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 誤解、すべて誤解だ

骸が俺に詰め寄り近づくなと言った日から一週間ほどが経過しようとしていた。
あれからリボーンと骸に接触することはなかった。
結局骸は俺の目の前でリボーンは自分のものだと宣言することもない。
なにが起きているのかわからず、俺は今日も講義を聞きに来ている。
そうして、あの時白蘭の聞かせてくれた話を思い返していた。

『恋人?』
『そう、コイビト…今となっては片思いになっちゃったけどねぇ』

そうして何かを考える白蘭の瞳にはやっぱり骸しか映っていないようだった。
そんなにも好きなのになんであんなに骸は怯えていたのだろう。
恋人と言うことならば前はもっと親密な関係にあったはずだ。
それなのに、どうしてこんなにも二人に溝ができてしまっているのか。
俺は聞きたくて、でもそこまで聞いてしまったらいけないことかと立ち去ろうとしたら、そーだ、と俺の肩を掴んできたのだ。

『な、なに?』
『協力、してよ。骸くんが僕の元に戻ってきてくれたらリボーンは君のものだ』
『何言って、だってあの二人は』
『付き合ってない。君が思っているように、二人は明らかに違うからね』

特にリボーンがと白蘭は俺に笑顔を向けた。
何かを信じて、疑わない顔。きっとそれを揺らがせてしまったら、崩れてしまうことを知っているんだ。
でも、なんでそこまで骸に執着するのか知りたかった俺は白蘭をじっと見つめた。
俺をそこまで巻き込むのなら、話してもらわないと協力できるものもできない。

『知りたいの?』
『だって、リボーンと付き合っていないとは言え…無理やり奪おうとするやつに委ねること出来ないだろ』
『それも、そうか。じゃあ自己紹介からだ。僕は白蘭、君たちとは一つ年下に当たるかな』
『と、年下っ!?』
『あれ?意外?これが普通だと思うんだけどなぁ?まぁ、君の方が小柄だと思うけれど』
『俺は、綱吉…誤解してるって何を?』

まどろっこしいのはやめにしようと単刀直入に聞いた。
すると直球だなぁと暢気な声が返ってきて、ここだと目立つからと学校を出て近くのカフェに入れば紅茶を飲みながら少しずつ話してくれた。

『僕と骸くんが付き合っていたのは、高校の時中学から同じ学校だった僕たちはすごく打ち解けて僕からの告白にも戸惑いながらも了承してくれたんだ…それから二年ほど続いたある日、僕は友達の女子に妊娠の話しを聞かせられて』
『はっ!?孕ませたの!?』
『違うよ、その子は彼氏との間の子だって言ってたんだけど、結局彼氏が怖くなって逃げちゃったみたいなんだよねぇ。で、女友達にも話せなくて一人で病院いけなくて、それで僕が一緒に行った。精密検査したら、流れちゃってたみたいで、事なきを得たんだけどそれの帰り道に出くわして…それっきり』

俺は白蘭のカミングアウトに少し驚きながらも、骸の行動にも納得いかなかった。
その話しを聞いたら、白蘭から何か言われるのが怖くて逃げているだけだ。

『なんで今まで放置してたんだよ。好きなら、もっと…こう…』
『僕は何度も行こうとしたんだよ。けれど、リボーンがいるから…この前ちょっと顔を合わせて、ようやく話をすることはできたんだ』

白蘭の話しに寄れば、リボーンとの話はもうついているらしい。
ただ、骸が怯えるようになってしまって手がつけられなくなるぞと言われて、碌に顔を合わせることはおろか近づくこともためらう状況が続いていたらしい。

『リボーンにも悪いことしちゃったんだ。リボーンがダブったのは実は俺のせいだったりもするんだよ』
『…何したんだよ』
『そんな呆れた目でみないでくれるかな?僕はこれでも結構真剣なんだよ』

無理だろうと思った。
結局のところ、リボーンは二人に振りまわされて巻き込まれているだけだ。
…多分、そうであってほしい。そこに、リボーンの意思は…ないと思っていたい。

『続けろよ』
『うん、骸くんに久しぶりに会いに行こうとしたんだ。そしたら、ああなっちゃって…僕を見た途端さっきみたいに、怯えて…リボーンに縋ってた。僕を見たくないって、そういう目をしてた』

何もかも僕の存在も拒否するんだよと笑った顔はもはや熱を宿してはいなかった。
ただ、冷たく…悲しいという感情が伝わってくる。
それもそうだ、たった一回のことであんな風に嫌われてしまったのでは、悲しくもなるだろう。

『で、二ヵ月ぐらいリボーンは監禁状態で、捕まっているわけじゃなく出ようとしたら泣き喚かれてどうにもならなかったらしくて。骸くんは単位が取れていたから進学できたけど、サボりがちだったリボーンは留年して…あの状況ができたとさ』
『何笑ってるんだよ。そんな簡単なことじゃないじゃん』
『簡単じゃないから、笑うしかないだろ?』

もう諦めたらいいんだと思うけどねと紅茶にスプーンを突っ込んで回しながら呟いた後、一口飲んで、テーブルに置いていた手をぎゅっと握りしめた。

『僕だけだったんだよ』
『何が?』
『骸くんを理解できるのは、今でもそうだ。リボーンは骸くんをみていない。それはすぐにわかったよ、幸せにできないなら僕がするしかないじゃない?ずっと哀しいって、ずっと寂しいって、思ってるんだ。どうやっても埋められないって思ってるんだ』
『なんでわかるんだよ』
『わかるよ、好きなんだもん。僕は骸くんしか見れないし、骸くんも僕しか見れない』

もうそうなってしまったと言った白蘭はだからね、と俺を見た。
俺は白蘭を見返して、口が助けてと動くのを眺めていた。

『僕がダメなら周りを使うだけさ。綱吉くん、協力してくれるよね?』
『わかった、わかったから…そんな目するなよ。白蘭も大変だったな』





そうして協力させられることになってしまったのはいいが、アドレスを交換して、それっきりだったりする。
作戦を練ったら連絡するからと別れて、一週間何もない。
騙されたのかと思うが、それはないと思う。
白蘭の目には嘘がなかった。骸の話しをしているときはどんなに寂しいことだろうと幸せが滲みでるほどに好きなのだろう。
元に戻してやりたいと思う。元の、あるべき姿へと…そして、リボーンは…。
そう思っていたら、思考から切り離すように隣の席へと座る影が見えた。
斉藤はいない、席も結構空いているのに、なんで俺の隣に座るのだろうと顔をあげた瞬間シャーペンをとり落としそうになって慌てて掴む。

「り、リボーン」
「しー、講義中だ」

なんで講義中にリボーンが俺の隣にいるのかと混乱していればドアのところを指さした。
少し隙間があいていて、しっかり閉めたはずがしまってなかったようだ。
そして、そのドアから俺のいる席は近い。
だから隣に来たというのだろうか。
でも、リボーンが隣に来ることなんて今までなかったことだった。
ずっと、俺の目の前に座るだけだったのに…なんで今日に限って隣に座るのだろうか。

「参考書見せてくれ」
「あ、うん」

そうか、持ってきてなかったのか。リボーンの言葉に少しずらして参考書をみせつつノートに書き込んでいれば消しゴム、と催促されて渡してやる。
今日はいろんなものを忘れてきているんだなと思いつつ、こんなに近くに居るリボーンは初めてだと胸が高鳴るのを抑えられない。
骸が言わなかったから、俺はリボーンを貰ってもいいのだろうか。
いや、こんな風にしているならこちらからも距離を縮めてみたい。
ちらちらとリボーンに視線を向けていれば、リボーンは俺の方をじっと見てきてびくっと視線をノートに戻し我関せずを貫く。
そうして、リボーンの視線がノートに戻ったのをみて、また俺はリボーンを見た。
が、戻そうとしたら頬に手を添えられた。
ぎくりとして、リボーンを見れば、声なき声で捕まえた、と口が動いた。

「っ…」
「おい、そこ煩いぞ」
「すみませんっ」

がたがたっと派手な音が響き渡り教授がすかさず注意してくる。
俺はすぐに謝れば、そのまましんっと静まってその場をやり過ごせた。
リボーンはと言うとくすくすという笑いをこらえているようだ。
全く、誰のせいでこうなったと思っているのだろう。
俺は零れたペンケースを拾い、真っ赤になった顔を隠すようにして講義を受けた。
あれは、一体何だったんだ。
あのままペンケースが零れなかったら、どうなっていたんだろうか。
そう思うだけで、治まったはずの心臓がまた煩くなり、俺はぎゅっと握りしめた。
骸とどうなったのだろうか。知りたい、けど、知りたくない。
この距離が、近い様で…近づけない。
そう思ったら、講義が終わって…リボーンは先に行くと一言それだけ言うと出ていってしまった。
教室を出たらそこには斉藤がいて、呼びとめられる。
そうして他愛ない話しをしながらさっきのことが夢のように通り過ぎていった。
これは何の予兆なのだろうか…。
それとも、ただの夢なのだろうか…。
でも、まだ俺は…なにも試せてはいないのだ。







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