パロ | ナノ

 呼んでほしいっ

何かの光が消える瞬間、俺は手を伸ばしていて…それは届かず空を切った。

目覚めると、いつも煩いはずの声がなかった…。



最近ずっと一緒だったはずの騒音がなくなると、なんだか落ち着かない。
煩いと思っていたはずで、煩わしいと…思っていたのに。
それでも、いつもの日常は進んで行く。
俺は制服に着替えていつものように家を出た。
肩辺りはいつも少し重い気もしたのだが、今日は嫌なくらい軽い。
下駄箱を開ければラブレターが一通。
俺は中身をみることもなくそれゴミ箱に捨てた。
自分の教室に行く前に、あいつの教室を覗き込んだ。
空いた机は何をされるでもなくそこにあって、教科書がそのままになっていた。
そうだろう、あんな性格をしているのだ、律儀に家に持って帰ったりなど、あるはずがない。
俺は覗いただけで自分の教室に戻れば、いつもと変わりなくホームルームが始まる。
流れるようにそれが終わって、一限の支度をしてノートを開くと、俺の会話。
あいつと話すにあたって筆談を使用した。
その名残が、授業の合間を見てつらつらとならんでいた。
相槌だけで何を話していたのかもわからない日のものもあればムカつく態度に説教じみたことを書いてある日もあった。
会話に夢中になって消すのを忘れていたなんて、教師が見たら何の暗号かと驚くだろう。
消そうとして、消せなかった…。
こいつのいた証拠を消してしまうようで…。



学校がなんとなく過ぎて終われば、残りわずかとなった面会時間に合わせて病院へとむかった。
忙しなく看護師が通り過ぎていく院内を迷わず向かったのは依然ツナときた綱吉の病室だ。
だが、そこにはなにもなく…人がいた形跡すら…なかった。
本当に、いなくなってしまったのだと…胸にぽつりと落ちてきた。
納得したわけじゃない、でも仕方ないのだと…思いこんだ。
もっと早く出逢っていれば、もっと早くツナの傍に入れたら、もっと早く生まれていたら。
どうして俺とツナが出逢う手段がああじゃなくてはいけなかったのか。
普通に、出会えていたらどうなったのだろうか。

「こんなのは…酷だろ」

誰ともなしに呟いて、俺は病室を後にした。
ここにいても、なにもない。
もう、なにも残ってもない…。




次の日、ツナがいないというだけでここまで落ち込む自分が信じられない。
俺はツナに依存されていたと思っていたのに…むしろ、依存していたのは俺の方だったのだろうかとさえ思う。
いつもの道を通って学校に行く。

「おい、お前金持ってんだろ?」
「もってないっ」
「なら、ジャンプしてみろ…おらっ」
「ひっ…」

今時ジャンプしてみろって、どこのカツアゲだ。
落ち込んでいるところに朝からイライラさせるなと思いながら俺はカツアゲしている男の膝を後ろから蹴った。

「おわっ、なにしやがるっ」
「道のど真ん中でうるせぇ、通行の邪魔だ」
「なんだと?」

見事に決まったひざかっくん。
そんなのに嵌ってくれるなと思いながらも男の意識がこっちに向いた。
絡まれてたやつに早くいけと急かそうとして、見ればそこに…ツナがいた。
いや、正確には人間の綱吉だ。
なんでこんなところに、という戸惑いと生きていたのかという、安堵。
先に逃がすつもりが、俺は綱吉の手を取って走り出していた。
大体、覚えているとも限らない。
むしろ、今の時点で飛びついてこないのがいい例ではないか。
覚えているわけない、霊体でいた時の記憶など残ってはない。
男を振り切り、少し狭い路地に入りツナは息を切らしていたので止まった。

「はっ、はぁっ…ありがとう」
「どういたいしまして」
「…あの、初めて…あったよね?」
「……ああ、そうだな」
「なんか、初めてなはずなのに…初めてじゃないみたいだ」

初めて…という言葉に胸が痛んだ。
だがそれを悟られないように目は合わせなかった。
こいつの心には俺がいない。
俺がいなくても、こいつはどうにもならない…。
“俺は多分忘れちゃってるかもしれない。そしたら、ここにはこれないし、リボーンの記憶もない…そしたらさ、リボーンは俺を探して見つけて俺を惚れさせてくれる?”二日前、ツナが言っていた言葉を唐突に思いだした。
答えはノーだ。
現実的に考えて、あのツナは本当の自分の何もかもを忘れたツナだ。
俺だけを好きでいたツナでないのなら、俺は…きっと惚れさせることも好きになることもできなのだろう。
あれが最後の恋だったのだろう…自分では知らずに、大切なものを手放していた。
なんて悲しいことだろう、もっと素直に…好きだといってやればよかった。

「俺は、お前なんて知らない…じゃあな」

振り切るように言いきれば、歩き出す。
背後から、走ってくる音が聞こえてドカッとタックルされた。
はぁっ!?と後ろを向くと綱吉で、なんなんだと引きはがそうとすれば腰に腕を思いっきり食いこませて掴んできているので苦しい上に離れない。

「なにしやがるっ」
「ごめんっ、嘘ついたっ」
「は?」
「俺、覚えてるっ。リボーンのこと、忘れてないよっ」
「あぁ?」
「だ、だって…惚れさせてくれるかなって…」
「……」
「そしたら、リボーン俺のこと知らない風にして行っちゃうし…こんなに落ち込ませるつもりなかったんだ…だから、ごめんっ」
「お前…っ」

勢いよく白状したツナに俺はつい拳を作った。
俺を騙すなんていい度胸だな、おい。
顔をあげたツナにお見舞いしてやろうと思ったら、ツナがますます慌てている。

「ご、ごめん…リボーン、ごめんね」
「なに謝ってんだよ」
「だって、泣いてる…」

は?こいつは何言ってるんだと思って自分の頬を手で拭うと水がついた。
いつの間にか…泣いてたようだ。
って、なんで俺が泣かなきゃならないんだ…嘘だろ。
涙なんて、全く流したことなんてないから止め方を知らない。
ツナが慌てて優しく指先で俺がしたように涙を拭ってくる。

「ちょっと驚かせてやろうと思ったのに…泣くとは思わなかった」
「てめぇ、これ以上言ったら殴るぞ」
「えっ!?…殴るのは止めてよ…ちゃんと元通りなんだから」

もう言わないからと言われてツナの腕に引き寄せられて頭を胸に抱きこまれて優しく髪をくしゃくしゃと撫でられた。
左胸から伝わるのは確かな心音。
生きてる…俺の求めた、温もりだ。

「ツナ…好きだ…」
「……うそ…」
「この期に及んで、嘘でいいのか?」
「だめっ、俺も…大好きっ」

今度はツナの方が泣きそうになる番だ。
こいつはホントに泣き虫だなとようやくおさまった涙を拭いてツナの頬を撫でれば、自然と唇が重なった。
ここが少し中に入っただけとはいえ公道だと気づいた時には恥ずかしさしかなかったのだが…。




良い雰囲気になったのはいいのだが、朝だったのがいけない。
俺達はしっかりと授業を受け、昼休みにはツナを問いただしていままで何をしていたのかを洗いざらい話させた。
まぁ、簡単なことだ。
ツナは気づいたら病院で、身体に戻っていることに感動を覚えたのだが、早く学校に復帰するためと退院をせがんだ、精密検査をしたあと何の異常も見当たらずならもう帰りなさいとばかりに家に帰されていたのだそうだ。
俺がみた病室はもう退院した後というわけだ。
改めてツナが動いているのを見たが、どんくさいことが判明した。
なにもないところで躓くわ、購買のパンは買い遅れるわ、本当にどんくさい。
霊体の時は浮いていたり、俺にひっついていたりしたためわからなかったことだ。
で、学校が終わった今は…と言うと、俺の部屋でいつぞやの日のようにツナはベッドの下に正座、俺はそれを見下ろしていた。

「まさか、あれで許すと思ってんのか?」
「ひぃっ…やっぱり?…ちょっとした遊び心だったんだって…それに、リボーンが俺のこと惚れさせてくれたら嬉しいなって…」
「ばかが」
「いてっ…」

いつものように殴るわけにいかず仕方なくはたいてやった。
するとツナはにっこりと笑って立ち上がりギュッと抱きつかれ、ベッドへと二人で倒れ込んだ。

「へへっ…」
「お前、殴られ過ぎてとうとうマゾに目覚めたか…」
「違うっ、ようやく…抱きあえるなって…思ったんだよ」
「いつも抱きついてたくせに」
「でも、やっぱり…生身の方が断然いい」

ツナの方からキスをされて舌を差し入れれば甘く噛まれる。
リードを取られているようで尺に触りごろりと身体をツナごと反転させ俺が上に乗りあがった。

「病みあがりなのに…」
「お前が誘ったんだろうが、散々オナるだイ○ポだ言っておいて…」
「ははっ、嫌いじゃないでしょ?」
「萎えた」
「でも、今は萎えてないよね?」

膝で俺の股間を直接撫でてくるツナに悔しさを覚えた。
あれだけ戸惑っていたくせしてなんだ、こいつ。

「ツナ、初めてじゃないっつたら殴るぞ」
「初めてだよ、そんなことで殴らないで…少しぐらい…余裕ぶらせてくれたっていいだろ」

名前を呼んだら照れたらしく頬を赤く染めた。
あのツナがあっての綱吉、なんだか納得いかない。
俺より一つ上というのをまざまざと突きつけられたようで…。

「んな余裕、すぐになくしてやる」
「ん…大事にして、リボーン…すき…」
「っ…ったく、余計なこと言うな」
「…実は照れてる?」
「うっせぇ…」

ああ、早くこいつの口を塞がないと…と、思った。




肉眼でみたリボーンはすぐに俺の記憶を呼び覚まさせてくれた。
この人が俺の好きな人、俺が好きだった人…これからも、好きでいる人。
細胞一つ一つに刻まれたような感覚に俺は嬉しさしか感じなかった。
知らないふりをしたのはほんの少しの悪戯心。
泣き顔を初めてみて、この人は俺のこと好きなんだと感じた、
それと同時に裏切るようなことをしてしまって、申し訳なさが押し寄せてきた。
だから、大人しく正座で殴られたのだけれど…。
なんだかあのときリボーンリボーンと言っていたのは自分のはずなのにいろんな記憶がまぜこぜになって今ではまだ整理できていない。
けれど、身体が欲していた。
ただただ、欲しいと叫ぶように求めていた。
リボーンの首に腕を回して、身体を撫でられる感覚に背を反らした。
霊体であったときでは知り得なかった刺激。

「はっ…りぼーん、俺が嫌がっても…やめないで…」
「ん?」
「だって、今…すごく、りぼーんが好きだって…いいたい」
「いえ…やさしくするから、ずっと言ってろ」

不器用で、乱暴で、なんて愛しい人なんだろう。
胸を触られて舐められて怯える心を宥めてくれる。
直に自身を触られると気持ち良くて、リボーンのもしたいと言ったら、あとでなと投げやりな言葉が返ってきた。

「すき…すきぃ…あっ、りぼっ…ああっ、すき…っ」

扱かれて気持ちよさに腰が揺れる。
それを厭らしい目で見られて恥ずかしいはずなのに感じた。
ぎゅっと隠れるように首筋に顔を埋めてたら耳を舐められて水音を直に聞かされどうしようもなくなった。
なんだこれ、もう…なんか、止まらない。
そのうち、足から下着と一緒にズボンが抜き取られて開かされる。
冷たいものを塗られてはっとリボーンを見れば大丈夫だとキスをされる。

「傷薬、これならいろんな意味で大丈夫だろ」
「…そうかも、しれないけど…今度はちゃんとしたの、用意しようね」
「してる暇さえくれなかった奴がよく言う」
「だっ、だから…今度でいいってばっ」

にやりと笑われてムッと言い返す。
少し油断するといけない。
すぐに主導権を奪われる。
こんな余裕も何もないときに主導権もないが、年上のプライドとして守っておきたいものではあるのだ。

「ツナ…どこだ?」
「どこって…」
「いいところ、教えろ」
「んなこと…あっ、言ったって…んんっ…わかんない、よ…ふぁっ…」

指で中を探られながら言われるも、違和感に慣れるので精一杯で首を振ればリボーンは必死になって探してくれている。
俺が気持ちよくなれなくても、リボーンなら気持ち良くなれるのになぁと思ったがそれは言わないでおいた。
実のところ、リボーンのものが俺の太ももに当たっていて、その大きなものを入れるには…たぶん、相当慣らさなければ辛いだろう…。
でも……

「も、いいよ…」
「なんでだ?」
「だって、リボーンの可哀想…」
「可哀想とか言うな、萎えるだろ」
「萎えてないくせに…」

強情、と言えば何だと中をかき回される。
いい加減にしてくれと思っていたが、なんとなくぐちゅぐちゅという音が大きくなってきた気がする、
ついでに言えば、さっきからむずむずとしたところを指先が霞めるのだ。
そのたび、俺は息をつめやり過ごしていた。
でも、リボーンの指がそこばかりを責めるようになって俺の喘ぎは止めどなくなってきた。

「あっ、そこ…やだぁっ…変だもんっ…リボーン、とまって…やだやだぁっ」
「ヤダじゃねぇ」
「ああぁっ…もう、だめっ…なんか、イくぅっ…」

そこが感じる場所だったのだと気づいた時にはすでに遅く、俺はそこだけでイっていた。
緊張した身体が一気に弛緩して、リボーンは指を抜くとそれを待ってたかのように俺の足を抱えると自身をあてがってきた。
一番最初に思ったのは、あつい…と、それだけで…ずるっと中に入り込んでくる感覚に熱さと痛みを同時に知らせてきた。

「ひっ…ぁあぁっ…りぼーん、りぼーん…すき、ねぇ…すき?」
「好きじゃなきゃ…してねぇだろ」
「もっと、はっきり…やぁあっ、やめっ…ああぁっ」

しっかりといえとせがめばまだ慣れてない中をゆるゆると動かれて堪らず髪を振り乱していた。
やばい、このままじゃどっか飛ぶ…
壊されるような感覚に、リボーンに強く掴まった。
こんな熱や痛みを送り込むのもリボーンしかいない…けど、リボーンが好きだから離せない…。

「いってよ、ねぇ…りぼーん…リボーンっ…」
「ばか、泣いてんじゃねぇよ」
「…いじわる、する…あぁっ…ふぁぁっ」

泣きながら感じていればばぁかとまた言われて悔しいけれどかっこいいとか…思ってしまった。
でも、このままじゃ駄目だ。
このまましててもイけない…いろんな意味で…いけない。
最終兵器でリボーンを見つめ続けてやった。
それしかできないけど、それに観念したように腰を抱えて激しく動き始めた。

「好きだ、ツナ…あいしてる…」
「ああっ、あ、あいっ…あいって…」
「なに正気づいてんだよ…ほら、さっさとイっちまえ」
「そっ…ひきょうものっ…あっあっああぁっ…りぼーん、イくぅっ!!」
「なんとでも……はっ…っ!!」

リボーンがイったとたんゴムをつけられていたのをしる。
そのまま抜けて、ゴムを縛るとゴミ箱に投げ捨てている。
俺は一気に力が抜けて手も足も動かせない。
セックスというものはこんなにも疲れるものだったのか…いや、すごく満たされたけれど。
なんだろうか…幸せすぎて、なにもかもどうでもよくなってくる。
霊体でいた時のように…世界で二人きりのような気分だ。
リボーンは俺の身体をティッシュで拭うと隣に寝転がってくる。
俺は腕枕してほしくて胸に寄り添えば目的のものをだされた。
それに頭を乗せるとくすりと笑われる。

「なんだよ?」
「いや…こんなに重かったんだなって思っただけだ」
「これでも標準だっ」
「あのときは重さなんてないようなもんだろ」
「…あー、まぁ…いやになった?」

リボーンの言葉にもしかして霊の方が好きとか言うわけじゃないよな?と問えば、ばかかとこつりと額をたたかれた。
力は優しいが殴る癖は抜けないらしい…それはそれで、リボーンらしいと言うか、なんというか…。

「じゃあ、すき?」
「当たり前だ」
「すきって言って」
「……好きだ」
「俺も好き、ようやく…手に入れた」

思えば長いようで短い時間だった。
俺が眠っていたのは一カ月程度、好きだと言わせるまで長かったように感じたのに。
今は求めた人が俺を抱きしめているなんて…贅沢だ。
俺の大切な人、ずっとずっと傍にいてね…。




終わりっ





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