◎ 菖蒲色に染まる
俺は言わなきゃならないことがあった。
綱吉の、母親である姉さんにだ。
俺は静かにケータイを開いた。
今日は綱吉が友達と遊ぶとかで出かけている。
その時を狙って、姉さんの番号にコールした。
『もしもーし、どーかした?』
「どうもなにも…俺がこうして自分から電話した理由を、姉さんはわかってくれるだろ?」
『……聞きたくないから、それ。私の綱吉に手ぇだしたわね?』
第一声は元気よく返事をしてくれたのだが、仄めかして言うなり途端声が低くなった。
怒っていることはわかるが、こうなっても仕方ないと言うのは姉さん自体わかっていたことだろう。
「俺に頼んだ時点で、こうなっても文句は言えなかったぞ」
『もう、あれが後になるか先になるかの違いしかなかったわけね。あの子が良いって言うならそれでいいわ。いいんだもんっ、もう一人作るからっ』
「精々がんばるんだな。綱吉は卒業まで預かるから、それまでに作っとけよ」
『開き直りやがって、綱吉はあげたわけじゃないからねっ。ちゃんと卒業したら一旦返すのよっ!?』
「わーったわーった、じゃあ子作りに励んどけや」
『ったく、あの子泣かせたらしょうちしないから』
「…それは、ないから安心しろ。大切にしてやるよ」
なっまいきっと吠える姉の電話を切ると緊張にかたまっていた手を開いた。
いつものようにできただろうか。
余計なことをいってしまったきがしないでもないが、それぐらいがちょうどいいだろう。
とりあえず、俺は綱吉を待つことにした。
俺は俺で久しぶりのゆっくりと過ごせる日を堪能したいのだ。
夜になり二人で夕食を食べた。
綱吉はあまり遅くならない時間に帰ってきて俺は一人で食べるつもりでいたが、帰ってくるって言ったじゃないかと怒られた。
友達と遊ぶと時間を忘れるものだと思ったが、綱吉はそうではないらしい。
「綱吉、そんなにぶすくれるな」
「だって、俺は帰ってくるって言っておいたのに、一人で食べようとしてるし。俺ってそんなに信用ないの!?」
「違う、たまには俺のことばかりじゃなくて友達とも仲良くすればいいと思ったんだ」
だが、綱吉は俺がそれを言うとますますムッとして黙々とご飯を食べている。
これは、困った。
こんなことで綱吉を怒らせるつもりはなかったんだが…。
「俺は好きでしてるんだから、リボーンさんが勝手に決めるな」
「…わかった」
「俺の優先順位はリボーンさんなんだから、口出ししないで」
「わかった」
「じゃあ、仲直り」
にっこり、と笑って手を差し出してくる。
いつの間に主導権を握られてしまっていたのだろう…。
俺は綱吉の手を握ってやるとそのあと腕をひいて、近づいてきた唇にちゅっとキスをした。
「恋人の仲直りは、これだろ?」
「…もうっ」
真っ赤になった顔に笑みを向けてやればしぶしぶといったようすでまた食べ始めたのだった。
食べ終われば順番に風呂に入り、俺は自分の部屋で会社の資料を開いていた。
家に仕事を持ち込みたくないのだが、どんなに頑張っても無理な時はある。
俺はため息をついてそれを机に戻した。
そしたら、控えめなノックの後に綱吉が顔をのぞかせる。
「リボーンさん、一緒に寝ていい?」
「ああ、こっちにこい」
遠慮がちに言われた言葉。
これは綱吉なりの甘えだ。
これが、今夜したいの合図。
俺は隣をあけてやり、綱吉の入るスペースを作る。
枕を持ってきて隣に置いた。
すると俺をじっと見つめてくる。
それに応えるように口付けた。綱吉の腕が俺に伸びる。
首に回されて欲しいと強請られる。
口に出して言ってもいいのだが恥ずかしいのかなかなか口に出してくれない。
まぁ、それはおいおいだな。
お湯に浸かってきたらしく身体は温かく、触れると俺の指先が冷たいのかぴくりと反応を返す。
「冷たいか?」
「いい、大丈夫…」
驚いただけと、綱吉からキスをされて俺は笑みを浮かべた。
甘い身体をベッドに横たえる。
パジャマの中から手を抜くとボタンを外していく。
少しずつ露になる肌に舌を這わせると手を口元に当てて声を耐えている。
好きにさせながら俺はそのまま下着も脱がせてしまう。
突起にちゅっとキスをすればぁっと小さな声が聞こえた。
「敏感になったな」
「りぼーん、さんが…さわるから」
「そうだな」
言い訳するような言葉に頷いて俺が触るのは綱吉が感じるからだと言いたかったが、ややこしくするのは止めようと言葉を飲み込んだ。
舌で胸と苛めながらもう芯を持ち始めている自身に触れた。
「ふっ…あっ、そこ…」
「好きだろ?ここを触るといつもすぐにイくくせに」
「あっぁぁっ…だってぇ…んんっ…」
扱いているとすぐに勃ちあがり震え始め、先端に先走りを滲ませている。
そろそろか、と俺はそのまま秘部に指を滑らせた。
すると、そこはもう柔らかく濡れていて不思議に思って綱吉を見れば顔を真っ赤にして両手で顔を隠している。
「なにしてきたんだ?綱吉」
「んっ…いわな、で…」
「言わないとわからないぞ?」
にやにやと笑って綱吉の両手を引きはがす。
すると泣きそうな顔がそこにあって、苛めすぎたかと思うがそんな姿が堪らなく可愛く歯止めが効かなくなる。
つか、姉さんと約束…守れそうにねぇな。
泣きそうに顔を歪めている綱吉はどう見ても可愛い。
そそられる、我慢なんてできるはずもない。
「綱吉?」
「リボーンさんが…あれ、つけるから…今日は、なしにしてほしくて…」
「は?」
一瞬綱吉の言っている意味がわからなかった。
あれといわれて俺は少し考えた。
それはすぐに思い辺り、多分綱吉が言いたいのはコンドームのことだろう。
俺が身体を繋げる時にする度、複雑そうな顔をしていた。
もちろん、つけないやりかたもつけるやりかたもメリットとデメリットがあると教えてある。
俺は綱吉の身体を大事にしたくてゴムをつけているのだ。
だからこそ、綱吉は積極的に言えなかったのだろう。
「あの、だから…その、ゴム…」
「わかった…そんなに生が良いのか?」
「なっ…そうだよっ、いいだろ…俺だって…ちゃんと、リボーンさん…感じたい」
拗ねたようにふいっと顔を反らせられて俺は堪らない気持ちに胸が高鳴る。
「ったく、何もかもそうやって受け入れやがって、どうなってもしらねぇぞ」
「いいよ、どうにかするのは…りぼーんさんしかいないんだ…リボーンさんだけ…」
足を開いて両手を広げてくる。
どこまでも俺にいろんなものしょわせやがる。
そんなことを言っても俺が乱暴に抱くはずがないのに。
「少し黙っておけ」
綱吉の言葉は毒だ、甘くとろけるように俺の脳の中枢を刺激してくる。
足を掴むと、柔らかいそれを広げて秘部に指を入れた。
すっかり濡れてとろけている、二本いれても柔らかく締めつけてくるだけだ。
中をかき回せば甘い声をあげて、もういいと視線で訴えてくる。
「ほしい、ねぇ…リボーンさんっ…」
「呼び捨てでよんだら、入れてやる」
いつまでもさんづけなんてどこまで他人行儀なんだと言ってやればすぐに呼び捨てになった。
「リボーン、りぼーん…あぁ、ほしい…からぁ…」
すんすんと泣いてすり寄る綱吉に口付けた。
甘い舌を吸って、咥内を舐めながら俺は自身を出すと指を抜いて秘部へと挿入した。
いつもより熱を感じて、いつもより締めつけを堪能した。
そのまま動き出すと、背中に爪を立てられた。
「っ…」
「ひぁぁっ、なに…これぇ…あぁァッ…やぅ、だめ…だめぇっ」
「綱吉…つな、大丈夫だ…感じるだけだろ?」
感じすぎて恐いと俺の胸に顔を埋める綱吉の頬を優しく撫でて問いかけた。
こくこくと頷くのを見れば、なら大丈夫だなと動きを止めないまま抱きしめる。
「ふっ、あぁっ…こんなの、しらない…あぅっ…かんじるよぉっ…」
「こうなりたかったんだろ?こう…して、奥…ついて、ほしかったんだろ?」
俺も止めるに止めれなくなりながら綱吉を突き上げる。
最奥を突き上げるたびに甲高い声を上げる。
最高だなと笑みを浮かべれば、そのまま吐き出してしまえと自身を扱き始めた。
「はぁっあぁっ…りぼーん、ねぇ…あの、ふあぁぁあっ…」
「なんだ?」
「なか、で…だして…だして…?」
「くっ…わかった、だしてやるよ…」
奥にかけてやる、と厭らしく囁けばそれだけで感じるようで小さく声を上げると締めつけられる。
最高だなと恍惚として思いながら腰を振った。
奥を突き上げ、自身の先端をひっかくと腰に響く声で白濁を放つと同時に中を吸いこむように締めつけられて俺も中に白濁を放った。
『おじちゃん、みてみて』
『おじちゃんじゃなく、リボーンだ』
姉にできた幼子の呼び方につい口を出してしまいながらもその子が持っている物を覗き込んだ。
ハンカチにくるまれた掌の中には小さな鳥の雛がぴよぴよと鳴いていた。
上を見れば鳥の巣がある。
多分落ちてしまったのだ。
『もどしたいのか?』
『うん、つっくん、のぼれるよっ』
『ああ、ちょっと待ってろ。今脚立持ってくっから』
急いで戻してあげようとする綱吉を宥めて俺でも届かないそこへどうしようかと思考を巡らせて確か脚立があったと思い立つ。
あれなら俺でも届くだろう。
綱吉にそこで待ってるように言い置いて俺は簡単にそこを離れた。
そうして戻ってみればぐったりとした綱吉がそこに倒れていたのだ。
頭から血を流して、手にはしっかりとハンカチだけを残していた。
多分、綱吉は俺の言いつけを守れず上って、雛を戻した途端落ちたのだ。
俺はそれを見た瞬間内臓が冷える思いをした。
必死で俺についてこようとするのを見た。
俺を絵に描いてくれたり、ずっと一緒にいるためと夫婦の真似事までした。
そこまでの感情なんてなくていいと思った。
ただ、子供の内での遊びでも俺はその時がすごく楽しくて、綱吉を可愛い弟のように思っていたのだ。
俺は慌てて家にいる姉を呼び救急車で綱吉は運ばれた。
その間に俺は散々責め立てられた。
あんたが目を離さなければ、あんたがちゃんと面倒見てくれていれば、あんなことにならなかったのに。
これから綱吉に顔を見せないで、と言われて俺は頷いた。
俺がいないことに綱吉は戸惑うかと思ったが、幸い綱吉は記憶をなくし、あの怪我より以前のことは忘れてしまったと姉から聞かされた。
俺は残念に思うと同時に安心したことを思い出した。
もう、綱吉に合わせる顔もないと思っていたのだ。
あの日姉さんが連れてくるまでは。
隣で疲れて眠っている綱吉のこめかみの傷に触れた。
縫った痕は残ってしまっているが、なんとか目立たずに済んでいる。
「たすけられなくて…ごめんな」
ちゅっとキスをして抱きしめた。
一度は離した手を、もう二度と離すことはないだろう。
次は、俺の全部をかけてでも守ってやるから…。
END