◎ あやまりましょう
「「すみませんでした」」
とある喫茶店にて、すっかり年を跨ぎ、その間しっかりとお互いの身体の相性を確かめあって忘れていた。
とっても頼もしい友人の存在を。
年明けに連絡したら、逸美さんも誘って四人で喫茶でも行こうか、とにこにこマーク付きでお誘いさせられたのでリボーンと俺と、悠斗と逸美さん揃って喫茶店へと足を運んでいた。
個室になったところに通されて、笑顔の悠斗と逸美に何か言うことは?と言われ、素直に頭を下げたのが冒頭の部分である。
「ほんっと、私たち迷惑しか被ってないわ」
「俺は結局去年誰もひっかけられなかったし…」
「すみません」
「年越しなんだかんだで悠斗と電話で越したのよね」
「つまんなかったな」
「お前らもう付き合えよ」
「「え、嫌」」
悠斗と逸美はなんだかんだ仲良くなっていたようで…俺達の知らない間に…そんなに息のあった返事ができるのならいっそ一緒になってしまえばいいんじゃないのかとまで思ってしまう。
まぁ、悠斗は無理だろうからこの二人の関係はそれ以上になれないのだろう。
これにはリボーンもあきれ顔だ。
いくら幼なじみとは言え、ここまで仲が良いと…と思ってしまうのだろう。
俺もそう思う。
「まぁ、男はどうでもいいわ。この際」
「俺ケーキ食いたいなぁ」
「私もケーキ食べたいわ」
「「お好きにどうぞ」」
新年早々俺達にお金の余裕がすっかりなくなるらしい…。
二人で仲良くメニューを眺めているのを緊張してみていたが俺達も顔を見合わせて、二人が案外怒ってなくてよかったと安堵の笑みを浮かべた。
クリスマスの後、実はもうひと波乱あったのだ。
俺は悠斗と、リボーンは逸美と一度だけだが身体の関係を持ってしまったという事実。
まぁ、お互いさまということで仲直りのセックスをして落ちついたのだ。それに、あれはあれで自分が悪いと思ってしまっているし…。
巻き込んだのは俺達だ…何もかも、この二人をお互いのことで振りまわしてしまった。
そう思ったら、なんか喧嘩する気もなくて一度だけなら仕方ないし…むしろ、その時は付き合ってもいなかったのだと思うことにした。
そうだよ、俺たちあの時告白もしてなかったし…お互いを怒れる立場も何もなかった。
ピンポーンと呼ばれて店員がやってくると遠慮なく逸美と悠斗はケーキを注文している。それに加えてパフェや珈琲なんかもだ…俺もついでにケーキを頼みリボーンも珈琲を追加していた。
「ただ飯っていいわ」
「ほんとだな、美味い」
「そりゃよかったな」
「ホントにね」
顔を見合わせてにっこりと笑う友人思いの二人はなんとも言えない。
財布大丈夫かな、と思いつつもケーキを口に運んで、リボーンはそんな二人を見ていた。
その目が、やっぱりすこしの罪悪感と逸美さんに対する情みたいなものを感じて俺は少し見惚れた。
「何見てんだ?」
「え、あ…う…なんでもない」
見過ぎていたらしく聞かれて慌てて目を反らす。
いや、恥ずかしかっただけなんだけど…。
「なんだ、言えよ」
「なんでもないってば」
ぎゅっと悠斗と逸美には見えない位置で手を握られて、なにやってんだと見れば真剣なまなざしとかちあう。
こういう小さなすれ違いか今回こんな事態を生みだしたのだと言われているようで、少し気が引けてしまう。
「…なんでもない、ただ…ちょっと…あ」
言いかけて、目の前から視線を感じた。
そう、ここは二人きりではないのだ。
俺はわたわたと慌てているのに、リボーンはどこ吹く風で言え、と要求してくる。
「だ、から…あとで」
「俺らのことは気にしなくてもいーぞー」
「そうよ、そのせいで勘違いなんてことが起きたんだから、すっきりすっぱりいってやりなさいよ」
「…だそうだ」
「なんでもないってばっ…ただ、逸美さんのこと心配してるんだなとか…そんな風に思っただけでっ」
「嫉妬か」
「嫉妬だな」
「嫉妬されちゃった」
「だからっ」
そんなんじゃない、と言いたいのに三人の目が、照れなくてもいいんだと笑顔を浮かべていて、ホントもう…。
「大丈夫だ、欲情しないからな」
「なによ、その言い方魅力がないみたいじゃないっ」
「女の子がそんなこと大声で言うものじゃないよ、逸美さん」
「…悠斗、逸美の扱い方がわかってやがる」
そっと宥める悠斗に苦笑しながら、あいつはそういう面倒を見るのが得意だったと俺は思った。
だから、俺のこともしっかり面倒見てくれて何不自由なくせいかつできていたのだけれど…。
「怒る前にパフェでも食べて、怒ってると消化に悪いよ」
「うん、ちょっとだまってる」
もそもそと食べ始めたのを見て、悠斗は安心したようにため息をついた。
「まぁ、俺はいい友人に会えたとは思うけども」
「あはは…」
「男女間での恋愛が成り立たない関係ってのを初めて知ったぞ」
「あんたたちの場合、男同士ででしょ」
「ソーデシタ」
リボーン以外はそうなるなぁと白けた目で俺と悠斗は視線を交わした。
もう、わけわからなくなってきた。
とりあえず、早く食べ終わってくれないかなと願うばかりだった。
そして、食べ終わった後も俺達の受難は続いた。
逸美の提案で初詣に行き、おみくじを引いてそしてようやく解散となったのだ。
ちなみに、俺とリボーンは吉、逸美は大吉の悠斗は末吉だ。
逸美に関しては待ち人きたる、の文字に本気で嬉しそうにしていた。
「あー、疲れた…」
「そうだな、財布も寂くなっちまった」
そこはもう、俺達の償いだと思えば安いものだ…多分。
バイトを本気でがんばるしかないなと二人でため息をつきつつ、少しだけリボーンに近づいてみる。
あの時以来、少し俺達の距離が縮まったような気がしていた。
いや…近かったのだ。前は、この距離でいたことの方が多かった。
再び戻れたことが嬉しい。
「綱吉…」
「ん?」
リボーンに名を呼ばれて、じっと見つめてきた。
俺はそれを見返す、が続く言葉がいつまでもない。
どうしたのかと首を傾げたら、そのまま手が伸びてきて顎を掴まれキスをされた。
「ん、ふ…んんっ…」
舌をいれて絡める深いキスに俺はいきなりのことに驚く。
驚いているうちにリボーンの手は服の中へと入ってきた。
やばいと思うのに、反応が遅くその手が小さな突起へと触れた。
びくっと反応すると口端を釣り上げた気配、楽しんでるとわかってリボーンの手首を服の上から掴んだ。
「んっ…も、いきなりなに」
「勃った、やらせろ」
「横暴っ、どこに勃つ理由があったんだっ」
「全部にだ」
真面目な顔で変なことを言うなと言いたかったのだが、リボーンが当然のように断言するから抵抗する気も失せる。
そういえば、リボーンは俺に抵抗させる気を無くさせることで定評があるんだったと今更ながら思い出した。
想いが通じ合ってからというもの、リボーンは毎日のように盛ってくる。
一回だけの時もあれば、長い時もあるのだが…大抵満足するまで離してもらえない。
その底知れない性欲はどこからくるのか…教えてほしいものだ。
「ここソファ…」
「良いだろ、この前まで場所関係なくやってたくせに」
「だって…あれは、お前が盛るから…」
「俺が盛るからなんだよ、俺ばっかのせいにすんじゃねぇよ」
するすると服を脱がされて、あっという間に全裸だ。
暖房が利いているから寒いわけじゃないが、まだ日があるうちからこんなことをしている背徳感に苛まれるし、それに恥ずかしい。
「っ…リボーン」
「隠すな、全部見せろ」
下肢を隠そうとした手をとられてソファに押さえつけられる。
恥ずかしいと顔を反らすのにそれに構わず身体にキスをしてきた。
ちゅっちゅっと時々吸われて、赤く痕が残るのを知る。
抵抗しても、無理なのを知っているのでもうされるがままだ。
「やっ…ふぁっ、もう…もう…」
きゅっと強く突起を摘ままれるたびに震えていれば満足そうにリボーンが笑う。
だんだんと膝を立ち上げて、足が開く。自分で刺激が欲しくてしてしまっていることに節操のなさに泣きたくなる。
「何泣きそうな顔してんだ?」
「だって、おれ…リボーンが欲しくなる…そんな風にされたら、もっと中が疼く」
元から我慢のできないたちだった俺。
それはリボーンと両想いになったことで拍車をかけ、求めるままに与えてくれることに遠慮がなくなった。
歯止めが利かないことに怯えるのに、リボーンはそれを許すからますます自分がダメになっていくような気がしている。
リボーンの指が俺の中に入ってきたときには、中が震えてきゅっと締めつけるのがわかってしまった。
「はぁぅ…あぁっ…んんっ」
「気持ちいいだろ?」
「ん…ん、もっと…あ、手…はなして」
抱きつきたくて手を伸ばそうとしてそれができないと言えば、すぐに解放され抱きしめやすいように背中を抱かれた。
ぎゅっと隙間なく身体を密着させればリボーンの服が邪魔になる。
「リボーンも…」
「脱がせ」
言われて覚束ない手でリボーンの服を脱がして、素肌を触れさせてようやく安心したようにため息を吐くと笑う声が聞こえた。
「なんだよ?」
「いや、そんなにいいもんかと思ってな」
「良いに決まってるだろ…リボーンは嫌なのか?」
「いや、言いに決まってる…だろ?」
にやりと笑って愛撫を再開するリボーン。
俺は遊ぶために言ってるんじゃないんだぞと言いたかったのにすっかりタイミングを失った。
「ぁっあぁっ…指」
ばらばらに動かされて感じるままに喘ぐとリボーンは我慢できないとばかりに自身を宛がってくる。
俺は息を吐いてその衝撃に耐える。
ぐっと入りこんできたそれに、絞り出されるような甘い声が自分の口から出て、思わず口を塞いだ。
「もっと、聞かせろ」
「ぁあっ、だめぇ…ひぁっ、んんっ…やんっあぁっ」
感じてどうしようもないと首を振るのにリボーンは聞いてくれることなく中を何度もその熱いもので突き上げる。
好き勝手動きまわるのが感じて嫌なのに、気持ちいいからリボーンは止めない。
どこまでも感じさせられて、ぎゅっと中を締めつけるとリボーンは息を乱して俺を見つめる。
その視線が好きだ、どこまでも感じてると俺を満足させてくる目。
もう、いく、と訴えればラストスパートをかけて激しく動いてくる。
「んんっ、あはっ…あぁっ、いく、いくぅっ」
「綱吉…だすぞ」
「ん…きて、はやくっ」
リボーンの切羽詰まった声に頷いて、そのあとすぐに最奥を突き上げる衝撃に白濁を放っていた。
そして、中へと注がれる熱いものに残滓までしっかりと吐き出しくったりと力を抜いた。
髪を梳いてくる手に身をゆだねながらリボーンを見あげた。
「どうした?」
「ん、俺のだ…って、思っただけ」
「最初からだろ」
「違うよ、最初は俺リボーンのだったもん…リボーンが俺のになったの」
言ってる意味がわからないとリボーンは呆れつつも繋がりを解きながらソファから起き上がり座り直すなりテレビをつけている。
この一年、色々あったけれど…ここまで波乱万丈だったことは初めてでそれほどに、俺はリボーンのことが本気なんだと気付かされる。
だからこそ、次はちゃんと手をとっていようと思うわけで。
「リボーン、好き…ちゃんと、好き」
「ああ、知ってる」
「忘れないで、いて」
「当たり前だろ」
照れくさそうに目を合わせないまま、リボーンの手が伸びてきてクシャリと俺の頭を撫でた。
髪の間から見えた耳はすっかり赤くなっていて、俺は満足げに笑みを浮かべたのだった。
これが永遠の誓いになるわけではない。
けれど、それだけ深い絆ができたと思うんだ。
ねぇ、そう思ってるのは俺だけかなぁ?
END