パロ | ナノ

 緋色の熱情

まさか、リボーンさんが俺を好きだったなんて…そんなこと。
信じられるわけないだろっ。
けれど、たしかに俺の目の前にリボーンさんの顔があって嘘でも夢でもないことを伝えてくる。
なんというか、一瞬で未来は変わってしまうのだ。
だって、俺はそんな望みないと思ってたのに。
キスとか…してもらえるなんて思ってもなかったのに。

「はぁ…ん…」

ちゅっちゅっとキスを何度もされて俺は満足げな声を出してしまう。
そうして離れて優しく頬を撫でられた。
うっとりとした目でリボーンさんを見つめているとまたキスをされてあんまりすると唇が痛くなるかもしれないと思うのに止める気がないのはこの些細な接触が心地よくて離れたくないと思っているからだ。

「もう寝るか?」
「ん……」

一緒のベッドでとか考えたことなかったけど、その温かな温もりに包まれることがこんなにも心地のいいことだなんて初めて知った。
でも、なんとなく懐かしいような温度に俺は自然と瞼が重くなってくる。
おやすみと耳元で囁かれて俺は、目を閉じたのだった。




いつものように目が覚めると隣にリボーンさんがいなかった。
いつも俺が起こすまで眠っているのに、どこに行ったのだろうと起き上がった。
すると風呂場からシャワーの音が聞こえる。
朝風呂なんて珍しいと俺は風呂場の近くまで行って、そろりと中を覗き込んだ。
まだシャワーを浴びているらしく俺のことにも気づいていないようだ。
服を見ればそのままスーツに着替えるらしい。

「なんでシャワーなんか浴びてるんだろう…?」

俺はよくわからずに、でも時間が押していることに気づけばそれ以上追及することは止めて朝食の準備に取り掛かったのだった。
それからリボーンさんは出てきて朝風呂のことでは何も言うことなくいつものようにご飯を食べて出勤していった。
俺も片づけをして部屋を出れば学校へと向かったのだった。




何か大事なことを忘れている、と気づいたのはその日の昼だった。

「あのさ、佐条」
「どうしたんだよ?」
「恋人って、どうやって接していくべき?」
「ぶっ」

俺が聞いた途端佐条は口に含んだばかりのお茶を吹き出していた。
汚い…。
っていうか、何か俺は変なことを言っただろうか。

「えっ!?なにそれ、はっ!?…俺にわかるように説明してみ?」
「だから、恋人とどうやって一緒に居たらいいのか、な…って」

やっぱり変なことを言っているのかとちょっと恐くなってきた。
俺は普通なつもりなのに、なにが変なのだろう。
何もかも初めての俺には何がおかしくて何が正常なのかわからない。
ふむ、と首を傾げていると佐条が俺の肩に手を置いてきた。

「あのな、綱吉」
「うん」
「そう言う話は、恋人さんに聞きなさい…つか、恋人って誰なんだよ?」
「それはリ…いや、なんでもない…秘密」

俺はつい、何気なく聞かれた一言に答えそうになって慌てて口を塞いだ。
男が相手というのはいくらなんでも言ったらいけないだろう。
…なんというか、リボーンさんは男で叔父さんなんだよなぁ…。
(あれ?それってやっぱりまずいんだよな…)
人には到底言えることのできない状況に今更ながら恐くなってきた。
この関係を恥じるつもりはないけれど、なんというか怖気づく。
ダメダメな俺だからつい口を滑らせてしまったりするかもしれない。

「秘密って…まぁ、いいけどさ。綱吉は誰かと付き合うとか初めてなんだっけ?」
「うん、どうしていいか今一よくわからないんだ」

名前を聞かずに俺の相談に乗ってくれるらしい佐条にありがたい気持ちでいっぱいになる。
これが初めての恋愛だなんて遅れていると言われるかと思えばそんなことはなく。
佐条は真剣になって教えてくれた。
相手の好きなことを一緒にしてみるとかちゃんと構ってあげたりだとか。
色々アドバイスをもらって、少しぐらいは実践してみようかなと思うことが何個かあった。
けれど、佐条の最後の言葉に俺はまた首を傾げた。

「セックスって…どうやるの?」
「いや、根本的なこと俺に聞くのかよ…」

男同士ということは言えないけれど、佐条からセックスは大事だと言われた。
けれど、そういうことをしようにも俺も男だし…男女だったら簡単な話なのだが、こういうときどうすればいいんだろう。
ますます問題が山積みだと頭を抱えると頭をぽんぽんと撫でられた。

「あのな、とりあえず相手が求めてこないとかアプローチしてこなければ少し様子見とけ、女の子ってのは複雑だからな、少し焦れてきたりとか甘えたそうにしてたらそこがチャンスだ」
「へ、へー…そう、なんだ」
「ああ、優しくしてやれよ。そうだ、雑誌今度持って来てやろうか。良い雰囲気作りのしかたとか特集してあるのもってるんだ」
「えっ、そこまでしてくれなくても…」
「ああ、叔父さんに知られたらまずいよな、じゃあこっそり学校で見よう」

それでいいかと言われて頷くしかなかった。
別にそれを見ても何の解決にもならないわけだからだ。
だって、相手は男の人で年上。
右も左もわからないどころか養われている立場で何ができるかと言えば、普通に食事を作ったりすることぐらいじゃないだろうか…。




パソコンの光が眩しい。
というか、職場に差し込む日差しが眩しい。
目に痛い。
昨日、俺はあまり寝れていなかった。
そもそも、告白し合って恋人同士になった二人がキスだけで寝るなんてことになったのは二十数年生きてきて初めてだった。
そういえば綱吉からそういう猥談のようなものを聞いた試しがない。
単に俺が大人だから言うのをためらっているのか…それとも、本気で何もしないのか…俺にはさっぱりとわからなかった。
隣の綱吉の感触を思い出せば眠れずに今日は睡眠不足だ。
朝から風呂に入ったのは、まぁとんでもないことになっていたからだ。

「はぁ…」

つきあったはいいもののこのまま手をだしていいのか躊躇われる戦況だ。
知らずため息を溢しながら目薬を差そうと上を向けば垣の姿があった。

「なんだ?」
「なんか、なやんでそうだなぁっと。お疲れみたいだし」

はい、と置かれたのはインスタントコーヒーだ。
俺はそれに口をつけると垣を見た。

「年下の恋人だったら、お前はどう付き合う?」
「えー、なにそれ。普通じゃないの?年下とか関係なくない?」

羨ましい悩みですこと、とわざとらしく言うがそれでも考えてくれているらしく黙った。
そんなこと俺は一回も思ったことがないことだった。
付き合うなんてことは自然とできてくはずなのに、綱吉だと上手くいかない。
なにが違うのだろうか。
なにも変わったことなどない。
ただ、相手が男で甥だってことだ。
それこそどうでもいいことだと思う。

「とりあえず、いつもと違う風にしてみれば?」
「たとえば?」
「例えばって…うーん、相手に意識してもらえることがまず大事だからそういうのを踏まえて」

何かあるだろうと言われて丸投げされてしまえばいい加減なやつだとため息を吐く。
けれど、なんとなくイメージが湧いた。
意識してもらうのは大切だ、少しずつでもいい、綱吉がこの関係の重要さに気づくように。

「お前、たまにはいいこと言うんだな」
「たまにはって余計じゃないかな?参考になったらいいんだけどね」

自分の席に戻っていく垣を見送れば俺は眠気を振り払うようにコーヒーを一気に飲み干せば仕事に取り掛かったのだった。




仕事を終えて帰ればもう部屋に電気が灯っている。
早く行こうと足早に向かい、ドアを開けるとぱたぱたと綱吉がやってくる。

「ただいま」
「お、おかり、なさい」

なんだかぎこちない綱吉の態度に首を傾げた。
朝出て行くまではこんな傾向まったくなかったのに。
どうしたと言うのだろう。
俺は何もやってない、では、綱吉がかってに何かを考えていたのだろう。

「どうした?なにかあったか?」
「ううん、なにもない」

笑ってしまいそうになる顔を必死に抑えて綱吉の頭を優しく撫でるとこちらを見上げてくる。
これは、キスをしてもいいと言う合図なのだろうか。
ちゅっと音を立ててキスをしてやれば満足げに笑みを浮かべる。
それでもなんだか俺の反応をうかがっているのを感じてしまえば、今日の夕飯はなんだ?といつものように問いかけた。

「うーんと、オムライス。それと付け合わせに色々」

嬉しそうに話す綱吉に笑みを浮かべれば中に入り席について二人で食べ始めた。




そうして夜、綱吉は俺の部屋に来て一緒に寝てもいいかと聞いてくる。
それに頷いてやれば隣に入り込んできた。
こんなに無防備でいいのだろうか。
俺がどんなことを考えているのかも知らないで。

「あの、ね…」
「なんだ?」
「あの…その、笑わないでくれる…?」
「別に笑わないが、そんなに面白いことか?」
「そうじゃないよ…」

布団を握りしめながらぽつりぽつりと溢してくる綱吉に俺は自然と身構えた。
だいたいこういう風に改まって言う時は何かある。

「…えっと、どういうふうにしたらいいのか…わかんない」
「は?」
「俺、どうしたらいいのかわからない」

一瞬綱吉は何を言いたいのか全く見当がつかなかった。
けれど、布団の中で俺の服をぎゅっと握ってくる綱吉を見てしまえばそれが俺達の関係のことを言っているのだとようやく気付いた。

「お前は、どうしたい?」
「どうしたいって…」

ここまで何もしらない年頃の男というのも珍しい。
俺は自然と優しくなる声音に自分で気持ち悪いと思うも綱吉は頬を染めてくれているので良しとしよう。

「俺とどんな関係になりたいんだ?」
「…え…俺がいうの?」
「ああ、言ってくれ…俺は綱吉に合わせたいんだから」

戸惑う綱吉に宥める言葉を囁く。
優しく、甘く、何も俺は危害を与えないと言うように根気よく。
綱吉はしばらく目を逡巡させた後、俺の服を握ったままに見上げてきた。

「キス以上のことも…教えて、欲しい…」
「わかった、なら…気持ち良くなろうな」

触れるだけのキスをして言うなり俺は綱吉の服のズボンに手を入れた。
驚いた綱吉はえっえっ!?と混乱しているようだったが、自身を握りこむとやわやわと揉む。

「なっあぁ…なん、で…?」
「セックスのしかたぐらいは知ってるだろ?まぁ、今日は触るだけだけどな」
「なにそれ、やだ…手が、きたないよ…」

感じるのも早いらしくびくびくと身体を震わせて俺の手を先走りで濡らす。
俺はそれに満足したように笑って今度は扱くように動かしだす。

「ねぇ、これ…俺だけが、きもちいいんじゃないの?俺だけで、いいの…ねぇ、りぼ…さ…あぁっやぁっ…んんっ…」
「お前の声で感じてるから心配すんな」
「はっ…やっ、きかないでぇ…あぁっ、こんなの…へん…」

感じる身体が変と言いながら他人にされるのは初めてだろうに骨抜きにしてくるような甘い声をあげて、足はいつの間にか開いていた。
感じやすい身体だと思う。
俺には、勿体ないくらいだ。
綱吉に何度もキスをして、感じすぎる身体に絶頂を促した。
手には出したくないと泣きながら言われたがそれだけは聞けなかった。
そのまま追い込んでやれば身体を震わせて白濁を俺の手に出して、そのまま失神してしまった。

「…やりすぎたな」

いきなりハードルを上げすぎただろうかと少し心配するも、綱吉の手が俺の服を握ったままなのに気づけばそうでもないかもしれないと思いなおすことにした。
結局甘やかされているのは自分なのかもしれないと、苦笑を浮かべた。
今夜もまた、眠れそうにない。







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