黒バスBL | ナノ

よりを戻した二人の話


僕がそれに気付いたのは夕方を過ぎてからだった。焦ったのは最初だけで、こうなってしまったからには開き直りも肝心だと考え、一つの解答にいきついた。
中学の時から付き合いを始め、一時期は諦めたが再び元の形に戻ったのは、つい半年前の出来事だった。
身体の関係はあったものの、復縁してからはまだ…ない。
僕は少し大きめのバッグに着替えや、歯ブラシを入れ家をでた。
青峰くんの家に泊まりにいきます、と一言置いて。
駅に行き、彼のマンションのある駅を探す。いつもの待ち合わせは僕と彼の真ん中の駅にある公園なため、彼のマンションまで行くことは珍しいことだった。
電車の待ち時間、僕は彼にメールをした。今からマンションに向かいます、と一方的なもの。
もしかしたら、桐皇学園の人たちがいるかもしれないと思ったが、電車が到着したため、引き返すことはできなくなった。
否、引き返えしたくなかった。忘れていたことは謝らなければならないが、できればこれからの時間を僕と過ごして欲しいと思ってしまった。
誰も自分に気付くことのない世界で、ただ一人のために自分から手を伸ばした。
君に、焦がれた。




「で、いきなりメール寄越したと思ったら、うちに来るってどうしたんだよ」

青峰くんの部屋のインターフォンを押せば、不審顔の彼の姿。
僕がいきなりこんなことをするとは思ってなかったのだろう。
これだからアホ峰なんて呼ばれるんですよ。

「お誕生日、おめでとうございます青峰くん」
「ん?ああ…」
「でも、僕キミの誕生日すっかり忘れていて、気付いたのさっきなんです」
「は?まぁ、いいけどよ」
「なので今日泊めてください」

バッグを見せながら泊まるつもりだと真っ直ぐ見つめれば、ぽかんと口を開けたまま止まってしまった。
だが、すぐに青峰くんの手が僕の肩を掴む。

「お前、自分が何いってんのかわかってんのか!?」
「近所迷惑になりますよ」
「……入れ」

今更、覚悟なんてものはいらないんですよ。
僕は意外と冷静な声が自分でもでたことに少し驚いた。
そうして中に入るなり、青峰くんに抱きついた。

「プレゼントは僕です、なんてベタ過ぎですか?」
「ばかやろう」

言葉とは裏腹に抱きしめ返してくれる腕は、とても優しい。それと同時に胸がゆっくりと暖かくなっていくのを知る。
まるで、空っぽになったコップが満たされるように。

「全部食べてやるよ」
「どんとこい、です」

言うなり唇を塞がれた。
触れるだけじゃ足りなくて薄く唇を開けば舌が入り込んできて口内を舐めてくる。
上顎を舐められると身体が反応してしまう。
僕の反応を楽しむようにくすぐる舌を押し返そうとするが、逆に慰めるようにねっとりと絡みつく。

「っ……あ、おみね、く」

苦しくて胸を押し返そうとするのに彼の身体はびくともしない。
そのうち、青峰くんの手が僕の背骨を撫でる。柔らかいタッチでなぞられて、かくりと膝が折れた。

「っと…相変わらず弱いな、テツ」
「くすぐったいのは、どうにもなりません」

腰に腕を回されて支えられ、僕は青峰くんを睨んだ。
けれど、全くきいてないのは言わなくてもわかるほどに彼の顔は雄弁だ。

「バッグ降ろせよ、風呂入るか?ベッドか?」
「ベッドでお願いします」
「そんなに煽って、どうなってもしらねぇぞ」
「どんなに煽っても、君はどこまでも優しいって僕は知ってます」

じっと見つめ返せばがりがりと頭をかいて、テツのくせにとかそんなことを言いながら奥へと言ってしまった。
僕は少しふらつきながらもソファのある部屋へ入れば、先程まで誰かのいた形跡がある。

「…もしかして、邪魔してしまいましたか?」
「いや、ケーキ買ってきて食うだけ食って帰ってったんだ」
「そう、ですか」

すこし考えなしだったかと思ったのは一瞬だった。
青峰くんの手が伸びてきて僕の頬に触れた。

「今は、テツが欲しい」
「…はい、どうぞ」

僕をまっすぐに見つめてくる様子は僕より大きいのにとても可愛く映る。
バッグをソファに置けば僕は精いっぱい腕を伸ばした。
こうしないと届かないというのがすごく屈辱的なのだが、青峰くんだって少し身体を曲げてくれるから僕はそれで許してあげようと思う。
今度は自分からキスをして彼を煽ってみる。
上目遣いになってしまうのは、仕方ないことだろう。
唸り声をあげた、青峰くんに大丈夫ですか?なんて問いかけるのは愚門だろうか。

「わっ…」
「後悔してもしらねぇからな」

いきなり抱きあげられて向かうは、寝室。
後悔、なんてものはもうもっと前にしたので、これ以上はすることがないと青峰くんの耳たぶにキスを送った。





早急に服を脱ぎ合って、久しぶりに見る裸に思わず赤面してしまう。
相変わらず引き締まった体に、暑い夏が続くためかまた少し黒くなったように感じる。

「お前、相変わらず白いな」
「それ、黒いに変えてそっくり君にお返しします」

お互い腕をみせあって黒と白の差がすごいことに笑って、目が合うと自然に唇が触れた。
相変わらず、と言うほど離れていたつもりはないがそれぐらい、長い期間のように思えた。
三年の夏は祝えなかった、だから今年はすごいものをと思っていたらすっかり時間を忘れてしまったのだ。
そして、ついでに言えばこの誕生日プレゼントだってさっき考えついたようなもの。
君が本当に喜んでくれてよかったと、今まさに安堵しているところです。
何度も啄むキスをしながら、行き当たりばったりな自分の行動に笑えてきて口角があがった。

「なんだ、余裕だな」
「ちが…そうじゃ」

青峰くんの一言にしまったと、思ったがもう遅い。
僕の胸に顔を寄せた青峰くんは突起に舌を這わせる。
チロチロと舐める仕草が赤子のように思えるが、そんなことはない。
時々加えられるチリッとした痛みに身体を震わせてそれに耐える。
下手をしたらそのままイってしまいそうだった。

「あ、ふ……あお」
「こっちも、触ってほしそうにしてる」
「…だめ、だめで…あっぁ」

もう反応している自身に手をかけられて僕は背筋を逸らした。
思わず漏れてしまった声は、口を塞ぐことで何とかあまり出ずに済んだ。

「なにしてんだよ」
「ちょ、やめて…くださ」
「声、きかせろ」

耳元で囁かれて身体に力が入らなくなってくる。
ぐずぐずにされて、どうしようもなくなって恥ずかしくて視線を彷徨わせれば宥めるようにキスをされた。

「なにも、しねぇから…ちょっと落ち着け」
「だって、きみが…」
「あー、すまん…なんかテツの身体きもちーんだ」

暴走しそうになるのは許してくれと言われて、なんでそんなに我慢するのかと怯えた分際で感じた。
だって、僕は僕をあげるって言ったのに…。

「なら、触ってください…もっと、青峰くんのすきに…」
「だから、お前ほんっとそういうところばっかかっこよくなりやがって」

チッと舌打ちをして足を開かれ、奥へと指が入りこんでくる。
その間に、新しいローションをとりだした青峰くんは奥へと塗りつける。
入る準備をされて、どうしようもなく感じてくる身体に、覚えているようで安心した。
こんなときに身体を受け入れられないのでは困る。
突発的な行動だとは思うがこれぐらいしないと青峰くんは、なんだかんだ自分を抑え込んでしまいそうだったから。
たっぷりとローションが塗られ、指の動きも滑らかになったころようやく自身が宛がわれた。

「あっ、青峰くん…すきです、すき」
「テツ…テツ…」

ゆっくりと侵入してくるモノを柔らかく包みこんだ。
耳元に聞こえる甘い声に感極まって涙が溢れた。
ようやくだ…ようやく、噛みあった。
いや、根本では噛み合ってないとは思うけれど…でも、僕の想いと青峰くんの想いが重なった気がする。
中を擦る熱いものが愛しくて、離さないと締めつけたら目の前の顔は少し歪んで汗が降り注いだ。
痛いくらいキスをして、舌がしびれるほど絡ませる。
もう、離れたくないと背中に腕を回した。
ぴったりと重なる心臓が、同じ速さで脈打った。

「泣くな、ぶさいくになんぞ」
「そ、なの…しりませ…ぁっ…う」

涙を拭う手はどこまでも優しくて、ますます溢れてしまう。
君が幸せな日に、僕も幸せになれたら…と思ってしまった。
この日を選んだのは、必然じゃなくて…ずっと悩んでいたのは、これでいいのかと思っていたからで。
僕は、ずっと君のことばかりだ。


二人で上りつめて、ゆったりとした時間を過ごした。
ベッドでの話題はもっぱら火神くんの話題ばかりだったけれど、青峰くんの顔が輝くようになったのを見れるのが嬉しくて…きっと明日は夏休みの宿題が終わってないとかでばたばたするんだろうなと三年前の夏を思い出した。
そのためのお泊まりを計画しての行動だったのだからなんら問題はない。
黄瀬くんあたりには甘やかし過ぎだといわれてしまいそうだけれど、青峰くんの笑顔が見れれば僕は嬉しいのだ。


ハッピーバースデー、青峰くん。





END



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