触れるが、ぐぅと小さく腹が鳴った。
しかもその音の先は、綱吉ではなく俺だった。

「ぷっ…ほら、腹減ったって」
「うるさい、少しぐらい遅れたっていい」
「ご飯はおなかすいた時に食べるのが一番なんだよ。ほらほら」

これをチャンスとばかりに綱吉に押し切られて、俺は椅子に座らせられた。
うまくかわされて、チッと舌打ちすれば行儀が悪いといわれる。

「二人きりなんだから関係ないだろ」
「そうだけど、あとでシて?ね?」

料理を運んで向かい側に座るなりそんなことを言われて、ますます我慢が利かなくなってくる。
けれど、綱吉はさっき煽ったのをものともせず食事を始めて俺も出されたものに手を付けた。
綱吉の作るものはどれもおいしくてさすが一人暮らしをしていただけある。
自分のことを尽くす男だという綱吉の腕はさすがのもので、普通なら女が放っておかないだろう。
今でも時々誘われるらしいが、うまくかわしているのだそうだ。
綱吉に対して、俺は自分が思う以上にひどいことをしたと思っているし、監禁までしてしまったのは綱吉に対して向けられる目に嫉妬してのことだった。
だから、綱吉から好きだといってもらえることに安堵を覚えていたが、最近は少しずつ信じれるようになった。
綱吉は嘘をつかない、俺との関係が始まったのもあれは同情だとわかる。
それもどうかと思うが、最初なんてそんなものだろうと思っているから時効だ。

「おいしい?」
「ああ」
「そ、ならよかった」

俺は比較的無口な方で、綱吉はよくしゃべる。
食事中も綱吉はよくしゃべるが、俺は黙々と食べている。
けれど、それが苦痛だとか鬱陶しいとか思ったことはない。
どうしてこんなにもしっくりくるのだろうと不思議に思うことはたくさんある。
これでは俺だけがいい思いをしているんじゃないだろうか。
今までは考えたこともない考えが頭にふっと浮かんでは消える。
どうでもいいと思っていたことばかりで、それをすべてどうでもいいと思っていたことが不思議なぐらいで、こいつといるといろんなことが気になって忙しい。
そして、何よりそれがイラついて苦痛というわけじゃなく、どうすれば同じだけ返せてやれるだろうと思ってしまうぐらいに自分の未熟さを思い知るのだ。
綱吉の話を聞きながら食べ終わる頃にはさっきの熱はすっかりと消えてしまった。
とはいっても、完全になくなったわけではなくくすぶった状態だ。

「先に風呂入るぞ」
「うん」
「お前も早く入れ、早くベッドに来ないと放置だぞ?」
「ちょ、リボーンが煽ったくせにぃ」

くすりと笑って言ってやれば顔を赤くして俺を睨み付けてくる。
そんな顔じゃまったくきかない。
掠めるようにキスをしながら、俺は風呂に入った。
安定的で愛情がわからない俺でもわかりやすく幸せだと思う。
シャワーを浴びて、湯船につかった。
一日の疲れをいやして、今日はどうしてやろうかと不埒な考えが俺の頭の中に浮かんでは消える。
綱吉とは何度やっても飽きないむしろ、次はどうやって愛してやろうかと思うほどに…。
思わず自分が正気か疑ってしまいたくなる。
綱吉には日々、絆され続けているのだと思う。



俺が風呂から出た後綱吉はすぐに風呂に入って、ベッドに入って待っていると綱吉はすぐに寝室のドアを開けて入ってきた。
念のためと一緒に暮らす際綱吉の部屋と俺の部屋でわけたのだが、結局綱吉は自分のベッドで寝ることがほとんどない。
俺が仕事で疲れているときなど、気を遣って自分の部屋にいることはあるがそれ以外は当然のように俺の部屋に入ってきて一緒に寝る。
まぁ、今日は俺が煽ったせいで完全に出来上がっている状態だが…。

「綱吉、こいよ」
「これは、リボーンが煽ったのが悪いんだからな。俺は我慢できるのに、むりやりするから」
「わかったから、早くしろ」

もじもじと足をすり合わせているのを見れば、我慢していることがわかってベッドに乗り上げてきたところで腰を引き寄せて俺の上に来るようにする。
パジャマのボタンを一つ一つ外して見つめていると、顔を真っ赤にさせて視線を逸らしている。

「上にこい」
「…ん」

甘い命令で、綱吉は俺の顔に胸を差し出すよう覆いかぶさってきた。
俺は舌を出して舐めてやると、刺激を追って胸を舌に自ら押し付けてくる。
少しの痛みを与えるように甘噛みすればびくっと身体を震わせた。
ズボンの前をなぞるとすっかりそこは期待に膨らんでいて、すっかり俺の身体になじんだなと笑みを浮かべた。
片膝を立てて綱吉の股間をこすりあげると浮かせて逃げる。

「逃げるな」
「ん、はずかしい…」
「いつもしてんだろ」

からかってやると、俺の頭を抱えるようにして逃げる。
そのしぐさがかわいくてそれ以上は苛めることができず、綱吉の腰を引き寄せて膝を腰に押し付けた。
ぐりぐりと刺激してやると息が荒く、自らこすり付けますます熱くなっていく。

「やっあぁ…それいじょう、しちゃ、だめ…だめ」
「してほしいくせに何言ってんだ」
「あっあぁあっ、リボーン、りぼーん…いっちゃう、でちゃう、から」
「出していいぞ?それとも、後ろいじられていくか?」

いやらしい提案をすると、こくこくと頷いて、自分でズボンと下着をずらして俺の頭を離したせいで、視線が絡み綱吉は言葉もなくねだった。

「あまりかわいいことするな」
「…しらなっ…ふぁっ」

中に指が入るととたんに気持ち良くしめつけてくる。
ゆっくりと出し入れするだけで絡みついてきて、綱吉の口からはとめどない喘ぎがあふれる。

「ふ、でる…でるっ…んぁ、ぁあっ」

俺の身体を跨いで譫言のように喘ぐ綱吉に、俺は少し身体をズラして綱吉自身を口に含んだ。
それには綱吉も驚いて腰を引くが、後ろには指が入っているため自分で腰を押し付ける形になる。

「やっ、あっあっあっ、リボーン…離してぇ」

でるから、と泣きそうになりながら言われてしまえばもっと苛めたくなるがここは我慢だ。
そのまま飲んでやる、と促すように吸い上げ入り口を舌で刺激したとたん身体を震わせ、中を締め付けて俺の口へと白濁を吐き出した。
綺麗に残滓まで吸い出してから顔を離せば真っ赤な顔で俺を見下ろす綱吉。

「どうした?」
「なんで、のむんだよぉ…恥ずかしいからやだって…前もいったじゃん」

中から指を抜けばへたり込んでボロボロと泣き出す。
実のところ、俺は綱吉の泣き顔もきらいじゃなかった。
変な関係だった当初こっぴどく抱いたりしていたのも、自分の性癖だったのかと思いついてしまえば納得できてしまうほどに。
だから、泣いている姿をみると興奮するのだ。

「嫌いになったか?」
「ん…すき」

身体を起こして頬を撫で、優しく問いかければ小さく首を振る。
俺が泣かせるのを止めれないのはこいつのせいでもあるかもしれない。
基本的に嫌だと言うが、断固拒否というわけじゃない。
綱吉が許すからやってしまうのだ。
けれど、泣かせたらしっかりと慰めるのも忘れない。
抱き寄せ、顔中にキスをしてやるともじもじ身体を落ち着かなくさせる。

「綱吉、もっとしてもいいか?」
「して、このままじゃ…辛い」
綱吉から誘われる言葉に笑みを浮かべ、押し倒した。
パジャマを腕に引っかけたまま胸を弄り下は足で引っ掛け抜き去った。

「リボーンって、ちょっと変態だよな」
「俺がそうならお前も同罪だぞ」
「なにそれ」

まじまじと言われたのでからかうように返せば笑って違うと否定してくる。
俺はそんなことはどうでもよくて、足を開かせ自身をあてがった。
ヒクヒクと先端を食むように秘部が動いて中においでと言われているようだ。
綱吉をみれば今か今かと待っていて、俺は満足して中へと入り込んだ。

「は、ぁ…あっあぁ…」

綱吉はすっかり慣れたように呼吸をして迎え入れる。
根元まで入れ終わると手を伸ばして抱きついてくる。
全身で求めてくるようなそれに愛しさが込み上げた。

「きす、して」
「飲んだばかりだぞ?」
「いいから」

くわえた後なのにいいのかとからかい半分で言うが。関係ないと綱吉から口付けられた。
深く絡ませて、どこもかしこも一つになったような快感。
同じだけの喜びを分かち合うように俺も好きなように動いた。
多少乱暴でも綱吉は気持ちよさそうに喘いで最後は、絶頂に達する瞬間綱吉の顔をじっと見つめていた。

「みるなよ…」
「いいだろ、もったいぶるな」
「もったいぶってないよ、普通に恥ずかしいんだって」

余すことなく見られていたせいか綱吉は腕で顔を隠しながら身体を震わせる。
綺麗にするかと綱吉の身体を綺麗にしてやりながら頭の片隅ではしっかりと綱吉に贈るプレゼントのことを考えていた。

「綱吉…」
「ん?なぁに?」

クリスマス何がほしい、と聞きそうになってそれでは驚かす意味がなくなると当初の目的を思い出した。

「いや、なんでもない。寝るか」
「んー、うん」

身体をしっかりと清めた後、明日も仕事だろといってその日は過ぎて行った。




リボーンの様子がおかしい。
それに気づいたのはこの前抱かれた後だった。
いや、正確に言うと俺の名前を呼んで何も言わなかった時からだ。
リボーンが言いたいことを言わないことなんて早々ない。
それになんだか、俺に対してやたら優しくなったような気がする。
優しいのは何よりなのだが、俺は愛されることに慣れなくて戸惑うのだ。
誰かを愛してやることはいつも通りなんだ、でも、愛されたことってリボーンが初めてだからどうしたらいいか時々わからなくなる。
贅沢な悩みだと思いながら帰ってみれば、今日も一人きりの帰宅だ。
たまにリボーンが速い時もあるが、最近何をしているのか知らないけれどリボーンの帰りが遅い。
いや、前からちょっと遅くなるぐらいよくあったが、こんなに連日となるのは珍しい。
忙しいことが重なっているのか、それとも街に繰り出して誰かといるのか…。
いつもなら考えなかったことが、不安と一緒に湧き上がってくる。

「こんなのやめやめ、ご飯作ろう」

何はともあれ、リボーンは遅くてもそろそろ帰ってくるころあいだ。
クリスマスも近いし、プレゼントを用意してケーキも予約しなくては。
やることはたくさんある、こんなことをいちいち気にかけている暇はないんだ。

「クリスマスは、帰ってきてくれると嬉しいな…」

二人暮らしをして一人で食事をすることはなくなったけれど、おいてかれているような感覚はぬぐえず、一人きりになったような錯覚を覚えるのだ。
俺の愛を唯一受け止めてくれる人を見つけたのに、また離れてしまうのか。
そう考えてしまうだけで切なくなって、一人がさみしい。

「ただいま」
「おかえりっ」

考えていた傍からリボーンが帰ってきて、身体をビクッと震わせたが、いつもの調子で迎える。

「飯今からか?」
「うん、ごめん。今帰ってきたところだったんだ」
「なら、俺にも手伝わせろ」

謝ればリボーンは張り切って手伝ってくれる。
愛されたことがないとか言っていたけれど…俺は思うんだ。
それはリボーンがわからなかっただけで、ちゃんと愛情を注がれていたんだ。
でなければ、こんな風に優しく笑うなんてこと、できない。

「今日は悪戯なしだからな?」
「どうだろうな、お前が誘ったらあり得るだろ」
「この前のも誘ってないよ」

言いがかりをつけられて、まったくとため息を吐くけれどリボーンは俺のするのと色違いのエプロンを身に着けてキッチンに立つ。
この前とは違ったシチュエーションで、ついつい乗り気になってしまいそうになりながら俺もエプロンを手に取った。
きっと、思い過ごしだ。
こんな風に笑っているリボーンが他の誰かと…なんて、思えない。
可能性は否定できないけれど、でも俺は今目の前にいるリボーンを信じてあげようと思う。




クリスマス当日。
仕事帰り、日課になりつつある雑貨屋めぐりは今日はしないことにした。
どこに入っても綱吉がほしがりそうなものは見つからず、妥協も許されなかった。
店に長居すればするほど綱吉との時間が減っていくから、それだけはもう嫌だった。
クリスマスまでには何かを選んでやりたかったが、それができなければ花でも買って帰ろうと思った。

「バラの花束をくれ」
「かしこまりました」

あまりたくさんでは困らせるかと多少は遠慮した。
けれども綱吉の年の数はそろえた。
店員はばらだけではと白い花もそっと添えて、見た目がすごく華やかにきれいにまとまった。
告白が成功するといいですね、なんて声をかけてくる店員に、それはもう大丈夫だと笑って、店を出る。
店員がなぜか俺の顔を見て固まってしまったが、よくわからなかった。
駅前通りはここぞとばかりに客を呼び込むためにあの手この手を尽くしていて、俺はそれを無視してマンションへと帰った。

「ただいま」
「おかえりー」

綱吉がもう帰っていて、こちらに顔をのぞかせてくるからそっと花束を見せれば、驚いたように目を見開いた。

「驚かせようと思ったが、そんなに驚くことか?」
「もしかして…俺のために選んでくれたの?」
「あ、いや…本当はもっとちゃんとしたものをやりたかったんだ。けど、お前に似合う物やほしいものがわからなくて…結局こんなものになった」

綱吉のほしいものを、と思ったが結局見つけられなかったといえば、ぎゅっと抱きつかれた。
俺は何が起こったのかわからず首をかしげる。

「花がいいのか?」
「いいけど、そうじゃなくて…リボーンが俺のことを考えて選んでくれたから、それだけでいいんだ」

顔を上げた綱吉は泣きそうな顔をしていて、どうしたと目元を撫でる。

「リボーンが、俺のこと好きでいてくれるのが、嬉しいんだ」

うれしくて、泣いちゃうんだとこらえきれず泣きながら綱吉は話して大げさな奴だと笑った。

「俺はもうお前以外愛せない」

後にも先にもお前だけだろ、といってやればますます涙は止まらなくなって優しく抱きしめると宥めるように顔中にキスをした。

「ん、クリスマスだから…ご飯作った」
「クリスマスじゃなくてもお前はご飯を作るだろ」
「違うってば」

そうだけど、と笑って涙の止まった綱吉は俺の手を引いて奥に戻っていく。
玄関にいたから指先が冷えている。
室内に入るとテーブルにいつもより豪華な料理が並べられていた。
それがすべて手作りだとわかるから、綱吉は俺よりもずっといろいろ考えていたんだろう。
どれだけしても、こいつにだけはかなわないと思った。

「ケーキもあるんだよ」
「まさか作ったのか?」
「そこまでする時間はなかったからお店で買ってきた。食べよう」

時間があったらやる気だったのかと暗に感じて、末恐ろしくなる。
つくし上手な恋人はどこまでもなんでもなくこなしてしまうのだ。

「俺は、誰かを愛してやることなんてできないのかもな」
「え?」
「こんな風に綱吉の喜ぶものも満足に用意してやれない。俺はどこかかけてるんだ」
「リボーン」
「こんなに大切なのにな」

どれだけ考えても無理だった、と言おうとする言葉を綱吉の手のひらがとめた。
ゆっくりと首を振って、綱吉は俺の背中を押して椅子に座らせた。
綱吉も向かい側に座る。

「少しずつ覚えていけばいいんだよ、それに俺はリボーンに愛されてるってちゃんとわかってるから。言葉にしなくても、ちゃんと伝わってるよ」

はい、あーんとハンバーグを口に運ばれてなんだか複雑な気分で口を開けたのだった。




リボーンからもらったバラを花瓶に挿して眺める。
ケーキもしっかり食べてリボーンは今風呂に入っている。
俺は今出てきたところで、これからすることといえば、まぁ恋人らしいことだ。

「きれい」

花には興味なかったがリボーンが買ってきたものだと思えば愛しいものでしかなく、ずっと眺めていれるなと嬉しくなった。
最近俺に隠れて何かしていたのだってきっと俺のために何かを選ぼうとしていたってことだろう。
愛し方を知らないとか言って、ちゃんとその愛情は伝わっている。
俺にとってこれでもかってぐらい幸せなことだ。
不器用なリボーン、あんな風に悩んでしまうほど考えてくれた。
幸せ…。

「もう、これだけで幸せ死しそう…」
「何してんだ?」
「あ、みてみて綺麗だろ?」
「まぁ、綺麗だな。でもお前はこっちだ」

リボーンが上がってきて、俺はテーブルの真ん中に置いた花瓶を指した。
けれど、リボーンは生返事で俺の腕を掴むなり寝室へと引きずられた。

「ちょ、え…なに?」
「俺が愛してるといえるのはベッドの中だけだと考えた」
「いや、極論っ!?」
「今すぐ抱かせろ」

耳元で低い声が囁くだけで腰が砕けそうになる。
俺の中のスイッチがかちり、と切り替わった音がした。


「ん…はぁ…」
「無理しなくてもいいぞ?」
「いいから、黙ってろって」

気遣う声が優しいなと感じながら、こんなのはあの時の方がよくしていただろうと思う。
口にはしないけれど、すっかりその刺激にならされた俺の身体は時々物足りない時がある。
今日はそんなことがないようにとマウントをとった。
足を開いて、リボーンの身体を跨ぐと秘部に自ら自身を宛がう。
ゆっくりと入れていくのは少し怖くて、何度かためらいながらも先端をぐっと入れてしまう。

「ひあ、あー…あぁ」
「つなよし…」
「リボーン、りぼーん…」

手を伸ばせば指を絡められてぎゅっと握りしめた。
自分では支えきれず力を抜くと、全部を一気に受け入れる羽目になった。
驚いたが、半分ぐらいまで入れていたために衝撃もすくなくて済んだ。

「あっあっ…きもちい、おくまで…きてる」
「そのまま動くのか?」
「ん…」

リボーンの問いかけにコクリと頷くと腰を揺らす。
抜き差しはさすがにできないから、中の自身をかき回すように腰を振るだけだ。
それだけでも十分快楽は得られるし、なによりくっついている方がリボーンのぬくもりを感じれて俺はすきだ。
きもちいいと漏らせば中の熱はますます固くなって、それに応えるように息が乱れる。

「あふ、リボーン…」

下からの突き上げに小さく声を漏らしつつリボーンを見つめた。
首に腕を回し離れないようにだきしめる。
少しでも隙間なく触れていたくて身体を寄せると自身がリボーンの腹に触れた。
躊躇ったのは一瞬。
快楽に慣らされた身体は刺激を求めて揺らめいてしまう。

「なんだ、勝手に動くのか?」
「だ、ってぇ…りぼーんがすること、ぜんぶ…きもちいい」

どうしよう、と戸惑いながら聞けば中のものが大きくなる。
それ以上大きくしないでと首を振ればそんなの無理だと切り捨てられた。
肩を押されて押し倒されると足を胸につくぐらいに曲げられて、激しく中をこすられる。

「ひぁあっ、あんっ…あつい、あっあぁっ…もっとして、もっとぉ」
「こうか?」
「ん、んぁっ…やだ、そこ感じる」

リボーンがしてくれる愛撫すべてに感じている。
恥ずかしいぐらいに喘いでもリボーンは嬉しそうにしていて、中のそれも俺をずっと苛んで思わず背中に爪を立てた。

「そんなにきもちいいなら、感じとけ」

優しく言われて、それを皮切りにもっと激しくされた。
どうやって動いているかわからないけれど、どこまでも感じてそのうち出すものもなくなり、意図せず涙があふれた。

「もう、だめ…あうっ、でない…はやく、だしてぇっ」
「もっとじゃなかったのか?」
「もうむり…しちゃやだ、ついたらだめ」

リボーンは優しく俺の頬をなぞっているのに、俺の中を苛む刺激はやまない。
ぎゅっとシーツを握り、リボーンを見つめると優しく口づけられ、額を合わせてくる。

「なら、これが最後だ」

たっぷり感じろよ、と包み込まれるように抱きしめながら言われて、ラストスパートをかけてくる動きに感じた。
奥の奥まで入り込んできそうなそれに怖くなって、それでも嬉しいと感じてしまう。
リボーンにならされた身体だから、リボーンが全部包み込んでくれたらいい。
最後はキスをして、幸せをいっぱい感じながら中にリボーンの熱を受け止めたのだった。


意識を飛ばして、戻ってくると身体はすっきりとしていた。
リボーンが拭いてくれたのを知って少し気恥ずかしいような気分になる。
リボーンはといえばシャワーの音が聞こえるから風呂にでも入っているのだろう。
俺は起き上がろうとしたけど、だるくてできずじっと天井を見つめていた。

「幸せだなぁ…」

俺だけがこんなことを思ってはいけないと思っているけれど、でも、リボーンがクリスマスプレゼントを選んでくれようとしていたなんて…。

「進歩だ。これを幸せといわずなんというだろう」
「何一人でぼやいてんだ?」
「ふふ、んーん…リボーン寒いよ」

風呂から上がってきたリボーンの問いかけに機嫌よくなんでもないと答えて自分の掛け布団を捲りあげる。
早く来て、というとリボーンは入ってきて俺をぎゅっと抱きしめた。
少しずつ甘えることも甘やかすことも愛することも覚えてくれたらいいよ。
その間、ちゃんと俺は傍に居て笑っていてあげるから。
リボーンのぬくもりに甘えながら、俺はちゅっとキスをして微笑んだ。




END






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