パロ | ナノ

 フランクフルタークランツ


『リボーンは、愛してるっ』

衝撃告白をしてからさらに三年が経った。
俺達ドルチェの仕事もようやく落ち着いてきて、最近三枚目のアルバムをだそうかという話をしていた。
リボーンは相変わらず、いろんなところに顔を出していてまだまだ売れっ子アイドルだ。
こんなにも人気が続くのは珍しいことだと社長は嬉しそうに言っていたけれど、俺の心中はいつも複雑だ。

「リボーン…はやく帰ってこないかなぁ…」

慣れきったような感覚に苛まれながら呟いた言葉に答えるものはいなくて、風呂上がりに心地いい部屋で一人、ため息をついたのだった。


ドラマの撮影が終わり、俺はサングラスをかけて車に乗り込んだ。
さっきまでは共演者と一緒だったがここからは俺一人になる。
今回はドラマの主役をやったので、いろんなところから雑誌のインタビューが待っているのだ。

「次は、雑誌テレビジャンのドラマのインタビューとアルバムの方での対談が控えてるので今夜も朝まで帰れません。身体の方は大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃねぇ」
「…即答ですか、なら仮眠をとってくれても構わないので…」
「そっちじゃねぇよ」

いい加減俺も暇になってもいいころ合いだと思うのだ。
あの三年前の復活ライブでツナと俺は再び返り咲いた。
けれど、綱吉の忙しさと言ったら最初だけだったのだ。
まぁ、アイツは誰かと喋るのも苦手だし、演技なんてもってのほかだ。
一番よかったのは、俺と共演した一作のドラマぐらいか。
あれでも結構俺は裏で苦労した。
綱吉は何もかも一回は失敗するので練習させ、俺は台本を二人分覚えてフォローをし、という過酷な重労働に、綱吉と一緒にドラマは嫌だと言ったのだ。
まぁ、綱吉も自覚があったのでそれ以来同じドラマをやったことはない。
一人になった綱吉がやれることとなると少ない。
だから必然的に仕事は少なくなっていき、いまではほとんど新曲を出した時に俺と一緒に歌番組にでるぐらいだ。
それでも、アイツの人気がなくなったわけではない。
歌以外不器用なんだよと言うポジティブなファンのお陰で好かれているのだ。
今は曲の作詞をよくやるようになってきている。
ツナの作詞が好きだと言うファンが多くて、だったら暇だしやってみようと二人の部屋でたまに書いていたりしている。
だが、俺が言いたいのはそこじゃない。
もっと切羽詰まって大事なことだ。
マネージャーの芹沢は頭に?を浮かべていて俺が言いたいことが伝わってないみたいだ。

「不足してんだ」
「何がです?」
「綱吉がっ」
「……あ、ああ…そうでした、リボーンさん綱吉くんに会わないで何日経ちました?」
「一週間だ、いい加減焦れて来た」

どうにかしろと無理やり要望を押しつけると、芹沢はうーんと唸って指を三本出した。

「三時間か?」
「いいえ、三十分です」
「てめ」
「それぐらいしか今は絞りだせないんですよ、売れっ子アイドルって大変ですねぇ」
「言うようになったじゃねぇか」
「リア充は爆発するべきですよ」

俺なんてまだ独り身なんですから…と泣き真似をする芹沢に呆れたため息を吐く。
僻みもここまで来るとうざいだけだ。
せっかく公認のようになった関係だから、もう少し時間をくれたって良いものを…。
社長ですらもこの関係を知っているぐらいだ、この際だから見守られていたっていい。
だから、時間をくれ。

「芹沢…」
「これ以上は無理です、あと一週間もすればとりあえずドラマも落ち着きますし、それまで我慢して下さいよ」
「…ガチか?」
「ガチです。苛めでもないですから、聞き分けてください。それと、愚痴ならこのスケジュールを了承した社長に」
「あのピエロが」

俺はつい、拳を握りしめる。
絶対楽しんで了承したことだろう。

「で、その詰め詰めのスケジュールから三十分は確保できます。それでいいなら、連れていきますよ」
「……背に腹は代えられねぇか。一旦帰る」

ここまで言ってくれるのだ。
俺がこれだけ焦れていると言うことは、綱吉もきっと寂しがっていることだろう。
仕方なく頷いて、マンションへと向かう車に眠い目を擦りながらも綱吉を想うと早くと気持ちが急いている。




車が到着するなり、俺は車を開けた。
時間は深夜を回っており人なんかいない。
後ろから芹沢が三十分守ってくださいよっ、と言っていたのでエレベーターに乗り込むと腕時計で時間を確認する。
今丁度三時、なら半までか。
眠いのもあったが綱吉に触れたいのが一番だ。
起こしてしまうのは少々忍びないが、こんな事態だ…許せ。
独特な浮遊感を覚えつつエレベーターを降りれば部屋まで一直線に歩いた。
鍵を開け、中にはいる。
やはり電気はついていない。
寝室へと身体を向けると、中に入った。
途端ひんやりとした風に俺は嫌な予感を覚えて壁をみる。
しっかりと稼働しているエアコンを確認した。

「喉に悪いだろうが…」

乾燥するから寝るときはタイマーにして一時間以上つけているなとあれほど言ったのに、ダメツナなこいつはそれを守らない。
しかも涼しくなっているのにつけるな、とリモコンをとればピッとけしてやる。
それを証拠に綱吉はしっかりと布団をかぶっているではないか。

「おい、ツナ…綱吉」
「ん…んん…」

せっかく会えたのに起きている姿を見れないのは悔しい。
身体を揺するが起きる気配がなくて、さっさと起きろと顔を覗き込むと何かを抱いているようだ。
何を抱いているんだと布団を捲くってみればそこには大変目つきの悪いテディベアが抱き枕の役目をはたしていた。
これは以前、綱吉と休日ゲーセンに行った時のことだ。
大きいサイズのぬいぐるみが欲しいと言って、これに一目ぼれした。

『なんか、この目つきの悪さ加減がリボーンだよ』

あのときは問答無用で殴ってやったが、まさかこんな形でこいつと対面することになろうとは。
よく見てみるも、似ている様子はない…ただ目つきが悪いだけだ。
こんなのを代わりにされているのは嫌で、つい綱吉の腕からそれをとり上げた。

「んー、りぼーん…りぼ…」

寝ボケながら名前を呼ばれるが、探しているのは明らかにこの俺の手の中にあるこいつだ。

「もしかしなくても、同じ名前つけてたり…なんてことは…」
「んあ?あれ?…リボーンだ、おかえり」
「今探してたのはこいつか?それとも、俺か?」
「……やきもちなんて、リボーンは相変わらずだなぁ」

まだ寝ているのか綱吉の口調は覚束なくて、俺の言葉をしっかりと時間をかけて理解したうえで返事をしてくるが、明らかに綱吉の手はこのテディベアを欲しいと振っている。

「俺が帰ってきたのに、俺はいらないのか」
「…ちがうって、んん…起きた。こんな時間に来るから、びっくりした。終わったの?」
「三十分だけ時間を貰った」
「…ってことは、半ぐらい?」
「そうだな」

綱吉は大きく伸びをして眠気飛ばしたようだった。
そうして俺をみるなり手を伸ばしてきて、俺はしっかりと抱きしめ返してやる。
もう時間なんか気にしたくない。
一度触れた温もりはなかなか離れたくなくなる。
綱吉の顎に手を添えて上向けると長いキスをした。
止まらず舌を忍び込ませれば甘く絡みついてきて、そのまま手をパジャマの中に淹れようとしたところで掌を抓られた。

「っ…いってぇな、何しやがる」
「いま盛ってどうするんだよ、時間ないのにっ」
「…無視だ」
「無理だろ」
「俺は行きたくない」
「リボーン、我儘言わないでよ」

俺だって、このままでいてほしいんだからとすり寄る綱吉をますますぎゅっと抱きしめるとほっと息をついた。

「やっとリボーンに触れた…」
「すまん」
「いいんだよ、テレビ最近立て続けだもんね。がんばってるから、ご褒美」

綱吉は手を伸ばしてちゅっとキスをした後にぺろりと唇を舐める。

「もう少しなんだろ?」
「そうだな、これが終わればアルバムの方にとりかかれる」
「ん、歌詞書いておいたから…歌ってね」
「ああ、当たり前だろ」

綱吉の言葉に嬉しくなって俺からもたくさんキスをした。
一週間触れられないことは何度もあった。
そのたびにこうして短い時間でも会いに来る。
それは、俺の欲求でもあったが…綱吉が無理をしていないかをみる理由付けでもあった。
歌うのが好きな癖に気を抜くとすぐ喉に負担のかかることばかりをするのだ。
俺はそっと綱吉の喉を撫でて、笑みを浮かべた。

「俺の唄聞きたい?」
「歌ってくれるのか?」
「帰ってきたら、ね」

人差し指を唇にちょんと触れさせてくる綱吉に堪らなくなる。
ますます強く抱きしめれば、綱吉は俺の腕時計をとんとんと叩いた。

「じ・か・ん」
「つな…」
「甘えてもだめ」
「つなよし…」
「ん…だめだってば、早く戻らないと」

甘い声で囁くも綱吉は頑なだった。
多分、自分がのまれては駄目だと思っているのだろう。
変なところで理性保ちやがって。

「リボーン、愛してるから」
「そんなんで絆されると思いやがって」
「思ってる、リボーン優しいもん」

ね?と首を傾げられて俺は頷くしかない。
最近俺は綱吉にいいように操られている気がする。
仕方なく離れれば玄関まで見送ってくれた。
その綱吉の腕にはしっかりとあのテディベアが抱かれているのをみて、今は預けるが俺が戻ってきたらゆるさねぇからなと視線だけを注いだ。
最後まで名残惜しくして離れれば、ますますじれったさが募った気がするのは気のせいだろうか。
車で戻ると遅いですと芹沢が急かす。

「余計焦れた…」
「まぁ、でしょうね。さて、あと一週間がんばっていきましょうっ」

芹沢の顔色も少し疲れが見えているのを見てしまえばこれ以上反抗もできなかった。
チッと舌打ちをして、ますます名残惜しくなった綱吉を思いはぁとため息をついたのだった。




カーテンからマンションを後にするリボーンを眺めていた俺はベッドに戻った。
甘く響いた声がまだ耳に残っている。

「もう、毒だ」

あの声は俺にとって有毒にしかならない。
俺は腰砕けになったままベッドに横たわった。
抱きしめたテディベアを見つめる。
やっぱりリボーンに似ている気がする。

「君じゃ、だめなんだよ…本物じゃなきゃ」

日々募る想いが大きすぎて、早くまとまった休みをくれと思う。
ただただ、待ち焦がれる思いが俺の胸を焦がして…つい、その思いを歌にしてしまうのだ。
はやく、はやく…リボーンを俺にちょうだい。



END
ずきん様へ
三題噺、やらせてもらいました。
チョイスがまさかのアイドルパロです。
丁度いいかなと思いまして、書かせてもらいました。
中途半端さが否めないものですが、すみません力不足でした。
ずきん様からのみ、要望にお応えします。
書き直せというなら遠慮なくどうぞ。
いつもいつもありがとうございます。
今回のリクエスト斬新で面白かったです。
ありがとうございましたっ。






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