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 すりーぴんぐびゅーてぃ

リボーンが授業中僕はカフェで待ち合わせをしていた。
時計を確認しながらもうすぐかと珈琲を一口飲む。

「おまたせしました、骸兄さん」
「クローム、しっかり調べてきてくれましたか」
「はい」

ぱたぱたと走ってきたのは双子の妹であるクロームだ。
今日待ち合わせをしていたのはこの子で、あの男の素姓を調べてくれるように頼んだ。
クロームは早速鞄を開けて僕にメモしたものを見せてくる。

「沢田綱吉、20歳…特技、勉強、運動、共に並みかそれ以下。友人もあまりいない、目だたない性格。…リボーンにはつりあいませんね」
「兄さん、またリボーンさん?」
「そうですよ、なんだか気になるようです」

クロームは控えめながら首を傾げて聞いてくる。僕はメモ用紙をもういらないですからとクロームへと返した。

「あまり、リボーンさんを束縛しないであげて」
「大丈夫ですよ、本気で嫌なら何かしら手段を講じてくる男です。まだ僕の好きにさせているということは、半信半疑。そう思っている間に、出る杭は打っておくにこしたことはありません」

僕が五年前に手がつけられなくなっていたことを知らない。
だから、どうしてリボーンがここまで僕に付き合っているのかをわかっていない。
わかっていないながらも、心配をしてくれるのだ。
僕と違ってよくできた子で、僕も良い方だが、クロームもいい。
時々はこうして頼まれものも快く引き受けてくれる。

「なにか飲んでいきますか?」
「ううん、私はこれから授業だから」
「そうですか、ありがとうございます」
「じゃあ」

礼をいうと笑顔を浮かべて走っていった。
同じ顔なのにああも可愛いとなるとやはり誰の男にも渡したくないものですね。
僕は珈琲を飲みほして、席を立つともう少しで授業が終わるためリボーンを迎えに僕は歩きだした。
僕がこうなったのには理由がある。それはまだ明かすことはできないが、リボーンは巻き添えを食らわせてしまっただけなのだ。
だからこそ、最高の相手と最高の恋愛をしてほしいと思ってしまう。
僕が泣き縋ったらあっさり抱いてしまうような優しい男、本人は優しくないと言い張るが、そんなことはないと思う。
僕限定と言うわけでなく優しい面はしっかりとある。クロームにだって手を差し伸べるのだ。
そうなってくると、つい悪い男にだまされないかと思ってしまうのだ。

「ですが、こういう場合…僕が悪い男になってしまうのでしょうね」

あの優しさに惚れたのは本当だ。
本当に恋人になってしまえばいいと、この学校に噂を流した。
それだけで、女性の目をかいくぐり男からも興味を逸らすことができた。
リボーン自体あまり交友しない性格だから独占するのは簡単だった。
けれど、リボーンが恋をした、いざ僕から離れてしまうとなると寂しい。
僕の心に空いた穴を偽りとは言え埋めていてくれた存在がいなくなってしまう、それは心の準備のできてなかった僕にとって衝撃だった。
だから、もう少しだけ…悪あがきをさせてほしいと思う。





じっと見てくる視線。
それは俺に向けられているんじゃない、隣の綱吉に向けられていた。
俺は斉藤真宏、友人である綱吉と共に講義を受けていた…はずだった。
綱吉は昨日よく眠れていなかったのか、講義の途中から寝てしまっている。そうして、最近綱吉に付きまとう男、リボーンが気付いた。
付きまとっているという言い方はちょっとおかしいのかもしれない。
こいつらはお互いに魅かれあっているのだ。
リボーンには恋人がいる、と言うのに。
俺は止めとけと何度も忠告している、現在進行形で。
でも、綱吉はリボーンが気になる様子で、リボーンもこうして綱吉が見ていない所ならガン見するぐらいには気に入られているらしい。
ついでに、恋人の骸とか言うやつは、今日はいないみたいだ。
いた日にはリボーンはこうして綱吉を見ることもできないでいただろう。
あいつは綱吉に殺気を向けてきている、本気ではないと思うが…本気が混じる勢いだ。
綱吉がリボーンに何かしでかしたものなら普通にカッターやそこらがでてきそうなぐらい。
骸は案外わかっているのかもしれない、この二人の行くべき結末を。

「なんだかねぇ」

小さく呟いた声は綱吉にもリボーンにも聞こえなかったみたいだ。
そもそもこの教授の声はうるさいぐらいなのに、良く寝れるよなと俺は感心して綱吉をみていた。
起こしてやりたいのはやまやまだが、起こした途端リボーンに殺気を向けられそうでできない。
綱吉には悪いが、自力で起きてくれと我関せずを貫いていた。
そうして、授業を聞いていた俺だが視線を感じて俺は教室内を見回す。
案の定俺に視線を向けている人物がいた。
白い頭が特徴的な男、にっこりと貼り付けたような笑みを浮かべていて…一瞬たじろいでしまった。
何なんだろうと見続けていれば、すっと視線が逸らされてしまう。
ばれたくないというところか…。
誰に…?と考えて、一つの思い当たる節に行きついた。
今はもう前を向いてノートをとっているリボーンと、綱吉だ。
俺はとてつもなく嫌な予感に、少し隣の男を恨めしそうに見る。
ここまであからさまなことはなかったが、綱吉は若干巻き込まれ体質である。
校庭で蹴ったボールが頭に当たるのがこれまでの経験上十回ほど、何かの事件に巻き込まれることは結構あった。
福引券を拾ったり、誰かに優しくしてもらったり。良いこともあれば厄介なこともあった。
いろんな意味で綱吉はいろんなことに巻きこまれてきたが、今回ばっかりはちょっと遠慮したい事態だ。

「もしかして、綱吉ってば…モテ期?」

呟いてから有り得ない構想に俺はぶんぶんと首を振る。
そうして、今のうちだと綱吉の肩を揺らした。

「おい、綱吉起きろって。あまり寝てると教授に気づかれるぞ」
「ん…斉藤?」
「そうだよ、起きろ。いままだ講義中」

綱吉はまだ夢の中のようでしばし俺を見て目をぱちぱちとしていたが、はっとすると黒板とノートを見比べている。
俺は内心で安堵のため息をついた。
前に起こした時は講義のことをすっかり忘れてあーっと大きな声をあげていたのだ。
それに比べたら、今日のなんて…全然……。
楽じゃないかと思ったところで目の前の視線に気づく、今度は俺に注がれていた。

“よけいなことすんじゃねぇよ”

ああ、すみませんでしたね。貴重な観賞時間をとりあげてしまって。
俺はすっと視線を逸らすことで、リボーンの視線をやり過ごした。
大体このままにもしておけないだろうと思う。
リボーンは一度受けている授業だろうが、こいつにとっては何もかも覚えなければいけないことだらけなのだ。
そこらへんも考えてやってくれないものかと思いつつ、講義が終わりリボーンはいつもの様な余裕な顔で席を立って出ていった。

「余裕な顔も大変ですね、と」
「どうかした?」
「なーんでも、綱吉お腹すいちゃったから飯食べよう」
「そうだね、俺は斉藤のノート写させてもらいたいし」

結局黒板を写しきれなかったんだなと苦笑しながら綱吉の言葉に頷いた。
二人でカフェへと向かい、軽い昼食を注文した。
眠気の残っているらしい綱吉はカフェオレを頼んでノートを写している。
平和なはずだが、そろそろ一悶着ありそうだなと俺は思ったのだった。







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