パロ | ナノ

 きらきらぼし

夕暮れ時、にぎわう店内で黙々とマーボー豆腐を食べる風を眺めていた。
今日は俺の驕りで、連れてきたのだ。
風の好きな店で、好きな料理を注文。じっと食べ終わるのを待ってから俺は口を開いた。

「付き合ってる奴が、激しい人見知りで…けど、セックスしたい時はお前ならどうする?」
「ほう、知らない間に綱吉さんと付き合っていたのですか」
「…いま、綱吉のことは言ってねぇぞ」
「おかしいですね、ここ最近綱吉さん以外リボーンに近づいた人は見ていないのですが…」

それともスタッフの誰かでした?とわざとらしく首を傾げて見せる風に、俺は仕方なく頷いた。
隠していたはずなのに、どうしてばれてしまうのか…。

「綱吉さんが人見知り…言われてみれば、そんな感じですね」
「…だから、なんでお前ら驚かないんだよ」
「驚いてほしいんですか?注文が多いですよ、それに逐一説明挟む方がいいんですか?」
「いや…そのまま聞いてくれ」

コロネロといい、風といい、俺の周りは変わりものだらけか…言うまでもなかったか。
俺は一つ咳払いをして、話し始めた。
俺が綱吉と付き合い始めて、三ヶ月ほどになる。
写真集が発売してからと言うもの、お互いに忙しくなったのが大きいのかもしれない。
俺達はあまり会えなくなっていた。
けれど、メールはするしお互いのところへ顔を見に行くこともしている。
触れあうことだって忘れていない。キスには最近ようやく慣れてきたということろか。
前はおっかなびっくりといった反応だが、最近はキスをするタイミングをわかって怯えなくなった。
だからこそ、だんだんと欲求が溜まっていくのだ。
俺は聖人君主じゃない、いつまでも待てるほど枯れてもない。
でも、綱吉はキスのあととても幸せそうな顔をするのだ。
まるで、これで十分満足と言ったような…。
満足してくれるのはとてもありがたいことなのだが、この先もあるのをわかっているのかそうでないのか…そこもあやふやだ。
なにせ、綱吉自体誰かと付き合うのは初めてと獄寺に聞かされた。
そのため、俺は手を出したくても出せず、次のステップへと進んでいいのかもわからないままだ。
そうこうしている間に三ヶ月が経過していた。
コロネロに相談するのはなんか癪なので、風にこうして話を持ちかけたというわけだ。
そこまでを一通り話して風を見つめた。

「はぁ、ようは腰抜けですか」
「ちがっ…いや、違わねぇが…」
「そんなリボーンに三択差し上げましょう。一、お願いする。二、我慢。三、他の女性を抱く」
「三択じゃねぇだろ、一択だ」
「おや、一つは冗談だったのですが…」

本当に余裕がないのですねと笑われて俺は風をにらんだ。
風は風で人の反応を見て楽しむ節がある。どちらにせよ、俺の周りには普通に相談できる人間がいないらしい…。
正直、我慢なんてものこれ以上できるはずがなかった。

「リボーン、セックスしたいならちゃんと言わないと、伝わりませんよ?」
「雰囲気でどうにかならねぇのか」
「それはあなたが一番よく知っていることじゃないんですか?」

風の言葉に言い返すことができず俺は俯いてはぁとため息を吐いた。
次の休み、俺は綱吉と会う約束をした。
久しぶりに二人の休みが重なって、のんびりとしようかと話して、二人きりで居たらきっと俺は手を出しかねない。
我慢なんてそう都合よくできるものじゃない。

「…風」
「リボーン、好きなら…そういうことをちゃんといってあげないといけないでしょう」

何を弱気になっているのです、と笑われて、少しだけ風を見直した。
少しだけだが…。
いつもの俺なら一カ月と経たないうちにしていただろう。
けれど、それをしなかったのは結局のところ綱吉が大事だからだ。
あいつを泣かせたくない、できれば俺だってキス一つでも満足できるような簡単な頭で痛かった。
それだけじゃ得られないものもあると知ってしまっているから。
もっと、お互いに満たされて幸せに満ちることを知ってしまっているからだ。

「お前に相談するのが間違ってたな」
「そうですね、そういうのは本人に…が常套句ですよ」

風の言葉に俺はチッと舌打ちし、立ち上がった。
どうにもこうにも、綱吉のことしか考えられなくなってしまっている。
こんなにも惚れてしまっているのだ、他なんて考える余地もない。
きらりと光る小さな星を、壊れないようにと包み込んでやりたいと思ってしまったのだからどこまでも優しくしてやる。







「ねぇ、隼人」
「どうしたんですか?俺は明日休みですが」
「俺も休みだよ、あのね…キスより先ってどうすればいいんだろう」

リボーンと会う予定を入れている日が明日に迫ったころ、俺は隼人の帰りがけを狙って声をかけた。
この手のこういう話題は少し恥ずかしくて、なかなか口に出せない。
けれど、聞いておかなければならないんだ。
だって、キスだけじゃ…。
まだ先はあるって薄々感じている。
けれど、男同士でどうやればいいかなんて…わからないんだ。
だから、優秀なアシスタントに聞くことにした、
俺より博識である隼人のことだ、少しは何か知っているだろうという結論に至った結果だ。

「…男女ですることをするんですよ」
「でも…」

隼人は少し顔を赤くしながら答えてくれた。
男女と一緒ってそしたら…肝心な部分が足りないと思う。
身体の構造的に、挿入に至れないのでは…と。
けれど、隼人はそれは自分で考えるんですよ。もしくは、ネットとかそういうので…ともごもご言い募ってお先っスと出ていってしまった。
真っ赤になっていた顔を見てしまえば引き留めることもできなかった。
だって、話の内容が内容だ。恥ずかしくもなる…。
けれど、俺は知らなければならないと思う。リボーンはいつも少し物足りないような顔をしていて、でも決して俺にわからないようにするんだ。
付き合うことに置いて、我慢とかそういうのはしてはいけないと思う。
俺はパソコンを立ち上げて検索画面を表示させる。

「うあ…こんな、ことするんだ」

調べてすぐにでてきたそれに俺は少しばかり驚いた。
だって、普段は使わないようなところを使うのだから。
これを受け入れることができたら、リボーンは喜ぶのだろうか。
あなたの望む形に嵌りたい。
自分を変えるんじゃなくて、受け入れることは受け入れてあげたいと思う。
これをするのはやっぱり少し恥ずかしいかもしれない、けれどリボーンはもしかしたらこれを望んでくれる。
きっと一つになれたら、とても満たされて気分になるんだろうな…。





次の日ピンポーンとインターホンが鳴った。
俺は慌てて階段を下りると玄関のドアを開けた。

「よぉ、綱吉」
「こんにちは、リボーン」

いつも俺に向ける優しい笑顔を向けてリボーンは挨拶してくれて俺も精いっぱいの笑顔で応えた。
そのまま中にあがってもらい、リボーンに珈琲を運ぶ。
今日は特に何をするのかも決めていなかった。
昨日まで俺は忙しかったし、リボーンもあまり時間が取れなかったから仕方ないことかもしれないが、無計画で部屋でのんびりなんてのも悪くない。
それに、リボーンは外を歩けばすぐにばれてしまうから逆にこういう方がゆっくりできるじゃないかな、とか。

「この雑誌…」
「あ、だって…リボーンが映ってるから…」
「言ってくれたら渡すぞ?」
「ううん、俺が買いたいんだ」

キッチンで珈琲を淹れて戻れば、ソファに座ったリボーンは隠すように置いておいた雑誌を引き出している。
そうして、そこに映っている自分の姿に苦笑した。
そりゃ、自分の姿見たって面白くないかもしれないけど、俺にはとても大切なものだ。
いろんなアングルから撮影されたリボーン。
かっこしいし、何より映ることを楽しんでいる顔が好きだ。
リボーンの写真集がでて、ますます人気が上がった。
それはいわずもがな、あの笑顔が原因だ。滅多に笑わないリボーン、しかもその視線の先の人は誰だろうという話題で持ちきりだった。
もしかしたら、その人は恋人かもしれない、リボーンに恋人なんて…誰だろう、誰か情報持ってない?…というところまできて、リボーンは次の撮影から笑顔をたびたび見せるようになった。
あまり勘ぐられてはいけないし、もしばれてしまったら大変なことになるだろうからと。
だから、こうして笑顔のリボーンをみれるのはとても嬉しいのだが、心中複雑だ。

「もう、俺だけのじゃなくなったんだなぁ…」
「綱吉?」
「いや、何でもない」

でも、俺の時に見せる笑顔とは少し違って見えるからそれでいいと最近は思い始めてきた。
それに、ファンの中では写真集の笑顔とこの笑顔は別格だと言い張る人もいて、すごいなぁと純粋に思ったりもする。
俺はリボーンの前に珈琲を置くと隣に座った。
自然な仕草で腰を抱かれて少し緊張しながらもリボーンを見ればちゅっと唇が降りてくる。
柔らかい接触に慣れてきたのは最近だ。
怖くないのに、なかなか正直に受け取れない俺を根気よく待ってくれたリボーンに感謝したいぐらいの気持ちだった。
だから、俺は今日少し勇気を振り絞ってみる。
俺はじっとリボーンを見つめて、不思議そうな顔をするリボーンの肩に手をかけるとぐっと力をいれて身体を伸びあがらせ自分からキスをし、唇をぺろりと舐めた。

「っ…綱吉?」
「あ、あの……その…」

驚いた顔で見つめられて、俺はどうしたらいいのかわからなくなる。
緊張で息が乱れて、俺はまっすぐ見つめられず俯いてしまう。
優しいリボーンの手が頬に触れて泣いてるのかと問いかけてくるからふるふると首を振った。

「どうした?」
「……」

なかなか切り出すことができず、何度か唇を噛んだ。

「どうしたって、俺が聞きたい」
「ん?」
「リボーン、何か我慢してるだろ?俺できるよ?リボーンがしたいこと、できるよ」

俺の言葉を待ってくれるリボーンが愛しくて俺は必死に言葉にする。
伝わったかと顔をあげたら、リボーンは俺をまっすぐに見つめてきていて顔が熱くなった。
そんなに、みられていると居たたまれなくなる。

「綱吉、自分が何言ってんのかわかってんのか?」
「わか、ってるよ。おれ、リボーンなら何されてもいい…リボーンになら、なんでもしてあげたい」
「ばか、自分の言ったこと後悔してもしらねぇぞ」

しないよ。
言葉にならなかったのはリボーンに唇を塞がれたからだ。
こんなに愛しくて、どうにかされたいと思っている。
それに、俺のことをこんなにも大事にしてくれるリボーンに後悔なんてしないと思う。
いつもより長いキス、唇を舌でつつかれて薄く開ければ舌が入りこんできて舐められた。
上顎や歯列、口の中をそんなにも好き勝手にされるのかと驚きながらも俺はその不思議な感覚に目を回しそうだった。
じりじりと焦がされるような感覚に俺はリボーンの肩に力をいれる。
そしたら、離されて俺達の間を銀糸が繋ぎ、ぷつりと途切れた。
リボーンは俺をみて、観察しているようだ。
それとも、この先に進もうか迷っているのかな…。

「綱吉、してもいいか?」
「うん、してよ」
「お前が満足してれば俺はこれ以上望むつもりはないんだぞ?」
「まだ、先があるなら…したい」

ぎゅっと抱きしめられて近くにきた耳たぶにいつも悪戯でされるように舌を出して舐めた。
するとびくっと肩が揺れて、顔を上げ俺を少し不本意そうに睨んでくる。

「ねぇ、俺に遠慮なんかしないでよ。俺は何も知らないから、リボーンが教えて?」

リボーンを見上げたら唇がばかと開いてリボーンの手が俺の服を撫でる。
いつもより少し熱い気がする。
少しの違いでも俺は緊張して、でも止めないでと手に力を込めた。
乱れる呼吸は誤魔化すように深呼吸して、リボーンの手に身を委ねる。

「駄目だったら泣けよ。止めてやるから」
「だったら、泣かない」
「強情」
「へたれ」

そこは諦めてくれとリボーンが言って、服を脱がされた。
一人だけじゃ嫌だと言ったらリボーンも服を脱いで整えられた身体に目を奪われる。
胸の辺りとか、お腹の辺りとか見ているだけで芸術品のように整っている。

「こら、仕事の目で俺を見るな」
「あ、ごめん…つい」

咎められてあははと笑ってごまかした。
しかたないじゃないか、こればっかりは職業病だ。
ったく、とリボーンが呟いたかと思ったら俺はふわりと浮き上がって移動させられた。

「わっ…俺、軽くないよっ!?」
「だったら大人しくしてろ」

所謂お姫様だっこで運ばれた先は寝室のベッドだ。
なかなか人をいれない場所だけれど、リボーンは前もこの部屋に来たことがある。

「…もう止めねぇか、あれ」
「ダメだって、俺の大切な宝物なのに」

壁に貼られているリボーンのあのポスターを運んでもらった時だった。
ベッドから起きて目の前に見えるところにと貼った場所は本当にベストポジションなのだ。
ほれぼれしてしまうぐらいにかっこいい。
けれど、リボーンがなんだか納得できない様子で俺を見下ろしてくる。

「な、なに?」
「わかった本物じゃないと物足りないぐらいにしてやるよ」
「あっ…そこはっ」

ズボンを脱がされてしまい、握られたのは俺の自身。さっきのキスで感じ始めてしまっていたそこは見られるのも恥ずかしいと俺は手で隠した。
けれども、握られて扱かれてしまえばあまり自慰なんてしない俺はあっけなく感じてしまいイく寸前だ。

「ぁぁっ、だめ、だめぇっ…あっ、イく」
「イっとけ」
「だめだよ、はずかしいっ…あぁっ、ひぁぁっ」

首を振って嫌がったのにリボーンは扱く手を止めることなく、俺はあっけなく放っていた。
そうして、そのぬめりをそろりと後ろに這わせられて俺はリボーンを見つめた。

「恐いか?」
「ううん、だい…じょうぶ…」

キスして、と強請ったらその通りにして、夢中になっている間に指が入りこんできた。
最初は痛みを伴って、けれどゆっくりと抜き差ししてたくさんキスされ、胸まで弄られているとだんだん身体の力が抜けていく。

「んぅ…そこ、かんじゃや…」
「きもちいんだろ?腰揺れてるぞ」
「ちが、う…だって、あっ…」

突起を噛まれて勝手に腰が浮きあがってしまう。
噛むたびにびくっびくっと腰が揺れて、指が二本に増やされた。
次第にぐちゅぐちゅと水音が混じり、恥ずかしくて手を伸ばした先にあった枕をひっつかむと顔を隠す。

「おい、綱吉…それじゃ、顔が見れないだろ」
「んんっ…いい、はぁっん…だめ、そこばかり…しちゃ…あぁっあっ…ふぁっ」

嫌だと首を振れば、つつかれるたびどうしようもなくなる場所を小刻みに擦られて声が抑えられない。
自身は痛いぐらいになって先走りを溢れさせて、きっとこの水音はこれのせいなんだと思ったら中の指をぎゅぅっと締めつけた。

「つなよし、枕どかせ。キス、させろ」
「りぼーん、りぼ…ふぁん…」

キスはしたいと枕を退ければ言った通りにされて、甘受している間に指が抜けた、
そして、宛がわれたそれに怯えたのは一瞬。
きっとリボーンがしたかったのはこれなんだ。
熱くて、少し怖い…でも、それ以上に満たされることを知っていた。
これが身体中を埋め尽くしてくれるのだと、リボーンの視線でわかった。
ぐっと力を込めてゆっくりと埋まってくるそれに苦しくて、呼吸を忘れる。

「つな、息しろ」
「はっ…ふぅっ…はっ…あぁっ…あつ、い…とける」
「おれも、とけそうだ」
「あっりぼーん…りぼーん、きもちい?」
「ああ、最高だ」

ちゅっとキスをされて、俺は胸が締め付けられた。
キスだけじゃ知りえなかったこと。
身体中を埋め尽くして、一緒になるかのような感覚と送りこまれてくる快感。
熱くて、少し痛くて…でも、それ以上に充足感が俺の中を支配していた。
俺は背中にまわした手に力を込めて泣いていた。
ぼろぼろと零れる涙をリボーンは優しく拭って、好きだと何回も囁く。
俺もそれの何回かには答えて、幸せでいっぱいだった。
こんな感覚を知ってしまったら、きっと病みつきになってしまう。
だって、もうこんなにも離れたくない。

「すき、すきぃ…りぼーん、もっとちょうだい…もっと」
「つな、つなよし…はっ…いくぞ」
「んっ、ほし…あっあぁあっああっ!!」

リボーンの声に頷けば奥へと熱いものが流し込まれてその拍子に俺の自身を扱かれて白濁を放っていた。





目を開けたら、隣にリボーンがいた。
少し考えて、俺はあのあと気を失ってしまったのだと気づいて、慌てた。
身体はだるいし、声を出そうとしたら少しつっかかってしまった。
でも、俺は隣の寝ているリボーンの顔を見てほっと胸を撫でおろしたのだ。

「幸せそうな顔…してる」

俺を抱き締めるようにしてそんな顔しているなんて、本当にうれしいことだ。
つい、俺だけのものと思ってしまう。
いや、思ってもいいんだろうな。
きっとリボーンならそう言ってくれる。
起きる気配のないリボーンに最近ずっと忙しくしていたのだから仕方ないかと俺は笑った。
寝ているリボーンにちゅっとキスをした。
寝ているのなら、恥ずかしくない。
俺は胸に顔を埋めて寝ようとすれば、ふわりと頭を撫でられた。

「え…?」
「もっとしてもいいんだぞ?」
「なっ…起きてたのかよ?」
「寝ようとしたらお前が起きたんだ」

それでも寝ていたのならタヌキ寝入りじゃないかと少し拗ねると、くしゃくしゃと撫で続けてぎゅっと抱きしめられた。

「リボーン?」
「好きだ、大事にする」
「…大事にされてるよ」

俺も好きだよと返して、胸が幸せいっぱいになる。
こんなにも満たされることを知ってしまったら、俺はこの先どうしようもなくなってしまうんだろうな。
リボーンでなければならないのだ。
それはとても怖いけれど、この抱きしめる腕が離さないと言ってくれる。
俺は鼻をすり寄せてその幸せに身を任せることにした。
全部を預けてもいいんだと言われているような気がしたから。
これからも、ずっと一緒にいれる気がする。
こんなにも大事にされて、いる。
俺も、そんなリボーンを大事にしたいと思う。
きらきらと光って、俺のお星様。





END






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