パロ | ナノ

 気付いた時には遅かった恋

クリスマスの色づく街でみた背中は、あの横顔は…リボーンだった。
俺は持っていた袋を持ち直し、全力疾走で走り戻った。

似合わない、恋だと思った。
俺には、つりあわないと思った。
だから、これは当然の結果なのだ。
自分に都合よく解釈して間違う前でよかった。
まだ、大丈夫…まだ、平気だ。

震える手で鍵を開け、中に入った。
マンションの一室、買ってきたものを冷蔵庫へといれて片づけると、ようやく落ちついた。
息も荒く、肩が揺れるぐらいに自分が焦っていたのだとわかる。

「リボーンは、ノンケだ…俺なんかより、女の子がいいに決まってる」

自分を好きかも、なんてどうして勘違いしそうになってしまったのか。
本当に馬鹿だ。

「ばかだ…」

視界が滲んで、溢れる嗚咽。俺は誰にも見られないように部屋へと入るとベッドにもぐりこんだ。
今日は夜にはリボーンが帰ってくる。
さっきのあの様子なら、どこかに買い物にでもでかけてそのまま帰るのだろうか。
あんなに楽しそうに笑って、どうして俺はリボーンが俺のことを好きなのかもしれないと勘違いしたのだろうか。
もとから、リボーンは女の子の方が好きだったじゃないか、どうして…。
涙はシーツを濡らし、悲しみをすべて流すかのように止まることがなかった。



「ただいま、綱吉…いるんだろ」

泣きながら眠っていたらしく、開くドアの音とリボーンの声に目覚めた。
俺はベッドから顔を出し、眠気眼を手で擦った。
すると、ドアが開きさっきみた顔がそこにあった。

「寝てたのか、腹減った。飯」
「ん〜、わかったよ」

いつもの命令口調。俺様なのは、ここにきてからずっと変わらない。
俺はなんでもない風を装ってベッドから抜けだすとふらふらとしながら部屋を出てキッチンへとたった。
俺とリボーンが一緒に住み始めてもう…七、八ヵ月。
そんな俺様天下様な男の扱いにも慣れたもので、俺はさっそく今日の夕食を作っていく。

「この福引券…今日駅前に行ったのか?」
「っ…そうだよ」
「俺も持ってたんだ、今度引いてこいよ」
「…いいよ、リボーンが持ってれば」
「こういうのにはいつも飛びつくお前が珍しいな」
「別にいいだろ、今はそんな気分じゃない」

リボーンに言われてビクッと反応するが、気付かなかったらしい。
同じ時間にいたんだよ、あそこに。
なんて言ったら、お前はどんな反応するんだろう。
けれど、言えるわけがない…俺が嫉妬していいものじゃない。そんな関係じゃない。
リボーンは特に気にした様子もなくテレビをつけて見ている。
俺達は所謂ルームメイトだ。一つの部屋を利害の一致した二人で住み、家賃やら光熱費を折半する。
それのおかげで駅前でも全然住めるお金になるし、役割も半分。
学生にはとてもお得な物件になってしまうのだ。
そして、俺達は住み始めた。
それこそが間違いだった、どうしてリボーンだったんだろう…。

「おい、なんか焦げくさくないか?」
「わっ…あちゃー、ちょっと待ってすぐできるから」

少し気を逸らしていたら手元のフライパンはすっかりと野菜炒めを焦がしていた。
慌ててかき混ぜ、焦げ目を誤魔化す。
なにをやってるんだと小さくため息をつきながらそれを皿へと盛りつけた。
それと少しスーパーで買ってきた総菜を皿に出して適当に並べてテーブルへと運んだ。

「手抜きか…」
「あのな、文句があるなら毎日作ってみろよ」
「言っただけだろ、真に受けるな」

ご飯の担当は俺になっていて、いつも俺が作るのだがいちいちそうやって手抜きを指摘されて居たらたまったもんじゃない。
これでも、こっちは精いっぱいやっているんだと言い返そうとして諦めた。
そんなことを言ったって、そのうちこいつには美味しい料理を作ってくれる女の子ができるのだから。
いや、もう付き合っているのかもしれない…あんなに仲よさそうに話していたんだから、その線もないわけじゃない。
さっさと食べ始めるリボーンを見て俺は慌てて自分も食べ始める。

「なぁ、今日…リボーンの部屋いってもいい?」
「風呂入ってからな」
「うん…」

食べながら交わされる合図。
それは、俺達の無言の密事への合図だ。
俺は男しかダメな身体、というか女の子に興味が持てなかった。
確かに可愛いと思うし、そんな子が彼女になってくれたら嬉しいなと思えるのだが、抱くことができるのかとても不安だ。
俺は男を自分のあそこで受け入れる快感を知ってしまったから。
普通の刺激では自身だけで達することはできない。
小さいころからのこの童顔で不自由したことはない。
自分の性癖に気づいてからというもの、男にしか抱かれたことはない。
黙々と食べて、終わればリボーンは先に風呂へと入っていった。
俺は食器を片づけて、リボーンが出るのを待つ。
しばらくして、出てくると入れ替わるようにして風呂に入った。
湯を張ってくれたので身体を綺麗に洗ったあと、身体の芯まで温まってから出る。
身体を拭き、タオルを首から下げて裸のままリボーンの部屋のドアノブを回した。

「準備万端だな」
「…うん」
「頭拭けよ」
「やって」

言えば、仕方ないなとため息をついてスウェット姿のリボーンは自分のスペースを開けて俺はベッドの縁に座った。
後ろからくしゃくしゃと撫でられる優しい手の感触に目を閉じる。
これを忘れたくない。
記憶に残しておこうと感じていたら、手が止まり俺は不思議に思って上を向けばちゅっと唇を塞がれた。

「なにするんだよ、キモい」
「素直じゃねぇな」
「煩い」

唐突なキスに自分の唇を拭ったら、不満そうな顔をして見られた。
別に俺は何も悪いことはしていない。
むしろ、それはリボーンだ。
あんなにかわいい女の子がいるのに、俺なんかを抱こうとしてる。

「あ、ん…ふ…」
「寒いか?とんがってるぞ」
「…さむく、な…」

後ろから腕を回されて突起を摘ままれて俺はピクッと反応してしまう。
そこはいつも弱いんだ。くりくりと突起を押し込まれて優しく引っ張られると心地よい痺れが身体を支配していく。
リボーンの質問に緩く首を振れば、自分から手をとってもっととリボーンの指先を突起に押し付けた。

「可愛い反応すんな」
「してな…っふあ…」

可愛いってどんな反応だよ、と突っ込みながらその心地よさに気分を預けていたら引き寄せられてリボーンの自身が俺の尻の間に触れてくる。
びっくりして身体を反らせると、リボーンの足が俺の足に絡まってきて膝を立てた。
俺の足も同じようにされて、M字開脚させられて自分の足の間がすごいことになっていて直視できず顔を背けるとみろと顎をとられる。

「やっ…ぁっ、やめ…」
「みると興奮するんだろ?」
「りぼ、んんっ…やぁっ、あっぁっ」

突起から手を下へと伸ばし、自身を握ってきた。
ゆるゆると触られるだけで、それが硬く芯をもってくるのが自分でもわかるほど。
だって、好きなんだ。
好きな人に触られて、感じない人なんていないだろ。
そんな自分の痴態を見せつけるようにされて、恥ずかしくて首を振った。
この、少しSっ気あるところも、俺を抱きこめるぐらいのたくましい身体も…好きだった。
そう気付いた時には、もうリボーンは他の女の子のものだったんだけど。

「おい、反応鈍いぞ。もっとするか?」
「しなくてい…これ、はやく」

俺は引き出しに手を伸ばし、ローションとゴムをとりだすとベッドに放り投げた。
リボーンはそれを拾うとローションを纏った指が俺の秘部へと入ってくる。
俺はうつ伏せにされて、獣のように尻をつきだすポーズをさせられた。
恥ずかしいと思うが、さらされた秘部を甘く苛められるのがいい。
くちゅんとネバついた音がして、中の指を締めつけた。
俺はシーツを握りしめ、中の刺激に達しないようにと気を張った。

「増やすぞ」
「い、から…はやく、はやく…」

指で突き上げられるたびに感じて、どうしようもなくて催促した。
しばらくして指が抜けると皮膜に覆われた自身が宛がわれる。
ローションに濡れたそこは簡単に飲み込んでいき、あっという間に俺の中に根元まで入れられた。

「ひあぁっ、きもちい…ぁあー」
「我慢できねぇ」

リボーンの息が乱れて、低くひずんだ声が耳に吹き込まれる。
それに感じて中を締めつけたら、エロい奴とますます激しく腰が打ちつけられて俺は自分で腰を揺すり、声を上げ続けた。
これが最後だと思うと尚更、この時間を楽しまなければならないと思った。
四つん這いから、腕を引かれて上半身が浮いた状態で自身がもっと深くまで突き刺さる。

「ひぃ…いいっ、もっときて」
「はっ…今日は乱れるな」

どういう心境の変化だ?とからかわれて、切れ切れの声で煩いと言っただけでそれ以上は感じて言葉にならなかった。

「っ…イくぞ」
「きて、きてぇっ…」

これが最後だと思うと、ゴムは必要なかったかなと思ったが、それでは不審に思われるので止めた。
いいのだ、これで。
最奥を突き上げられて白濁を放ち、中を締めつけた。
そのあとにどくどくと吐き出す感覚だけが伝わってきて、脱力した。

「はっ…はぁっ…はっ…」
「はぁー…」

リボーンは身体を離すとゴムを外し、口を締めてティッシュでくるみゴミ箱へと投げいれた。
俺はそれをじっと見ていたら泣きそうになって、身体を起こした。
もう、ここにはいられない。

「…あのさ、こういう関係…やめない?」
「は?…なにいってんだ?」
「だってさ、身体だけって都合いいけど好きな人できたら困るじゃん」

リボーンが俺を見た。その目がなにを言いだすんだと鋭いまなざしをしているから、勘違いしそうになるんだ。

「あのさ、俺だって好きな人ぐらいできるよ」
「……」
「だから、これで最後」

じゃあね、と俺はリボーンに背を向けて部屋を出た。
泣きたくなる気持ちを押し込めて部屋のドアが閉まると同時に涙が視界を遮った。
これでいい、これで俺は苦しい思いをしなくて済むのだ。
そして、俺達は半年前と同じただのルームメイト。
それ以上でもそれ以下でもない関係。
リボーンに愛された身体の感触を消したくなくてそのまま寝た。
次の日、俺はこのことを友達に聞いてほしくてそっと気付かれず部屋を出たのだった。







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