◎ 深夜
「……ん……」
今日は久々の休みだ。
店が休みなので当たり前なのだが、俺は珍しく朝起きた。
それははっきり言えば、しっかり眠れていないのだが…。
でも、しかたないことだろう。
キッチンから物音が聞こえたのだから。
俺は身体を起こせば寝室からでる。
朝食を作っている綱吉がいるから。
案の定、綱吉は自分の朝食を作っていて俺には気づかない様子だ。
俺は笑みを浮かべて後ろから抱きしめた。
「わっ…リボーン」
「…眠い…」
「眠い?自分で起きて来たんじゃないのか?」
「お前、またコップ割っただろ?」
「…バレてた?」
仕方ないじゃんか…とぶつくさ言いながらぱちぱちと音を立てているフライパンを眺めている。
こっちを向かないのは火を扱っているからだが、構ってもらえないのも少しだけつまらない。
「バレるだろ、あんな大きな音立てれば…綱吉…」
「っ…ちょっ、耳元で喋らないでよっ」
「これだけで感じるのか?」
耳元で名前を囁けば耳まで赤くして俺を振りむく。
ニヤリと笑ってからかってやればもうっと怒る。
どんな反応を返しても可愛いと思ってしまう。
こんなの、どうすればいいんだよ…。
「あ、もしかして…リボーンもご飯食べる?」
「俺はいい、もうひと眠りするつもりだ…それより、お前なんか肉付きよくなってないか?さわり心地よくなって良いが」
「えっ…ホントにっ!?」
「そんな気にするほどでもないぞ?わかるのは俺ぐらいだ」
俺を背中に張り付けたまま焼けた目玉焼きとハムを皿に移しながら驚く綱吉に毎日抱きしめているのだから少しのことをわかって当然というなり、それならあまり気にしなくても平気だと思いなおしたらしく安心したように胸を撫で下ろしていた。
それより、気になるのはなんでこうなったのかと言うことだ。
綱吉はあまり食べる方ではないし、このごろ過度な食事をしていた記憶もない。
「なんかあったのか?」
「ん?いや、なにもない…よ?」
何か隠していることはなんとなくわかった。
少し、口ごもることとかまず最初に緊張しているからか心臓が早鐘を打つように俺に伝えてくる。
だが、隠したいのなら仕方ない。
少しぐらいふとったところで触り心地がよくなるだけだ。
「それより、リボーンいつまでここの家賃俺に払わせない気だよ」
「あ?」
「俺も住んでるのに、飯作るだけでいいって…」
綱吉の言葉に今度は俺が気まずくなる番だった。
綱吉がここに住むにあたって、一緒に住むのだから家賃を半分払わせてくれと言われていた。
だが、次の月から次の月からと言い続けていたのだ。
それにはちゃんとわけがある。
ここの部屋は結構広く、3LDKだ。それに防音で日当たりのいい角部屋とくれば考えなくても家賃がそれなりなのは見てとれるだろう。
それに、俺の職業柄セキュリティが万全な場所を選んでいる。
とてもじゃないが、半額だって綱吉に払い続けられる額ではない。
下手に言ってもっと賃金の高いところにバイトを移すと言われても嫌なのでこの話題をされるたびに逃げていた。
「それで良いっていってんだから、甘えてろよ」
「そう言うわけにもいかない、俺だけ自分の給料好きに使ってるじゃん」
「俺は休みが頻繁にあるわけでもねぇし、高いモノが欲しいわけでもない。お前がいるだけで良いんだ。だから、お前が住むところを提供してる。これならいいんだろ?」
「違うっ、俺だってリボーンにいてほしいっ。俺だけ、かごの中の鳥は嫌だっ…」
綱吉はそうじゃない、と首を振るなり俺を払いのけた。
俺はそんなつもりでいったわけじゃないのに、と口から出そうになって止まった。
いつの間にか綱吉は泣きそうに顔を歪めていたから。
「つな…」
「俺だけを庇護しないで。俺だって、ちゃんとしたいのにっ、なんでわかってくれないんだよ…っ」
わかっていないわけじゃない、いつでも俺は綱吉を対等に見ていたつもりだ。
どうして、こうなってしまうのだろう。
俺は綱吉の頬を流れる涙を見ていられず目を逸らした。
「っ…もう、いいっ…バイトいってくる。飯、食べればいいじゃん」
乱暴に涙を拭って、バッグを手に掴むと俺が止める間もなく部屋を出ていってしまった。
何がいけなかったのだろう…、こんな喧嘩をしたいわけじゃないのに。
俺は仕方なく目の前に置かれた目玉焼きとハムを食べた。
もうひと眠りをしたいと思っていたが、もうそんな気にはならなかった。
部屋でぼうっとしながらどんな言葉を返してやればいいのか考えていた。
ホストをやっているのに、こんな大事な時に振り向かせる言葉の一つも出てこないことが情けなくなった。
1だって、どれだけ大勢に愛情を向けられていたって、あいつじゃなきゃ何も意味は成さない。
「こんなことしても、埒があかねぇな」
フッと気づけばもう日が沈んでもう少しで綱吉のシフトが終わる時間だった。
話をするなり、なにか解決をしなければ綱吉はどこかに消えてしまうんじゃないかと俺の胸を騒がせる。
逃げる前に、逃げられなくしなくてはと俺は立ちあがった。
迎えに行こう。
機嫌が悪かったら、話し合って一緒に飯食って美味しいケーキ買って帰ってこよう。
話せばわかってくれる。
綱吉は人の話を聞かずに頭ごなしにするタイプではないからちゃんと話せばわかってくれるだろう。
結局俺は綱吉の大人な部分を利用していることに気づいて苦笑を浮かべるが、それしか思いつかなかった。
「俺は…どこまでも、子供だ」
一丁前に偉そうなことを言うが、綱吉に説得されては逆らえない。
どこまでも寛大で、どこまでも上をいくあいつを本当に俺は好きなんだと思い知る。
手放したくはない。
できれば、朝綱吉が言ったようにかごの中の鳥にして俺だけしか見れないようにしたい気持ちもある。
こんなこと思っても言えないが…。
外を歩いて数分もすれば喫茶店につく。
ドアを開ければいつものように静まり返った店内。
常連の客しかいない、空間。
「あら、珍しい。今日は私服」
「ああ、休みだからな」
「ふぅん、それなのに…喧嘩」
何でバレてんだ!?
したり顔で言われて俺は思わず顔が引きつる。
「馬鹿ね、あの子のあんな顔見ればすぐでしょ?まぁ、今は落ち着いたからいいけど…あんまり甘えんじゃないよ?言えないことがあるなら、ごめんくらい言いなさい」
不器用ねと笑っていつものように珈琲をだしてくる。
綱吉と言えば厨房で何かやっているのか俺に気づいていない様子だった。
「言うさ。俺はそれを言いにここに来たんだ」
「そうだったの。なら、大丈夫そう。…時間も頃合いね」
珈琲に口をつけながら決心を口にすればマスターは笑みを浮かべて厨房へ入っていった。
奥から俺が来ていることが伝えられたのか、ええっと驚いた声がしたと思ったら盛大になにかを落とす音が響いて静かになった。
「っ…リボーンッ」
「ん、どうした。そんなに慌てて」
暫くすると従業員の扉から出て来たと思ったら、焦ったように俺を呼ぶからつい笑ってしまった。
「だって、逃げると思って」
「俺が逃げるわけないだろ?」
綱吉も俺と同じことを考えていたのを知って、また笑った。
なんで、こんなにも俺達は思っていることが一緒なのだろう。
「あ、あのね…朝…」
「すまん」
「へ?」
「俺が悪い、俺がお前のことちゃんと考えてやれなかった」
綱吉が謝ろうとしているのがわかれば俺から謝った。
ここで綱吉に謝らせてしまったら綱吉にいつまでも甘えてしまう。
それだけは嫌だった、ちゃんと対等でありたい。
「ばか…俺が、謝ろうと思ってたのに」
「お前が謝る必要なんてない…喧嘩、したいわけじゃないんだ」
「俺だって、そうだよ」
「はーい、そこ。良い雰囲気なんだけど、ここ店だからね、これ以上は帰ってから。綱吉君、忘れ物」
お互い言いたいことはあまり言えなかったが、喧嘩をしたいわけじゃない。
できれば、このままずっと一緒にいたい。
その気持ちも一緒なんだと気づかされて二人で笑いあった。
このまま、唇が合わさろうと言うところでマスターが手を叩いた。
「あ、ありがとうございます、マスター」
二人で今の現状を忘れそうになって赤くなっているとさっさと帰れと手を振られながら綱吉に箱が渡される。
それは、なんだかホールケーキが入りそうな大きさの奴で、一体何が入っているのかと視線を向ければ照れくさそうに笑った。
「お疲れ様、二人とも仲良くね?」
「はい、お疲れ様です」
「わかってる」
マスターの一言に頷いて店を出ると二人並びながらマンションの方向へと歩き出した。
「なんか食ってくか?」
「えっ、あの…俺なにか作るよ?」
「でも、今からじゃ大変だろ?」
「大丈夫だよ。大変だと思うなら、手伝って?」
思えば、外食する予定ででてきたんだと気づけば話を切り出した。
だが、綱吉は外食を控えたいようで自分が作ると言い張ってくる。
何かあるのだろうかと首を傾げるも、きゅっと手を握られればそれ以上聞く気にはなれず仕方ないなとぶっきらぼうに頷くことにした。
部屋につけば綱吉は早速夕食の準備を始めた。
いつもしているだけあって手際が良い。
俺も綱吉が来る前は独り暮らしをしていたが、綱吉の方が断然美味しかった。
「何作るんだ?」
「きのこのパスタ。簡単だからすぐ食べれるよ」
「別に早く食べたかったわけじゃねぇぞ?」
「わかってるよ、俺が食べたいの。リボーンはパスタ茹でてて」
なんだか、綱吉は朝と違って上機嫌で自然と俺も嬉しくなってしまう。
鍋を用意してパスタをゆで始める。
綱吉はきのこを切ってバターで炒めながら味付けを手早くしていく。
「ねぇ、ワイン」
「飲みたいのか?」
「うん、パスタに合うし」
パスタを茹でるだけなので早々に仕事が終わってしまえば、俺はテーブルにグラスを用意した。
保存してあったワインを出してくると慣れた手つきで注いでいく。
綱吉は茹であがったパスタをきのこに絡めてすぐに料理は完成した。
「じゃあ、食べようか」
「ああ」
「いただきます」
二人で向かい合って食事をする。
あまりない光景に俺は新鮮味を感じていた。
「なんか、いつもどっちかがご飯食べてるからこのアングル新鮮」
「なんか発言エロいぞ?」
「そんなことないって、ねぇ今日ずっとしてほしかったことあるんだ」
アングルに引っかかりを覚えてフッと笑えば違うと言い返される。
口が軽いのはワインのせいかとアルコールの入った綱吉を見れば真顔で言ってくるので俺も真剣になって何をしてほしかったんだと言葉を返した。
「あのね、キス。してなかったから」
「お前…」
「口にして、今すぐ」
食べている途中にもかかわらずキスを強請る綱吉は別に酔ってなどいなかった。
いつもは俺が仕事に行く前や綱吉が仕事に行く前にキスをしている。
なのに、今日は俺の仕事がないうえに朝喧嘩をしていたのでキスなんてする暇がなかった。
口寂しかったのは俺も一緒で、だが俺は食事が終わってからと思っていたのだ。
それが、こんな形でキスを強請られることになろうとは思ってもいなかった。
「そう焦るな、すぐしてやるよ」
「ん…」
「今は、これだけだぞ?あとでたくさんしてやる」
どっちが甘えているのかわからなくなりながら綱吉の頭を引き寄せて触れるだけのキスをした。
そして、食べた後に情事を予感させればいつものことなのに頬を赤くさせて頷く。
「美味いぞ、このパスタ」
「なら、よかった」
濃厚な雰囲気はそう長く続くはずもなくて俺がそっと話を逸らせば頷いて楽しそうに食べる。
他愛ない話をしながら夕食を食べ終えれば、綱吉はおもむろに席を立った。
どうしたんだと綱吉を視線で追えばさっきの箱を冷蔵庫から取り出してきた。
手には小さい皿とケーキ用のナイフと二つのフォークを持っている。
「何が入ってるんだ?」
もう聞いてもいいだろうと言葉を向ければ無言のままテーブルの中央に持ってきて箱を開けた。
中から取り出されたものを見て俺はまじまじと観察してしまう。
そこにはパイがあったのだ。
「これ、なんだ」
「は?」
「俺が、ふとったの」
唐突に言われた言葉にますます訳が分からなくなる。
なんで、このケーキが太る原因なんだ?
もしかして、すごくおいしくてたくさん食べすぎたのかと思考を巡らせている間に二人分を切り分けて一つを俺に渡してきた。
よく見れば中には桃が入っていて、ピーチパイのようだ。
「これね、作って何回か失敗して、失敗したの食べてたんだ。捨てるのもったいなかったし…」
「作ったって、お前が!?」
「うん…」
「こんな店に売ってそうなのに手造りなのか!?」
「う、そうだよ。リボーンに食べさせたかったの」
よく話を聞けば、綱吉はマスターの作るケーキが美味しくて俺に食べさせてあげたいと考えたようだ。
そして、マスターのを食べさせるより自分で作ってみれば良いじゃないかと誘われるまま作り方を教えてもらって失敗を繰り返しながらつくっていたそうな。
で、その失敗作を捨てるわけにもいかず自分で処理をしていたからふとってしまい。
今回これが初成功だそうだ。
俺はそれを聞けばいてもたってもいられずピーチパイを食べた。
ピーチが甘くて甘さ控えめのカスタードがいいバランスだ。
「美味い」
「本当!?よかった、なんか誰かに喜んでもらえるのって良いな」
「…家賃のことだけどな。ここの部屋、お前の給料じゃ絶対払えない金額なんだ」
「…うん」
「こんなに美味いもの作ってるのに、バイト変えるなんてさせらんねぇから俺が払い続ける。どうしても払いたいんだったら、お前の無理のない金額をもらう」
綱吉の秘密が明らかになった今、俺のことも有耶無耶のままでいることなんてできなかった。
俺は正直に話して、綱吉の言葉を待った。
「わかってたよ、だけどちょっと悔しかったんだ。リボーンだけカッコつけてるって」
「それはっ」
「うん、もう大丈夫だから。こんなに違う俺達が出逢えたのはお互いこの仕事していたからだし。このままでいるつもり。リボーンに甘えさせてもらう、から」
ありがとうと俺の掌に拳を乗せてくる綱吉に俺は笑みを向けた。
綱吉なりに、俺に寄りかかってくれるという意志表示なのだろう。
俺はそのまま綱吉の拳を開かせ甲にキスをした。
「早く、お前を食わせろ」
「あとでって言った余裕はどこに行ったんだよ」
「余裕なんかあるか、俺だってお前に触りたいんだ」
パイを食べながら言っているがお互い冗談のつもりは一切ない。
互いに言葉を交わしながら煽っていた。
食べ終わるなり片づけるのもそっちのけで俺は綱吉の方へいくとソファに押し倒した。
噛みつくような深いキスをして服を上から突起を引っ張る。
「んっ…はっ…りぼーん」
「お前もこんなじゃねぇか」
「誰も、感じてないって言ってないじゃん」
触る前から期待して突起が硬くなっているのを知れば、言葉でなじるも開き直られた。
なんだそりゃと笑いながら服を脱がせて、俺も上半身を脱げば白い肌に唇を寄せる。
この前ヤった痕が消えずに残っていて、綺麗な桜の花びらが散っているようだと眺めているとあんまり見るなと胸を隠されてしまった。
「仕方ないだろ、お前の肌にすげぇ映える」
「ばかっ…」
「恥ずかしいなら、もう少し酔ってみるか?」
恥ずかしそうにする綱吉に、少しはめを外してみろとワインをテーブルからとって見せた。
この前の一件以来、綱吉が酒に弱いのはわかった。
薄くしていたはずなのにかなり酔っていたようだから、グラスもう一杯飲ませば頃合いだろうと思ったのだ。
綱吉もわかっているようで、少し気まずそうにしながら俺に口移しでと注文をつけて来た。
「はぅ…んくっ…ふっ……」
「綱吉…美味いか?」
「ん、美味しい…もっと、ちょうだい」
言われるままに飲ませていけば、綱吉の目がとろんとしてきて潤んでくればワインをテーブルに戻した。
まぁ、酔っていなくても酒を飲んだことでいつもは自制する枷が外れればいいのだ。
こんなに早くアルコールが回ることはないが綱吉は従順に身体を明け渡してくる。
まずは突起の片方を手で、もう片方を唇で愛撫する。
「ひぁっ…んんっ…はっ、噛んで、そこっ…もっと、強くしてっ」
「っ…はっ…」
「ああっ…あっやあぁっ…もっ、い…きもちいっ…」
言われるままに突起を甘噛みして指で弄ってるほうを強く摘まめば堪らないと快楽の涙が頬を伝う。
もどかしいのか俺の下で腰がぴくぴくと揺れる。
そろそろこっちもしてやるかとズボンの上から触れば慌てたように声をあげて俺の手をとり上げた。
「どうした?」
「やっ…しちゃ、だめ…」
「なんで?」
「…イ、ちゃう」
息も絶え絶えに伝えてくる綱吉に俺は言ってやりたかった。
そんなことをすれば、逆に燃えるのだと。
俺は綱吉の自身をズボンの上から撫でた。
途端に嬌声があがって、駄目と首を振る。
「もう外に出る用事もないんだ、だしちまえ」
「っ…やっ、やっ…うああっ、やぁぁぁっ!!」
最後まで抵抗してこようとする綱吉に、俺は自身を撫でながら耳たぶを甘噛みした。
すると、とびっきりエロい声で腰を震わせ射精する。
じんわりとズボンが湿ってくれば不快感を示す前に脱がせようと手を添えたら、嫌だと半泣きで抵抗してくる。
その顔は悩殺ものでいますぐ犯したい気持ちを必死で押しとどめた。
「あぅ…ぬがしちゃ、やっ…みな、で…」
「綱吉、可愛い。どこも汚くなんてねぇぞ?むしろ、俺がこんなにしたんだからな」
恥ずかしがらなくていいと耳元でやさしく囁いて宥める。
ひくっと喉を震わせながら、ゆっくりと綱吉の手から力が抜けていく。
俺はそれを了承と取ると、ズボンを脱がした。
下着から自身を繋ぐ銀糸がますます俺を高ぶらせて、それがわかるのか綱吉はなんだか気まずそうにする。
「足、自分で持てるよな?」
「えっ…」
「離すなよ?」
戸惑っている今のうちにと綱吉に自分の足を持たせ腰を上げさせた。
今回俺が綱吉にやらせようとしていることが、少しマニアックなことだけに訳が分からなくなっているうちにやってしまいたかった。
俺は足を持ったのを確認すると綱吉の自身へと手を添えた。
「へっ…何っ…ああっ、やっ…やぁっ…んっ、あっ…もっ、イくっ…あああっ!?なめちゃっ…ひあっ」
「嫌じゃ、ないだろ?」
喋りながら愛撫を加えるとそれだけでたまらないと顔を歪めて、自身を愛撫しながら秘部に唇を寄せて濃厚なディープキスをすると足の指が丸まった。
何かに縋るように指に力が入り、自分の足を傷つけている。
今度は俺の肩に手を置かせようと決めるが愛撫の手を止めることはなく、ほどなくして綱吉は二度目の射精をした。
「っ…うっ?…」
「セルフ顔射」
「……ばかぁっ!!あほっ、何これ…何で!?」
一瞬訳がわからないと放心した綱吉に俺は嬉々として綱吉の顔についた精液を舐めた。
そして、我を取り戻した綱吉は顔を真っ赤にして怒鳴り散らした。
それに機嫌の良い笑顔で返せば綱吉を抱き上げて寝室に向かう。
「ちょっ、訳を説明しろっ」
「ァア?んなの、したかったからに決まってんだろ」
他にどんな理由があるんだと言ってベッドに下ろせば、こんな奴に惚れるなんて…と本気で絶望しているようなので慌てた。
「いや、あのな、お前の顔汚してみたかったんだ」
「なんだよ、それ」
「男のロマンってやつだ」
言いきればムッとした顔をして、唇を尖らせる。
機嫌を損ねてしまっては無闇に手を出すことのできず、綱吉を見ていればベッドの端を叩いて俺を見つめてくる。
「それなら、リボーンに掛けられた方がまし。立ってよ」
「は?お前何言ってるか、わかってんのか?」
「わかってるよ、俺の顔にかけろって言ってんの、わからないの!?」
思わぬ言葉に戸惑っていれば綱吉はベッドを下りて早くしろと、顎でしゃくってくる。
こんな強気に顔射される人間がこの世に居るのだろうか…。
いや、いたって構わない。綱吉は綱吉だ、何をしても愛しいと思う。
「俺も、末期だな」
「末期?一理あると思う、この状況で勃つなんてね」
俺が立てばズボンを下着と一緒に下ろした。
さっきの綱吉の痴態で反応している自身を綱吉の目の前にだして見せればすごいと、潤んだ目で見つめている。
「欲しいか?」
「意地悪はなし、顔にかけてよ?」
これ以上は喋るなと先に言葉を封じられてしまうと、自身を支えるように持ってそのままためらいもなく口の中へと入れられた。
綱吉の咥内は暖かくて、拙い愛撫でも感じてしまう。
全部は入らなくて唾液を滴らせながら口に入らないところは手で扱いている。
俺は気持ちよくて綱吉の髪に指をからめた。
上手だと言いたくて優しく撫でると先端を舌で愛撫してくる。
珍しい綱吉の行動にすぐに限界は来た。
「綱吉、だすぞ。口あけて目を閉じてろ」
「んっ…はっ…」
綱吉に指示して自身を扱きながら待ちかまえている顔へと放った。
自分と俺のとでドロドロになった顔を見て興奮した。
それは綱吉もらしく、自分の顔についた精液を指ですくっては舐め、美味しいと俺に微笑んだ。
「リボーン、身体すごく…あつい…」
「ん?どうしてほしいんだ?」
俺に抱きついてきたかと思えばそのままベッドへ押し倒して、自分の身体を俺に擦りつけてくる。
よく見れば、もう綱吉の自身はドロドロになって先走りを溢れさせていた。
舐めている間に感じていたのかと問えばうんと素直に頷く。
「リボーンのおっきくて、感じた。…これ、くれるだろ?」
「俺を誘ってみろよ」
別に誘わなくとも今すぐに綱吉を突き上げてやりたかったが、今の状態ならなんでもしてくれそうだと思ったからだ。
案の定綱吉は俺の上から下りると四つん這いのままで俺の前で双球を自分で開きひくつくそこを俺に見せて来た。
「ね、ここ…リボーンので、突いて…あっ…あっああぁっ」
「これがいいんだろ?」
振り向いて真っ赤な顔で言う綱吉に俺の理性がぶつりと切れた。
再び勃ちあがった自身を綱吉の腰を掴んで一気に挿入すれば今までにないくらい背骨に響く声で啼いた。
堪らないと、息を切らしてバックで蹂躙するとシーツを握りしめて身悶える。
「んやぁっ…ああぅ…はっ、ああっ…もっ、やぁっ、イくっ、イくっ…」
「もうか?早いな、こっちの方が締まりも良いみたいだなぁ?」
「いわないでっ…だっ、こっち…いっぱい…お腹、ここまで、きてるっ」
ここまで、と言いながら臍のあたりをさする綱吉にさすがにそんなに長くないと苦笑を浮かべながら肩甲骨を甘噛むと腰を振り、もう駄目、もうしちゃやだ、を舌ったらずに繰り返した。
そんないやらしい光景に俺も耐える気はなく、最奥を突き上げて中に放つと綱吉はその刺激でベッドに白濁を吐き出していた。
「はっ…はっ…はっ…けほっ、はっ、はぁっ…まだ、して…」
「はっ?お前、もう無理だろ?」
「いや、顔見て…イきたい」
いつもはもうとっくに限界にきているだろうに、まだ綱吉は強請った。
これ以上は負担になると止めようとすれば俺の手をとって指に舌を絡ませて吸ってくる。
「ね、明日俺休みだから…ちょうだい?いじわる、しないで…」
「いじわるなんかじゃないんだけどな…」
これ以上は明日本当に立てなくなるかもしれないと言うのにそれでもいいと身体を反転させると腕を伸ばしてくる。
それを抱き返してやるとはふっと肩に顎を乗せて温もりを確かめて堪能しているようだった。
「ったく、手に負えないな」
「嫌?こんな、俺じゃ…リボーンの好みじゃない?」
「は?馬鹿だろ、こんな好みの奴ぜってぇ、手放すかよ」
手に負えないくらいがちょうどいいと強く抱きしめて耳たぶに噛みついて、腰を寄せて秘部に再びあてがう。
今度はゆっくりと挿入して、荒々しくするのではなくゆっくりと揺さぶりながら少しずつ官能を長引かせていく。
「はっ…うっ…んあっ、きもちい…」
「俺も、気持ちいいぞ?」
「好きだよ、リボーン…」
「俺も、愛してる」
いっぱいキスをして、いっぱい好きと言って、いっぱい笑って、たくさん幸せになった。
ほどなくして二人で一緒に吐き出せば、ベッドに重なり合って呼吸を整える。
「んっ…頭、ふらふらする」
「頭痛か?薬持ってくるか?」
「お酒だと思うから、大丈夫…おふろ」
「そんなんで大丈夫なのかよ」
すぐに出れば平気。
リボーンが何もしなければと笑う綱吉に俺は苦笑をしてバスルームに場所を移した。
「自分で洗えるか?」
「ん、どこ行くの?」
「ベッド、あれじゃ寝れないからシーツ変えてくるだけだ。すぐに入るから洗って待ってろ」
離れる時もキスをして、俺は寝室に戻ると情痕で汚れたシーツをはぎ取ると綺麗なものに取り換えてシーツを洗濯機へと放り込んだ。
シャワーの音を聞きながら中に入れば体中を泡にした綱吉がいた。
「リボーンも洗って上げる」
綱吉の言葉に誘われるまま身体を寄せれば抱きつかれて泡をくっつけて来た。
子供っぽい綱吉にキスをしてやって抱き上げると湯の溜まっている湯船にシャワーで流さず二人一緒に入った。
「あーあ、お湯なくなっちゃうだろ」
「どうせ泡を流そうとそうでなかろうと一緒に入るんだから文句言うな」
「せっかく溜まったのに…まぁ、リボーン温かいからいいけど」
お湯に名残惜しろうにするが、結局は俺がいるからいいと結論に落ち着けば眠そうに欠伸をする。
「もう寝るか?明日は、何かするか?」
「何も、リボーンといられればいい…一緒の休みなんて早々ないんだから」
俺は明日の夜には仕事なのだが、起きている俺がいると言うことが良いらしい。
俺の胸に身体を預けながら呟く綱吉に、ならベッドでごろごろするのもいいなとその暖かくなってきた身体を抱きしめる。
「なんでもいい、お前がいるだけで…」
「俺もだ」
今はただ、お互いがいるだけでいい。
何も要らない。
目の前にこいつがいることこそが一番の幸せなのだから。
END