パロ | ナノ

 輝くもう一つの輪

骸くんを無理やり連れて帰ったのは僕の家。
高校のときに住んでいた実家とは違い一人暮らしなため、あのときからの時間をようやく意識したらしい。
骸くんからの抵抗が消えて、ソファにすわるころには無言で、じっとしていた。
それは今すぐにここから出ていきたいというころなのだろうか。
それとも、少しは僕のことを考えていてくれているのか。

「ねぇ、骸くん…昔話を…しようか」
「嫌です」
「話しをしたくて、ここに呼んだんだよ」
「無理やり連れてきたの間違いじゃないですか?」

ここまで来たというのに話しがかみ合わない。
まったく、どうしてこんなにも頑なになってしまったのだろうか。
それは時間か…それとも、あのときに全て終わってしまったのだろうか…。
いや、それだけはないと信じたい。
だって、目の前に居る。
こんなに近くに居るのに、手を…伸ばせるのに…僕は、手を伸ばして握った。

「触らないでくださいっ」
「嫌じゃないよね」
「嫌ですっ。触らないでっ」

ヒステリックな叫び、痛々しくてそんな苦しい思いをするなら、離してあげたいと思う。
けれど、骸くんの手は暖かくなるんだ。
普通なら、嫌がる相手に握られると緊張して血管が縮んで末端が冷えるはず。
こんな小さな望みに賭けても…いい?

「好きだよ、骸くんが…好きだよ」
「なっ…にを…浮気した分際で、今更っ」
「浮気してないんだ…骸くんの勘違いだよ」

僕はケータイをとりだした。
あのときのまま、保存して時間が止まったメール。
女のこと、俺の会話をそのまま見せた。全部、本当のことだと信じてほしくて。
骸くんは真剣にそれを読んでいて、愕然としたようだ。
とりあえず、納得してもらえたようで一安心する。

「わかってもらえた?」
「…僕は、あの時から…時を止めていたのですか」
「ん?」
「もっと、きみの話しを聞けばよかった…リボーンに逃げなければよかった…僕は最低じゃないですか」
「うん…そうかもね」

俯いて、今度は冷たくなっていく掌。
まったく、そういう自己嫌悪したらまっさかさまなところ昔から何も変わらない。
骸くんは本当にあの時から時間が動いていないようだ。
苦笑を浮かべながら僕は肯定を口にしたけれど、そんなことぐらいで切れているなら僕は目の前に居ないよ。

「ばかだなぁ、骸くん…僕は骸くんのこと好きだよ。勘違いしちゃうところとか、誰かに縋らないとどうしようもないところとか。全部、わかってたよ…だから、あんなことしちゃいけなかったんだ…僕のせいでもあったんだよ…ごめんね、骸くんを裏切るようなことして…ごめん」

握っていた手を引き寄せると掌へとキスをする。
あの時からずっと、骸くんのことを諦めようとか思ったことはないよ。
ちゃんと、僕はずっと君一筋なんだ。

「ねぇ、だから…泣かないで」
「びゃくらん…びゃくら、ぼくは…」

もう少し近づけるかなと僕は骸くんの隣へと移動した。
空いた手で骸くんの涙を拭うが、拭う傍から次々と溢れて、もうなんだか可愛くて仕方ない。
僕より年上で、それなのにこんなに女々しいなんて…なんて、愛しいのだろう。
抱き寄せればあれだけ頑なだった身体はゆっくりこちらに傾いてくる。

「ああもう…僕のだ。ようやく、戻ってきてくれた」
「僕は…ずっと、君のことしか考えてませんでした…ずっと、白蘭しか考えられなかった」
「うん」
「君を忘れたかったのに…できなかった。責任、とってくださぃ」

骸くんの身体を力いっぱいに抱きしめながら骸くんの言葉に相槌をうった。
もうなんでも言ってくれればいい。
君の我儘は全部僕が叶えてあげるから。なんでも、望むままにしてあげる。

「もう一度、僕に愛されて」
「すき…です、びゃくらん」
「うん、ぼくも…すき」

好きだよ、大好き…と囁きながら骸くんを寝室へと誘った。
あの時から時間が止まったままなら動かせばいい。
また元の形となって、正しい形で秒針が回ればいい。
ベッドに押し倒して、柔らかな髪にキスをする。

「白蘭、僕の身体は…」
「わかってるよ、ちょっと何も言わないで喘いでて…僕だって、心が広いわけじゃないから…今は愛させてよ」

リボーンと関係があると言いたいのだろう。
今さらそんなことを言われなくてもわかっているし、骸くんの口からそんなことを聞きでもすれば僕は嫉妬でどうにかしてしまうだろう。
まだ、今はしっかりと骸くんを愛してあげたい。
何もかも今日は隠して全部あまさず愛させてほしい。
僕だって哀しいわけじゃない、勘違いだとしても恋人の身体を抱かれたんだ。
そんな現実はどうしても覆ることはない、けれど…それはこちらの責任でもある。
ちゃんと、こうなる前に説明をしていればよかったんだ。
捕まえて、何が何でも無理やり言ってやればこんなことは起らなかったのだから。

「酷くしてください、僕は…そんな風に甘やかされたいわけじゃない。もう白蘭以外、見るなと…言って下さい、でないと僕はまた…不安になる」
「…もう、ほんとに…やめてよ…僕はまた君を傷つけるかもしれない」
「今度は、ちゃんと君に理由を聞きます。信じます、だから」

ようやくあった目は、とても綺麗で…きっと向き合っていなかったのはお互いなのだと思う。
傷つくのが嫌で、でもお互いに離れられなくて…目を合わせることもままならずに、気持ちだけはしっかりと大きくなっていく。
離れられないのに、意地を張って。

「もう、僕しかみないで…リボーンなんかに縋らないで、僕を一番にして」
「はい…白蘭、僕をゆるしてください」
「愛させてくれたら、許してあげる」

骸くんの驚いた顔に僕は笑みを浮かべた。
もう過去なんか引きずらなくていい、また関係を作っていけばいい。
安心して良いからねと骸くんにキスをする。
頬を撫でて、額を合わせて見つめたら骸くんに引き寄せられて深く唇を合わせて、貪った。
止めるものは何もない。
キスをしながら苦しくなったら離して、呼吸してまたキスをする。
お互いに服を脱がしあって、裸になるまで時間はかからなかった。
ローションを取り出して、ベッドに放ると骸くんの肌を堪能した。

「ねぇ、どこに触れたの?」
「んっ…?」
「リボーンは、どこに触ったの?」
「白蘭?」
「やっぱりさ、割り切るなんて無理…全部塗りかえるよ」

全部舐めるからと僕は骸くん肌に舌を這わせた、止めろと舐めていけば行きつく先がわかっている骸くんは僕の顔を掴んでくるが、だめだよと見つめた。

「今日は、僕がすることに逆らうの禁止。痛いことしないから、きもちよくするから」
「それが、嫌だと言っているんですよっ」
「だぁめ…全部、させて」

一歩も引く気がないことをこちらから伝えてやれば骸くんは呆れたようにため息をついて力を抜いた。
それを肯定としてとった僕は再び顔を胸に埋める。
首筋、鎖骨、胸舐めて吸って…赤い痕を残して、愛撫して。
時間をかけて全身を舐める。
全部、僕のものだ…他の男の感触なんて残させない。
時々感じるところに行きあたるのかピクリと身体を震わせるがそれさえも一切無視をした。
ただ、全部を僕のもので変える作業をして、中心には最後まで触らなかった。
感じやすいのは変わらず先走りが溢れて、幹を伝うがあとのお楽しみにした。

「ひっ…びゃくらん、そこはっ…」
「こっちも、されてたら…嫌だからね」
「やめっ…やめなさいっ、びゃくらぁぁっ…ああぁっ」

ちゅっ、じゅるっと音を立てて立てた足の間…秘部へと僕は舌を這わせた。
イヤイヤと骸くんは首を振るけれど先走りの量は格段に増えて奥へと伝って来た。
いやらしいのは何も変わっていないなと、舌を滑り込ませればきゅっと締めつけてくる。
そのあいだ、切れ切れの喘ぎ声は聞こえ続けていて、時々嗚咽まで混じり始めた。
感じてしまってどうしようもないのはこちらを見ればよくわかる。
でも、あまり泣かせるのはと思い今度は指をいれて、自身へと舌を向かわせた。

「やっ、びゃく…あぁっ、やめっ…ふあ、ひあぁっ」
「感じてる、きもちいいでしょ?」
「しゃべらな…ふぅっ…あんっ、んんっ…あっあっ…イく、もう…だめ、やめてっ」

力ない手が僕の髪を梳いて、押しのけてくる。
そんな力ではどうしようもないだろうと思ってしまうが、泣きだしたのは止まらないらしい。
泣きながら腰を振り、イく、イくと嗚咽交じりにいう骸くんはどこまでも可愛くて、もっと苛めたい衝動にかられる。

「わかったよ、じゃあ…一緒にね…それなら、いい?」
「きて、ください…奥まで、全部うめてっ」
「いくよ、僕の味…思い出して」

ローションを念のため垂らして、そこに自身を宛がうが僕の視界が滲んだ。
ぽつぽつと骸くんの身体に流れるのは、僕の汗じゃなかった。

「白蘭…」
「あはは…なさけないなぁ…もう…」

多分、もう戻らない時間…どうしても拭いされない痕。
骸くんのことを全部愛したいから、僕の気持ちなんてまだわからなくていいと思っているのに。
どうして、僕はこんなにも大人になりきれないのだろう。
骸くんは僕をじっと見つめて、優しく僕の涙を拭ってくれた。
感情のままにぶつけることはいいことではない、いろんな勘違いで一度は途切れそうになったものを繋ぎ合わせれたことに感謝したいぐらいなのに。

「なんで…なんで、ぼくのものじゃなくなったの?むくろくんは、僕のなのに」
「……すみません」
「もう、だめだよ…離れたら、嫌だよ。僕は、ずっと笑うから。近くに居て、傍に居て」
「約束を」

骸くんの手が僕の手をとった。
左手の薬指にちゅっと口付けて、永遠の誓いをと僕を見つめる。
僕も骸くんの左手の薬指に口づける。今度はぴったりのリングをはめてやろうと想いを馳せながら。
そうして、気を取り直して挿入した。
泣きそうになったのが嬉しかったのか、骸くんは僕と手を繋ぎながら喘いだ。
いまさら、大人ぶってもきっとダメなんだろうな。
これからさき、僕は骸くんに骨抜きにされるのだろうから。

「あっ、あぁぁっ…びゃくらん、イく…いっしょにっ」
「ん、いっしょに、ね…すきだよ、すき…あいしてる」
「あいして、ます…あぁっあーっ!!」

ぎゅっと締めつけるのと同時に放って、久しぶりの充足感にまた中で僕が膨らみ始める。
それを骸くんはすぐにわかってしまい、止まりませんねと笑みを浮かべた。

「止まらなくてもいい?」
「これで、終わりだなんて…思ってませんよ」

骸くんの言葉に甘えるように僕はまた腰を揺らしだし、お互い疲れ果てるまで夜を過ごしていたのだった。
シャワーを浴びて、寝室に戻れば骸くんはもう眠ってしまっていた。
可愛い寝顔だと思って、ふっと思い立つ。
ケータイを構えて内緒で撮影したものを、幸せだよと言葉と共に、寝顔を送付した。
これは、一種の牽制でもあるのかなと思いつつ、くだらない独占欲に苦笑しか浮かばない、
もう、誰にも渡さない…手放さない。
僕だけの、愛しい人。

「あいしてるよ、骸くん」



END





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