◎ 繋がるメビウスの輪
二人きり残された教室で何を話せばいいのかわかりません。
しかも今しがた、リボーンが俺のこと好きとか聞いちゃって、白蘭は勝手に勘違いして…いや、あれは絶対わかっていた、わかっていてああいったのだ…出ていくし。
気まずいことの上ない。
どうすればいいのだろうか、ひとまず俺達の最優先事項は達成したことだし…離れた方が無難なのだろうか。
リボーンはと言うと、なんだかさっきから無言だし…居心地が悪い。
「じ、じゃあ…俺は帰ろうかな…今日これで終わりだし…」
「もう行くのか?」
「へ?」
腕を掴まれて振り返れば何かを決めた顔がそこにあった。
なんでそんな真剣な顔をしているのだろうと思って、そういえば付き合うと言ったままだったことを思い出す。
遊びとは言え、リボーンは嫌だろうなと思って少し寂しいがそれを受け入れるしかないかとリボーンを見た。
「なんか勘違いしてそうだが、良く聞けよ。一度しかいわねぇからな」
「ん?…う、うん」
「あれだけあいつらがひっかきまわしてたが、俺は…綱吉のことが好きだ」
「…えっ、今!?」
「何だ、今っていうのは?」
「いや、なんでもない…なんでもない」
このタイミングで言われるとは思ってなくて驚いて声をあげてしまえばリボーンが詰め寄ってくる。
まずいと思ったが、時すでに遅く顔を覗きこまれていた。
しかも、リボーンの腕が俺の腰に回って完全にホールドの体勢だ。
「なんだ、骸に何か聞いたのか?」
「聞いてないっ。聞いてないよっ」
「…わかった、聞いてないことにしてやる…返事は?」
俺の必死の言葉にとりあえず納得してくれることにしてくれたのだろう。
次は返事だとばかりに俺の顔を覗き込んでくる。
この密着具合がすごく心臓に悪い。
もしかしてこの心臓のどきどきがリボーンに伝わっているんじゃないかと不安になるけれど、リボーンはどこまでもこの体勢で待つ気らしい。
びくともしない…。
「す、すき…」
「ホントか?」
「ほんとだから…はなし…ん〜」
放してくれと言おうとリボーンを見たら唇を塞がれた。
いきなりのことに驚いて目を見開くも、リボーンはキスをやめてくれない。
抗議しようと口を開いたらそこから舌が入りこんできて、咥内を舐めてくる。
そのうち腰がむずむずと疼いてきて、知らず口から吐息が漏れた。
初めての感覚に足から力が抜けた。
「っと…大丈夫か?」
「ふっ、なに…今の」
「…もしかして、こういう経験ないのか?」
腰を支えられて俺を見てくるリボーンに一気に顔が熱くなった。
キスすらもリボーンが初めてだとは言えずに、睨みつけるだけにとどめたらすまんと謝られる。
あまりにも素直な反応に、俺はこれ以上何も言うことができなくなった。
大学生にもなってキス経験ないといけないのかっ!?
心中複雑な気分で、だがいつの間にか恋人に慣れていたことに気づいてしまえば、また顔が熱くなった。
「今度はどうした?」
「両想いだ」
「…ああ、そうだな」
ふっと笑顔を向けたらリボーンが俺をぎゅっと強く抱きしめてくれた。
暖かい腕の中、俺は改めて幸せに浸れた。
すると、教室の外から足音が聞こえて、俺達は慌てて身体を離す。
「こんなところで何してる、講義始まるぞー」
「「はいっ」」
そこに顔を出したのはどこかの教授で俺達はとっさに返事をしながら、今自分たちがしていた行為を思い出し恥ずかしくなる。
まともにリボーンの顔を見れずにいたら、俺はこれから講義だと言われて…つい、手を握ってしまった。
「なんだ、離れたくねぇか?」
「…あ、あたりまえ…だろ?」
「なら、俺の部屋にいろ。講義終わったら帰る」
そう言うなり俺に部屋の鍵を投げてきた。
とっさに受け取ってしまい、そんなこと言われてもと顔をあげればリボーンは教室を出ていくところだった。
「嫌だったら、今すぐ返しに来い」
「そんな、こというなよ…」
どこまでも意地の悪い男だと見ればニヤリと笑って教室から出ていってしまった。
取り残された俺は、こうなってしまうとリボーンの部屋に行かなくてはならなくなってしまう。
「これって、はめられたんだよな…」
あんな数秒で心が決められるわけがない。
戸惑っている間に俺に鍵を渡して自分はさっさと講義に行ってしまうなんて…。
でも、そのおかげで今日はリボーンの部屋に行くことになってしまった。
嬉しいけれど、さっきのあれを考えると不安しかない。
少しの接触すらも経験したことのない俺は、これから起こることをどうやって受け止めればいいというのだろうか。
マグロってやつになってしまうかもしれない。
エロ本とかでよくある、寝ているだけの態勢を思い起こせば、それだけではリボーンにいつか飽きられてしまいそうだと思った。
「骸よりはいいって、思ってもらいたいし…」
どうするべきか、と考えてどうにもできないことを知る。
俺には知識も経験もリボーンより明らかに劣っている。
何もしらない俺を、リボーンはどう思うのだろうか…。
「あー、なんか…ヤバい…俺、何も知らない…」
けれど、ここでずっと突っ立っていることもできない。
俺は仕方なくリボーンの部屋の鍵を握り、昨日行ったばかりの部屋へと向かったのだった。
ようやくつかんだ綱吉を想い、講義の内容なんて頭に入ってこなかった。
俺は終わるなり教室を飛び出して部屋へと向かっていた。
さっき確かめた唇の感触が蘇って、高ぶる感情が止められない。
あんなに初々しい反応をされるとは思っていなかったが、俺が教えていけばいいと思う。
むしろ、俺の方が嫌悪を抱かれるのではないだろうか。
骸のことでいざこざがあったのだから、骸を抱いた後釜と思われて居たらどうしようか。
「まずいな…嫌われるかもしれない」
我を忘れて唇を味わってしまったが、今思えばあれでひかれたかもしれない。
そう思うと自分の部屋が遠く感じる。
もし、ドアを開けて綱吉がいなかったらと考えるとやっぱり講義を受けるのを辞めておけばよかったかもしれないとさえ思う。
そう思いながら歩いてきてしまえば俺は恐る恐るドアを開けた。
かちゃりと開いていて、一安心する。
「綱吉?」
「…おかえり、リボーン」
声をかければソファに座っていたのだろうぱたぱたと歩いてきた綱吉を見て、部屋にあがれば妙に緊張した雰囲気が伝わってくる。
人間一度冷静になってしまうと手を出しにくくなる。
時間を開けたのはまずかったかと思うが、綱吉はじっと座っていただけなのをソファの周りを見て感じて落ちつけるために何か飲みものを用意しようかとキッチンへと立った。
「何か飲むか?」
「い、いいよ…」
「そうか」
俺は珈琲をとインスタントで作れば綱吉がちらちらとこちらをうかがってくるのが見えた。
どうかしたかと思って見ればさっと視線を逸らされてしまう。
変に意識させてしまったのが悪かったのか。
俺はこれから手を出していいのか、それすらも迷う。
大体、俺は誰かを好きになったのは綱吉が初めてだ…どうやって好きなやつと付き合っていけばいいのかわからない。
「座って良いぞ」
「うん…」
ソファへと促せばちょこんと座って、かわいらしい。
もう少し近づいても大丈夫そうか…?
俺は綱吉との距離をはかるように近づいた。
隣に座れば緊張するが嫌がる様子はない。
「俺のことが好き、嘘じゃないな?」
「リボーンこそ、嘘じゃない?」
「確かめてみるか?」
誘うのは簡単だった。
綱吉も頷いて珈琲を飲むより綱吉の唇に魅かれる。
顔を近づけて今度はゆっくりと唇が重なった。
ちゅっちゅっとくっつけて、それだけで綱吉は熱に浮かれたように吐息を吐きだした。
目を見つめるととろりとうつろだ。
誘われるように手を伸ばした、腰に腕を回して引き寄せる。
俺の膝の上に乗せると少し恥じらうように身をよじったが抵抗はなかった。
「このまま俺はお前を食べるぞ?」
「ん、いいよ…待ってたから」
心の準備をしていたと言われれば躊躇いはなくなった。
キスをしながら、服に手をいれた、びくっと怯えたような反応に俺は綱吉の顔をうかがうがいいからと唇が動いた。
別に無理をさせるつもりはないというのに、可愛い反応をする綱吉に笑みを浮かべて服を脱がせた。
ベッドに行くのももどかしく、ソファに綱吉を寝かせた。
何度もキスをして、緊張する度に宥めて中を指で広げる。
「ひっ…りぼーん、りぼーん…なんか、へん…」
「これが、きもちいいってやつだ…」
「でも、奥が…じんじんする…」
落ちつかないと腰を揺らす綱吉に理性が切れたのは不意打ちだったからだ。
充分に慣らしたそこから指を抜けば、息を切らして俺を見てくる綱吉にキスをする。
「奥まで擦ってやろうか?」
「ん、して…どうにか…して」
ニヤリと笑って言えば頷いて縋るように手を伸ばしてくる。
俺も抱き返してやりながら腰を引き寄せ、自身をゆっくりと挿入した。
苦しそうにうめきながらも、必死に受け入れようとする姿が健気だ。それを奪ってしまうのも堪らなかった。
悪い男だなと思いながらも綱吉の色香に魅かれて止まるに止まれない。
「全部、入ったぞ」
「はっ…あつい、奥まで…きちゃってる…リボーン、好き…すきぃ…」
もう自分が何を言っているのかもわかっていないような顔で告白してくる。
何度も言うのでこちらまで煽られ、突きあげたら腰に響く甘い声をあげた。
ヤバいと思いながらも腰を掴み突き上げる。
痛みを訴える声が聞こえなくなり、ただ感じている声に誘われるように二人で駆けあがった。
「はっ、はぁっ…もう、イってい?イっちゃうっ」
「イけ、声…聞かせろよ」
「はずか、しいぃ…っぁあ…はぁっぅっ…やぁああぁっ」
「綱吉、つな…っ…くっ!!」
恥ずかしいと言いながらも自分で声を抑えることができず綱吉がイった途端、こちらも耐えることができずそれでも中へ出すのは躊躇われて腹へと吐きだした。
荒い呼吸を整えて、だんだん落ちついてくると綱吉の上の白濁を、ティッシュを引き寄せて拭ってやる。
「シャワー、浴びるか?」
「え…と…もう少し、したら」
「そうか」
「リボーンって、やっぱり慣れてるんだな」
綱吉から言われた言葉に俺はなんて答えたら良いのかわからずにいたら、ただ言ってみたかっただけと笑みを浮かべた。
からかわれたのかと綱吉を見るが、そうでもないらしい。
「慣れてるのは嫌だったか?」
「ううん、気遣ってもらえてうれしい。あのね…俺さ、がんばるから…俺だけにして?」
少し痛みに耐えた顔を浮かべた綱吉に俺は思わず抱き寄せていた。
何も平気じゃないじゃないか。
これは変えられない事実だ。
多分、綱吉もそう思っているのだろう。けれど、抑えられないものもある。
俺は綱吉の頭をくしゃくしゃと撫でてもちろんだと頷いた。
元より、綱吉しか俺にはいない。
「綱吉、お前も俺だけにしろよ」
「うん…リボーンだけ」
それ以外いらないとまで聞こえてきそうな響きに俺はクラリと来てしまいそうになる。
なんだろうか、さっきから綱吉の色気が危ない気がする。
もしかしたら俺がどうにかしてしまったのだろうか。
思わず開発してしまったかもしれない可能性について考えそうになっていればケータイの着信音にその思考が遮られた。
「俺のケータイだ」
綱吉が自分のケータイを取り出すと中身を開いて、読んだのだろうにっこりと笑顔になるとこちらに画面を見せてきた。
それには写真が送付されていて、見れば骸の寝顔らしきものが。
「白蘭からのメールだよ」
「はぁ…あいつら…ってか白蘭か」
「見せつけたかったんだね」
こちらの仕返しかとつっこみたくなるが、この状況を見て丸く収まったのかと安堵する。
いろいろあったが何もかも収まったところで、これはハッピーエンドだと俺は綱吉にキスをした。
「シャワー浴びたら写真撮って送りつけるか」
「リボーンだけにしろよ」
綱吉と俺の笑い声がこだまして、次の日白蘭のもとにしっかりと俺のケータイから綱吉の寝顔を送りつけてやった。
END