パロ | ナノ

 可愛い仕草にご注意

午後十一時を回ったのを確認すると俺は私服に着替える。
これから家に帰れるのならどれだけよかっただろうか。
秋が近づいたと言っても暑さは残っている。薄着で街へと繰り出した俺はすれ違う人間の顔を見ていく。
俺の仕事は大人の時間になっても出歩くガキを保護するというものだ。
ネオンが煌々と照らす道を歩きながら細い路地にも目を配る。
未成年らしき奴等には早く帰れよと一言かけて、よく見知った顔もいれば初めてみる顔もいる。

「ねぇ、お兄さん今暇?」
「は?」

突然話しかけてきた奴をみて俺は瞬時に未成年だと気付いた。
何か仕掛けてくる気か、援交目的ならそのまま持ち帰るしかないか。
俺は特に返事をすることなく向こうの反応をうかがうことにした。

「今晩泊めてくれない?俺今お金なくて…一日でいいから」
「その代わりに何かするのか?」
「うーん、やるよ。家事でもなんでも、お兄さんが良ければ…あっちも」

可愛い顔で俺を見つめる、が、それは地雷だ。
俺はそいつの腕を掴む。

「え、いいの!?」
「駄目だ。お前は家に帰る」

胸ポケットから手帳を出してそいつの目の前に開いて出してやる。
すると、刑事!?と慌てふためいた声が上がる。

「ちょ、嘘だろっ。ダメなら俺他当たらなきゃならないんだって、離せよ」
「離さねぇ、他も何も未成年が援交なんてすんな」

逃げようとする奴を無理やり引っ張って署まで連れてきた。
とりあえず、取り調べるかと部屋にいれてお茶を出してやった。
そのあいだ、喚いていたのが嘘みたいに静かになっていた。

「落ちついたか?」
「俺さ、未成年じゃないんだけど」
「この期に及んで年齢まで偽るか?」
「違うって、ホントに俺もう二十歳だよっ」

そうして取り出したのは学生証だった。
しかも、それは高校のものででも在学していた年から数えると二十歳である。

「童顔かよ」
「いいじゃん、童顔だとモテるんだから」
「うっせぇ、大体あんなところで“待ち”してんじゃねぇよ」
「ホントに帰る場所ないんだから仕方ないだろ。邪魔したんだから今日あんたの家泊めてよ。さっき言ったみたいになんでもするから」
「何で帰る場所がない?」

全部話して俺を納得させてみないことにはどうにも返事ができないと思った。
二十歳だというのなら自分の家ぐらいあるだろ。

「俺の両親は家が火事で一緒に焼けちゃった。親戚たらいまわしにされた揚句、十八でマンションに放り込まれてでも支払いは全部俺持ち。高校出たけど就職先決まんなくて、バイトも首になってマンション追い出された…そのまま、俺はあそこで毎日泊らせてくれる人探してるんだ。だから、俺の連絡先に電話しても知りませんって言われて終わりだし、このままじゃ俺は野宿なの。可哀想だと思うなら、どーにかしてよ」

けーじさんでしょ。と言われて、俺は言葉を失った。
そりゃ、大変な状況だと思うがまず最初にまともに働けばよかったのではないか、と。
バイトが首になったら他を探せばよかったんじゃないのか、と。
でも、ここまで状況が悪化してしまっているのなら、手を貸さないこともない。
というか、外に放り出して援交まがいなことをされても困るのだ。
とんでもない厄介者を連れてきてしまった、とため息をつきたくなったが、仕方がない。

「それは、本当の話なんだな?」
「嘘ついてどうするんだよ」
「なら、ウチに来い」
「泊めてくれるの!?」
「ついでに住所も提供してやる。そのまま明日からバイトを探せ、いいな」

ぴしっと額に人差し指を突きつけてやると、きょとんと首を傾げてくる。
いちいち仕草が可愛いのは身についたものなのだろうか。
やりにくい気分にさせてくれる、と思いつつわかったかと確認をとる。

「いいけど、それって…暫く居ていいってこと?」
「あのな、あんなところで身売りまがいなことされちゃ困るんだ。まずしっかり働け、そしたら部屋も探してやる」
「あ、ありがとうっ。俺綱吉、よろしく」
「リボーンだ、短い付き合いになることを祈ってるぞ」




そんなこんなで、一緒に住むことになってしまった俺は一人暮らしに馴染んだそこをもう一人分のスペースを作らないといけなくなってしまった。
誰が来てもいいように布団ぐらいはあるかと部屋に入ってクローゼットを覗いた。
綱吉には食材を冷蔵庫に入れてもらっている。

「リボーン、俺別に布団とかなくてもいいよ?」
「寝れないだろうが」
「こんなに大きなベッドがあれば問題なーし…あてっ」
「一緒に寝るわけねぇだろ」

俺のベッドを指さして言う綱吉に俺はつい手が出た。
調子こきが、とため息をついてとりあえず買ってきたコンビニ弁当をテーブルへと出した。

「あのさ、明日から俺が作ってもいい?」
「いいが、ちゃんと昼間はバイト探しにいけよ」
「わかってるって」

いただきますと礼儀正しく綱吉は挨拶をしてから弁当を食べ始めた。
そういうしつけもされてきているのか、と感じながら俺も弁当をつつく。
なんだかんだと違和感なく溶け込むが、これはこいつのそういう性格のせいなのかと感じる。
それか、そういう風にすれば世の中上手くいくと思っているのかもしれない。

「刑事さんってさ、こういうのも仕事の内なの?」
「なわけあるか、そうホイホイ誰かれ構わず家にいれるわけねぇだろうが」
「だよねぇ、なんか上手くいきすぎて逆に不安」
「は?」

苦笑を浮かべて、さっきまで押し押しできたくせに今さら何を言い出すのか、こいつは。
呆れた顔で見てやると、ごめんとその苦笑いを隠さない。
不幸体質だったからだろうか。
上手くいきすぎるのも不安になるのはわからないでもない。

「けどな、あのままだと何もならない。俺が面倒見てやるって言ってんだ。今のうちはしっかり食って、寝てバイト探せ」
「…うん」

言ってやれば綱吉は弁当を噛みしめながら頷いた。
一見いい奴そうだ、人柄もよさそうでどうしてバイトを首になったのか。
そこまでは、まだ聞かないでおくことにする。
あまり踏み込んで情が移ってもだめだ。

「風呂先に入れ、俺はまだやることあるから」
「はぁい」

弁当を食べた後、片づけを申し出た綱吉に任せ俺は持ち帰った書類を整理する。
面倒なことばかりで寝る間もない。
寝る場所はと言うと、結局綱吉はベッドに寝かせることにした。
俺はソファにでも寝ることにする。
大きいとは言え、男が二人寝ると当然きついからだ。
あんなにも寛容に男が二人で寝るのも気にしないところを見ると、そういう経験もあるのだろう。
変な経験ばかり積んでやがる。
身元など調べてなかったが、本当によかったのか。
あいつのことを全部信じるつもりはないが、特別刑事を狙って…などと言うことは、なさそうだ。
仮に帰る場所があったとしても、働き口がないのは困る。

「って…言い訳考えてるんじゃねぇンだぞ」

頭を掻きむしって、今日はここら辺にしようとシャワーを浴びに行く。
シャワーを浴びていればコンコンとドアをノックされた。
振り返ればすりガラス越しに綱吉が立っていることに気づいた。

「どうした?」
「やっぱり、何もしないのって不安で」
「俺は男には興味ない」
「フェラだったら男でも女でも変わらないよ」

ガラス越しに声が響く。
そんなことをしても意味はないというのに。

「俺は、そんなに見境なくないぞ」
「だったら、どうすればいい?…どうすれば」

俺はドアを開けた。
そこには不安そうにしている綱吉がいて、まるで迷子の子供のようだ。
身体を拭き、パジャマを着た。
そして、綱吉を連れベッドへと戻る。

「リボーン?」
「今日だけだ、あとはバイト見つけるって条件を家賃にしてやる」
「いいの?」
「お前、何嬉しそうにしてんだよ」
「だって、嫌じゃないし」

やってみると結構いいよ、と綱吉は笑って俺の上に乗りあがってくる。
なんだか拍子抜けだが、溜まっていることは確かなので反論はしない。
これは利害の一致だ。
俺は性欲処理の相手が欲しい、綱吉は身体だけでも何かしら返したい。
こんなに積極的に自身を咥えられるなんて経験は女相手だけで十分だと思っていたのだが…。

「ん…」
「お前、慣れてんだな」
「慣れてるほーが、いいだろ?」

上目づかいで見あげながら啜りあげる舌使いは一人二人を相手した感覚ではない。
どこまでも俺を感じさせてくるやり方。
先端を舌先で弄り、嫌でも震える。

「だしても、いいから」
「ったく…」

言ってやりたくても思わず声が出てしまいそうでこれ以上口がきけなかった。
咥内を突き上げてしまいそうになり綱吉の頭に手を添えた。
それが嬉しかったのか、舌使いがますます厭らしくなる。

「いくぞ…っ…」
「ん、ひへ…」

咥えたまま喋られて俺は口の中に白濁を放った。
そして、綱吉は顔を上に向けコクリと飲みほしたのだ。

「なんか、これで安心して寝れそう…」
「そうかよ」
「一緒に寝てくれない?」
「…まぁ、ソファじゃ寝にくいしな」

狭いがベッドで寝れる方がありがたい。
俺は仕方なくベッドに横になれば綱吉も同じように寝転ぶ。

「いいか、バイト見つかって安定したら出てけよ」
「うんっ…俺だってがんばればバイト見つけれるよ」
「なら、いいけどな」

こうして、俺と綱吉の変な共同生活がスタートした。
こいつがいついなくなるとか、予定としてはまだ未定だが、いつか更生してくれると信じている。
それの手助けになれればいいと感じているのは、もうこいつに情が移ってしまったからか…。







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