パロ | ナノ

 聞いてないんですっ

「そのいちー」

俺は元気よく登校するため道をあるいているリボーンの隣で人差し指を立てた。
今度は何だとうんざり顔なのは照れ隠しだ、そう思っておく。

「リボーンは俺を殴らないことー」
「無理だろ」
「そのにー、リボーンはどんなラブレターがきても告白を受け入れてはなりません」
「あ、そ」
「そのさんー、リボーンは俺を気にかけることー」
「なに自分勝手なこと言ってんだ?」

指を一本一本増やしながら言う言葉に一々つっこみを入れているが、顔がそんなに嫌がってないの、わかってるんだ。

「そのよんー、リボーンは俺の話を聞くことー」
「聞かされてんだけどな」
「そのごー、リボーンは俺のことをずっと好きでいることー」
「…ばかだろ」

言いながらリボーンはパーに開いた俺の手を握ってくる。
なんだ、これ…甘すぎだって。
今までにないぐらいの甘さに俺は混乱寸前。
普通ならここまで自分勝手なことを言えばすぐに拳か無視だったのに…まさか手をにぎってくれるなんて。
まぁ、学校につけば離されてしまうんだけど…それでも嬉しい。
校門をくぐればそっと名残惜しげに離れて行く手。
大丈夫だよ、俺はそう言うようにリボーンの背中に手を回してくっついた。
いつも学校にいるときの俺の定位置だったりする。
これなら歩かなくてもいいし、別に体力使うわけじゃないけど、リボーンにくっついてるのが好きだからこのままでいい。
下駄箱を開ければ、ひらりと舞ったピンクの手紙。
…なんかデジャヴ何ですけど。

「リボーン、さっき俺が言った『ツナを大切にして☆五カ条』の二つ目の項目に触れてる」
「しるかそんなの」

ああっ、酷い俺というものがありながらリボーンはその手紙を開いた。
開いたらいかなきゃならないじゃないか。
そして、その現場を俺に見ろと言うのか…この薄情者っ。

「リボーン、リボーンは俺が好きなんだよね?」
「……」

教室に向かう道すがら生徒とすれ違うため、リボーンは口を閉ざしてしまった。
でも、俺昨日のあの事件でリボーンが俺を好きなのはわかったけど…リボーンからは好きだって言ってもらってないんだよ…?
気づいているのかいないのか、むしろ昨日俺が好きだからとか結論付けたのがいけなかったのかもしれない。
あの流れだったらリボーンは言ってくれたのかもしれないのに…ああ、俺のばか。
せめてもの自分への慰めに、なにもできないリボーンの背中にぐりぐりと額を押しつけた。
まぁ、こんなことしても感覚だけで痛みとかはないらしいけど…。
温もりも伝わればいいのに…。
俺は、いつもリボーンのことを考えるだけで胸がほっとあったかくなるような気分なんだ。
それをいつかリボーンに教えてあげたいと思うのに。
教室に入るとリボーンはさっそく手紙を開けた。
俺にも見せてくれるつもりらしく、広げてくる。
そこにはかわいらしい字で書かれたリボーンが好きだと好意を伝える文章。
そして、極めつけに屋上で待ってます…と。

「いっちゃヤダ」

屋上とか、なに乙女みたいなことしてるの!?
いや、乙女だけど…。
嫌だと言ったらリボーンは適当にルーズリーフをとりだして文字を書き始めた。

『いかないわけにいかねぇだろ』
「俺がいるのに…?」
『別に話し受けるつもりはないぞ』
「当たり前っ、そんなことしたら俺が泣く」
『お前の泣き顔見てみんのもいいかもな』
「酷いっ」

リボーンってサドだったの!?
ニヤリと笑った顔にときめきを覚えながらもそれは嫌だから止めてくれと懇願すれば諦めたようにため息をついている。
そのまま授業が始まってしまえば手紙はそっと机の中にしまわれていった。
リボーンが優しいのはちゃんと知っているんだ。
手紙は受け取っていらないと思ってもしっかり家に持ってきて家で捨てるんだ。
学校で捨てるなんてことは絶対しない。
告白してくれた人に対して、そんなに優しくするからそれで告白される。
女の子はそう言うところちゃんと見てるんだからな。
俺のリボーンが優しいなんて当たり前なのに…。

「リボーン、好きだよ…」
『知ってる』
「うん…」

勉強中だと言うのにしっかりと俺の言葉を聞いてくれて、もう本当に大好きだ。
俺のものだって、思ってもいいよね?



今日の告白は放課後らしい。
リボーンの背中にくっついて屋上に行けば女の子が一人、待っていた。
こうやって呼びだして、告白するのって緊張するんだろうな。
そう思うとやっぱり強いんだなぁと思う。
俺だったらそんな風にできないと思うから。

「あのっ、手紙…読んでくれましたか?」
「ああ、ありがとな」
「…っはい」
「でも、俺には応えられない…俺は今、好きなやつがいるから」
「え…」
「へ?」

リボーンの後ろで待っていたら意外なことを言われて変な声をあげてしまった。
女の子もそうみたいだ。
だって、リボーンがそんなこと言うなんて初めて。
いつもは付き合うつもりはない、の一点張りだったのに。
だからこそ、告白され続けていたのだけれど…。

「好きな子って…誰?」
「言えない、今はまだ…言えるような関係じゃねぇからな」

俺はつい溢れそうになった涙を拭った。
確かに、俺のことだ。
いや、女の子からすれば別のように聞こえるかもしれないけど。
俺にはしっかりと、俺が身体に戻るのを待っていると、言っているように聞こえた。
やっぱり、こんな風で納得できるわけないんだ。
…戻りたい、俺の身体に。
自分の掌を見つめると、うっすらと自分の身体が透けて見えた気がした。

「え…?」

自分で手を閉じたり開いたりすると元に戻ったが、今のはなんだったんだろうと少し怖くなった。

「わかった…ありがと、返事くれて」

その間にも二人の話は終わったらしく、女の子は泣きそうになる涙をこらえて先に行くねと笑みを見せて屋上から出て行った。

「俺達も帰るぞ」

リボーンが小さくため息を吐いたのがわかった。
きっと、こんなことでもこうやって告白してくれるこのこと可哀想だと思ってるんだ。
女なんて掃いて捨てるほどいるとか言っておきながら、だ。

「リボーンは、優しすぎだ」
「は?」
「なんでもないっ」

早く帰ろう。
俺の身体に起こってることもなんか変だし。
リボーンの手を引いて指を絡める。
おい、と咎める声が聞こえたが聞こえないふり。

「リボーンが好きって言ってくれないから」
「そうかよ」

人がすっかりといなくなった校舎内を歩きながらぽつりとつぶやいただけでそのあとは無言のまま家へと帰った。



帰ると、何をするでもなくリボーンは食事の前に風呂へと向かった。
俺は行きたかったが、今度こそはたぶんなにがなんでもいれてはくれないだろうから止めた。
でも、あのときみた裸体は…なんというか…恥ずかしくなるぐらい、綺麗だった。
同じ男なはずなのに、心の奥へと疼く感じ。

「ああ、俺って変態になっちゃったのかもっ!?」
「十分最初から変態だ、心配すんな」
「うわっ、しっかり身体洗ってきたのかよ?」
「しっかり洗ってきたに決まってんだろ」
「っ…うーまた叩いた」

そのうちばかになりそうだと言ったらもうばかだろと辛らつな言葉。
女の子には優しくて何で俺にはこうなんだ。
むっとリボーンを見れば、水にぬれた髪につい…見惚れた。
服を着ているとはいえ、それは反則だ。
なんでますますかっこよく見えるんだよっ。

「ん?なんかまた変なこと考えてるだろ」
「かっ、考えてないっ」
「それが肯定してんだよ」
「ただ、リボーンの身体綺麗だなぁって思っただけだもんっ」
「十分変なことだ」

パンッとまた殴られた。
今度は拳じゃなく平手だからそんなに痛くなかったけど…これ身体に戻ってもやられたら本当に馬鹿になりそうだ。
けど、俺は本当のことを言っているだけなのに…なんで殴られないといけないんだろう。
風呂上がりで夕食も一緒に持ってきたので早速食べている。

「あ、でもお前いいのか?」
「なにが?」
「病院わかったんだし、お前自分の家もわかるだろ」
「………あ」
「今さらかよ」
「だって、俺はリボーンを落とすのに必死だったんだ」
「んなのに必死になってんなよ」

呆れた声を聞きながら、俺はどこに住んでいるのかわかるんだと少しほっとした。
けど、それならいいやと戻ろうという意思はなかった。
だって、今はリボーンといたい。
なんか変だし少しでも近くにいて、リボーンに俺を植え付ける。
離れたらノイローゼになるぐらい、俺に夢中になってもらう。
リボーンの食べてる目の前に頬杖をついて見つめる。
いつになったら、リボーンは俺なしじゃいられなくなるんだろう。
早く、そうなってほしいな…俺は、もうなってるから。

「なんだ、食べにくいだろ」
「ん…好き……リボーン」
「言って植え付けられるほど安い男じゃねぇんだよ」

気が散ると俺の頬を撫でてくるリボーンに自分からも頬をすりよせ囁いた。
すこしでも多く、俺の気持ちを伝えたい。
クスリと笑った顔もかっこよくて、それでもいいと言ったらばかと唇を指先でなぞられる。
食べ終えた茶碗をおき、そっとリボーンの顔が近づく。
目を閉じれば、ふっと触れる唇。
それだけで、離れて行ってしまう唇を追いかけようとすると頭を撫でられた。

「…なんか、感覚がなくなってきてる気がするぞ?」
「え?…なんでだろ?」
「心当たりないのか?」
「…うん…ないよ」

リボーンから言われた言葉に、すぐに気がついた。
けど、言いたくなくて首を振ればなんでだろうなと真剣に悩んで指先で俺の唇をなぞってくる。

「そんなにキスしたいの?」
「ばっ……なら、もうしねぇ」
「やだっ、してよっ。俺リボーンのキス好きっ」

ふいっと顔をそらしてしまったリボーンになんでだよ、と追いすがってやだやだとリボーンの首に抱きついた。
それでも目を合わそうとしないリボーンに気になっていれば、首に触れているところが赤くなっている。
よくみれば、耳が赤い。

「照れてる…」
「んなわけねぇだろっ」
「いたいっ、『ツナを大切にして☆五カ条』のその一っ」
「勝手に言ってろ」

図星の癖に照れ隠しかまた殴ってきたリボーンに俺の言ったこと何もできてないっと嘆けばお前が言ってるだけだろと一蹴された。
もう、ホント…酷い。
なんだか…それでも、リボーンのすきが伝わってくるから不思議だ。
もしかして…天然なのかな?
リボーンが知ったら怒られそうなことを思いながら今日も楽しく一日が過ぎて行く。








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