◎ 自覚と無意識
リボーンのことを好きになって、リボーンにも同じ気持ちを返してもらいたいと思い始めていた矢先。
俺に降りかかった重大な告白。
好きという気持ちがわからない…というか、好きというのを自覚していない。
リボーンの言葉を聞く限りでは俺のことが好きなのかな?というニュアンスが含まれていた。
のに、本人の口から放たれた言葉は『お前相手に好きなんて思うか』だ。
有り得ないだろ。
社会人にもなってそんなこと、俺は思わず声をあげてしまいそうになったが何とかこらえた。
だって、リボーンは本当に身に覚えもないとばかりに首を傾げるんだ。
愛されたことがないと言った、愛することも知らないと言った。
だったら、仕方ないのかもしれないなんて…思っている自分がいる。
けれど、あそこで肯定してくれないと俺としては何をしても全て肩透かしで終わると思う。
好きと自覚してもらうと言うことはとても重要だ、
自分の中でも心持ちが違うだろうし、何よりリボーンの場合それが重要となってくる。
だって、リボーンを惚れさせるのが俺の役目であるのだから。
「どうやったら、自覚してくれるんだろう」
さすがに、恋心を知らないなんて俺も初めて聞いたしあんな風に言われるなんて思わなかった。
もう俺ができることはなくなってしまっているのだ。
こんなにも俺はリボーンのことが好きなのに、どうしたらわかってもらえるのだろう?
俺に出来ることなんて好きだと言ってとびっきり甘やかしてやることぐらい。
あの冷めた心を溶かすことができるのだろうか。
そんな自覚がなくても甘やかされた俺は、どうしたらいいのだろう。
「ちゃんと優しさはあるのになぁ…」
ちょっと行きすぎてしまうことはあるかもしれない、けれどちゃんと俺を大切にしてくれる気持ちもあるんだ。
いつから俺はリボーンに惚れてしまったのだろう、こんなに苦労するなら好きにならなければいいのにと思う。
なのに、俺は好きでいるのを止めるつもりなんてないのだ。
ちゃんと話してみようか。
リボーンの気持ちを聞きだして、ゆっくりと自覚させて…。
「ああでも、それでわかってくれるか…一番の謎だ」
俺はリボーンの恋愛対象にはなってないようだから。
「また、泣けばリボーンは喜ぶのかな…」
ほんの一カ月ほど前まで泣かされていたことを思い出せば、泣くことで喜ぶのならと思う。
それで、リボーンが俺のモノになるのなら喜んで泣かされよう。
浮気とは別の方法で…だけど。
そう考えている時点で俺は相当切羽詰まっているんだなとわかった。
あんな風に言われたら、誰だってそうだろう。
『お前の気持ちが知りたい、確かめたい、もっと触れたい』
これで好きかわからないなんて…拷問だ。
そしたら、いきなりメールの着信音が鳴り響いた。
これは個別で設定した音楽で、リボーンのものだとすぐにわかった。
俺は内容を確認する。
それには待ち合わせの日時とホテルの名前が書かれていた。
俺はそれにわかったと返事をすると辛いと言いながら次会う日を心待ちにしてしまうのであった。
ホテルの部屋に入るなり、身構えるが何もなかった。
部屋に入るたび何が起こる気がしているから当たり前だ。
この前はいきなり女性が出てきたし、いきなり目隠しもあったな…。
思いかえせば碌な記憶がない。
「リボーン…?」
「ん?」
呼べばベッドの方から声がする。
今日は何もないんだなと安心して中に入ればテレビを見ていたようだ。
「気になる番組とかあるのか?」
「いや、お前が来るのを待ってた」
「そう、でも今日は遅れてないだろ?」
時間ぴったりのはずだと時計を確認すれば案の定時間はしっかりとあっている。
リボーンはああ、と返事をしたきりなにをするでもなくテレビを見ている。
俺を待ってたんじゃないのかと思うのに、テレビに何かあるのかと一緒に見つめれば視線を感じてそちらを向くとリボーンがこちらを見ていた。
「なに?」
テレビに夢中になってみたり俺を見ていたり忙しいなと思いながら首を傾げるとリボーンは手を伸ばしてきた。
頬に添えられてすっと撫でて行く。
ますますわからなくてリボーンを見つめていれば口を開いた。
「お前を泣かせれば…安心すると思ったんだ」
「…そう?」
「ああ、だが…それもつまらないんだ…どうすれば、俺は満足するんだと思う…?」
本当にわからないという顔で、俺に聞いてくるその様子は子供みたいだ。
純粋に本当に、気持ちが理解できないんだなと俺は頬に添えられた手をとって握りしめた。
「どうしたら、満足するんだ?」
「それが、わからないんだ」
「俺は、なんでもしてあげるよ。リボーンが好きだから、傷つける以外だったら…なんでもできるよ」
我ながらなんて言っているんだと思うけれど、今のリボーンは本当に迷子みたいでどうにか手を引いてあげたいと思った。
混乱しているんだ、多分。
触れることで安心するなら抱きしめてあげたいと思う、話すことで安心するならずっと聞いていてあげる、好きと言ってほしいなら俺は喜んで囁き続けるだろう。
リボーンの求めるままになってあげる、だから俺を欲しがってほしいと思う。
俺を、求めて…欲しい。
「触れたい」
「いいよ」
小さく呟かれた言葉にそれならと俺は両手を広げた。
背中に手を回して抱きしめる。
リボーンからしてみれば俺は抱きついているように見えるだろうけれど俺が触れればいいのだ。
リボーンの手が俺の背中を撫でて、そうして俺の顔を確かめるように動く。
髪を撫でて耳をくすぐり、頬の感触を確かめて顔をあげれば唇で触れた。
俺はそれに答えるようにリボーンの舌に舌を触れさせた。
そのあと絡めて唾液を舐め合う。
お互い舌を伸ばして吸って、絡めて、体勢が苦しくなれば俺はリボーンを押し倒した。
「もっと、触ってもいい…?」
「お前は嫌いにならないのか…?」
「ならない、ならないよ、リボーン…好きだ」
すき、すき、と囁きながらリボーンに覆いかぶされば口づけを続ける。
何度も角度を変えて貪るように重ねていたが、リボーンの手は俺の服にかかってきた。
ぷつりぷつりとボタンを外されて肌が露にされていく。
それに抵抗を見せることなく大人しく服を脱がされて顔を上げるころには上半身の服はすべて取り払われていた。
「こんなふうになるの、リボーンだけなんだ」
自分の胸へと手を滑らせた。
もう期待で尖ったそこを摘まんで目を伏せると告白する。
こうして開発したのもリボーンだし、リボーンの愛撫を思い出せばここは自然と尖るのだ。
「だから、リボーンに触ってほしい…俺も、リボーンに触る。リボーンが気持ち良くなってくれるなら…」
「綱吉は、俺だけか?」
「リボーンだけだ…俺は最初から、リボーンだけだよ」
偶然メールを飛ばした相手がリボーンだった時から、俺はリボーンだけだ。
勢いと強がりと意地っ張りを全部まぜこぜにした出会いだったけど、でも俺はリボーンだけだ。
それ以外何もないとリボーンを見れば手を伸ばしてきて突起に触れる。
きゅっとつまんでくにくにと弄る。
それだけで息が詰まって腰が重くなる。
「ねぇ…すきって、いってよ」
「は?何で俺が…」
「だって、ここ…こんなに硬いじゃん…望みなくたって期待する」
腰に当たるものが熱をあげて輪郭がはっきりとしてくるのがわかる。
俺の身体に触れて感じるなんて、身体はもう自覚していると言うことだろう…?
なんで、リボーンはわからないんだろう。
どうして、わかってくれないんだろう。
こんなにも気持ちは伝わらないものなのだろうか。
じわっと瞼が重くなって視界が滲む。
「好きなのに…どうしたら、伝わるんだよ…なんで、わかってくれないんだよ」
ぽつりぽつりとリボーンのシャツに沁みを作っていく。
わかってもらえなくて泣くなんてただだだをこねている子供じゃないかと思ってしまえば悔しくてズルッと鼻をすする。
リボーンの手が俺の目を確かめるように触れる。
指先に水滴がついて、それを眺めたかと思うと顔を上げさせられた。
「どうして泣く?」
「悔しいからっ。俺がこんなに好きなのに、リボーンがわかってくれないからっ」
ぼろぼろと涙がこぼれて癇癪を起したようにリボーンの胸をたたいた。
でも、リボーンは俺以上に苦しそうな顔をしていた。
いつもなら、俺の泣いた顔を見れば嬉しそうにするのに…なんで、そんな顔するんだよ。
「泣くな…綱吉、俺は…どうすればいい…?」
「……」
なんでそういうときばかりそんな風に言うんだよ。
そんなこと言われたら、ますます好きになるじゃないか。
「好きになって…よ…俺を、好きになって」
リボーンを困らせるってわかってる。
これは駆け引きも何もない、ただ俺が我儘を言っているだけ。
もう、わからないなんて聞きたくなくて俺はリボーンに口付けた。
何も言わないでほしい、何を言われても俺は泣くことしかできないと思うから。
「なんでもいいから、酷く…しろよ」
「なにを…」
「痛くてもいいから、リボーンが欲しい」
俺はリボーンの服に手をかけてベルトをはずしズボンをくつろげて自身をとりだした。
少し扱けばしっかりと勃ちあがって震える。
身体はこんなに反応してくれているのに…。
俺もズボンを脱いで裸になる。
近くにあったローションを適当に秘部に塗ってそのまま腰を下ろした。
「ぅ…っ…ふ」
「ばか、なにしてんだっ」
「やっ…するっ…」
「自分でわかってんだろうが」
「いいっ、リボーンは…手をだすな」
リボーンが慌てて手を出してくるが俺はそれを払った。
苦しくたっていい、リボーンがわかってくれないから…。
すっかり自分を見失って、息を吐きながらなんとかリボーンを中に入れてしまうと自分で腰を振る。
「綱吉、いうこと聞け」
「いやだ、やぁっ…ふぅ……すき、すきぃ」
こんな自分が虚しくなってくればリボーンの手を抑えつけて泣きながらリボーンに言っていた。
それでも好きと返ってくることはなくて、それがますます俺を苦しくさせる。
自分がこんな風になるなんて知らなかった。
こんな自分を知らない、鬱陶しいほど縋ってでも欲しがることなんてさすがに無かったのに。
これでは嫌われてしまうと思うのに止まらなくて、結局一人で腰を振り続け自分で自身を扱き中へと放ってもらって自分もイったのに何も満足できなかった。
リボーンは俺よりも苦しそうな顔をしているし、もう何が何だか分からなくなってきた。
「もう、止めよう…」
「つな…?」
「俺、こんな風に困らせたかったわけじゃないんだ…だから、もう…止めよう」
簡単に終わらせられるような思いじゃない。
けれど、これ以上リボーンを苦しめたくない。
だったら、離れてしまうのが一番手っ取り早いだろう…?
「ごめんね…こんなゲームしなかったらよかった」
こんなに辛いなら…。
リボーンの上から降りて俺は風呂へと向かった。
リボーンは何をするでもなく俺を見ていたけれど、俺はそれを見ることはなく逃げたんだ。