パロ | ナノ

 弱気と強気


ねちねちと聞こえる水音。
そして、締めつけるたびに低くなる玩具の音。
息の乱れた俺は、今の状態を考えることもできなくなっていた。
何が、あったのだろう。
何を、俺はしてしまったのだろう。
展開が早すぎて俺はただ喘がされるだけになって、ひたすら襲い来る快楽の波をやり過ごすことで精いっぱいだった。
目隠しで隠されたリボーンの顔を見たいと思ったのに、それも叶わぬまま泣き続けて…。
それでも、俺はリボーンに好きということを忘れなかった。




俺が電話した次の日、メールが来た。
電話のことに関してではなく、次会う予定だけが書かれていた。
少しは気にしてくれているのかと思えばそういうことではないらしい。
緊張していた俺がバカみたいだと思いつつ、俺はそれにわかったとだけ返事をしたのだった。
リボーンにとっては俺からの電話なんてそんなものだったのかと思いつつ、会う日になれば俺はうきうきと心が躍り出すのを感じていた。
そして、ふっと思い出す。
なんで俺はこんなにもリボーンに執着するのだろうか。

「…ああ、そうか」

すとんと落ちてきたこの想いの答え。
そして、最悪の答えだ。
きっとこの想いなど返ってこない。
ただ、与えてそれだけそれがどこで昇華されるのかなんて考えるだけで嫌になる。

「俺が好きになってどうするんだよ」

元は惚れさせるために言い続けていた言葉。
それを、自分に言い聞かせてしまうなんて。
重いと言われるだろうか。
馬鹿じゃないかと言われるだろうか。
ああ、会うのが怖い。
自分が何か、余計なことをしてしまいそうで、それだけが…怖い。
こんなことなら、自覚なんてしなければよかった。
ないフリを貫き通していればよかった。
俺がした恋は到底かなうものではない。




ホテルにつき、指定された部屋には入ればそこは真っ暗だった。
なんでだろうと手近にあったスイッチに手を伸ばしたところ、後ろから手が回ってきていきなり視界が遮られた。

「な、なにっ!?」
「……」

怖いと思うのに、掌の感触がリボーンのものだという確証があった。
部屋は間違えてないし、俺はまだ何もしていない。
なんでこんなにも怒っているのだろう。
空気から感じた、ぴりっとした痛いもの。
それは明らかにリボーンの怒りだとわかってしまえば、俺は戸惑うことしかできない。
そのうち手を掴まれて部屋の奥へと促された。
俺は半ば引きずられるようにしていけば、足元をなにか硬いものが当たってそのまま前に倒れたがふかっとした弾力に受け止められベッドだとわかった。
だが、それだけでは終わらなかった。
足を無理やり開かされた。
ボタンを外されて前も露にされて、冷たいと感じたのもつかの間、秘部に何かを入れられた。
硬い物で、玩具だとわかったがそれならいつものことでもあるため身体は易々と受け入れた。
冷たかったそれは俺の体温で温かくなっていき、押し込まれて前立腺へと宛がわれた。
そして、口には何かを押し当てられる。
嫌だと首を振るのに、顎を掴まれて力を込められて痛みに口を開いた瞬間に固形のものを含まされてついでと言わんばかりにキスをされて、初めてのそれなのに一緒に水が流れてきて飲み込んでしまった。

「なに、した…?…りぼーん、なんで」
「俺だって、わかるんだな」

他の誰かだとは思わないのかと低い声で言われて俺は身体が竦んだ。
こんなにも怒ったリボーンを初めてみた。
なんで、そんなに怖いのだろう。
俺が何かしてしまったのだろうか。
思い当たるとしたら一つだけある。
もしかして、この前の飲み会のことがばれたのだろうか…。

「だって、好きだもん…わかるよ」

もしかしたら、他の理由かも知れない。
俺はそれ以上何か言うのも危ないかと思っていつもの言葉を吐きだした。
それにため息を吐かれて、ますます怖くなる。
いつもは何気なく流してくれる言葉なのに、今日はなんでそんなにも反応するのだろうか。

「リボーン…?」
「生憎、俺は自分の言ったことを守れないやつは嫌いでな…好きに遊ばせてもらうぞ」

自分の言ったこと…わからない。
リボーンが何を考えているのか。
せめてこの真っ暗な世界から出られたら…なにかできるのかもしれない。
けれど、俺の想いとは裏腹に中の玩具が振動しはじめた。

「はぁっ…あぁあぁぁっ!?」
「くくっ、嬉しいだろ?ここはもうヒクヒクして締めつけてるぞ」

リボーンのあの口元が笑みを作るのを思い浮かべて悔しさで泣きたくなってくる。
なんで俺はわからないんだろう。
あんなにリボーンを見ていたのに、リボーンがどうして俺に怒るのか予想がつかない。
胸の辺りがむずむずとして気持ち悪くて身体をよじればバイブがいいところを掠めて腰が自然と揺れる。
いつも以上に感じてしまうことに俺はおかしいと感じ始めた。
慣らされているとは言えローションを塗られたぐらいじゃ簡単に入ることはない。

「ひぁっ、やだ…なにか…したっんんっ」
「よくわかったな、媚薬を飲ませただけだ」

害はないから安心しろと耳たぶを甘噛みして言われて背筋が痺れた。
媚薬だなんて使われたことはない。
どうしてこんなことを…と手を伸ばしてリボーンを探した。
指先が肩に当たってそこを掴む。
もう媚薬でもなんでもいい、ただリボーンが近くにいるってだけで、その拷問じみた行為から安堵を貰うことができる気がした。
けれども、無情にも俺の中で暴れるバイブはずっと震え続けてすぐに限界が来た。

「もっ…だめ、あぁっ…イく、だめ…イクッ」

腰を震わせて白濁を放った。
でも、それで終わりじゃない。
リボーンは俺がイったのをじっと見ていたようだ。
そして、それ以上何をすることなく視線だけが降り注ぐ。
恥ずかしいのに、バイブのせいか媚薬か、それともリボーンの視線か。
再び反応する自身。
触ってもくれない、いつもはなんだかんだ言いながら俺のことを言葉で苛めたり指先で嬲ったりとしてきたのに今回に至っては玩具だけらしい。
それが酷く悲しくて俺は泣き始めた。
目元を塞ぐ布が濡れて行くのに、リボーンは気づいているのかな。




そうして、今に至る。
俺はリボーンを掴んだままなので、リボーンが離れていないことはすぐにわかった。
こうなった理由をはなしてくれないと俺には分からない。
どうやって聞きだそうかと悩み始めたところでリボーンが覆いかぶさってきたのが気配で分かった。

「自分がどうしてこんな目にあってるのかわからないのか?」
「んっ…わから、なぃ…よぉっ…」

耳元で響いた声、それに縋りつきたいのにリボーンの声が許さない。
そして、俺の中からわき上がる疼きに比例して淫らな声が漏れる。
なにもわからない。
でも、一つだけ思い当たる節がある。
あれを見られていたとしたら誤解されても仕方ないと思う。
大体、あの日俺は嘘とついているのだ。
理由としては十分あり得る。
けれど、リボーンは俺に興味がないと思っていた。
俺が実際浮気したとして、気に求めないんじゃないか…とか。
いや、今回のあれは多分俺が浮気するなって言ってのあれだったから…とか?
わからない…。
リボーンの気持ちがどこにあるのかわなからない。

「あの日の木曜日…お前はどこにいた?」
「…はっ…あぁっ…」
「言え」
「のみ、かい…に…さそわれて…」
「ほう?女と二人でか?」

やっぱりみられていたのかと困った。
どう説明すれば納得してくれるのか。
今の状態では簡潔に言ってしまいたいとことだけど、それも難しい。
もう俺の奥はリボーンが欲しくて堪らないから。
バイブなんかじゃなくてもっと太くて確かな熱い物を埋めてほしくてたまらなくなっている。

「ちがっ…おねが、ほしい…もお、ほしいぃっ」
「だめだ、言うまで…入れてやらねぇ」

酷いとなじる。
こんな状態では言うこともできないではないか。
でも、欲しい。

「欲しいよ、すき…すき…りぼーん…すき」
「こんなことされて嫌になるだろ?嫌えよ」
「嫌わない、俺は…すきだから…もう、好きになったから…」

そんなこと言われても、自覚してしまったものは仕方ない。
どんなに酷いことをされても、結局全部許してしまうんだ。
これが惚れた弱みと言わず何と言うのだろう。
両手を伸ばして掴まる場所が欲しいと催促するのにこない。

「みえない、から…りぼーん…りぼーん、りぼ…」
「うるさい、口も塞ぐか?」

脅しの言葉に俺は怯えるよりも怒りが芽生えた。
こんなにも俺は素直なのに、なんでリボーンはそうやってなにも聞かないのだろう。
俺の言葉少しは届いてもいいはずじゃないか。
両手が拘束されていないから目隠しをとるのは簡単だ。
けれど、こうして抵抗したところでリボーンは納得しないだろう。
ただ、俺を好き勝手弄ぶというところを楽しみにしているのだから。

「俺は…あの人とは…なにもないよ…んんっ…ひっぁっ」

言ったとたん中を苛むバイブの震えが大きくなった。
伸ばしていた手が落ちてシーツを握りしめる。
また、イくっ…と身構えたら今度は自身を握られてせき止められた。

「やぁっ、イかせてっ…あぁっ、ひぁあぁっ」
「証拠は?」
「しょ、こ…って…あぁぁん…わかんな、だめ…もう」

考えられずにふるふると首を振る。
証拠と言われても俺には決定づけるものがない。
我慢もできなくなってくればリボーンの戒めている手をひっかく。
けれど、力の入らない手ではどうしようもなくどうにもできずに身体を震わせるしかできない。

「あっぁう…ひぃんっ…うえっ、もお…イかせて、イかせてぇっ」
「おれだけだって言え」
「りぼーんだけ…リボーンしか、いらない」

いらないのに、リボーンの想いはどこにあるのかもわからない。
朦朧とした思考で言われたとおり言葉を繰り返す。
するといきなり自身を握っていた手を扱く動きに変えて一気に登らされた。

「ふぁああっ、あーあぁっ!!」

二度目の白濁を吐きだすと口づけられた。
口に注がれるものを抵抗なく飲み干す。
それは何の味もしなくてただの水だった。
どうしたんだろうと目隠しをとろうとしたらリボーンが外してきた。
元から暗い部屋なので眩しいことはなく、そこにリボーンがいた。
暗いものに目が慣れているからすぐに輪郭もはっきりしてなぜか戸惑った顔をしている。

「ん…どうか…した?」
「薬を薄める。飲め」
「う、ん…」

ペットボトルを渡されて今度は口移しではなく自分で飲んだ。
さっきまでのピリピリとした雰囲気はなくなって毒気が抜けている。
ますますリボーンがわからない。
満足したのだろうか。

「抜いてもいい?」
「好きにしろ」

バイブの方も反応をうかがえば興味がなくなったとベッドを下りて行く。
本当にどうしちゃったんだ。
俺は中から抜くとスイッチを切ってベッドに落とした。

「リボーン、待って」

なんか変だ。
いつもと違うリボーンに俺は戸惑った。
急いで追うのに、腰が言うこと聞かずその場に座り込んでしまう。

「リボーン、りぼーん…おいていかないでよ」
「うるせぇな、風呂入れに行っただけだろうが」

なにしてんだ、と見降ろされてちょっと恥ずかしくなる。
なんかいつもと一緒だ。
さっきのはなんだったんだろう。
俺の見間違いかな…?
唐突に俺の脇に手を入れられてベッドに戻された。

「お前、俺が何しても好きなんだな」
「う……まぁ、そう…なるの、かな?」

何をしても、というのは語弊がある。
痛いのは嫌だし、嫌だといっているのにやり続けるのは嫌だ。
けれど、心の底から嫌いになることはないだろう。
一度良いなと思ってしまったら絆されてしまうというもの。

「で?あの女とはどんな関係なんだ?」

結局気になってたのかと苦笑を浮かべながら俺はその理由を丁寧に説明してあげることにした。
まずは嘘をついてごめんから始めて、飲み会の流れから三島さんのことまで懇切丁寧に話した。





綱吉の説明を聞いて何故かほっとしたのを感じた。
なんで俺は安心しているんだろう。
せっかくの玩具がとられなくてよかったと思ったからか。
今日は綱吉のことをとことん苛め倒すつもりだったのに、こいつの涙を見たらやる気がうせた。
前まではこの泣き顔に安心していたのに。
なんでだ…わからない。
それに綱吉の様子が違う。
会った時から、なんとなく不思議に思った。
あの女の影響かと思ったが、綱吉の言葉を聞く限りではそうではないのだろう。

「お前は浮気しねぇのか?」
「あのな、俺が浮気嫌だって言ったのにすると思われてるとか、どれだけ信用されてないんだよ」

こう見えて節操なしじゃないんだから、という綱吉に俺はわかってると思った。
綱吉がそういうものを嫌いだということも、嫌がることをされるのが嫌だということも、わかってるつもりだった。
けれど、あの場面は俺の中ですごくショックなことだったのかと思えば自分の気持ちがわからなくなる。
なんで俺はこんなにもこいつのことばかりかんがえてしまうのか。
俺はどうして、こいつに固執するのか。
こんなにも夢中になれるものを持ったことがない。
ものにしても、何にしてもあまり執着しなくて、なくなっても別に平気だった。
それなのに、なんでこいつだけは手放せないんだろう。
あの時点で俺はこいつに愛想が尽きたはずだったのに。
なんで俺は、呼び出して仕置きじみたことをしたんだ。
どうでもいいのに、俺は何も気にしていないのに。

「リボーン、俺…立てないんだけど」
「しらねぇ」
「…薬盛ったのお前だろ」
「適量だ、お前が腰振り過ぎたんだろ」

しるかとテレビをつければ黙りこむ。
どうしたんだと目だけを動かして視界の端で綱吉を見れば、泣きそうな顔で困っている。
無視をしようかと思ったのに、俺は結局手を伸ばしていた。

「風呂でいいのか」
「ん…ありがと」
「自分で洗えよ」
「わかってるよ」

身体のしまつまでは面倒だといってやれば当たり前だと浴室まで運んで降ろして戻ってくる。
風呂椅子をつかってなんとか自分で洗っているらしい。
シャワーの音を聞きながらテレビを眺めていた。
このまま帰るのか、と思うが立てないと言っていた。
どうする気なのかわからず、放っておけば浴室から呼ぶ声が。

「面倒ばかりかけやがって」

薬を飲ませたのは俺だが、そこまで副作用があるとは書いてなかった。
それに、あれはただの興奮剤だ。
あそこまで乱れるとも思わなかった。
俺はため息をついて綱吉の元へと向かった。

「助けて」
「お前な、少しは自重しようとか思わねぇのかよ」
「だって、髪洗いたかったし…」

浴室を開ければ頭まで濡らした綱吉がいた。
タオルも取れないと苦笑を浮かべていて、その顔も初めてみたと思った。
こうやってまともに話すこともあまりなかったのだから仕方ないことだ。
なんで俺はこんなにも絆されているんだ。
ただ、こいつに好きと言われ手ぐらいで何をよろけているのか。
俺は近くにあったタオルとをると頭にかぶせた。
ついでにバスタオルをとれば立てない綱吉の身体に巻き付けて抱きあげる。

「うわ…」
「なんだよ、どうせ戻ってもこれねぇんだからついでだろ」
「うん、びっくりしただけ」

腕を俺の首に巻き付けてしがみついてくる。
そしたら、さっき手を伸ばしてきたシーンが唐突に頭をよぎった。
あんな風に求められて戸惑った。
本当は嫌いなのに、どうしてそんなにも俺しかいないとばかりに演技するんだ。
馬鹿なのかと思う。
ベッドに降ろしてやれば、今日は一人で帰ることもできないだろうと俺はシャツを身にまとい始める。
俺は綱吉の精液が飛んでもいいように上だけは脱いでいた。

「どこいくの?」
「帰る」
「なんで」

なんでと言われても、お前はいつもそうしていただろうが。

「俺と一緒は嫌じゃないのか?」
「嫌じゃない」
「嘘ばかりだな」
「嘘じゃないよ」

俺が決めつけると綱吉は否定する。
嫌いかと言えば好きというのと一緒で、もしかして好きかと聞いたら嫌いと答えるのではないかと一瞬考えた。

「お前、俺が好きだろ?って聞いたら嫌いって答えるのか?」
「好きだよって、答えるよ。何その定義」
「そうか…予想外だ」

お前の頭は好きという文字しかないのか。
そう納得して服を着るのを止めた俺は綱吉の頭に乗ったままのタオルで水滴をとり始める。
面倒のかかる奴だ。
今度は少しぐらい自嘲してやってもいいかもしれない。
ここまで世話を焼かせられるとは思ってもなかったことだから。

「あのな、本気だからな」
「そうか」
「聞いてないだろ」
「勝手に言ってろ」

適当に言っていれば、俺だって聞き逃してやれる。
本気だと言われても気にしない。
こんな俺を好きになるわけもないんだからな。
面白いやつだと笑えばむすっとした顔をする。
なんとも緊張感のない顔だ。

「もういいよ、俺が勝手に言う」
「ああ、そうしてくれ」
「好き好きリボーン、愛してる」
「はいはい」

面白半分の言葉に俺は笑って答えてやったら、何故か俺の顔を見て綱吉は固まった。
何か変な事でもしたかと綱吉を見れば頬を両手で固定された。

「なんだ?」
「笑った顔、初めてみた」
「は?いつでも俺は笑ってたぞ」
「ううん、なんかすっごいかわいい」
「……」

こいつの頭は時々おかしいのかと疑いたくなる時がある。
特に、こういう時だ。
うるさいと手を振り払ってドライヤーをかけてやる。

「あ、ここまでしてくれるんだ?」
「風邪引かれたら、なお面倒だろ」
「そうだなぁ…」

風邪引かないようにしようと呟く綱吉の言葉を聞こえないふりをして乾かしていた。
この様子では今日は一緒に寝ることになってしまうのかとますます面倒になりつつ、さっきの痴態で反応した自身をどうしようかと悩む。
結局綱吉は反省というか、泣きだしたのでこれ以上するのも躊躇われ、だとしたら俺はこのまま寝ることになるのだ。
面倒でしかない。

「リボーン…?」
「乾かしてるんだから動くな」

俺の顔を見ようと頭を動かすのを抑え込んだ。
敏い綱吉は俺の状態に気がつくかもしれない。
けれど、抑え込んだ視線が向かった先まで俺は知るよしもなかった。

「これ、ねぇ?」
「っ…お前っ」
「我慢するなんて、珍しすぎるけど…?どうかした?」

すっと撫でられて俺は慌ててドライヤーを止めた。
危うく手が滑りそうになる。

「煽るな」
「俺するよ?」
「腰が立たない状態でどうするって言うんだ?」
「くち、で」

幼く響いた声に俺はつい、言葉が出なかった。
そこまでしてもらう義理はない。
無理やりやらせたことはあるが、綱吉からというのは初めてだ。
一体こいつに何があったと言うのだろう。

「いいだろ?別にこんなことで信じてもらうとか思ってない」

そう言いながら綱吉の手は俺のズボンに伸びてベルトをはずすとボタンをはずし、チャックを下ろした。
下着を下げられて興奮した自身が顔を出せば綱吉は吐息を湿らせている。

「これぐらいで興奮するのか?」
「わるいかよ」

恨めしそうに見上げられて言葉に詰まる。
そこまであからさまに肯定されると調子が狂う。
そうして、綱吉の口の中に招かれて、丁寧に舐めていく。
俺が教え込んだやり方だ。

「はっ、落ちたもんだな」
「うるひゃい」

意地になって舌を動かしているのを見れば興奮した。
全然感じるまでにはいかない技巧なのに、俺は綱吉のしゃぶる姿をみて感じていた。
くそっと舌打ちすると綱吉の頭を抑えつけて腰を振る。
結局感じていたって決定打がなければイくこともままならない。

「んんっ…ふぁっ、ぷっ…ひゃあぁっ」
「煽ったのは、お前だろうが…いくぞ」

苦しそうに腰に爪を立てるが構わなかった。
そのまま喉奥を突き上げて白濁を放ってやれば健気にも飲み干したらしい。
口を放して向けているが精液を吐き出すそぶりはない。

「ったく、バカなこと考えやがって」
「俺だけは…嫌なんだ。今度は、ちゃんと入れろよ」
「後ろで感じるようになって病みつきか?」
「ちがっ…もう、俺の言葉の半分ぐらいは伝われよっ」
「しるか」

なにをそんなにやきもきしているのかまったくわからない。
本当に面倒なやつだ。
けれど、悪くはないと思う。
こうしてぴーぴーいってる姿は小さいなりに見て癒されるし。
癒し効果ってやつか?
そうだ、きっとそうに違いない。
すっきりしたし、寝るかと寝ころぶと妙に緊張した雰囲気が伝わってくる。

「帰れないんだから仕方ないだろ、我慢しろ」
「…はぁ……もういいよ、寝る」

俺と一緒に寝るのが嫌なのかと思って言った言葉だったが、綱吉は呆れたようにため息をつくとそのまま隣に横になった。
よくわからない。
綱吉の中は未だに謎のままだ。

これから、わかる時がくるのだろうか。
別にわかりたくもないが。
楽しめるなら、悪くもないだろう。




続く





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