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 ふるえる心

あれほど通い詰めていたと言うのに、リボーンは俺が来ないでと言った日から部屋にはこなくなってしまった。
隣の音を聞いていれば確かに返ってきている気配はするのに、俺の部屋に来ることはなかった。

「こない…やっぱり、気にしてる…んだよな」

リボーンが部屋に来ない限り、俺から話すなんてできない。
どうしたらいいのだろう…。

「いや、でも逢いに行った方が…」

そもそも、俺がリボーンの部屋に行ったことって今まで一度もない気がする。
あいつが毎日のように通ってきたからで、俺は仕事があったし行く必要もなかったのだ。
俺は拒否されたらと不安になりながら立ちあがった。
思い立ったら吉日というし、こんな思いをしまったままでいるのも、少し怖い。
部屋を出て、リボーンの部屋のインターホンを押した。

「……綱吉」
「来ちゃった…うわっ」

鳴らして暫くするとリボーンが出てくれた。
最初は驚いた顔で…俺が苦笑を混じらせて言うといきなり腕をひかれて部屋へと引き込まれる。
バタンと扉が閉まる音を背中で聞いた。
俺はリボーンの腕の中で、とても暖かくてついその温もりに身を委ねてしまう。

「リボーン……」
「綱吉、すまん…俺がもう少し気をつけてれば…」
「いいよ、もういいんだ…もう、よくなったから、皆が俺を認めてくれたから」

俺がこれまでのことを説明すれば嬉しいような悲しいような複雑な顔で笑みを浮かべるとそっと俺を抱きしめていた腕を解くなり肩を掴んで離された。
どうしたんだと見るとリボーンはとても真剣な表情だった。
なんでそんな顔をするんだ…。

「りぼ…」
「もう終わりだな」
「え…?」
「俺はお前を脅してた。この関係がバレたくないなら身体を差し出せってな」

リボーンの言葉に目を見開いた。
きっと、リボーンは離れようとしている。
俺はそれだけは嫌でリボーンの腕を掴もうとするが、するりとかわされた。

「それがバレて、しかも受け入れられた。俺としては罪悪感を感じなくもなかったが、心配はいらねぇみたいだな。そもそも、俺はゲイじゃない、一緒に居る理由もないな」
「っ……」

リボーンに冷たく言われて俺は胸にナイフが刺さったような痛みを覚える。
縋るように見るが、その瞳がもう俺に対して優しく微笑むでもなく見下された。

「言っただろ、ただの遊びだってな。なかなか楽しかった」

リボーンはそれだけ言うなり俺の言葉を聞くでもなく無理やり腕を掴まれてこの部屋に入れられた時と同じように部屋の外へと放り出された。
どうして、と聞くまでもなかった。
リボーンは俺なんかに恋愛感情なんてもっていなかったから。
…それでも。

「やだ……」

嫌だ。
こんな風に終わってしまうなんて。

「やだぁ…リボーン……」

俺はやっと答えを見つけたのに、ようやくたどり着いたゴールで突き放されてしまうなんて。
涙で前が霞む。
そんなのも関係ないとばかりに目の前の堅く閉ざされてしまったドアを叩く。
あんなに優しくしてくれたのに…
全部してきたことは、嘘なのか?

「りぼーん…りぼーん……すき、なのに…」

いつしか叩くこともできなくなって、静かに腕を下げた。
ぽつりと漏らした本当の言葉。
逃げずに、この想いに早く気づいていればよかったのだろう。
けれど、あまりにもリボーンの近くは居心地がいいからいなくなったことなんて考えられないぐらい満たされていたから。

「………いて、ほしいよ…また、いっしょに………っ」

ドアの前で、みっともなく呟いた言葉は誰にも知られることはないと思っていたのに、カチャリと鍵の開く音に思わず顔をあげれば不機嫌な顔がそこにはあって、近所迷惑だと言われるかもしれない恐怖に思わず後ずさる。

「お前、そんなこといって幻滅してもしらねぇぞ?」
「んっ…しないっ…」

今度は俺から抱きついた。
ぎゅっとしがみつけば優しいキスが降ってくる。
何度も何度も繰り返して、ドアが締まれば壁に寄りかかるようにしてぶつけるようなキスに嬉しくなりながら受けていたがそれがだんだん下へと下がっていけば思わず顔を赤く染める。

「ここで、するの…?」
「一回だけだ、とりあえずお前を堪能させろ」

脳髄をしびれさせるような声で一言言われてしまえば頷くしかない。
ちゅっ、ちゅっ、といろんな所へキスをしながら服を脱がしつつ唇が降りていく。
感じる場所に唇をつけられるたびにビクリと震えるが、そっちには興味はないのかどんどん下に向かい辿りついた先はリボーンに欲情して震えるはしたない俺のあそこ。

「やっ…きたないから…」
「そんなの今更関係ないだろ…気持ち良くしてやるよ」

ズボンを脱がされて見せつけるようにそこを舐めたリボーンをいやらしいと思った。
それなのに、俺のそこは感じて先走りをにじませるからますますリボーンを図に乗らせてしまう結果になった。
一気に先端から喉奥へと入れられてきゅっと締められる。
それだけで腰がビクンッと揺れて背中を反らせた。

「ひっ…ああっ…やあああっ、きもち、い…あー、いいっ…」

直接与えられる快感に行き場のなくなった腕で自分の視界を遮るとますます感じてど壺にはまった。
喘ぎ声が外に漏れてしまわないかと不安になったのは最初だけで、リボーンの愛撫は気持ちよくてここがどこなのかもわからなくなってくる。

「やっ…イく…でちゃっ、あっ…あうっ、そこっ、ああっ!!」

競り上がってくる快楽の波に口を離してと髪を掴むが、鬱陶しそうに払いのけられて秘部に指をのめり込まされ、感じる場所を突き上げてくるからすぐにイって、リボーンの口へと吐きだした。
残滓まで絞り取るように吸われて、その刺激に感じそうになっていると口を離したリボーンは俺を抱き抱えて寝室へと向かう。
俺の部屋と同じ間取りに、ボーっとしながら同じマンションだったとしみじみ感じながらベッドに下ろされる。
見下ろしてくるリボーンの瞳はいつにも増して、欲情に満ちていた。

「あ…さわって……」
「どこをだ?」
「ここ…と、ここ…こっちも…うぁ…あー、んああっ…」

促されるままに少し恥じらいを感じながらも、リボーンの手を取って触ってほしい場所を唇胸、秘部と触れさせていけば俺の導いた手はそのまま秘部への愛撫を開始させ、胸を揉まれながら唇を甘噛みされる。
いっぺんにされて堪らないと首を振るとリボーンの唇が俺の唇を追いかけてくる。

「綱吉、俺も好きだぞ…」
「ん…うんっ…すき、すきぃ…」

甘い、囁きに俺も返せば嬉しそうに笑っていて珍しいと、こんな顔またどこでお目にかかれるものじゃないと観察するように見ていれば、こっちに集中しろとぐちゃぐちゃとわざと水音をたてて羞恥を煽ってくる。

「ひぁっ…あぅっ、ふぅぅっ…んっんんっ」

唇を塞がれて咥内を舐めまわされる。
酸欠で目が回ると肩を叩いて訴えれば秘部を弄っていた指が抜けると同時に唇が離れる。すぐに自身をあてがわられ、その大きさと堅さに思わず身を固くするが宥めるようにキスをされてその間にゆっくりと入り込んできた。

「っ…はっ…んっ…ふあっ…ああっ…」
「…っ、あっちぃな…」

慎重に進んでいるからか、暑さのせいか額に汗を溜めているリボーンの前髪を払ってやり、もうきて大丈夫だと首に腕を回して引き寄せた。

「ぁあっ…だめっ、そこ、したら…すぐ、イっちゃうっ…あああっ、やあっ…あーああっ」

リボーンは的確に俺の感じる場所を突き上げるとそこばかりを狙ってくる。
駄目だと言うのに、聞いてくれずせめてもの仕返しにリボーンの背中に思いっきり蚯蚓ばれを作ってやった。
が、それも嬉しい要素でしかないと笑みを浮かべられてしまえばそのまま身を委ねるしかない。
ぎゅうぅっ、とリボーンを締めつけて白濁を放った。
心が満たされて、身体も満たされて幸せだ。

そして、そのあと何回か身体が求めるままにやって満足したころに俺を介抱しながらリボーンは自分のことを話してくれた。
闇金融に勤めていて、一時は追われる身になってしまっていたこと、それを全部片付けてくれていて今は俺のヒモになるしかないと冗談交じりにいったことには驚いたけれど、それはそれでいいんじゃないかと思う。
顔はいいのだから、本気でやりたい仕事を探せばすぐに見つかる。
それまでは、俺の部屋でずっと一緒の時間を過ごしていたいと考えた。
これからは、知らないふりをしてきたお互いを知るための時間だ。
沢山ある、これからに俺は頬を緩ませた。

「リボーン、今度…俺の友達紹介するね」
「ああ、どんなやつか教えてくれ」
「リボーンも教えてね…どんな人でもいいから…全部教えて」

隠したり、言わなかったりはあると思うが、できるだけ相手を知りたいと思う。
俺達の関係を知らない人がいないように、お互いどんな風になっても連絡がつくように。
お互いが、大事だから…。






END






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「見えない臓器の名前は」
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