パロ | ナノ

 見えない君の唄声

「うわ…すごい…」

俺は学校から帰ってきてパソコンをつけてある動画サイトにつなげた途端開いた口が塞がらなくなった。

「初めてみた…」

ランキングで、自分の作った曲が一位に入っていたのだ。
再生してコメントを読めば、隠れた名曲だの神調教など、自分にはもったいない言葉が流れてくる。
なんで、アップして1ヶ月経った今頃なのか、それはすぐにわかる。
ランキングを移動して、歌い手のものを見れば、同じく一位に君臨する自分の曲の歌ってみた。歌ってくれたのは、他でもないリボーン。
コメントを見れば曲調に合ってる、かっこいい、クールだ、と賞賛の言葉ばかりだ。

「すごいなぁ…」

マイリストに移動すれば最近はずっと俺の過去曲を歌ってくれているのがわかった。
なんだか、知らずに応援されているようで嬉しくなった。
いや、実際初めてメールをもらったときからまだ続いていて励ましの言葉をもらっている。
俺は嬉しさに任せて生放送を開始した。
いつも来てコメントしてくれる人たちは少ないが、この嬉しさを報告しなくては、と思ったからだ。

「みんな、一位だよ。すごいね、リボーンさんもすごいねー」
わこつ、とやってきた人たちに挨拶しながら喜びを報告すれば、すごいねー、歌ってみたもきいたーとコメントが流れる。
しかも、いつもより来場者も多いみたいで初見ですと来ている人もいる。
なんだか、いつもより賑わっているなぁと嬉しくなりながら最近のことを話しつつギターを取り出す。
今回のメロディーラインはギターだからちょっとぐらいは弾ける。
感謝の気持ちを込めながら到底リボーンには及ばない歌声を披露させてもらった。
歌い終わってみんなから8888と拍手をもらったあと、それに混ざって素敵な歌声ですねと流れたコメントについ声を上げそうになった。
いや、実際上げてしまっていたのだろう。
うるさい、耳があぁっと言われてしまった。

「ご、ごめん…だって、リボーンさんきてる…」

驚きに言えばえっ!?、きてんのか、とみんながざわつき始めた。
コメントはすぐながれてしまうのでそれを保存しておけるコメントビューアーをつけていたのだ。
コメントビューアーとは来てくれている人がわかるもので、コテハンをつけてくれる人のためにいれていた。
でも、IDで特定できるからリボーンとかかれているところから移動してみて、しっかりとリボーンだったことを確認しつつBSPを渡した。
BSPとは渡された人は優先的に渡した人の放送に入ることが出来、コメントもみんなにわかるように表示される。
さっそくコメントが現れて、いきなりだったからびっくりしたと向こうが戸惑っているのが見て取れた。

「いや、きてくれたの嬉しかったんです」

コメントが特定したぞ、とかつっくんからアプローチキタ━(・∀・)━!!!!とはやし立てている。

「しかたないじゃん、俺リボーンさんの歌声好きだもん」

みんなも知ってるだろうと同意を求めればそうだよねぇ、萌え展開wと返事をされて、嬉しくなる。
コミュニティー限定でよかったと肩をなで下ろした。
というのも、歌い手には信者と呼ばれる人たちがいることもあり、リボーンも例外じゃない。
こんなことを言って引っ込んでろと言われた日には立ち直れないからだ。

「もうすぐ時間だね、今日は報告だけだから次枠はないんだ、ごめんね」

時間を見ればそろそろ30分になる。
延長するお金もないし、これで切ることにしようとみんなに挨拶するとリボーンからスカイプつけておいてください、と言われまさかの展開にみんなはますますテンションを上げ、俺まで戸惑って噛みながら返事をすると枠を切りスカイプを立ち上げる。
すると、すぐにIDが表示されリボーンのものとわかればそれを承諾した。
そして、そのあと一分と置かないうちに着信が鳴った。

「うそっ、えっ…ど、どうすればっ」

戸惑うより先に通話ボタンを押してしまう。

「あっ…えーっと…も、もしもし?」
『初めましてだな』

くすりと笑われて恥ずかしくなる。
そんな面白い性格でもないのになぁと思いながらこちらからも初めましてと返す。

『こうして話したいと思ってたんだ』
「どう、して?」
『ツナだから』

リボーンの言葉が魔法のように俺の耳に流れ込んでくる。
嬉しくて、それなのに褒められるたび恥ずかしくて素直によろこべない。
こんなに歌が上手い人が俺のことを褒めてくれてるなんて…本当に…。

「そんな…リボーン、さんには…敵わないよ」
『リボーンでいい』
「俺なんかの、何が良いんですか」
『全部、褒めると恥ずかしがるところとか、調教とかギターとか…なにもかも好きだな』

直接的な言葉に勘違いしそうになる。
男同士なのにおかしい。
こんなのはだって…へんだろ、俺は声しか聞いたことがない。
リボーンは、俺の曲しかしらない。
お互い会ってもない。
もっといえば今交流を持ったばかりだ…こんなんで、こんなこと言われる筋合いもない。

「今日知ったばかりじゃないですか」
『それでも、惚れたもんは仕方ないだろ』
「惚れたって…言う相手、違う」
『違わない…俺は、ツナがそういう意味で好きだ』
「なっ…俺がそういうの嫌いだったらどうするんですか」
『その質問をしている時点でそれはないな。これから時間はたっぷりあるんだ、ゆっくりいこうじゃないか』

ひぃん、と泣きそうになった。
そんなアプローチ自分にはもったいないほど…。
それに、俺はそういうのが苦手だ…人とかかわるなんて…。

「恐いよ…」
『…何がだ?』
「なにもかも…」
『なら、どれだけ俺がツナのこと好きか教えてやるからいつになってもいい音源作ってくれ』
「音源?」
『俺が歌詞と歌をつける、ツナの曲でどれだけいけるか…思い知らせてやるよ』

たぶん、それで自信をつけろということだろう。
そんなの、それこそ怖いのに。
リボーンにはまっていく…話してみて、嫌になるどころかもっと話してみたいと思うほどに…。

「じゃあ、これから…よろしくお願いします」
『ああ、よろしく』

大変なことになってしまった…。
俺は下手したら男の恋人が出来るようです。
嫌じゃないのが、不思議。
ああ、染められていくことを想うとやっぱり怖いんだ…。



続く。



説明なんぞ

歌い手…某動画サイトで歌ってみたなどを投稿する人のことを総称で言います。
ボカロP…某動画サイトでボーカロイドの曲を投稿する人のことを言います。Pはプロディーサーの略。
コメントビューアー…某動画での生放送をやる際に生放送主がつけていることが多い。コメント全体を見ることができ、誰がコメントしたのか見ることができる。匿名設定にしていないと某動画でのアカウントの特定ができてしまう。
コテハン…固定ハンドルの略。生放送では名前を呼ぶこともあるためこれで個人を識別する。
BSP…バックステージパスの略。生放送主から贈られる特別なチケットのようなもの。
コミュニティー限定…そのコミュニティーに入っていなければ得られない特別待遇。
スカイプ…ネット上で電話やチャットができるシステム。ネットでの通信料のかからないケータイと認識してもらえればいいかと…データを送ることも可能。

軽く説明してみましたがわからないことがあれば言ってくれれば追加します。







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