パロ | ナノ

 怒涛の嵐

「んー、疲れたな」

俺がボンゴレショップで働くようになって一年になる。
リボーンに店を開くから獣医を目指しているならここで働いたらどうだと言われたからだ。
だが、働いてみたら獣医の勉強どころかやることはリボーンの雑用ばかりで心配になったものだ。
けれど、優秀なバイトが入ってくれたおかげでこうして俺は徹夜で勉強ができるようになっていた。
今日は気になることを調べていたら時間を忘れていたみたいで伸びをして時間を見れば深夜の二時を回っていた。

「でも、まだできるな…その前に、ちょっと気分転換か」

もう少し調べたいが集中力が切れてきているのを自覚すると俺は店をそっと抜け出し近くを散歩しはじめた。
もしかしたらアイツに会えるかもしれないと思ったから。
雲雀恭弥。この街最強のネコ。昼間俺達に喧嘩を売ってきた奴だ。
最近じゃ大人しくしていたと思ったのだが、今日の恭弥はすごく荒れていた。
何かあったのかと少し気がかりなのだ。
恭弥は俺がここに来たときに会っていたのだ。
自分勝手に底の空き地は昼寝場所だったと理由をつけて襲ってきたから。そのときは俺が捕まえてリボーンが話をつけたのだ。
今はどこで何をしているのだろう、純粋にそれが気になった。

「月明かりが綺麗だな」

それを見上げて半月を見つめる、ふっと視線を戻したら公園の方まで来ていたらしい。
散歩にしてはちょっと歩きすぎたと戻ろうと踵を翻そうとした時、公園から呻き声が聞こえてきた。

「なんだ?こんな夜中に…」

その呻き声はなんだが不穏なもので、俺は足音を立てずに声がする方へと歩いて行った。
植え込みから公園内を見れば二つの影があった。
少し暗く顔まではわからなかったが一つは確実に恭弥だった。

「おい、何してんだ」
「チッ…」

声をかけるとその人間は俺に気づくなり逃げていった。
俺はその背中を目で追うがこっちが先だと恭弥に近づく。
暗闇でわからなかったが、恭弥の服は乱れ、肌には切り傷や打撲痕が見つかった。
しかも、俺に気づいたのか警戒するように俺を睨んでくる。

「大丈夫だって、恭弥。俺は何もしないから」
「……」
「恭弥…」

ネコのように気を逆立てているから近づくことはできず傍で見守った。
やがて張っていた気が途切れたのだろう、恭弥は崩れるようにして地面に倒れそうになり俺はそれを抱き抱えることで受け止めた。
恭弥の表情を見るが相当ショックなことを体験してしまったからか顔には血の気がなくとりあえずここにおいてはおけない。

「もって帰るか」

身体のキスを癒してやらないといけない、と適当に自分の行動に理由をつけそのままきた道を戻って行く。
きっと朝になればリボーンから呆れたため息を吐かれてしまうだろうと思うが自分は放っておけない性格で、その相手は雲雀恭弥なのだ。
つい、身体が動いてしまうというものである。




自室に連れてくると恭弥を起こさないように身体を綺麗に拭いた後ベッドに寝かせた。幸いにして酷い傷はないがプライドの高いネコだ、トラウマになってしまう可能性もある。
しかも、この真新しい傷のほかにも消えかけの青墨をみつけてしまった。
これが原因でうまく動けなかったのだろう。
動けないのが嫌でストレスがたまり、そして俺達に闇雲に喧嘩を売っていた、というわけだろか。
何にしても厄介だなと感じたが拾った以上最後まで面倒は見るつもりだ。
ふっと時計を見ると四時を過ぎていた。

「寝るか…まだ起きそうにねぇしな」

恭弥がぐっすりと眠りについているのを見れば自分も仮眠をとりたくなるが、生憎ベッドは恭弥が使っている物しかない。

「…はぁ」

小さくため息をこのスト仕方なしに近くのソファに横になった。
どうせ明日になればリボーンが恭弥の部屋を宛がってくれるだろう。俺は少し拾ってきたことを降下しそうになりながらも見ないふりをして目を閉じた。




「ん……?」
「…っ!!」

朝になり、目を覚ましたら恭弥がいた。
それが、無邪気な顔とかそんな年相応な顔なら良いが…人一人平気で殺しそうな顔で俺の顔をのぞいているために思わず後退さった。

「どうしたんだ、恭弥」
「ここどこっ!?ねぇっ!?」
「…どこって」
「どこっ!?」

よくよく見れば恭弥は混乱しているらしかった。それもそうかと思う、恭弥が気を失ったままここに連れてきてしまっていたのだ。起きてから知らない部屋であまり面識もない人間が近くに居て、恭弥が平気でいられるはずない。

「すまん、あのままにしておけなかったから…ここはペットショップ、あの公園から近くだ、お前は知ってるだろ?」
「…あ、ああ…あのいかがわしい店ね。僕をこんなところに連れてきてどうするつもり?」
「どうするも何も、ここはお前みたいな二と型動物のペットショップなんだ、お前がよければここに住まないか?」

場所を教えてやると安心したらしい恭弥はベッドに戻って疲れたように座った。
黒い耳がピクリと動いてじっとこっちを見つめてくる。
けれど、俺の言葉を理解したのだろう恭弥は自分をこんなところに置くなんて正気かと言っているような顔をした。

「僕がどんなことをしているかも知ってるだろ」
「当たり前だ、凶暴で自分秩序で…」
「そう、なら僕に関わらないことだね」
「でも、我儘でそれでいて他人に近づこうとはしない…俺はお前に興味が湧いたんだ」

俺は笑みを浮かべて言葉を連ねた、誤解させないようにしっかりとまっすぐ告げる。
できればしばらくでも、ここにいてほしかった。
その感情がなんなのか俺はまだよくわかっていないが、人型動物には興味があったのだ。
真剣な目で恭弥を見つめると同じように返してきて、それでも瞳が揺れているのを見てしまえば悩んでいるのだと思い当たった。

「僕は、我儘じゃない。こんなところ、いたくない」
「そういうなって、今は怪我してるだろ。治るまででいいからここにいろよ」

すかさず振り上げられた拳を掌で捕まえるとそっと握りしめた。
すこしだけでいいからと小さな声で言えばゆっくりと恭弥の腕から力が抜ける。

「貴方がそこまでいうなら、いてあげてもいいよ」
「本当か?」
「ただし、怪我が治るまで。僕は僕の生きたいように生きるから」
「ああ、とりあえずはそれで良い」

とりあえずもなにも僕はいつく気はないからねと念押しする言葉を聞くがオレは気にも留めずに時計を見るともう朝食の時間だと気づいた。
そろそろツナがいつまでも起きてこないオレにしびれを切らしてこの部屋に入ってくるころだろう。
まずいなと考えて、ちょうどそのタイミングでドアが開かれて俺は焦った。






その日も俺は朝食を作って、なかなか出てこないディーノにリボーンが呼びに行って来いと言ったのだ。
俺は渋々ディーノの部屋を開けたら黒いネコがいた。

「……」
「ツナ、危ないから。こいつは俺が面倒見るから、近づかないでくれ」

ディーノが素早く俺とそのネコの間に入ったのだが、その黒さが俺の記憶を呼び覚ましていた。
真っ黒な髪と瞳、黒ネコの人種なのか尻尾まで真っ黒だった。
俺の飼っていたあの猫と一緒だ…。生まれ変わりなんか信じてはいないけれど、そっくりなのだ。
けれど、腕や身体に巻かれている包帯が一段と肌の白さを際立たせていた。
しかも、警戒しているらしく俺を睨みつけて視線を一瞬たりとも動かさない。
まるで金縛りにあったような感覚で、動けないで居たらディーノが身体を反転させてきた。

「夜拾って来たんだ、恭弥は怪我してるから放っておけねぇ。しばらく俺はこいつの相手をする。リボーンにも伝えておいてくれ」
「わかりました…」

頭の中で恭弥と言う言葉が反芻した。
あれが、恭弥…俺の子供のとき飼っていた猫に似ていた…。
俺はまさかという気持ちを抱いたまま戻るとディーノに言われたことを言ってやればまた一匹増えたかと珈琲を飲んでいた。

「山本と獄寺くんを傷つけたネコなのに…」
「ディーノが手懐けるだろ」

リボーンは何か意味ありげに笑みを浮かべていて、俺にはよくわからなかった。
上の空でも朝食を食べて、今日も授業に出なくてはと鞄を手に取る。
食器洗いを頼んで店をでると、大学へと向かって歩く。
ペットショップへ住み込みで働き始めてからというものネコやイヌの世話だけじゃなく店長の世話までやらされている気分になってきているのだ。
しかも、毎日のように何か事件が起こるので心が休まらなかったりする。
なので、今の俺にとっては学校が一番のんびり出来る場所だ。

「ん?なんだあれ」

学校の門をくぐって教室へと向かうが門の近くに停車している車に何故か視線が向いた。
意識したわけでもなく、ちょっと気になった。
車は黒塗りで全面のスモークガラスで中は見えず、不信感が高まるがあんまり見ているのも変に思われては嫌なのですぐに視線を逸らして教室に急いだ。





「なぁ、あんた沢田綱吉だろ?」

講義が始まる前に教室に入って空いている席に座れば金髪でくせっ毛の人が目の前に現れた。
聞かれて頷くと、そうかと呟いて何か考えるそぶりを見せている。
白蘭の周りには絶えず人がいて、この人はその中の一人だったと思い出せば近くに白蘭がいるのかと急いで周りを見るが白蘭は見当たらなかった。

「安心してくれ、今日はボスいないから」
「ボス?」
「あ、これは言ってもいいんだっけ?…すまない、今のはなし」
「はぁ…」

白蘭をボスといったり撤回したりおかしい人だな、と疑わしげに見つめると仕切りなおしとばかりに俺の隣に座ってくる。

「問題はそこじゃないんだ。あんた、もう学校に来ない方がいいかも…巻き込まれているから」
「え?…えぇっ!?」

授業が始まったのにもかかわらず話してくる人に早くどこか行かないかなと考えていたら、その人が放った一言に大声を上げてしまった。
とたん先生から静かにしろと注意されてしまい慌てて口を塞ぐ。

「なんだよ、それ」
「信じられなくても本当のことだ。でも、うちのボスは関係ない」

小声で話を促すと何事もなかったかのように話して俺を見つめてくる。
その瞳に嘘は見えなかった。
だからこそ、自分が何にかかわってしまったのか気になる。

「巻き込まれているって、何に?」
「これ以上は言えない、正一に口止めされてるから。とにかく、あんたはこれから不用意に家から出ないことだ」

わかったな?それじゃ、俺は帰る。と一方的に告げて先生が注意するのも聞かず教室を出て行ってしまった。

「……なんなんだよ」

意味がわからず頭が混乱してきた、もう授業なんか筒抜けで俺は机に顔を埋めているしか出来なかった。






いくらいろんなことが起こり過ぎて嫌になったと思っても時間は過ぎていき、帰る時間になってしまう。
このままここに居ることは可能だが、そんなことしても何もならない。
俺ははぁとため息を吐きながら、しばらく歩いていたらふっと気付いた。
誰かが、自分の後をつけてきているということに。
足音を立てないようにしているが、気配が感じることができた。振り向く勇気もなく、不穏な空気に俺が気持ち悪支え覚えた。
どんな人間なのかわからないが、俺にとっては一番関わってはいけない人間だろうということはよくわかった。
少しずつ足を速めて、途端向こうもそれに合わせるように歩調を速める。
どうしよう…、俺は不安になって、けれどここで助けを求めようとしても誰もいない。
このままペッ著ショップに返ってしまうとわけのわからない人間に居場所を教えてしまうことになる。
それはいくらなんでもまずいだろう。そうして迷っていると、後ろをつけていた人間はいきなり走ってきて俺が振り返る間もなく口元に布を押し当てられそうになり、俺はとっさにもがいてそれを振り切った。

「っのやろう」
「…っ…ひっ」

逃げようとすれば後ろから羽交い締めにされてもがくが今度はそう簡単に振りきれない。
怖くなって足を後ろに蹴りだせば偶然脛を蹴ってしまったらしく力が緩んだ途端、俺はその腕からにげだした。
顔だけは見ておこうと振り返ったら黒いスーツにサングラスをかけて顔まではわからなかった。
じっとしているのも限界でその人が追いかけてこないうちにと駆けだしていた。
さっき考えていたことなんてすっかり忘れて、俺はペットショップに駆け込むとバタンッと大きな音をたててドアを閉め、施錠した。

「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」

心臓が壊れそうな位に脈打って苦しい、息を吸っているのに一向に肺に入ってこない感覚に怯えた、
俺は立っていることもできず、ドアに凭れてずるずると座り込んだ。
ドアの音に気づいたらしくリボーンが降りてきた。

「どうした?…おい、ツナ?」
「怖…かった…りぼーん」
「何があったんだ?」

心配そうな顔のリボーンを安心させようと口を開くが、そこから漏れた言葉は怯えた声だった。
縋ってしまう腕が止められずにリボーンに抱きついて、何があったか聞いてくるのに答えようとしたが、それもできず視界がかすんでくる。
そのまま心身の疲労に身を任せて俺は意識を手放していた…。






「ん…ここは、俺の部屋…?」

目を開けると、柔らかな月明かりが部屋に差し込んでいた。
一瞬どこかわらからず瞬きを繰り返して場所を改めて確認し、小さく呟いた。

「目が覚めたか?」
「りぼーん…?」

横から声をかけられてそっちを向けば心配そうな、不機嫌そうな顔のリボーンが椅子に座っていた。
なんでそんな顔をするのかと疑問に思って口を開こうとしうるが自分がどうしてここに居るのかさっきの記憶がよみがえってきてぶるりと身体が震えた。

「ツナ、一体何があった。わかることだけでいいから、全部話せ」
「…よくわからない」

リボーンが俺の震えを感じとったのかくしゃりと頭を撫でてくる。
それに少し震えがとれて安心するとさっきのことをゆっくりと思いだした。
昼間、ある男から忠告を受けたこと、それに変な男に捕まりそうになったこと。
俺は思い出せることだけを伝えた。

「そいつらの顔はみたのか?」
「見れてない、怖くて…よく見れなかった」
「お前、それでも学校に行きたいか?」

話を聞いたリボーンは真剣な顔で俺を見て聞いてきた。
それは決して冗談などではなく、選択を俺に委ねている。

「行きたい…やっと入れた大学で、それに…学校行くの止めたらここにいられなくなる」
「…そこまで言うなら、仕方ねぇな」

俺はリボーンを見て自分の気持ちを素直に伝えた。
なにより、ここに居られなくなるのは嫌なのだ。
リボーンは一つため息を吐いてボルサリーノの唾を押し下げた。
そう言うことだとリボーンに視線を向けたままでいると手が伸びてきて顎に添えられたと思う間もなく顔を間近に覗き込まれる。

「俺が、お前の護衛をしてやるよ」
「は…?」
「一度言ったこと理解できねぇのか?お前の学校の行き帰り俺が一緒に居てやるって言ってんだ」

目をまっすぐに見つめたまま言われた言葉を本気で理解できなかった。
あの何があっても何でもないように振舞うリボーンが、俺を心配して一緒に居てくれるなんて…。
考えていると、わかったのかよと確認してきたのでコクコクと必死で頷いた。





そして、その次の日から朝食を用意しているとリボーンが姿を現し本当に吐いてきてくれるのだと思い知らされて何故か胸が高鳴った。
俺は変な動悸に胸を押さえて鎮めると、一緒に朝食を食べて一限目の時間に間に合うように店をでた。
普通に周りを見渡せばいつもと変わらない道だった。
いつもと変わらなさ過ぎて、リボーンに頼むまでもなかったかと後悔しはじめる。

「なんか頼んだのに何もなさそうだな…」
「何もないのが一番だろ、不安だったんだからそれに甘えておけばいいんだぞ。ツナのくせに遠慮すんな」

歩きながら小さく言うと、今更何を言っているんだと頭に大きな手がかぶさってきた。
そのまま、くしゃくしゃと撫でて去って行った。
最近そんな小さな接触が良くある。初めてリボーンの部屋で寝た時はすぐに諦めてしまったのにと思うとなんだか嬉しくなっている自分に気づく。

「ん…ありがとう」
「それでいい」

素直に礼を言うと満足そうに笑みを浮かべた。
リボーンとなんだかんだ一緒に居る時間なんてあまりないからこうしていれるのが嬉しいのだ。リボーンの近くはとても安心する。
そして、何もないまま学校に着いた。

「いいか、帰る時間になったらケータイに連絡しろよ。迎えに来てやるから」
「そこまでしなくていいよ、もう大丈夫そうだし」

校門まで来るとこれ以上入れないとそこで止まれば、帰る時も迎えに来ると聞いて慌てて首を振った。これ以上リボーンの手をわずらわせたくない。
そしたら、いきなり頭を叩かれた。

「お前、数分前に言ったこともう忘れたのか…?」
「…そうじゃないけど」

男として、何もできないから誰かに縋るという考えが俺には悔しく思えるだけのことだった。それはちっちゃいけど、俺のプライドで…なのに、リボーンに頼りたいと思ってる。
優しいリボーンに、縋ってしまいたくなる。

「無駄なことは考えるな。いいか?お前は誘拐されそうになった。それだけでも、十分他人に守られて良い」
「でも、こんなの…んぅっ」
「ったく、これで十分か?」

一方的に守られるのは嫌だと言おうとした矢先、俺の唇に一瞬何かが触れた。それが何かを確認する前にため息を吐きながら言うリボーンがいる。
今…何された…?…もしかして、キス…?
なんでキスされたのかを考える前に、一気に顔の熱が上がる。

「どういう…」
「自分で考えろ…俺はもう行くからな」

俺が引き止める前にリボーンはスタスタと歩いて帰ってしまった。
本当にどういう意味なのだろう…。
朝校門前で頭が混乱状態になるが周りの視線が気になり、俺はそそくさと教室へと向かったのだった。






ピンポーン

簡素な呼び鈴が鳴って僕はパソコンから目を離した。
僕は時計に目を移せば、この時間ここに訪ねてくるのは誰かをすぐに判断した。
疲れた身体を伸ばしつつ肩を回して解しながら玄関に向かい、ドアを開く。
すると、そこには案の定無愛想な顔の男がいた。

「やぁ、来る頃だと思ってたよ」
「よぉ、首謀者。いや、元首謀者と言った方がいいのか?白蘭」

第一声で皮肉をぶつけて来たペットショップ店長のリボーンに笑顔を崩さないまま酷いなぁと返してやる。
このまま玄関口で話しているのも危険なので早々にリボーンを部屋へと招き入れた。
リビングに案内すれば、誰もいない部屋に不思議そうにしているのがわかり、ソファに座りながらリボーンにも座るように示した。

「今みんなは授業だから、誰もいないんだ。綱吉君もそうだろう?」
「まぁな、あいつがいたらここにはこれねぇ」
「それもそうか」
「お前の仲間だった奴らがツナの周りをうろついてやがる」

暢気に世間話からゆっくりと確信に向かうつもりはないらしい。
唐突ともいえるほどリボーンは話を切り出した。

「もう僕の手下じゃないから言うこときかないよ。骸クンを返さなければこのままだと攫われるね」
「ほう、なら大人しくあいつを返してツナを守るか」

僕を頼るつもりならそれはお門違いだと見放したように突き離せば、こっちにだって切り札ぐらいあるとさりげなく弱所をちらつかせてくるリボーンに僕は思わず苦虫をつぶしたように顔を歪めた。

「何か考えがあるんだろ?ツナを助けるためなら、不本意だが協力してやってもいい」
「それは、信用できるのかなぁ?」
「信用するもしないもお前次第だ。だが、協力者がいないからお前はその計画を実行できない。選択肢は、限られるぞ」

あくまでも優勢に立つことは忘れずに上からの態度で言われてしまえば、認められないと試すようにリボーンを見るがそれでも構わないとばかりに言うものだから僕は内心焦った。
こっちの情報が漏れることはまず、ない。
でも、本当にそうか?
一つの疑問が僕の頭に浮かんだ。
この男のことだ、どこかしら情報を得ているのかもしれない。
しばしの間、お互いに視線を逸らさずにいた。

「わかったよ、信じよう。計画を実行するには時間とタイミングも必要だ。そして、みんなのチームワークも」
「とんでもない賭けだな」
「それを君はやれって僕に言ってるんだよ」

長い沈黙を切ったのは僕だった。
観念したように言えば、リボーンの口端が満足そうにあがった。
とんでもないといいながらリボーンの顔には安堵の表情がうかがえる。
やっぱりさっきのはハッタリだと知って僕も秘かに安堵する。
僕はリボーンと手を合わせることに頷いて、計画を洗いざらい話した。
それもこれも、全ては骸の為。





「でも、そのためには骸君に信用してもらわなきゃならないんだよねぇ」

リボーンが帰った後、僕はすぐに行動を起こしていた。
再び、骸の元へと足を運んだのだ。
研究所に居る間、心をずたずたに引き裂いてしまったのは僕だって悔いている。
何度、外に出してやると希望を持たせては突き離したことだろう。
何度、優しく言葉を投げかけては嘲笑ったことだろう。
あの頃の僕は、恋をするということを知らなかった。
いや、知ってはいたけれどそんな気持ちを自覚しなかった。
何といっても、相手はネコで研究材料なのだから。
それ故に、骸を自分の感情の赴くままに好き勝手に扱い結局リボーンにとられたことでこの気持ちの意味に気がついた。
結局、遅かったのだ。自分はもうあの研究所で地位を確立していたし、骸を愛することなどあの空間では皆無に等しいほどに僕と骸の間に太くて大きな壁があったから。
でも、もうそれも終わりだ。
リボーンに連れ去られたことで僕は自覚し、壁を自ら蹴破った。
だが、僕の決断も虚しく君はまた壁を作っていた。
ショーケースと言う名の透明な防弾の壁を…。
はたして、時間のない中…君は僕にその瞳を向けてくれるのだろうか。







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