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 蓮の告白

リボーンの家に泊めてもらうことになった。
外が嵐のため仕方ないとは言え、俺は緊張で上手く喋れなくなっていたのだが、そんななか沙菜が風呂に入って二人きりの状況で、リボーンが言った自分のこと考えろよという一言に、胸を打たれた。
そりゃ、二人になる前は自分のことばかりだったけど、それの罪滅ぼしみたいな感覚だったのかもしれない。
自分で自分の首を締めていることにも、気付いていなかった。

「俺って、そんなに頑張ってるとおもう?」
「ん?」
「俺はさ、一見がんばってるように見えるだろうけどさ…それは、沙菜のためでもあるんだ」

誰にも話すことはないだろうと思っていたこと。
本当は、こんな気持ちを言葉にしたかったんじゃないんだけど、リボーンが何もかも許してくれるかもしれないと思ってしまった。

「沙菜は母親が俺にあてつけでおいていったものだった。けど、そんなこと伝えることもできないから、俺が沙菜のことを好きだから沙菜は俺のところに来たんだと教えたんだ」
「……」
「子供を育てることに苦しめられることはわかってた。でも、その苦しみを妻に押し付けていたと思ったら、俺がやらないとって思ったんだ」
「最低だな」
「うん、そうだ。俺は最低な人間だよ。だから、俺だけがそうやって肩の荷を降ろしちゃいけないと思ってる」

これは贖罪なんだと、リボーンを見れずに呟いた。
沙菜を重荷に想ったことは、もう無い。
可愛いと思えるし、大事にしたいと思ってる。
けれど、俺は沙菜のことを一度でもいらないと思ってしまったから。あの子を何の引け目もなく抱きしめることはできなくなってしまった。

「お前は、ずっとそうやって沙菜に詫びながら接してきたのか」
「…そうかも、しれない。父親としても人間としても最低だ」
「俺がきっかけを作らなかったら、このまま誰にも言わずだまってるつもりだったのか?」
「うん、墓場まで持ってく気だった」
「何で話す気になった?」

そこまで言われて、俺はうーんと考える。
どうして?そう言われても、リボーンなら話してもいいかなと思ったのだ。

「勘?」
「なんだそりゃ」
「リボーンなら、話してもいいかなって」
「それは沙菜に告げ口しないからか?それとも、俺が賛同してくれるとでも?」
「いや、リボーンは真っ向から否定してくれるって信じてたよ。正直、そうやってはっきり言ってくれるんじゃないかって思ってた」

リボーンは良くも悪くも正直で、自分の思ったことはしっかりと発言してくれる。
だから、俺のこれを聞いても絶対に頷いたりしないって知ってた。
そう言ったらますますわからなくなったと難しい顔をしたから、俺は笑ってそれでいいんだと重くなってくる瞼を必死に上げながら言った。

「俺だってわからない」
「…あいつは、誰にも愛されてなかったんだな」
「違うっ、それは…違う。今はちゃんと好きだし、大事にしたいと持ってる。あの子のためなら、なんだってしてやれる…今は、違うから」

沙菜は愛されていなかった、なんて…確かにそうだったとしても、今はちゃんと俺は愛せて上げれているし自分よりも大切だと思う。
動機はなんであれ、それは一年前のことだ。

「誰よりも大切か?」
「ああ」
「もし、恋人ができたとしても…か?」
「…もちろん、まぁ…こんな俺には恋人なんか作れそうにもないよ」

正直また同じことを繰り返してしまいそうだと思っている。
だから、今はリボーンの傍にいれるのが一番いいんじゃないかと感じている。

「リボーンは、迷惑かも知れないけど…俺も、沙菜もリボーンの傍が心地いいんだ」

眠過ぎて自分で何をしゃべっているのか若干わからなくなりながら口が勝手に話す。
リボーンはそっと俺の頭を撫でてその掌の温もりに身を預けた。

「呆れた?」
「いや、傍にいたきゃいればいい…どうせ、俺はお前らがいないと一人だからな」
「一人じゃないだろ、伊勢谷くんがいるじゃないか」
「アイツはここに勉強しに来てるだけだからな」

そのうち旅立つさ、と他人事のように呟いたリボーンの顔を見ようとしたが、廊下を歩く音に俺は身体を起こした。

「でたよー」
「おかえり沙菜、おいで」

今の一瞬なんでか絆された雰囲気を払拭するように俺は自分の膝に沙菜を呼び寄せた。
よじ登ってくる暖かい身体を抱きしめちゃんと温まってきたのを確認して時間を見ればそろそろ寝る時間だというのに気付く。

「そろそろ寝ようか?」
「んー、おとーさんもりぼーんさんもねる?」
「ああ寝るよ」
「そうだな、寝るか」

すると、沙菜は俺とリボーンの手を両手で片方ずつ握った。
何だとリボーンと顔を見合わせる。

「さなね、三人で寝たい」
「三人は…狭いんじゃないか?」
「まぁ、な」

沙菜の意外な一言に俺とリボーンは慌てた。
さっきの雰囲気での、これは少し落ちつかない。
というか、寝られる気がしない。
リボーンも同じなのだろう、二人して言い淀んでいると沙菜はぐずったように声を出した。

「三人じゃなきゃ、や」
「や、って…」
「だって、おかーさんのときもおとーさんは一人だったよ?みんなでねたいの」

沙菜の言葉は多分、俺だけが一人で寝ていたのを気にしているのだろう。
あの時は深夜遅くに帰ることもあって、沙菜と妻を起こさないように俺だけの部屋があったのだ。
今もその部屋にいるが沙菜に言われれば一緒に寝ることだってある。
だが、リボーンは落ちつかないだろう。
第一、 布団だっていつもベッドなのにいきなり布団で三人川の字といってすぐに納得できるはずもない。
お願いだからそれだけはやめてくれと、沙菜に言おうとすると泣きそうな顔をする。

「さなさーん、我儘言わないでくれよ」
「やーだ」
「リボーンからも何か言ってやってくれない?」
「そんなに寝たいのか?」

リボーンなら上手くかわしてくれると、俺は助けを求めたのだがリボーンは沙菜の顔を覗き込んだ。
沙菜はこくりと頷いて、じっとリボーンを見つめている。
二人して、暫く見つめ合った後リボーンはそっとその視線を逸らしてため息を吐いた。

「三人一緒が良いって言うなら、しかたねぇな」
「やったぁー」
「はぁっ!?」
「なんだ不満か?」
「いや…別にいいけど」

不満どころか落ちつかない。
でも、リボーンが良いというのならいいのか…?
仕方なく俺は腹をくくることにして、三人で二つ並べてある布団に寝っ転がった。
大人用の布団が二枚。
間に沙菜が入って、両手は俺とリボーンの片手ずつ握っている。
これでは背を向けて寝ることもできなくて、自然を向き合う形にならざるおえない。

「おやすみ、沙菜」
「おやすみなさぁい」

ふぁ、と欠伸をして目を閉じると寝入ってしまう。
この寝付きのよさだけは褒めてもいいだろう。
この後何をしても沙菜は起きない。手を離そうかと思ったのだが、リボーンは沙菜の手を握って寝ていて寝つきが良いのはリボーンもなのかと笑ってしまった。
ぐっすり眠っている様子に、俺は笑ってたまにはこんな日も悪くないなと感じる。

「リボーンが恋人なら…いいのかもしれないな」

口にして、自覚してしまった。
俺はリボーンをそう言う対象として見ているのだと。
最初は単に友達になれたらいいと思っていただけなのに、いつの間にそこまで深く浸食されていたのだろう。
男なのに…花屋で目つき悪くて、けどすごく頼りになって…懐いていたのは、沙菜じゃなくて俺の方だったのかもしれない。
けれど、リボーンと沙菜を見ればどちらとも贔屓にできない悲しみが押し寄せてくる。
俺は、誰かに恋をすることもできないのかもしれない。



続く






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