パロ | ナノ

 傷と口付け

冬も本格的に寒くなり始めたころ、イベントがやってきた。
俺達が付き合って、初めてのクリスマスだ。
付き合う…というには、些か語弊があるようにも思えるが、身体の関係があり先日ようやく思いも通じ合えたということは…その例えでも不思議はないように思える。
ただ、俺達の間では自覚と言うものが少し欠けている気はするけれども…。

「はぁ…今日来るかなぁ」

俺は駅前でリボーンを待っていた。
いつもは木曜日によく一緒に食事をしたりするのだが、今年のクリスマスは日曜日。
当然俺は私服で、リボーンも私服で来ると言っていた。
実を言うと半年以上もの間一緒にいて相手の私服姿なんて数えるぐらいしか見たことがない。
ほとんどが会社帰りだったりするせいか、スーツが基本になっていた。
だから、私服というと少し気恥ずかしい様なものを覚える。
今日俺がリボーンを呼んだのは、まぁクリスマスだからたまには俺がホテルを選んで、ケーキなんて買っちゃって…と考えた結果だ。
次の日は休みにするようにと願い出ている。
けれど、少し引っかかるのがリボーンの発言だった。

『何かとくべつなことでもあるのか…?』

リボーンは会おうと伝えた電話口でそんなことを呟いていた。
もしかして、クリスマスを知らない…?
なんてことはないだろう、さすがにリボーンだって男だ。前に日替わりで女がいたと言っていたリボーンはこの行事ぐらいしっているだろう。
でも、あの本気でわからないと言った声を思い出せは少し嫌な予感がする。
そして、その嫌な予感は俺の予想を裏切らないのだ。

「綱吉、待ったか?」
「ううん、じゃあ行こう」
「ああ、だが今日は本当に何の日だ?イルミネーションをもすごいみたいだが…」

………本当に何も知らないのか…?
リボーンの顔を見れば何の疑いも曇りもない。俺がからかわれているということはないようだ。
とすると、リボーンはクリスマスを知らないという結論になる。
今時そんなこと、有り得ないとは思うが…リボーンのことだ、あながち嘘でもないだろう。

「リボーン、あのね…今日はクリスマスって言うイベントなんだよ」
「…は?」
「えーと、ハロウィンとかバレンタインとかそんな感じの皆でもりあがるイベント」

リボーンがハロウィンやバレンタインを知っているか知らないが、とりあえず例えを出して説明してみた。
すると、リボーンは少し落ち込んだような顔をしたのだ。
良く見ないとわからない位だが、確実に落ち込んでいる。
俺はリボーンがそんな顔をするとは思わず少し、慌てた。
こういうときの対処法と言うものを俺はまだわからない。
リボーンがどんな言葉をかけたら喜ぶのかだとか、どうすれば慰められるのかとか…俺はまだ、なにもわかってない。

「俺は、知らなかった」
「うん、いいんだよ。俺が教えてあげるから」

明らかに沈んだ声でいったリボーンに自然と慰める言葉が出た。
歩きだそうと引いた手は寒さだけでなく冷たくなっていて、温めるようにぎゅっと握った。

「年越しも一緒にいれたらいよう?俺、リボーンの部屋行きたい」
「……」
「蕎麦食べて、初詣とかいってさ…」
「綱吉、俺はこのままでいいのか?」

ぽつりと溢された言葉、完全にリボーンの足が止まってしまい、振り返ればリボーンはすごく不安そうな顔をしていた。
俺は自然と口元に笑みが浮かんでしまう、リボーンが落ち込んでいるのに酷いとは思うが、でも俺はあの傍若無人で何も信じようとしなかったリボーンが俺を見て俺のことで悩んでいる…その事実で嬉しくてどうにかなってしまいそうだった。
クリスマスなんてただの口実だ。
俺はリボーンに会いたくて、私服も見てみたくて…一緒にケーキとか…誕生日は過ぎてしまったから…。

「このままでいい…とは、言いきれない。リボーンの好きにしてくれたらいい」
「俺の好きにって、どういうことだ?」
「うーん、と…そのままの意味だよ。俺を泣かせたいだけなら手酷く扱えばいいし、大事にしてくれるならどんなふうにされても嬉しい、リボーンがそうやって俺のこと考えてくれるの嬉しいんだ」

予定の時間に遅れてしまうからとりあえず歩こうと手を引いた。
クリスマスは予約をいれないといけなくて、なかなか大変だったのだ。
それを棒に振るなんてことはできない。

「安い男だな」
「うん、リボーンがそう思うなら俺は安い男だよ」

傷つける言葉だってやさしく包み込んであげる。
加減がわからなくて爪を立ててしまうならその爪ごと俺は愛してあげるから、いまは何も知らなくていいよ。
ホテルにつけばそのまま中に案内されてレストランへと入った。
高いだけあって、食事も豪華でリボーンはまだ複雑そうな顔をしていて、俺はしかたないなぁと笑みを浮かべた。
知らないものはしかたないと思ってくれないのだろうか。
きっと、俺がこうやってリボーンにつくすようなことができるのも今年で終わりだ、
あれでもリボーンはリードをとりたい性分らしいから、一度覚えたら忘れないだろう…そう思うとこの時間がなんだが貴重なものの様な気になってくる。
始終俺はリボーンを見つめて、食事をしていた。
そのあとホテルの中へ。

「どこにいくんだ?」
「ケーキ、ここの美味しいって有名なんだ」

ほらほらと手を引いて連れてきたのはさっき食事していたところの近くにあるデザートが並ぶショーケースだ。
もちろん食後に注文することもできたが、せっかく部屋をとってあるんだから二人きりで食べたいじゃないか。

「何が好き?」
「選ばないとダメなのか?」
「甘い物、嫌い?」
「いや…そういうわけじゃねぇが…」
「じゃあ、選ぼう」

うきうきとリボーンを見ればなんだろうか、複雑そうな顔をしている。
照れてる…とか?
まさかそんなこと…リボーンで照れるなんて有り得ない…。

「なら、フルーツケーキ」
「あ…じゃあ、俺は…ティラミス」

二つをさりげなくリボーンが注文して、俺が払おうとおもったのにさらりと払われてしまった。
しかも、そのケーキを持ってフロントに向かってしまう。

「俺がやりたかったのに」
「は?…お前に頼りっ放しは…なんか納得できねぇんだ、これでいいだろ」

ぶっきら棒に言われた言葉に俺は確信した、やっぱりちょっと照れていたんだ。
顔は何も変化ないが、耳が赤い気がする。
チェックインを済ませて、エレベーターに乗って部屋へと向かう。

「俺ができることは他にないのか?」
「ん?」
「俺はこうやってお前に引いてもらうばかりで、俺はなにかすることはないのか?」

二人きりの空間でリボーンは口を開いた。
真剣に俺を見てくれる様子が、とても好きだと感じる。
俺のことを考えて、悩んで…いつか、リボーンは俺の色に染まってくれるのかな。
唯一この俺の趣向に真摯に向き合ってくれる、大切な人。
俺はリボーンを見つめると、肩に手をかけて耳元へと口を近づけた。

「恋人らしく、抱いてくれたら…嬉しい」

ぽーんと鳴ったエレベーターの音に少しの浮遊感ののち扉が開いて、戸惑う様子のリボーンより先に降りる。
さすがに俺も恥ずかしかった。
足早に部屋に行くと扉を開けて中に入ると同時にリボーンに唇を奪われた。
けれど、それは一瞬ですぐに離れるとリボーンはテーブルにケーキを置いた。

「食べるんだろ?」
「…う、うん」

なんだ、あれ…つい顔が熱くなってライトがオレンジ色でよかったと思った。
蛍光灯ならすぐにこの赤みは知られていただろうから。
二人で食べるケーキはささやかながらやっぱり美味しくて、俺はリボーンに笑顔を向ける。

「楽しそうだな」
「うん、二人でいたかったから」
「それなのに、恋人がこんなに何も分からなくていいのか?お前はもう少し、いろいろイベントに気づいたり愛しただけ愛を返してくれるような奴がいいんじゃないか」

顔をあげればリボーンの顔は少し陰っていて、なんだろう…まだ落ち込んでるの治ってなかったのかな。
俺は首を振って否定した。
そんなことを言っても俺はリボーンが良くなってしまったんだから、これは変えられない事実だ。
そして、それを俺はリボーンに強要するつもりもない。そのままで、いてくれればいいなんて…。

「変だろ、普通に考えたって…こんな、常識もわからないような男」
「待った、ストップ。なんでそんなに怒ってるんだよ。自分で自分を傷つけるなよ」

まくしたてるように言ったリボーンに俺は手を握ることで待ったをかけた。
なんでそんなところまで考えてしまうのだろう。
俺はそれでも良いって言ったのに。リボーンは少し考えすぎるところがあるのかな…なんて。
俺も結構思いこんでしまうことはあるが、最近のリボーンは特にだ。
何をそんなに気にすることがあるのだろう。
自分の言葉で傷つくのがわかるから少し寂しくて、俺はリボーンを見つめた。

「俺が大切なものを、簡単に傷つけないで」
「は?」
「俺が大切なのは、リボーンだよ。傷つかないでよ、俺がいないところでとか…俺はこれでも、護ってあげたいとか思ってるんだから」

たとえ自分であってもリボーンが傷つくのを見たくないって言ったら、ひかれるのだろうか。
でも、本当にそう思ったことで。できることなら、俺が甘やかしてあげたいって思ってる。

「ぷっ…くっさいせりふ」
「う、く、くさいって…そりゃ…ちょっとは、恥ずかしいなとか思ったけど…でも、んんっ」
「……あまい」

いきなり笑われて俺は言い返そうとしたのに、いきなり握っていた手を引かれて引き寄せられ、口づけられた。
さっきの様な軽いものじゃなく、深く舌が入り込んで咥内を舐めて出て言った。
銀糸が名残惜しげに俺達を繋いで、リボーンは指先で唇を拭った。

「もう…なんだよ、いきなり」
「ケーキを食べてる途中だが、お前を食いたくなった…いいか?」
「はぁっ!?」
「恋人らしく抱いてくれたらいいんだろ?」

言われて恥ずかしくなり、顔を俯けるがリボーンは椅子を立つと近くにあったベッドに俺の両脇を掴んでひきあげ寝かされた。

「…なんで、そんなに機嫌いいんだよ…」
「綱吉が嬉しくなるようなことばかり言うからだろ」

それにしたっていきなり機嫌がよすぎる。
調子のいいやつと言えばいいのか、気を使われているのか今一まだよくわかっていない。
けれど、服をたくしあげられて顔を寄せられるだけで俺の身体は熱くなっていく。
リボーンに慣らされた身体だ、リボーンが求めてくれるなら…俺は俺の全部で応えたい。

「いいか?」
「わかったよ、食べてください」





ぐちゃぐちゃと卑猥な音が響いている、胸を触られて揉まれて身体中に赤い痕を残して二人で裸になった。
そして、あろうことかリボーンはフルーツケーキの生クリームを秘部へと塗りたくり始めたのだ。

「やぁっ、べたべたするぅ…」
「おい、尻あげてろ…ならさねぇといけないんだから」

俺は腰を高く掲げていて、指が増えるたびに自身は反応するのに一切そこに触れようとしない。
慣らさないといけないと言いながら、もうそこには三本目が挿入されてる。明らかに俺の反応を見て楽しんでるじゃないかっ…。

「も、やだぁ…はぁっ、あぁっ…うあぁっ!?」
「だったら、舐めてやるよ」

舐めながら言わないでくださいっ。
俺は混乱しながら今の状況を飲み込めずにいた。
指が抜けていったと思ったら、そこに触れたのは温かい何か。
柔らかくて、濡れていてと考えて熱い吐息が触れて俺は焦った。
舐められてるなんて思いもしなくて、それで中まで忍び込んできた舌にシーツをぎゅっと握って耐える。

「はっはっ、りぼーん…りぼ、あぁっ…はあっん…」

俺が呼びかけても無言でそこを熱心に舐めている。
もっと刺激がほしくてきゅっと締めつけてしまえば指が入ってきた。
そのままかき回されて唾液と生クリームで俺のあそこはどうなってしまうのだろうと少し不安になって、けれど指先が掠めた感じる場所に俺は悲鳴のような声をあげた。

「やあぁぁあう、だめ、そこ…したら…あぁっ」
「締めつけが急にすごくなったな、そろそろか」

楽しそうな声が聞こえて顔をみたいと思うのに、そんな力も出ない。
指が抜かれて、それを追うように腰が揺れてしまえばまぁ待てと宥めてくる手がある。
そして、散々待たされて触れる、熱いかたいリボーンの自身。
俺は自然と力を抜いてリボーンの挿入を待った。
ずるっと入ってきたときにひぃっと声が出て、そのまま一気に収められたら意識が一瞬遠のいた。

「はぁっああっ…ぁ、あぅ…」
「入れただけでイったんだな」
「いわ、ないで…あぁっ、まって、やすま…あぁっ」

息が整う前にリボーンは動きだして俺は気持ちよさに締めつける動きが止まらない。
恥ずかしくてそれなのに、リボーンは離すことはしないままゆっくりと自身を引きだし、ゆっくりと突き上げてくる。
イったばかりの俺にそんな刺激が加わったってしまって、頭がどうにかなりそうだった。
いちいちリボーンは感じる部分を擦ってくるし、俺が逃げようとすれば腰を掴んで引き寄せられますます深く繋ぎ合わせられる。
そのたびに俺の自身は一度出したのにぽたぽたと白濁を垂らして、シーツに沁みを作っている。

「はぁぁっ、もう…やぁあっ、イきた…がまん、できな」
「またイくのか?俺がイってねぇのに、いいのか?」

身体を背中に密着させて耳元で囁かれる一言。
理性を保つのも精いっぱいの状態でそんなことを言われたら、がんばって耐えるしかないじゃないか。
俺は手の甲に噛みついた、こうして快楽をやり過ごせばまだイくことはないと思ったからだ。
そうして、また律動は開始されて俺は必死でリボーンを締めつけた。
大体、リボーンだってイってないのだからそのうち出してくれるだろうと思っていた。
それなのに、リボーンの自身はまだ硬さを保ったままで、けれども脈打っているからもうすぐだ。
もうすぐリボーンはイってくれる。

「はやく、ちょうだい…ねぇっ…りぼーんの、だしてぇ」
「っ…ばかやろう…エロいんだよ」

もう、エロくたってなんだっていい。
リボーンが欲しいんだ、もう…顔みたい。
リボーンの感じてる顔が見たい、俺は手を伸ばしてリボーンの手を掴んだ。

「かお…みたい、ねぇ…お願い」
「…仕方ねぇな」

そのままいくからなと言われて、どういうことだろうと思ったら腰を片腕で支えられ、足を無理やり上げさせられて戸惑う前に身体を半回転させられた。
秘部を擦る刺激といきなり視界が回転したことによってこらえていたのに、少し出てしまった。

「ひぃ…もう、やめっ…あぁぁっ」
「これからだろ、綱吉…俺をみろ」

どこもかしこも感じるばかりで怖くなって、逃げようとすればリボーンに腕を掴まれてベッドに縫いつけられて囁かれて視線を目の前の男に合わせたら、すごく感じてる顔がそこにあってぎゅっと胸が締めつけられた。

「うぅ、なんで…そんなかお、するんだよぉぉ」
「どんなかおだ、ばか」

まっすぐ見つめてくる瞳にどう反応したらいいのかわからなくて、恥ずかしいと逃げようとなおももがいたらいきなり突き上げられた。
内壁全体を擦るように、さっきの比ではないぐらいの抽挿に俺は足まげて、つくと腰を一緒になって振った。
羞恥とか関係なく、リボーンにも気持ち良くなってもらいたくて、そしたらこの恥ずかし差ぐらいどっかにいってしまいそうで。

「イって、おれのなかで…だしてっ、ああぁっ、りぼーん…」
「イくぞ、中にだすからな…っは…つな、綱吉…」

耳元で甘い声が響く。
唇が近づいてきて優しいキスをしながらリボーンの動きは激しくなり、最奥を突き上げられて俺は白濁を放っていた。
ぎゅっと締めつけて、ぱあっと広がった熱さに身震いした。
リボーンが吐き出したものが俺の中に注ぎこまれて詰めていた息を吐き出して力が抜けていく。

「綱吉、つなよし…すきだ」

リボーンが俺を抱きしめて何度もすきと伝えてくる。
もう、そんなに何回も言わなくてもわかってるよ…でも、言ってもらえるのがすごく嬉しかったりするんだけど。
俺は力の抜けた腕でリボーンの背中に手を回すとぎゅっと抱きしめて、唇を触れさせて…俺も好きだと伝えた。
もう眠くて、上手く言えたのかわからないが…力が入らなくなるのをしる。





ぴちゃという水音で俺は目が覚めた。
目の前には浴室のタイルが目に入った。
俺は状況がよくわからなくて辺りを見回して、俺の腰を掴むようにしている手を見れば後ろを振り返る。

「りぼーん…?」
「少し激しくしすぎたみたいだな、中はもう綺麗にしたからゆっくりしてろ…眠いなら俺がベッドに運んで置いてやる」
「…ふふ…もう、やさしいなぁ」

相変わらず声に表情があまりなくてわかりづらいのに、リボーンの優しさはすぐにわかる。
ちゃんと俺はリボーンの小さな変化を見逃さないようにしないといけない。
きっと傷つく時もあるし、寂しそうな顔をしているときに気づいてあげたい。
振り返ってリボーンの身体を跨ぐようにして体勢を帰るとぎゅっと抱きついた、ぎゅっと擦りよれば優しい手が俺の頭を撫でてくる。

「リボーンは、すごく優しいよ。だいすき、愛してる……あいしてる」
「…そーかよ」

照れてる、なんて考えながらお湯によってあったかくなっていく身体の温度はリボーンと一緒。
このままずっと一緒にいれたらいいのに、なんて無謀なことを考えてしまうぐらいには今の俺は幸せでいっぱいなんだ。









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