◎ 昼
目覚ましの音で目が覚める。
目を開ければ、目の前には整った顔。
いつもなら俺より先に起きて無理やり起こしてでもバイトにいかせるくせに…
俺は身体を起こすと目覚ましを止めた。
リボーンを起こさないようにしてベッドから出れば服を着替え始める。
パンをトーストにセットしながら、冷蔵庫から野菜ジュースを取り出してコップに注いでそれを飲みつつ時間を確認する。
「今日は遅刻しなさそうだ」
遅刻常習犯と言われる俺だけど、ちゃんとしようと思えばできるのだ。
それだけで気分がよくなって、焼きたてのパンを口にくわえて静かに部屋を出た。
リボーンとこんな暮らしを始めてから三カ月経った。
いや、もうすぐ四カ月になろうとしているが…。
「おはようございます、マスター」
「あら、綱吉君いいところに来たね」
リボーンのマンションから徒歩十分程で、リボーンの勤めているホストクラブもこの近くだ。
店に入れば常連客にコーヒーを作りながら俺の存在に嬉しそうにするマスターことマリアさんは機嫌よく声をかけて来た。
「何かあったんですか?」
「ちょっとパン切らしてるの忘れてて、今から買ってきてくれない?」
顔の前で手を合わせるマリアに苦笑しながらいいですよと返事をする。
そして、荷物をロッカーに入れるなり再び店を出て近くのスーパーへと入った。
いつも使っているパンを購入して戻れば有難うとさっそくパンを使ってサンドイッチを作っていく。
マリアは何でもないように作っていくが、あれは案外難しいのだと感心したように眺めた。
ここにきてからの俺の仕事と言えばお客さんのオーダーをとったり、テーブルを掃除したり、たまにはコーヒーを淹れる練習をさせてもらっていたりする。
だからか、俺の仕事着はバーテンダー服だ。
「いつもありがとね」
「マスターの淹れる珈琲は世界一だから」
「有難うございました」
フロアに出れば常連客が帰るところで挨拶をすると笑顔で店を出ていった。
まだ、朝なので客は薄い。
それに、この店がある場所が歓楽街の近くとあって朝からくる客自体少ない。
だから、いつも俺とマリアさんと二人きりなのだ。
「そういえば、もう新しい生活には慣れた?」
「はい、なんとか…なんだかんだで、前より近場になったのには嬉しいし」
「そうかそうか、それはよかった。でも、なんか、綱吉君の顔は納得いってないみたいだけど…?」
俺はカウンターに凭れてマリアさんの言葉に耳を傾けていたが、何かを探るようなそれに顔を俯ける。
実のところ、生活には慣れたが人間関係がうまくいっていない。
それは全部俺のせいなのだけど…。
「何か…問題でも起きた?」
「いえ…」
「やっぱ、勢いだけってものきつかったかな…」
マリアさんが苦笑するのを、目を合わせないまま知れば俺は目を閉じてゆるく首を振る。
なんでマリアさんがここまで知っているのかと言うと、俺とリボーンを会わせてくれたのはこの店のおかげでもあるからだ。
この店が全ての始まりだった。
俺はまだ愛とか恋とか知らなくて、他人から告白されたりするのは初めてだったのだ。
そこから、俺達の間に隙間ができて付き合っているのにどこかお互い壁を意識するようになっていった。
一緒に住んでいるのに、お互いすれ違うこともできないこの生活も原因であるだろう。
お互い仕事だと、かこつけていつしか向き合うこともできないでいる。
「違うんです…俺が、あのときさっさと答えていればよかったんだ」
「そうじゃないよ、リボーンはそんな綱吉君だから好きになった。だから、綱吉君はそれでいいの…でも、早くしないと愛想尽かされちゃうかもね」
くしゃくしゃと頭を撫でられて慰められているのだと感じる。
だが、続く言葉に俺は足元が竦む思いをした。
一緒に住むより付き合うより大事なことをまだリボーンに言えないでいる。
リボーンはそれを待っていてくれているのに、いつまでも俺はこの生ぬるい場所にとどまり続けている。
「そうだ、綱吉君。珈琲私に淹れてくれない?」
「いいですけど…俺が淹れていいんですか?」
「いいのいいの、この時間は暇だし…綱吉君、淹れるの上手くなってきたから」
突然話を変えるように手を打つマリアさんはカウンターから出て席に座ると俺を無理やり押しいれた。
まったく強引な人だと思いながらいつもの手順で珈琲を淹れていく。
時間をかけてゆっくり、美味しくなれと言い聞かせながら。
丁寧に淹れたそれをマリアさんに出せば、一口味わってはぁっと満足そうにため息をついた。
「うまくなったね、最初来た時は食器や材料を落とすわ壊すわでどうなるかと思ったけど」
「もう、それは昔のことじゃないですか」
「昔じゃないわ、一年前じゃない」
恥ずかしい過去を暴露されて頬が赤くなるのを感じる。
元がドジっ子の様なものだったからここでバイトする前もよくやっていたことだった。
俺をここまで必要としてくれるのはここしかなくて一年でようやくコップを壊すこともなくなったし豆を落とすこともほとんどしなくなったのだ。
「からかうなら、飲まなくていいですよ?」
「ああっ、だめだめ、せっかく淹れたんだから飲まなきゃ損でしょ?」
俺がコップを取り上げようとすればすっと遠ざけて、ね?と笑う。
こんな綺麗な人なのに未だ恋人は募集中の身だ。
「俺の心配なんかする前に自分は作らないんですか?」
「いいの、私は私…お節介よ」
「まぁ、マスターがそう言うならいいんですけど…」
「もう、一人も慣れたし。仕事してれば綱吉君がいるしね」
珈琲を飲み終えればんーっと大きく伸びをしてカウンターに入ってきた。
時間を見ればそろそろお昼時だ。
小さな喫茶店といえど、昼になると店いっぱいに人が入る。
これから忙しくなる、と俺も気合いを入れたのだった。
「ただいまー」
「おう、おかえり」
疲れきってマンションへと帰れば、リボーンがいた。
髪をセットしていたらしく、服装はもう仕事にいくためスーツを纏っている。
俺がリビングに来ると同時に腕を引かれる。
ソファに押し倒されそうになってそこに座り込む。
このまま大人しく押し倒されてしまえば、リボーンの好きにされてしまう。
それは、嫌だった。
第一動きっぱなしだった身体は汗臭いし、リボーンはスーツだ。
「なんだ」
「今日は流されない」
「そんなこと、俺の前でできると思ってんのか?」
「あっ…えっ、まっ…」
俺が強情張っていると、馬鹿な奴と笑われて座っていた床に押し倒されてしまった。
必死に服を脱がされまいとするが、あっさりズボンを取り払われて自身を扱かれる。
俺の言葉とは裏腹に反応をし始める自身をほどなく咥えられる。
こうして言葉もなく高ぶらされるのはこの日だけじゃない。
付き合い始めてからというもの毎日のようにやっているのだ。
それなのに、俺だけをこんなにしてリボーンは俺が果てるとさっさと仕事にいってしまう。
なんでそんなことまでしてリボーンは平気なのだろうと感じたことはある。
「あっ…やだ、りぼーんっ…あぁっ、イくぅっ!!」
「っ……時間だ。行ってくる」
俺が達すると余韻を味わうことなく身体を起こせばリボーンは腕時計を見て、乱暴に口元を拭うとそのまま仕事にいってしまった。
俺にだって、男同士で付き合ったための場合のセックスの仕方ぐらい知っている。
リボーンだってしらないことはないだろう。
それなのに、俺だけ一方的にイかせてそれで終わり。
「はっ…苦しい……っ」
リボーンに最後までしてほしい…。
そう思い始めたのはいつからだったか。
最初はリボーンに流されるようにして始まった関係が今は違う。
俺は毎日毎時間リボーンのことを考えていて、今でも一回イかされただけのこの身体はもっと欲しいと後ろが疼くようになった。
女性の身体ではないというのに…。
勝手に秘部に手が伸びる。いけないというのに止められない。
「ぁっ…ふっ……」
ゆっくりと身体の力を抜いて自分の指を一本挿入する。
こうなったのもリボーンのせい、なにもしてこないリボーンのせいだ。
心の中で何度も自分に言い訳しながら中を細い指で掻きまわす。
そのうち気持ちいい場所を見つけてそこばかりを擦る。
「あっ…リボーン、リボーンッ…ひぅっ、ああっ…だめっ、ああ」
目を閉じてリボーンの匂いを思い出してひたすらに指を動かす。
俺の腕に自分自身が触れて、いつの間にかそこが熱く堅くなっているのを知る。
自分の指で感じるなんてと思いながら、自分の指は激しさを増してそのうち秘部がギュッと指を締めつけると一瞬頭が真っ白になった。
荒い呼吸で俺が達したことを物語っていた。
指を抜いて俺の腕を流れる自分の精液に嫌気がさす。
「ああ、好きなんだ…リボーン……りぼーん…」
汚れていない腕を熱くなった目元を覆うようにして静かに泣いた。
誰もいない空間なのにこんな泣き顔自分でも見たくなくて…。
しばらく泣いた俺はのろのろと身体を起こした。
力の抜けてしまった身体を引きずるようにして俺はバスルームに入る。
もう今日は寝よう。
そう思ってシャワーで身体に張り付いた精液を洗い流す。
機械的に身体を洗ってさっさと出るとパジャマを着て寝室に入った。
しんと静まり返った部屋はなんだか心が寒くなる。
それを振り切るようにベッドに入って目を閉じた。
だが、しばらくすればやってくる睡魔が今日は一向に訪れる気配がない。
「眠れないなんて…」
昼間のマリアさんの一言が原因だなんて考えたくなかった。
何があろうとちゃんと寝れる方だったのにもかかわらずこうも眠くならないのはおかしいと感じるが、そう考えている間にも時間は過ぎていって早く寝なくてはと目を閉じる。
何度も寝がえりをうち、電気を消して頭で羊を数えた。
けれど、今日は一向に眠れなかったのだ。
「ただいま…」
そうこうしていれば、リビングの方から小さな声がしてドアが閉まる落ちがする。
時間を見ればリボーンが帰ってくる時間だった。
こんな時間まで起きていてしまったのかと慌てて布団を頭からかぶった。
それなのに、リボーンが立てる物音でますます眠れなくなってしまう。
どうしようと逡巡している間にリボーンは寝室に入ってきて俺の隣へと入ってきて抱きしめられる。
そして、布団をとられてしまった。
「お前、まだ起きてたのか…?」
「…あは…寝られなくて…ごめん…」
笑顔がいつもと違うのがすぐにわかったのだろう、呆れたような声に観念するしかなく目を開けると眠そうなリボーンの顔が近くにあった。
目を合わせられなくて視線を彷徨わせながら謝ると頭を優しく撫でられる。
「ったく、早く寝ろ。起きられなくなるぞ」
「う、うん……」
恋人のように俺を抱きしめてくるリボーンに俺は頬が熱くなる。
リボーンは当然のように俺を恋人扱いしてくれるのに、俺が言えないでいるからキスも実はまだだ。
こんなにも、リボーンから好きと伝わってくる。
俺は決心して顔をあげた。
その瞬間視線が合って、慌ててリボーンは逸らしたけれど俺は見つめ続けた。
「な、なんだよ」
そのうち無言の俺に不思議に思ったのか俺を見てきて、視線が再び合わさる。
面と向かって言うのは恥ずかしくて、よくリボーンは俺に言えたなと感心し俺は口を開いた。
「あの、ね、俺ずっと言いたかったんだ…俺、リボーンのこと…好きだよ」
「なっ…」
「本当だよ、この頃…ずっとそればっか、考えてた…」
リボーンの驚いた顔がまともに見れなくて誤魔化すように俺もリボーンの背中に手を回して抱きつき胸に顔を埋めた。
だから、捨てないでほしい…。
ホストという特殊な職業のリボーンだ、引く手あまただろう。
それなのに、俺を選んでくれて俺を待ってくれている。
もう自分の中で答えはでているのだから何も恐れなければいい…。
そう思って口にした告白は抱きしめ返されるという抱擁で了承を得たのだと俺は安堵した。
「綱吉、好きだ。俺も、お前が好きなんだ」
「ん…知ってるよ、ちゃんと…ごめんね、リボーン。待っていてくれてありがとう」
顔をあげればキスをされた、二度目のキス。
でも、リボーンを好きになって初めてのキスは一回目と違って幸福感が俺の胸をいっぱいにする。
一度目のキスを皮切りにお互いに唇をぶつけるように口付けた。
いつのまにか、リボーンの手が俺のパジャマのボタンをはずしていてシャワーで温められたリボーンの手が俺の胸を撫でる。
「あんっ……っ…」
「声出せよ。感じてる声、俺は好きだぞ?」
ちょっと触られただけなのに尋常じゃないくらい感じて口を手で塞ぐとそれじゃキスもできないだろうと言いながらまた好きだと言ってくる。
まるで今まで言ってなかった分を言いつくすかのように…。
俺はその言葉に従うように手をリボーンの首の後ろへと回して口づけを受けながら胸を愛撫される。
捏ねたり引っ張ったり押しつぶしたりされて俺の口からはひっきりなしに声が零れた。
「あっ…もっ…そこばっかりっ…」
「こっちもしてほしいか?」
「んっ…して、リボーン…」
胸をいじり続ける指に下半身が疼けば、リボーンの太ももに自然と腰を押しつけてしまい、こっちもしろと見つめれば下着をずらされて自身をリボーンの掌に包まれるとそれだけで先走りが溢れた。
けれど、リボーンの手はそれだけで去ってしまいどうしたんだと見れば笑みを浮かべていた。
そののちに後ろに濡れた指が触れた。
いきなりの感触にびっくりするが、そこは自分でしかしたことのない場所だと気づけば本気かと見つめる。
「嫌なら別にしねぇ…ただ、男同士はここを使うんだ」
「そのぐらいしってるよ…ただ…あ、いや…」
自分でしていたなんて言えるはずもなく言いかけた言葉を飲みこんだ。
別に嫌ではない、現にそこはリボーンの指がふれたことによって期待感にヒクヒクと疼いているほどだ。
「何隠してんだ?さっさと言っちまえ」
もしかして強姦されたとかか?と心配そうにしてくるリボーンともう目が合わせられなかった。
やらしい身体だと思われるかもしれない、と思うとどうしても口にすることはできなかった。
俺はフルフルと首を振ってリボーンの胸に隠れた。
「ったく、なんだってんだ。嫌じゃないなら、するぞ」
「あっ……ぅ…あっ…」
俺が嫌と口にしなかったのにはちゃんと気づいていたのかリボーンはそう言うと指を一本挿入してきた。
いつもと違う、本物のリボーンの指だ…。
そう思ったら自然とそこが締めつけた。
「初めてにしては、ずいぶんとほぐれてんじゃねぇか…もしかして、誰かにヤられたのか?」
「ちっ…ちがぁっ…ああっ…そこっ、しちゃっ…あぅっ」
「だったらなんだ、言ってみろ…おらっ…」
「あん、あんっ…あああっ…やぅ、でるっ…ああっ…あ?…イ、イかせて」
一人でしていたことはばれなかったが、余計な誤解を生んでしまった。
弁解しようとするもリボーンは俺の気持ちいい場所を的確に見つけて俺の口からは喘ぎ声しか聞こえない。
言ってみろと言いながら感じる場所を突き上げて、もう止めてと首を振り射精しそうになればすかさず自身を握ってイけなくされた。
意地悪するなと、力の入らない手でリボーンの手に爪を立てるが離してくれる気配はない。
「言ったら、イかせてやるよ」
「…自分で、してたのっ……ほらっ、言ったからイかせろよっ」
「はっ、お前…最高だ」
悪魔の囁きに俺はやけになり自分で痴態を暴露した。
それほどに、リボーンが与える快楽がすごくて理性なんてないに等しいものだったのだ。
きっと、我に返ったら自己嫌悪の嵐なんだろうなと頭の隅で考えながらリボーンは指を増やして広げるように掻きまわしながら俺の自身から手を離した。
その瞬間俺はリボーンの肩に噛みつきながら白濁を放った。
「ってぇ…」
「はっ、はっ…リボーンが、わるいっ」
「まぁ、これからは俺が気持ち良くしてやるよ」
「ひっ…なんか、大きいんですけど…」
噛み痕残ったと呟くリボーンに知るかと返してやるが、指が抜かれてあてがわれたモノに俺は全身を硬直させた。
想像していたとはいえ、これは予想外だ。
熱くてそこから脈打っているのが伝わってくる。
俺の反応にリボーンはニヤリと笑って、他人事のようだ。
「中に入ったらもっとでかくなる予定だぞ?」
「やっ…ばか…いれようと、すんな…はいんないっ」
「はいる、こんなに開いてんだ…最初は痛いかもしれねぇが…痛くないようにする」
秘部を付突くように力を込めてくるリボーンに顔を真っ赤にして首を振った。
幾らなんでも女性なら入るかもしれないが、俺の排泄に使われる即興の穴では限界と言うものがある。
絶対無理だと否定すれば宥めるようにキスをされた。
何度も何度も啄むようにされて、力が抜けてくる。
「無理とか言うな…俺は、この日まで我慢してんだ…ここに、ださせろよ」
「っ…りぼっ……」
「怖いなら俺に掴まってろ、壊したりしない…約束する」
リボーンの必死な口説きに俺は知らずに首を縦に振っていた。
ゆっくりと力をかけてリボーンの硬いそれが侵入してくる。
亀頭部分が少しずつ入るたびにゆっくりと押し広げられて、リボーンにギュッと抱きつくと頬にキスをされる。
キスをするたびに力が抜けていくから、リボーンは顔中にキスをしながら入れてくる。
「っ…はっ、ああっ…うっ、はっ…あああっ」
「…入った、ここからなら楽だろ?」
一番太い部分を飲みこめば後は押し込むだけだとずずっとスムーズになった動きに今度はどこまで入ってくるかわからなくて混乱した。
俺は未知の感覚に怖くなってリボーンの背中に爪を立てる。
「あっ…くる、どこまでっ…やっ、こわっ…リボーンッ、りぼっ…あぁっ」
「っ…大丈夫だ、これで…奥まで届くか?」
「んっ…きてる、やっ…動かないでっ、もうっ…感じちゃうぅっ」
全部入ったことに嬉しくなるが、そこがいっぱいまで開かれてリボーンが少しでも動けば俺の背筋を快楽が走っていく。
揺れそうになる腰をリボーンの腰に足を巻きつけることで抑えるが、俺の言葉に嫌な笑みを浮かべたリボーンは勢いよく俺を揺さぶってきた。
「んああっ…だめぇっ、おかしく、なるっ…ああぁあっ、やだっ…」
「やだ?こんなに、どろどろにしてんじゃねぇか…俺も合わせてイってやるから、我慢すんな…ほら、綱吉…気持ちいいだろ」
耳元で今までにないぐらい優しく言われて、ますます感じる。
どうしようもないくらい、俺はリボーンが欲しかったのだと思い知らされて涙が溢れた。
もう、きっとこれほどの恋はできないのだろう。
こいつで最後。
「っもちい…きもちいいっ…リボーンッ…ああっ、やっ…イくっ…くるっ、くるっ…あぁぁああぁっ!!」
「はっ、ツナ…綱吉……ふっ、くっ!!」
俺が達したすぐ後でリボーンも俺の中に放った。
中にだされた感覚は少し気持ち悪いと思ったが、それ以上に幸福で、胸がいっぱいになるというのはこういうことなんだと思ったのだ。
俺はリボーンからの口づけを受けながらゆっくりと目を閉じ、そのまま眠った。
次の日…というか昼。
俺は目を開けて、気だるい身体を起こして目覚まし時計の時間を見て目を瞬かせた。
おかしいなと目を擦ってもう一度目覚まし時計を確認する。
確かに、短針が二時を過ぎている。
…………
「えぇーーーっ!?」
「うっせぇ、疲れてんだもう少し寝かせろ」
「ちょっ、俺今日バイトっ!?」
大声をあげたら近所迷惑になるだろうとリボーンの腕が伸びてきて俺を再びベッドへ戻す。
防音設備ばっちりだろうがと突っ込みつつバイト先に何にも連絡していないと慌てれば大丈夫だと眠そうな声が答えた。
「なんでだよ、俺無断欠勤」
「俺が朝連絡した。だから、俺の出勤時間になるまで寝てろ」
「なっ、いつのまに…そんで、お前は仕事に行くのかよ」
「ああ、当たり前だ。だから、お前今日は俺に飯作れ。それで、いってきますのキスしろ」
なんとも根回しのいいことだと半分感心しつつ夜は一人なのかと少し拗ねた口調で言えば理不尽で一方的な言葉に思わず笑みが浮かぶ。
なんて普通な生活を望むのだろう。
まるで新婚生活みたいだと笑いながら、俺も実は満更でもなかったりするのだ。
「わかった、今言ったこと全部するから…浮気するなよ?」
「するわけないだろうが、やっと手に入れたんだ」
目を閉じたままのリボーンに挑戦的にも言うと当然だと言わんばかりに口付けられて頭を撫でられた。
その手は暖かくて、幸せな気分になりながら俺は再びやってきた睡魔に身を委ねたのだ。
次に起きた時は、夕食の準備をしようと心に決めて…。
END