◎ デレ期到来
薬品臭い室内に目の前には白衣のお医者さん。
俺は病院にきていた。EDが治ってからの登院だがいろんな質問をされてそれに淡々と答えていた。
「ふーん、身体に異常はないね。触られたら普通に勃起したってことは完治といってもいいでしょう」
「やったぁ」
「僕も嬉しいですよ、患者がそうやって治っていくのを見ているのは」
今回はなんの役にも立ちませんでしたが、と苦笑いを浮かべつつも優しい先生は薬も必要なし、お疲れさまとねぎらいの言葉をくれた。
ただ、俺は幸せになっただけで、その幸せで身体が治ってしまうなんて病は気からとかいうけれど、きっと本当だ。
「ありがとうございました」
「はい、お大事に」
ひらひらと手を振られて俺も振り返してとてもいい気分で病院を出た。
診察代も少しで済んでうきうきだ。
そして、午後になればリボーンが帰ってくる。
今日俺は病院で休みを取った。そして、リボーンは最近の残業続きで強制的に休めとお達しが出たそうだ。
なので、午前中はやっておかなきゃならないことを片づけなくてはならなくて出勤している。
最近俺の周りはだんだんと色を変えてきた。
本格的に戸籍を動かせと言われて、俺の両親代わりをしてくれている人のところに向かい。二年ぶりぐらいに顔を合わせた。
相変わらず淡々としていて、要件を伝えたところ好きにしろと一言。
そして、あっさりと戸籍をもらい住所を変更することができた。
一安心したところで、リボーンはよくやったなと褒めてくれ、最後は病院だなと今日のことを言ったのだ。
リボーンに言われるままやってみると結構簡単に行ってしまう。
どうして俺はこんなにも要領悪くしていたのだろうかと思うことがある。
「というか、リボーンが的確なんだよな」
リボーンに任せていたら人生幸せに過ごせるかもしれない、なんて思う時もしばしば。
それほどに、俺よりもはるかに頭が良くそれでいてキレ者刑事なのだ。
我が家になったマンションへと戻るとドアがもう開いていた。
「ただいまぁ、リボーン戻ってきてんの?」
声をかければあーとかんーとかいう変な声が聞こえた。
これは疲れてる声だなぁと感じながら中に入ると着替えてソファにぐだっとしていた。
最初のころはなんだこの刑事、と思っていたがこれがリボーンなりの疲れの取り方なんだと思うことにしている。
「疲れた?」
ただ今日は午後少し出かけたいところがあると言っていたのだ。
それも、リボーンからのお誘い。
疲れたのならこのまま家でもいいが、期待していたから少しつまらないかな…と。
いや、高望みはいけない。リボーンの気持ちがきけて嬉しくて、それだけでも俺は幸せなのにそれ以上を望むなんてまだ早い。
顔を覗き込むと俺を見て手を伸ばしてくる。
「どうかした?」
「行く」
身体をかがめて身を寄せたらそのまま肩を掴まれて引き寄せられた。
ちゅっと掠めるように口づけると身体を起こし大きく伸びをしている。
変わったことといえば、きっとこれかもしれない。
リボーンが甘いのだ。
あの告白があってからというもの、仕事で遅くなる時は必ず連絡してくるし、こうしたスキンシップも増えた。
俺としては嬉しいけれど、戸惑いもあったり…。
「なにしてんだ、早くしろ」
「う、うん」
俺が気付いた時には玄関に向かっていて、俺は慌ててリボーンの後を追った。
靴をはいて外に出るとリボーンはすたすたと先に歩いて行ってしまう。
「どこにいくんだよ?」
「インテリアショップ」
インテリアショップ?そんなところにいって何をするのだろうか。
俺は首を傾げて考える。
家具はリボーンのものを貸してもらったり、分けてもらったりしていて、今更欲しいというものはない。
コップやらなにやらも買いそろえているのでそこらへんも必要ない。
「何かうの?」
「行けば分かる」
結局リボーンは何を聞いても言ってくれなくて、俺はリボーンの後を追いついて行くだけだった。
そして、辿りついた場所は…。
「ベッドだ」
「そうだ、ベッドだ」
大きなインテリアショップだからか一つ一つのコーナーが広く、特にベッドもたくさん置いてあった。
安物から天蓋つきのベッドまで。
「俺いらないよ?」
「欲しいだろ」
「俺別にリボーンと一緒でいいもん」
前から買うと言われていたが、断ってきた。
此処にきてまで寝室を別にする必要があるのかとリボーンに食ってかかるも、そうじゃねぇと静かに一喝された。
「あれじゃ狭いだろーが」
「へ?」
「寝室も少し余裕があるしな、好きなの選べ。キングサイズのにしろよ」
リボーンの言葉に俺は耳を疑い見つめた。
早くしろと急かすリボーンはなんとも思ってないように見える。
「嬉しいっ」
「そーかよ」
「じゃあ、あれとかどう?」
「もっと丈夫そうなのにしろ、すぐ壊れたら意味ないだろうが」
意外なことに驚いて、それでも俺は嬉しくてたまらなくて気に入ったものを片っ端から指さしては吟味した。
俺達の会話を店員さんが変な顔をしてみていたがそんなのがきにならなくなるぐらいには、リボーンの一言が衝撃的で、一緒に寝ることを想えばなかなか決まらず、それでも結局リボーンがこれにしろと一言で決まり、配達を頼んでインテリアショップを後にしたのだった。
「ベッド、楽しみだなぁ」
「これも結構うるさくなったからな」
夕食を外で食べて戻ってくると順番に風呂に入った。
俺はいつものように先に入ってベッドで待っているとリボーンが寝室に入ってきて俺の上に覆いかぶさってくる。
あ、くる…と思った瞬間には唇が重なっていてあまく噛まれる。
舌が入ってきてゆっくり絡ませられ、それだけで俺の下半身は反応を始める。
この感覚も最初は少し恥ずかしかった。
自分の意思とは関係なく反応してしまうのだ、俺は病気だったからこんなことは少し前までなかったことで戸惑っていた。
「は、もう混乱しなくなったか?」
「しないよ…慣れた、し」
唇を離したリボーンはくすくすと笑ってあの時の俺のことを思い出したのだろう、俺はむっと唇をとんがらせるとまたキスをされた。
勃起が恥ずかしく思ってしまう日が来るなんて、誰が思うだろう。
最初に抱かれてから二回目は早かった、自分が感じていることを如実に表してしまうものがついているということがこれほどにも恥ずかしいことを、今更知った。
『やだ、みないで…みないで…』
あのときのことを思い出せばリボーンから視線を逸らす。
俺が感じる様をじっと見てくるリボーンもリボーンだがそのたびに自分が感じているのがわかって泣きながら懇願したのだ。
「またやってもいいんだぞ?」
「やらなくてもいい、普通にして」
変な趣味はないと思っているが、なんだかリボーンは俺が泣いたり困ったりするのが好きみたいだ。
それだけでも変な趣味だと思うが、縛られたりしないだけましかと思うようにしている。
そうしている間にもゆっくりと服が脱がされていき、反応しているそこをリボーンが握った。
「ふ…ぁ…」
「気持ち良くなってるな」
「なるよ、リボーンが触ってる…だもん」
最初の内は確認するような感覚で触ってくる、リボーンの中でもあんなことは初めてだったらしく戸惑っていたそうな。
だから、俺が反応すると嬉しそうにするから、つい…かわいいなとか思ってしまったり…。
かっこいいリボーン、けれど時々見せるかわいらしさは俺だけのものだと思う。
「すき…リボーン、すき」
「わかってる」
言いながらリボーンの手は俺のものを扱き始めて息が乱れる。
すぐにイきそうになってしまえば、リボーンの腕を握った。
このままイけと言われるままリボーンの掌に吐き出すとそれを今度は奥へと塗られた。
くちゃくちゃと音が聞こえて恥ずかしいと思うと同時にまた反応する。
「つなよし、すごいな…また勃ってるぞ」
「いうなって…ば…あっあぁっ」
「いいだろ、俺にだけ勃起して感じてる、好きだぞ」
それはどっちの方だと言いたくて、でもリボーンが手を緩めないから口を開ければ全部が喘ぎ声になってしまった。
奥の指が一本、二本、と増え中がだんだんと寂しくなってくる。
「ふぁっ、もっと…ちょ、だ…ぁ…りぼーん」
「泣くな、いれてやる」
リボーンはとびっきり優しい声で囁いて指を抜くなり自身を入れた。
最初は少し痛くて、だが、押し込んでしまえば奥まで熱いもので埋め尽くされる感覚はとても幸福に満ちていた。
身も心も幸せになるというのはこのことなのかとふっとした瞬間思うのだ。
「ふっ…ぅう…ひぃ、あっ…んんっ」
「なんで泣くんだよ、綱吉」
「だって、だってぇ…ひあっ、ぁあん…」
幸せでで、そう思うと涙が止まらなくなった。
何もかも与えられて、包み込まれてこれ以上はないというのに、少しずつ俺を満たしていく。
この幸せを放したくないと思う。
できることなら、ずっと…。
「泣き虫」
「りぼーんが、わるい…はっぁぁっ…ん、ふぁ…やぁ、やっ、おく…」
涙を拭われて、腰を掴むなり激しく揺さぶられた。
感じるところを余すことなく擦られてますます泣いて、それでも俺はずっと幸せを噛みしめていた。
終わった後リボーンが冷たいタオルを持ってきた。
俺はお風呂に入り直した後だ。
「つめたい…」
「お前、泣くの止めろ。俺が苛めてるみたいだろうが」
「だから、何度も言うけど俺こんな涙もろくなかったんだって」
「嘘だな、だったらそんな泣くかよ」
目に宛がって明日赤くなってしまうのを防ぐ。
リボーンは目元を撫でながら言って、俺は俺で制御できなくて大変なんだと困った。
「きっとリボーンに幸せにしてもらったから身体が全部の感情を制御できなくなってるんだ」
「なんだそりゃ」
「だって、リボーンだけだもん」
こんなに笑うのも、泣くのも…そのうち怒ったりして俺の感情全部をリボーンは持っていくんだ。
どうかそれを否定しないでほしい。
「まぁ、俺だけにしろよ」
「…うん」
優しく頭を撫でる心地よい温もり。
俺は頷いて、また幸せを噛みしめる。
たくさん、不幸があったら次は幸せが来るのかな。
幸せの後の不幸はできるだけ、避けて痛いなぁと思いつつ、リボーンと一緒なら大丈夫だと思う俺だった。
END