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 愛と君

目を開ければ俺の部屋でもなく、リボーンの部屋でもなく見知らぬ白い天井が広がっていた。
とっさに起き上がろうとして、手首に痛みが走る。
そうだった、俺自分で…。
ようやく現実を思い出せば近くを見回す。
すると、椅子に座ってリボーンが俯いていた。
俺が起きたのに気付いていないらしい。
その肩は酷く疲れていて、俺はやっぱりやりすぎだったと少し反省する。
けれど、あの時の俺にはこれしか方法が思いつけなくて…リボーンが俺の話を聞いてくれればと思ったのだ。

「リボーン…」
「……」

声をかければゆっくりと顔をあげて俺を見た。
しっかりと瞳に俺を映しているのが見えれば、俺は苦笑を浮かべた。
疲れきった顔だ、怒るかなと思った予想を覆して、リボーンは俺の怪我してない方の手をぎゅっと握ってくる。

「よかった…」
「うん、ごめんね」

別に死ぬことは予想してなかった。
手首を切ったぐらいじゃ、相当時間をかけない限り死ぬことはない。
そのために、俺はリボーンの前で手首を切って見せたのだから。
リボーンの手をぎゅっと握りしめると、ますます強く握ってきた。

「好きだよ、リボーン…大好き」
「綱吉…」
「俺ね、リボーンのこと…試したんだ、俺だけが好きなんじゃないかって…だから、あの日女の人と一緒に居た。でも、それだけだよ。俺はリボーンだけ」

信じて、とリボーンをみると今度はしっかりと俺の話を聞いてくれているようだ。
よかったと安堵して、ほっとため息をついた。

「俺だけか?」
「うん、リボーンだけ」
「ならっ…これはどういうことだよっ」

リボーンの声は低く冷静に響いた。
これ、と示された俺の手首の傷。よく見れば何針か縫っている。
それもそうかと妙に納得しながらも、俺はリボーンの手を解いて頭へと手を伸ばした。
くしゃりと撫で梳き、そこまで執着されていることに喜びを覚える。

「あのね、俺はリボーンがいないなんて考えられない位…リボーンが好きだよ。けど、俺はペットじゃないから…リボーンだけに依存することはできない」

いや、依存することはできるけれど目の前が何も見えなくなってはいけないのだ。
周りを見て、うまく立ち回って相手ばかりではいけない。
どうすればリボーンと長く一緒に居ることができるのか。そこまで考えなくては…いつか、この関係は脆く崩れてしまうだろう。
俺がリボーンに一方的に養われてしまうという状況は良いと思うけれど、なにがあるかわからない。
俺が無意味に会社を辞めるよりは二人で働いた方がいい。

「好きだから近くに居る、それはいいと思うけれど…監禁するのとは違う」

そうだろうとリボーンを見れば、小さくコクリと頷いた。
俺は笑みを浮かべて、そこで一つ提案があると人差し指を出す。

「それなら、いっそ一緒になればいい。俺は俺で稼がなきゃならないけど、これでお前からは離れないよ。どう?」
「お前は…俺のためにいろんなことをしてくれるんだな」
「好きだからね、愛情をいっぱいリボーンにあげるよ」

リボーンは俺の手をとってちゅっと甲に口付けた。
それなら唇にしてくれと顔を寄せるとちゅっと唇が触れる。
優しいリボーンの唇、もっと欲しくて舌を出したらそっと吸われた。
ちゅっちゅくっと絡ませていれば身体の方が反応してくる。

「あ、俺って入院?」
「今日はな…明日には退院だと」
「ふぅん…そうか、じゃあお預けか…」
「お前、場所を考えろ」

それを言うならリボーンにだと思いながら笑みを浮かべた。
結局のところ俺もリボーンもネジの一、二本飛んでしまっている。
いまさら周りがどうこう言ったって気にしないこともできる。
けれど、これからは少しずつ限度をわかっていかなくては…でないと、いけないんだ。

「俺を好きでいて、リボーン」
「お前は、優しすぎだ」
「リボーンだけだよ、リボーンにしか優しくない。リボーンを好きだから、もっと俺を愛して」

ただ、リボーンからの愛情が欲しい。
与えるだけで欲しがらなかった俺が、唯一欲しがったものは…ただ一人、俺が心から愛した男の愛情だった。





あれから一ヵ月ほどが過ぎた。
今日は綱吉が俺の部屋に引っ越してくる日だ。
荷物はもうほとんど届いていて、あとは綱吉がこの部屋にくるだけ。
まぁ、後片付けやらなにやらも残っているが一緒に住むにあたってレンジやそういう家電は売ることにした。
大体二つあっても困るだけだろう。
なので、かなり身軽になって荷物が先に届いたのだ。
ピンポーンとなったインターフォンに俺は立ち上がる。
荷物は広げずに待っていろと言われたので、そのままだ。
玄関をあければ、綱吉がそこにいて笑みを浮かべている。
手首はもう抜糸も済み痕が残るだけとなった。

「今日から、よろしく」
「ああ、よろしく」

手を出して握る。
そうしてついでとばかりに引き寄せて口付けた。

「んっ、もう…まだだって…」
「待てるか、ここまで散々待たせて癖に」
「あは、ばれてた?」

キスを解けば悪戯っぽい声で綱吉が言う。
あまりからかうならもっとしてやると、玄関のドアを閉めるなり深く口付けた。
綱吉は最初笑っていたが容赦なく吸ってやるともごもごともがいて、それから力がすっかり抜けたように身体を預けてきた。

「ベッド行くか」
「…片づけは?」
「あとでも、いつでも…できるだろ」

それこそ、セックスなんて四六時中できると突っ込みが返ってくるかと思ったが綱吉は少し考えてそれもそうかと納得するなり、自分から唇を奪ってきた。

「じゃ、たくさん…シて?」
「その言葉あとで後悔するなよ?」

ニヤリと笑えば、しないよと返された。
どこまでも甘いなと感じて、俺は綱吉を連れて一ヵ月前綱吉を閉じ込めた部屋へと入る。
結局ここしか空き部屋がなくて、ここは嫌なんじゃないのかと感じた俺の予想は外れて、綱吉はここ寝やすかったからここがいいと主張したので外鍵を外して綱吉の部屋にしたのだ。
あの監禁も別に嫌な記憶として残っているわけではないということがわかり、俺は少し安心した。
ベッドに押し倒し、服を脱がせる。
いつもの手順でやるのに、身体を重ねるのが久しぶりなせいか少し緊張した。

「リボーン、早く…ほしいよ」
「自分から遠ざけてたんだろ」
「たまの我慢も、必要だよ。人間お腹を空かせた方が美味しい物をもっと美味しく食べれるんだから」

ふふっと笑って綱吉は俺の服に手をかけた。
俺も服を脱ぎながら綱吉の後ろに触れる。秘部に触れて中を探ると少しきつくなっているがそれぐらいで、いつものようにしても問題はない程度だ。
近くに置いておいたローションをとると、そこに塗りこめて指を出し入れする。
そしたら、しがみつく綱吉の口からは甘い声が出て、俺を煽る。
脳を溶かすように思考さえもなくなってくる、ただ綱吉が欲しくて溺れていく。
たっぷりと慣らすと綱吉に押し倒された。

「なんだ、今日は上の気分か?」
「うん、リボーンを入れさせて」

いつもリボーンが主導権握ってるからたまには俺がもらう、と軽くキスをして綱吉が腰を落としてくる。
いつもよりゆっくり飲み込まれる感覚にこちらが先に我慢できなくなりそうだと、吐息を漏らした。

「あっ、リボーン…りぼ、あぁあっ…もっと、ちょうだい」
「お前がするっていったくせに」

力が抜けて思うように動けないと泣く綱吉の腰をつかんでいつも感じる場所を突き上げた。
すると、腰くだけになるほど甘い声で啼き背を反らせた。
びくびくっと感じてもっとという風に中が吸いついてくる。
思うままに揺さぶればあられもない声が溢れて俺の胸についた手はひっかき傷をつくっていく。
それすらも愛おしく感じて、これでは動きづらいと身体を起こした。

「あぁっ、やぁっ…かんじる、うごいちゃだめっ…」
「感じさせてんだから、動くに決まってんだろ?」

綱吉を押し倒して腰を抱え直すと、これ以上は無理と首を振るのも構わずに腰を打ちつけた。
何度も奥へと突き上げていれば、声にますます甘さが混じり中もとろりととろけるのだ。
綱吉が後ろだけでイく兆候だとわかれば、そこばかりを責め立てる。
腰を回して、全体を擦り綱吉は俺の腕を掴み視線を合わせてきた。

「もう、イくか?」
「んっんっ…りぼ、も…ふあぁぁっあぁっ」

問いかけにコクコクと頷いたのを見れば、だったらと足を抱えて動きを激しくする。
綱吉はぎゅっと俺の背中に爪を立てて、腰を二、三度痙攣させると後ろでイった。
俺もそれにつられるようにして中に放ち、飛び過ぎて辛そうにする綱吉を見れば動きを緩やかにしてゆっくりとトーンダウンする。

「はっはっ…りぼーん、りぼーん…」
「綱吉、あいしてる…」
「ん、おれも…あいしてる」

ふわりと笑う綱吉に俺は何度もキスをする。
これから二人の生活が始まる。
でも、これは一方的な感情の押し付けじゃない。
お互いが求めて、お互いが依存した結果だ。
これが良いか悪いかなんて、そんなこと聞くだけ愚問だろ。

「これから、ずっと一緒だ。離れないし、離さない」
「うん…一緒だ…ずっと、近くに居てね」

ぎゅっと回された手が温かく俺を包み込むようだ。
愛しいと俺も抱きしめて、ただ二人だけ。
今は、誰にも邪魔されることなく時間を共有して、仕事の時はしっかりと割り切る。
これが俺達の理想だ。適度にすれば何も怖いことなんてないのだと、綱吉は教えてくれたのだから。

君を愛し続ける俺とそんな俺を受け入れる君。




END





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