◎ 窒息と余裕
初めて俺に向けられた言葉
初めて重ねられた温もり
何もかもが初めてで俺はどうしたらいいのかわからない。
でも、俺の精一杯で愛してやりたいと思う。
どんな形であっても…それが俺の愛し方なんだって…
俺がリボーンと付き合い始めて約半年が経とうとしている。
相変わらず木曜日にホテルで待ち合わせをする日々が続いていた。
変わったことと言えば、週末も会うことが増えたことぐらいだろうか。
それと、なんだかリボーンは俺に甘くなった気がする。
俺とリボーンが心通わせたあの日から俺はリボーンにどうしてほしいのかを言うように心がけていた。
勿論俺は俺でリボーンにベタ惚れと言っても過言ではない。
そして、今日もホテルに呼ばれていた。
俺はエレベーターに乗り指定された部屋へと向かった。
部屋の前まで行くとノックをしてリボーンが扉を開けてくれた。
「遅かったな」
「うん、ちょっと…忙しくて」
ぶっきら棒な言葉と共に中へと促されて俺は中へと入った。
荷物をおいて、コートをハンガーへとかける。
リボーンはテレビを見ていたようでつけっぱなしだった。
「ご飯は?」
「まだだな、食べに出るか…それとも…」
「うーん、いいや…食べるより、リボーンがいい」
俺はリボーンに手を伸ばしてリボーンの頬に触れた。
けれど、リボーンの視線は俺の手荷物に注がれていた。
何か気になるものでもあったのかとリボーンの視線を辿れば一つのチョコへと向けられているのがわかる。
「あ、いや…これは、その…もらったやつで」
「こんなに貰うんだな」
「…そういう、リボーンこそ…人のこと言えないじゃないか」
なんだか機嫌の悪くなったリボーンにも言い返してやろうとリボーンの鞄を見れば案の定チョコレートの包装が目に入る。
やっぱりモテるのかと少しショックを受けつつも、量的にもリボーンの方が勝ってるのにどう説明するんだとみやった。
「俺のは机に無理やりおかれていた、それに誰からのものかもわからない、つまり持って帰るしかない」
「…なんだそれ」
「目の前で渡されるものに関しては、俺は断っていたからじゃないか?」
リボーンの返事に俺はぐうの音も出ない。
俺は目の前で渡されるまま受け取ってしまっていたからだ。
リボーンを見ればじとっと俺を見てきて、分が悪いことはわかっている。
わかっているけれど、納得できないものもあるだろうっ。
「なんだったら、今ここで捨ててもいい。綱吉以外から貰ったものなんて、俺には必要ないものだからな」
「ちょっ、ちょっとまって…想いがこもってるものじゃん。そんな簡単に捨てるとか言うな」
言うなりリボーンは鞄の中のものをゴミ箱に捨てようとしていて、俺は慌ててそれを手に取った。
俺を一番に想ってくれているのはわかったけれど、他の人の気持ちも大事にしてほしいとか…考えたらいけないだろうか。
だって、俺だってそこに居るべき人間だったかもしれないんだ。
俺だって、そうやって健気になんとか受け取ってもらおうと机にチョコをおいてしまうようなこと…したかもしれないのに…。
そう思うと、このチョコを渡した女性たちの気持ちを無碍にはできない。
「綱吉以外はどうでもいいのに、か?」
「たとえそうでも、貰ったら食べる。な?」
「我儘なやつだ、なら…これでいいか?」
「む…?」
リボーンはいきなり包装を破いて中から一口大のチョコをとりだし、俺の口の中へと押し込んだ。
甘くてとろけるそのチョコレートはいいところのものなんだろうなと予想がつく。
けれど、次の瞬間にはリボーンの唇に口を覆われていて、舌が入りこんできたかと思ったら咥内を蹂躙しはじめた。
甘いそれとは違う刺激的な触れ合いに耐えられなくなったのは俺で、カクッと膝が折れ絨毯につく前にリボーンに抱きあげられた。
そのまま向かうは寝室で、入ったら大きな窓があって外が暗いせいか俺達の姿がよく映った。
「カーテン、閉めてっ」
「こんなに高いんだ、周りにビルもない…よって閉める選択肢は拒否された」
「何勝手なこと言ってんだよっ」
俺はベッドに降ろされて服を脱がされる。
付き合い始めて、リボーンは俺に従順になった…というか、俺の言うことを全て実行するというなんだかおかしいことになった。
俺もそれに頭に乗っていろんなことを規制するのではなくて、本当に必要だと思うものだけに要求をしてきたのだけれど、なんだか最近噛みあわないような気がする。
リボーンはちゃんと俺を大事にしてくれようとしているのはすごく伝わっている、けれど…何かが違う気がするのだ。
それがなになのか…俺はよくわからないのだけれど、これで良い気もするのに…なんでかすごく嫌な予感がして…。
「って、何してんのっ!?」
「は?文句はきかねぇ」
よいしょと抱えあげられたのは座ったリボーンの膝の上、恥ずかしいと暴れても離す気はないらしく俺の服がどんどん脱がされていく。
この絶倫っ。
リボーンの性癖も結構なもので、あんなに俺を苛めて楽しんでいたが今ではすっかりマニアックなプレイばかりを要求してくる始末。
別に、俺は感じさせてもらえばいいのにリボーンは何かと俺のはずかしがる顔やらなにやらを見たいと言ってくるのだ。
「リボーン、俺…普通にしたい」
「普通にしてんだろ」
いや、普通じゃないかな…ちょっと。
けれど、俺が反抗しようとしたのがわかったのかすかさず露わになった突起に指が這ってきてクリクリと弄ってくる。
ぴりぴりとした刺激に俺は息を詰まらせて、リボーンの身体に抱きついた。
「綱吉、これじゃあみれねぇ」
「しら、なぁっ…ああっ…」
突起をきゅっと摘ままれて俺は思わず声をあげてしまった、そうするとリボーンはにやりと笑って俺にキスをしてくる。
まるで、いい声だといわんばかりのご褒美に俺は顔に熱が集まっていくのがわかった。
顔を見られたくなくてリボーンにしがみついたままでいると耳たぶを甘噛みされて、しかも舌が中にはいってくるせいで水音が響いてくる。
「ひぁあぁっ、やだぁ…みみ、しちゃだめっ」
「感じてるくせに、よく言うよなぁ?こっちも、もう濡れてるじゃねぇか」
言いながら下肢へと手が触れて、俺のそこはもう勃っているのだと初めて知った。
逃げようとリボーンの腕から逃れようとすればするりと抜けられてしまい、俺は一瞬訳がわからなくなった。
いつものリボーンなら俺を離さないようにしているはずなのに、おかしいとリボーンを見れば自分の服を脱いでいた。
そして、俺を見れば腕を掴まれて強引にベッドへと戻された。
「なに不安そうな顔してんだ?」
「な、なんでもない…」
本当に逃げ出せてしまうのかと思ったなんて言えなくて見つめてくるリボーンから視線を逸らした。
けれど、クスリと笑みを溢したリボーンは俺自身を下着から出して、握りこむと慣れた手つきで扱いてくる。
「はっはっ…あぁっ」
「その不安も、俺が取り除けたらいいのにな…」
「な、にぃ?」
「なんでもねぇ、ほら…もっと溺れろ」
リボーンの小さい呟きは俺に届くことなく、俺は激しくするリボーンの手に言われるまま溺れていった。
「やっあぁっ…あぁぁーっ、だめぇ、だめぇっ」
「ダメじゃねぇだろ、感じてるだろ?」
リボーンに子供が用を足すような形で足を持たれて下から突き上げられていた。
自重で深く咥えこみ、なおかつ下からの突き上げに俺は泣きだしてイヤイヤと首を振った。
けれど、リボーンは耳元で甘く意地悪に囁き窓に映った俺をじっと見つめている。
「はずかしいぃっ」
「俺のものを咥えこんでるの、わかるだろ?それに、恥ずかしいって言いながらお前のそこはぐちゃぐちゃに濡れてるじゃねぇか」
「だって、だってぇっ…ひっあぁっ、もう…イった、しんじゃう、もうでないぃ」
俺はイきっぱなしな感覚を教え込まれて、もうでるものもないというのにリボーンはまだ後ろにくれることなく観察するのだ。
そうして、見られているうちに新たな快感を覚えて、俺のそこはだらだらと白濁を垂れ流すだけになっていてどこが終着なのかどこが果てなのかわからなくなっていた。
「りぼーん、リボーン…おれ、どうにかなる…はっはっ、やぁぁっ!!」
「なら、イくぞ。全部飲めよ?」
「のむから、全部そそいでぇっ」
ぐちゅぐちゅと厭らしい音が響いて俺の中へとリボーンのうめき声と共に熱いものが注がれた。
何度かに分けて入りこんでくるそれはリボーンが抜けていくと秘部が締まりきる前に零れた。
シーツに沁みを作っている厭らしい光景が嫌でも目に入ってしまい、俺は慌てて逸らした。
「また興奮してんのか?」
「ちがう、ちがうぅ…もう、だめだって、さわっちゃ…ぁっ」
自身に手をかけられて絞り出すように下から先端に向けて指が撫でる。
くぅんと犬が鳴くような声をあげてしまい、俺はぎゅうっとリボーンの手を握った。
もう、精根尽きはてるというのはこういうことを言うのだろうか。
久しぶりに激しく抱かれてベッドに降ろされるなり俺はそのまま寝転がった。
「綱吉、風邪ひくぞ?」
「んッ…こんなにしたのは、リボーンじゃんか」
「可愛くて、自制を忘れた」
「っ……ばか…」
じろっと睨みをきかせるのにさらりとこっちが恥ずかしくなるような言葉を言ってくる。
どうしたらいい?と顔を寄せて聞いてくるリボーンにちゅっとキスをして、腕を伸ばした。
「もう少し、抱きしめてて」
「わかった」
ぎゅっと抱きしめられて、自分がようやく戻ってきたことを実感できた。
いつもリボーンにばらばらにされるのに、リボーンがこうやって集めてくれることで俺は元の形を保っていられるような…そんな気がした。
それにしても、今日はすごかったと思い出して小さく息をつく。
チョコを貰って来たのがそんなに燃えたのだろうか…。
今度からもらいものに関しても気をつけなきゃなぁと俺はその時暢気にも想っていたのだった。
限られた逢瀬を十分楽しんで、また明日がやってくる。
けれど、いつもの時間があることで俺達は何かにすがれている気になっていた。