パロ | ナノ

 全部抱えて

リボーンが来なくなった。
いつも二日と空けずに足を運んでいたのが途絶えたのは俺が風邪で寝込んだ時だ。
帰れと言ったのがそれほどショックだったのだろうか…。
まぁ、あのときは本当にうんざりしていたし顔も見たくないと思っていたのだが…今ではそれがちょっと違ってきているのに気づいた。
何で来ないのか、キツく言い過ぎだったのか。
俺の中で自己嫌悪する自分が顔を出す。
別になんともない関係なのだから来れない日もあるだろう。
仕事が忙しいのかもしれない。
あれでも一会社の社長なのだから。

「マスター」
「ん?どうした?」
「それ…いつまで拭いてるの?」
「えっ!?…あははっ、もういいよな……っ!!」

鴻上に声をかけられて指さされた手元を見ればピッカピカに磨かれたグラス。
上の空だったことに気づいて慌ててそのグラスをおこうとすればカクンッと手から滑り落ちたところを三城が受け止めた。

「…マスター、大丈夫?」
「平気だって、なんでもないって…ほら、何飲む?」
「ソルティ・ドッグ…で、三城さんなら知ってるんだろ?」
「それが…」
「みーきー、言わなくていいっ」
「…だ、そうです」

ちぇっと拗ねる声が聞こえるが、聞いていないふりをする。
あのことは誰にも言えるわけがない。
あんな、取り繕うともできなかった自分のことなんか…。
なんでリボーンの前では、ああも簡単にいいなりになってしまうのだろう…。
グラスの周りに塩をつけて、中にグレープフルーツジュースとウォッカと注いでかきまぜる。
それを出してやれば美味しそうに飲み始める。

「それにしても、気になるぐらい危なっかしいんだもん。三城さんが可哀想だよ」
「なんで三城なんだよ?」
「一々気を張らなくちゃならないから」
「……そんなことは、ないですよ?」
「図星そうな顔して言うな」

三城は無口だが、表情が顔に出ないと言うことはない。
だから、不器用だと思うのだ。
嬉しいのにあまり感情を口にしないせいで、よくわからないと言われたこともあるらしい。
それでも、三城はちゃんと見てやれる人がいれば普通に良い奴だと思うのだ。
こうして気も配れるし、不器用なりに何とかしようとして…微笑ましいではないか。

「いい人、見つかるといいな」

ポンッと肩に手をおいてやれば、なんなんだと怪訝な顔をされて、鴻上からはマスターにいわれちゃぁねぇとため息を吐いていた。
そんなとき、入口の扉が開いた。
いらっしゃいませと笑顔で迎えると、そこにはリボーンがいた。
なんだか疲れたような顔だ。

「お疲れ様です」
「ああ、ジン・バック」

注文されたものを作りながら今回は控えめなんだなと勝手に思う。
いつもは挑戦的な瞳がなりを潜めてしまっていて、何だか本当に疲れきっているように見える。
三城は鴻上の相手をしていて俺とリボーンは残されたような形になってしまった。
というか、必然的にこの雰囲気を作っているのではないだろうか…。
あいつら…。
意図的なものを感じてあとでなにかお見舞いしてやろうと勝手に思いながらレモンジュースとジンとジンジャーエールをいれてかき混ぜレモンを飾って出してやると一口飲んではぁっと大きなため息を吐いた。

「どうされたんですか?疲れている様子ですが…」
「トラブルだった。もう片付いたからここに来たんだ」
「それは大変でしたね。甘いものはどうですか?」
「そう言って強いの出すんだろ?」
「そんなことは、ないですよ」

あれはイレギュラーだったと何回言えばわかってくれるのだろうか。
苦笑を浮かべながら言えばでもいらないと言われてしまった。
まぁ、好みの問題だろうと大人しく引き下がることにする。
飲んでいるのを黙って眺めてしまう。
本当ならここで何か話題でも振って少しでもストレスと吐き出してやればいいのだろうが、まったく会話が思いつかない。
だって、俺の中ではもうリボーンが目の前にいるだけで嬉しくて仕方ない自分がいるのだ。
やっぱり忙しかったと聞いて安心したし、疲れて少しでも癒してやりたいとも思うし…なんか自分が変なんだ。

「少しはさみしいと思ったか?」
「っ……」

少し回復したのだろうリボーンは鴻上に口元が見えないようにグラスで隠しながら俺を見つめて小さな声で問いかけてきた。
こんな近くに人がいるのに俺に何をさせようと言うのだろうか。
俺の羞恥を煽って楽しもうと言う魂胆なのか?
言葉が見つからず無視を決め込めば、ふっと笑われる。

「元気そうでよかった」
「どうも…」

素直に礼が言いたいのにぶっきら棒な言葉しか出てこなかった。
あんな状態になった俺を看病してそして帰った先ではトラブルがあって大変だったのに、そこまでしても俺の心配するのか…。
俺には…勿体ない人だ…。
なんで、そこまでしてくれるのだろうか。
惚れてるから…?
でも、そんなの…あんなことしてるのに、それでも惚れてるなんて嘘じゃないだろうか。
虫がよすぎる。

「今日の閉めは何時だ?」
「…ああ、あと一時間は開けるつもりです」
「なら、外で暇つぶして来るか」
「は?」
「閉める頃にくる」
「えっ…何言ってっ」

いきなり言われた言葉に立ちあがるリボーンについ強い声が出てしまって鴻上と三城の視線が突き刺さる。
すると、それを遮るように一人の人が入ってきた。
それには、リボーンが足を止めてなんなんだろうと入ってきた人物に目を向ければ、そこに夏輝が立っていたのだ。

「っ………」

俺は絶対気づけていた。
普通だったら、気づかない方がおかしいぐらいに。
なんで、気づかなかった…?
目の前に立たれれば足が竦んで動けない。
リボーンは元の位置に戻ってこの経緯を傍観するつもりらしい…。
なんだよ、これ。
俺は助けを求めようと三城を見れば、ゆるく首を振った。
なんで…逃げたい。
恐怖に身体が支配されて、足がようやく後ろに動いた。

「逃げないでくれ」
「…っ…!!」

言われて夏輝を見れば、何でか苦しそうな顔をして俺を見ている。
初めてまともに見た夏輝は記憶にあるものより大人びた顔をしていて、なんだかあのときあった険がなくなった気がする。
ずっと怖いと思っていた存在は、柔らかい雰囲気に包まれていてそのとき初めて向き合うことができたように感じる。

「俺、謝りたくて…お前を探してた」
「探してた…?」
「ああ、こんなとこでバーやってるなんて思わなかったけど、俺はようやくお前の愛情がわかったんだ」

夏輝は柔らかい声で言った。
俺は金縛りの様なものが溶けていくのを感じながら夏輝の言葉を聞いていた。

「あんな風に痛めつけて、辛いのを承知で無理させてたけど…そうしても、お前何も言わなかっただろ?たぶん薄々気づいてたのに、ぎりぎりになるまで、俺のこと疑わなかっただろ?お前がどれだけ、俺に順応してくれるのか試してたんだ、最低だろ?」
「…ちが…」

それは俺もわかっていなかったんだ、
夏輝の言葉に俺は首を振った。
本当に愛しているからこんなことをするのだろうかと疑問に思ったことは何度もあるし、もう嫌だと投げ出したかったときもある。
だから、それが全部夏輝に向いていた愛情だけとは違うのだ。
あの時は、本当に子供でただ相手を想うのが愛だと思っていた。
思い込もうとしていた。

「その気持ち、最近よくわかるようになったんだ…試されるとかそんなのどうでもよく相手を好きになって、仕方ないってこと。なにされても良いって、気持ち。だから、お前絵にはすごく酷いことしたなって、一言…謝りたくて…ごめんな、苦しめて…もう、俺のこと何か忘れて」
「ふっ…そんなの、忘れられるわけ…なぃ…っ」

笑顔でそんなことを言われたら、ますます頭に残ってしまう。
必死でこらえたのにあっさりと涙は溢れて止まらなくなる。
拭おうとした腕をとられて指先が涙をすくっていった。

「また、泣かせてるな…」
「っ…これは、俺が…悪いからっ…」

止まらない涙をどうしようかと困っているとリボーンの視線を感じた。
俺をじっと見つめてきて、つい…悪いことをしている気分になる。
というか、今更ながらこんな話しこんなところですることじゃないことに気づくがもう手遅れだろう。
鴻上たちはばっちりと聞き耳を立てているし、リボーンには監視されるし。
なんなんだ、この異空間。

「ふぅん…」
「え…」

それに気を取られていて夏輝がなにか企む声を発した時には掴まれていた腕を引かれて引き寄せられる。
すると夏輝の顔が近づいて、キスされるっと目を閉じた時…唇には硬い何かが触れていた。
恐る恐る目を開けるとやっぱりキスしようと顔を近づけてきていた夏輝と俺の間にはバーのメニュー表があった。
それをもってきたのは、当然リボーンだ。

「そうか、あんたか綱吉のイイ人?」
「だったらなんだ」
「違うっ」
「いや、大事にしてあげてくれよ」
「言われなくてもしてんだろ、口出しすんな、元彼」
「うわ…きつい、嫌味」

俺が慌てて否定しても二人は話しを続けて、夏輝はそういうことなら俺はもう心配しなくていいかとさわやかな笑顔で帰って行った。
嵐の様な自体は一気に静かになり、まさに台風一過だ。
俺は涙を拭って、スッとした気分になんか落ち着いた。
本来ならもっとなんであのとき気づかなかったとか、最初から愛してくれればよかったのにとか縋る言葉を言っていたと思う。
でも、今夏輝がくるのに気付けなかったことと全ての荷が下りたような感覚は新鮮で、それは多分、目の前で不機嫌そうにしている男のおかげなのかもしれないなと馬鹿みたいに思った。

「何隙みせてんだ」
「隙って…抵抗する暇もなかったんだけど」
「…口調元に戻ってるぞ」
「あっ…」

リボーンに指摘されて慌てて鴻上たちを見ればふっと視線を逸らされる。
ですよねっ、見てたんだろっ。
しらじらしく見て見ぬふりをしないでほしい。
どちらにしたって、恥ずかしいのだから。

「…うーん、今日はちょっと酔っちゃったみたい?」
「そうですね、水野さんが心配しますよ」
「…そろそろ戻れる顔になったかな…?」
「そんなことをしても、気づかれますよ」
「お前は一回水野に怒られてこいっ」
「なんで俺ばっかりっ」

顔をはらしていた鴻上はしきりに水野の反応を怖がっている。
まぁ、そっちもそっちで色々あるのだろうが、こちらとしては早く帰ってもらいたい。
こんないたたまれない日は今日以外あり得ないだろう。
そそくさと帰り仕度をする鴻上を追い出すようにして帰し、三城は言う前に更衣室へと入って行った。

「か、帰る?」
「誰が帰るか…お前、俺を煽ってんじゃねぇぞ」

煽ってるつもりは何もない。
というか、上に来る気なのか。
俺は慌てて店の看板をクローズに変えて戻れば、その間に三城は裏口から帰ったらしい。
とりあえず、上に行こうとした、ら、腕をとられて壁に押し付けられ唇を奪われた。
咥内を激しくかき回され、目が回る。
こんな激しいキスは初めてで、ジン・ドッグのレモンの味が口の中に広がった。

「んんっ…はっ…やっ…」
「大人しく好き勝手されやがって、嫌だったんだろ、苦しかったんだろ…なのに、何であんな顔するんだ」
「りぼ…それは…んんぅ…あっ…ここじゃ、うえ…いく…」

嫉妬されていると気づいて、嬉しくなる自分をしる。
こんな風に想うなんてことないと思っていたのに、リボーンに塗り替えられていく。
必死に胸を押して、店では駄目だと首を振れば舌打ちして足を縺れさせながら無理やり昇らされる。
これ、大丈夫かなぁと暢気に思ってしまうほど…多分俺は現実味がないのだ。
部屋に入れば寝室に入れられてベッドに押し倒される。
夏輝との関係を絶ってからというもの、こっちはめっきりなため身体がついて行けるかわからない…。

「あの、最初に風呂入りたい…んだけど」
「一緒に入るなら逃がしてやる」
「それ、逃がしてないっ」
「お願い、準備…とか、しなくちゃ…だし」

恥ずかしいがここでかまととぶっていても仕方ない。
ノンケにはわからないが、このままではできないんだと言ってやれば少し悩んだようにリボーンの動きが止まる、
これで風呂に行かせてくれるのか?と見つめる。

「なら、やりかた覚えるから一緒に入るぞ」
「やめてっ」
「文句が多いな」
「注文が多いなっ」

なにしょっぱなからチャレンジャーなことをしようとしているのか。
もう、そう言うのは静かに悟った顔をして送り出すもんだろ。
なんか、リボーンは普通の人とちょっと違う気がする。
それでも、なんとかリボーンにわかってもらうと俺は風呂に入ったのだ。




「んっ…あの…」
「なんだ、まだ文句あるのか?」
「ちがう……優しく、して」

風呂で散々慣らして戻ればリボーンはカクテルの本を読んでいたらしい。
そんなに知識をつけられたら困るなぁと思いながらも準備できましたと言えば問答無用で押し倒されていた。
服を脱ぐリボーンに狼みたいだ、なんて形容する日がこようとは…見つめながら思ったことはそんなこと。
抱かれるのも怖かったはずなのに、リボーンは許せてしまうのだ。
精いっぱい可愛く言ってみたつもりだが、リボーンはますます眉間に皺を寄せた。

「おまえなぁ、逆効果だろ」
「えっ…あぁっ…ひあっ…んん、ぅう…」

何でだとリボーンを見るが、言葉もなく胸を舐められた。
散々開発されている俺の身体はその刺激だけでいやらしいほどの喘ぎ声が溢れる。
まずいのに、こんな声出したら…きっと、萎えてしまう。
そう思って口をふさげば、それを見たリボーンは俺の手をとってベッドに押し付けた。

「やあぁ、こえ…でるっ…ああっ、りぼ…リボーンッ」
「だせよ、こういうのは声出すもんだろ?」

それ違う気がする…。
否定したいのに、突起を舐めながら喋るから歯が敏感に尖った部分を掠めてますます快楽を教え込まれる。
胸だけでは足りなくて腰を揺らす。
はしたなくリボーンの太ももに擦りつけてしまうのが止められなくて謝れば、それでいいとあやされた。

「セックスは求められて当然だからな」
「なんか…場数踏んでる…?」
「これぐらいなら普通だろ?」
「……」

何だろう…この微妙なムカムカした気持ちは…。
ムッとしていれば嫉妬かと笑われた、
そんなんじゃないと突っぱねたらたっぷりとローションで濡らしたそこに指が触れた。

「ふっ…あぁっ…おとこ、初めてだよな?」
「そうだぞ?」
「嫌じゃないのかよ…?」

男のあそこに指をいれる行為に嫌悪はないのかと問いかければ、今更だなと笑われた。
笑うところじゃないと思う…だって、俺は現に嫌がられたことがあるのだから…。

「好きなやつの身体だぞ?触れただけで嬉しいもんだろうが」

そういうもんだろうかと見あげていれば宥めるようにキスをされて、指が二本に増える。
くちゅくちゅと水音が響いて、自分でしたことなのに恥ずかしくなった。

「ひあっ…やあぁっ…もっと、して…」
「どうすればいい?」
「そこ、そこ…ひっかいて…あぁぁっ!!やぁあっ、きもちい…はぁぁっ」

自分のイイところを容赦なく突かれると堪らない快楽を感じた。
加減を知らないはずなのに俺のしてほしいぐらいの力で引っ掻かれて腰が勝手に揺れる。
逃げようとして引き寄せられ、少しの乱暴さ加減に酔い痴れた。

「ああっ、もうだめっ…だめぇっ…へんになる…こわい、こわいぃっ」
「大丈夫だ、感じてんだろ?綱吉…好きだから…恐がらなくていい」
「あっ…ふぅっ…うえっ…はぁあぁっ…ひっあぁぁっ」

優しく囁いてくる声音に必死にリボーンの肩口に顔を埋めた。
鼻をすする音でわかってしまうのかと思うが今だけは目を瞑ってほしい。
だって、こんなに優しくされたら…堕ちそうだ。
指がそっと抜かれてそこにあてがわれる熱いモノ。
久しぶりな上に、うまく飲み込む方法も忘れてしまった。
どうしようかと不安になっているとどうしたと顔を覗きこまれた。
目の周りはきっと腫れているだろうに、リボーンは目じりにキスをしてくるのだ。

「うまくできなかったら、ごめん」
「謝ることじゃないだろ…俺だって、上手くできる保証なんてない」

そんなことを心配してる暇があるなら感じすぎて泣くなよと言われる。
泣くわけないだろと返すが、そっと涙の後を指先で辿ってくるのだ。
俺はついリボーンの腕を殴って怒りを示すが、ぐっと押し当てられたものが侵入してくる。
口をあの形に開いたまま閉じれなくなった、
予想以上に大きいし、熱いし硬いしで呼吸するだけで精いっぱいだ。

「少しだけにするか…」
「はっ…なれれば…へ、き…」
「無理するな」

身体の状態をみながらしてやると言われて小さく揺すられる、
さすがにこれ以上は無理そうだと思ったが強がればそれすらも見透かしているのか、くすりと笑われた。
嫌な男だと思うのに…それがかっこいいと思う。

「んっ…はっ…ああっ…」
「好きなとこ、擦ってやるから…イけ…」
「やっ…リボーンは?…イかないつもり…?」
「しめつけたら、イってやるよ」

やらしい…。
指でされたところを突かれて気持ちよさにうっとりしているが、いわれた言葉に意図して締めつける。
すると、リボーンの顔が歪んで中のものがぴくっと震える、
それが楽しくて断続的に締めつけていればいきなり激しく動き出した。

「あっあっああぁっ…イくっ、でるぅっ」
「はっ…ばか……煽りやがって」

しらねぇぞ、と耳元へ吹き込まれた瞬間俺は達していて、中に熱いものが蒔かれた。
久しぶりに感じた感覚に、ついうっとりとした視線を向けてしまう。

「お前、一々やらしい顔すんな」
「…してな…い……もう、疲れた…リボーンも疲れてるんじゃないの?隈…できてる」

まるで初めて会った時と一緒だなと笑えば、あのときとは逆だけどなと笑われて、唇を尖らせる。
抱きたいと思ったのは事実でもある。
でも、なんか自分は克服できてしまったようだし…いいか、と暢気な頭で考えていた。
まだ、胸の中のつっかかりを感じるが…今は、それを無視したままで…。
もう少し、甘い蜜を吸っていたい。







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