キスして2
良い場所に指を当てさせたくて無造作に腰を回すように揺すっていると不意に玲央の指先が中のしこりをぐりっと抉った。その瞬間目の前にチカチカと火花が散ったような感覚に見舞われたものの、玲央の指はすぐに逃げてしまい違う場所を擦りにかかってくる。
「やだ、やだやだやだやだっ。ちがう、そこじゃない」
「なぁに、小太郎」
先ほど指先が前立腺を抉った拍子に俺自身からは先走りが溢れて竿を伝っている。分かっていて意地悪を仕掛けてくるような口ぶりと表情に半ば泣きそうになりながら俺は玲央の手首を掴んだ。
「もっとぉ…」
「言ってみなさいよ」
「さっきの、とこ…擦って、きもちよくして」
自分でそこに当たるように指先を調節すると、そんなによかった?と耳に吹き込まれる。
俺はコクコクと頷いて、中を必死に締めつけた。
さっき感じた圧倒的な快感をもう一度味わいたい。ちょうだいと見つめて、玲央の唇を舐めた。
「指で良いの?」
「アッ…ふあぁっ、あう…きもちい、ゆび…だけ?」
「これ、欲しくない?」
思考能力が落ちていく俺には玲央のいった意味がわからず首を傾げる。
そうして、腰を揺らして押し付けられたものに俺はビクッと身体を震わせた。
下を覗き込めば、さっきから擦り合わされている自身があった。
俺はそこから目を反らせなくなって、それで中を突き上げられるのを想像した途端中を締めつけてしまったらしくふふっと笑う声が聞こえる。
「どうなの?小太郎」
「ん、ひ…ほしい」
玲央の服を下からたくしあげて胸に舌を這わせた。
近くにあった乳首にちろちろと唾液まみれにして見ると玲央も感じた顔でくしゃりと髪を撫でられる。
「あんた、そこ好きね」
「ん、れおねぇもすきだよね」
私は感じてないわよ、なんて言って俺の腰を撫でて上げろと指示してくる。
いつもは玲央がやってくれるのに、何でだと思ったら手首を繋いでいるんだからそうかと忘れかけていた状況を思い出した。
でも、自分から乗るのは結構というかすごく恥ずかしい。
頭のどこかに追いやっていた羞恥が蘇ってきて視線を彷徨わせる。
「なによ、いつまでぐずぐずしてるつもり?」
「自分でしないと、だめ?」
「あんたがこれしたんでしょーが」
「で、でも…これ、はいんないよ」
「いつも入れてるんだから入るわよ。四本入れて大丈夫だったでしょ」
もう一回いれてもいいんだけど、と脅されて慌てて腰を上げる。
ひたりと先端が秘部に触れてきてピクッと身体を震わせた。
「ほら、はやくしなさいよ」
「わかったから、まってって」
急かす玲央に俺は焦って腰を落とすが、滑って空振り。
何回か繰り返してしまい、そのうち痺れを切らしたように舌打ちが聞こえた。
「もたもたいないで」
「アッ、れおねぇ…ちょ、あぁっ」
「待ったは、なし」
ちゅっと顎にキスをされたかと思ったら下から突き上げてきて秘部が先端を含んだ。
玲央の手がもっとくっつけと抱きしめて肩を下に押し込んでくる。
俺の足は簡単に力が抜けて、一気にそれは入りこんできた。
「ひっ…―――ふ、やぁっ!!」
「…きつ」
衝撃に目を見張った瞬間、触れられてもいないのに勃ち上がり切った自身から勢いよくびゅくっと白濁を吐き出してしまう。達してしまった反動で身体が勝手に痙攣して体制を崩しそうになり俺は玲央にしがみついた。
心の準備もないまま、奥へといれられてそれがいつもより深く入りこんでしまっている。
その衝撃をやり過ごすのには時間がかかるから、必死に呼吸を整えていたのに玲央は構わず身体を揺すってきた。
「やっやっ…だめ、だってばぁ…イったばっか」
「イったばっかが、なによ…こっちは、さっきからお預け食らってんのよ?」
だめ、だめ、とうわ言のように口が動いて、玲央はそれすらも楽しむように腰を突き上げた。
次第に力が入らなくなって、玲央にすり寄る。
奥を掻きまわされるのが気持ち良くなってきて、俺は背を反らせた。
途端、玲央は俺の乳首を舐めてきて驚きに目を見開いた。
ちゅうっと音を立てて乳首を吸われびくんと腰が跳ねる。そのまま押しつぶすかのようにねぶられて玲央を抱きしめる手に自然と力が籠った。
「ひっ、んっ…あっ!舐めちゃ、やっ」
「んっ、…ふ。そんな風には見えないわよ?自分から押しつけているくせに」
真下からガクガクと前立腺を抉られると同時に胸も弄られて、つま先にピンと力が籠る。
「いっや…やぁ、あっあぁっ…だめぇ、いくぅ」
乳首でイくなんてプライドが許さないのに、舌が丁度よく擦ってきてカリッと先端に歯が当たった。
同時に下からの刺激に感じてくるが、もう一歩足りない。
自分から動こうにも足にはもう力が入らないし…。
俺は玲央にキスをして、必死に舌を吸った。
「ん、ちゅ…ね、もっと」
「もっとどうしたいの?」
「うご、いて…こすって」
自分じゃ無理だと泣きそうになれば、できないわよときっぱり切り捨てられる。
情けなく顔をゆがませると、だから、と強い口調で俺の目の前に腕が現れた。
「手錠、外さないとできないわよ?」
「あ…ぅう…」
「鍵持ってんでしょ、さっさとしなさい。イきたいんでしょ?私も、小太郎の中に出したい…早く、啜って」
耳に舌が入りこんできて、ぴちゃりと水音を響かせながら注がれる甘美な誘惑に俺は自分の脱いだ服に手を伸ばした。
「絞り取って」と言わんばかりの甘い言葉に高鳴る鼓動を抑えきれないままポケットから鍵を取り出して、震える指先で鍵を鍵穴に差して回す。
カチカチと外れた手が俺の腰を掴んでめちゃくちゃに突き上げ出した。
「やぁあっ、あーっ…いく、いくっ…れお」
「こたろう、溢さず飲んで」
ぎゅっとしがみついて最奥を突き上げられて白濁を玲央と自分の腹に吐き出し、中を締めつけた拍子に暖かいものが注がれた。
それにも感じて、残滓がびゅくっと吐き出され熱い…と腹をさすったのは良いがそのまま意識が遠くなっていく。
ヤバいと思った時には、もう目が開かなくて小太郎と焦った様子で名前を呼ばれるのに答えるために動かそうとした唇は言葉にならない喘ぎを溢し、俺の意識は途切れていった。
******
深い眠りの淵にいたというのに、もぞりと隣の人が動いてそこにあった体温はなくなってしまった。
目をぎゅっと閉じて片手をぱたぱたと動かしてその人を探したものの俺の右手に触れるのは温もりが残ったシーツだけだ。
「ん、…れおねぇ?」
ぼんやりと目を覚ますと探し人はクローゼットの前に立っていた。自分の喉をついて出た言葉は随分とかすれていて、片手を喉にあてがって、んんっと咳払いをするとじんわりと痛みが喉に広がって顔をしかめてしまう。
「ひっどい声ね」
「うぇえええ、い゛っ!!たたたー…」
いがらっぽい喉を何度も鳴らしながら上体を起こした瞬間頭に酷い痛みが走った。思わず両手で頭を抱えてベッドに戻り悶絶していると深い溜め息が聞こえた。
そのままどこかに行った後再び部屋に足音が聞こえたと思ったら目の前にグラスと錠剤を差し出され、俺は涙目のまま玲央を見上げた。
「どれだけ飲まされたかしらないけど、自分の許容量くらい分かってなさいよ。いきなり来たかと思ったら手錠掛けられるし、今日は二日酔いで本当こっちはいい迷惑ったらないわ」
顔をしかめて片手で頭を押さえたままコップを受け取れば玲央は錠剤を布団の上に置いて、ベッド脇に腰掛けて足を組んだ。
「ありがと、レオ姉。昨日はー、うん、ちょっとなんかテンション上がっちゃって、…ハハ」
錠剤を口に含んで水を飲む。
ひんやりと冷えた飲料水が酒をのんだ事と喘がされたことで枯れた喉にひんやりと行き渡って心地いい。
頭がぼわぼわするな、だなんて思いながらグラスを両手に持ったまま目を細めていると玲央はこちらを向いて心底呆れた表情を向けて来た。
「どうせ誘うなら酒が入ってない時にしなさいよ。イくだけイッたら勝手に潰れて。一回しかできなかったじゃないの」
「うっ、そんな事言ったってレオ姉なんか最初全然乗り気じゃなかったくせに」
人差し指で眉間を押されてゴインと頭が響いた。
玲央が言っている事は事実で、二回目に達した後の記憶は俺には無かった。中で玲央の熱が弾けた感覚はおぼろげながらあるものの、今体は一切汚れていない。
恐らく俺が伸びた後、舌打ちでもこぼしながら体を綺麗にしてくれたのだろう。
「突然の夜中の訪問で叩き起こした揚句、突然セックスを仕掛けて、手錠をはめたあげく、勝手に伸びるだなんていい身分ね」
「うっ、ぁう、…ううう」
言葉の切れ切れで人差し指でコツコツと頭をつつかれて、その度に頭にはゴイン、ガインと頭痛が走る。
玲央が言っている事は全て事実で反論のしようがない。
いっそ昨日の記憶がないくらいに酔い潰れてしまえばよかったものの、記憶は割と鮮明にあったりするからこそ自分の醜態がたまったものではなかったりする。
「……手錠は途中で取ったじゃん」
グラスを置いて両手で自分の額をガードしながら上目づかいに恨めしそうな声を上げれば玲央は一瞬真顔になった後にっこりと深い笑みを浮かべた。
「そういう問題じゃないだろ」
「いっっ!!」
ピン!と鼻にデコピンをくらって、額を押さえていたものの、俺は鼻を両手で押さえて身を丸めた。もの凄く痛いわけではないが地味に痛くてじんわりと涙がにじんでしまう。
「これに懲りたら飲み会なんて最初から断ることね。それか、」
「オレンジジュースでも飲んでろ、でしょ?」
「あら、言うじゃない」
ひくりと玲央の口許が引きつって、俺はグラスを安全な場所に置いてからベットに横になって近くに置かれている玲央の手に頬擦りする。
ひくりと指先が跳ねたもののしつこく頬を寄せ続けていると前髪を掻き上げるようにしてくしゃりと頭を撫でられた。
「だってレオ姉、俺が酔っぱらってんの誰かに見られるの嫌なんでしょ?自分から行ってくれば、って言った癖に素直じゃねーの。それってふてくされてやきもちやいてたってことだろ」
大きなてのひらにぐいぐいと鼻を押し当てているとぺちんと額を叩かれてしまったものの、大して痛くはなく俺は玲央の手を頬にあてがってその瞳を見つめた。
「昨日も思ったけれど、妬かれている自信があるだなんて大したものね」
「まぁね!だって俺レオ姉に愛されてるし」
まだ少し頭痛はしたもののニッとはにかんで答えると玲央は頬をひくつかせて、「あっそう」と答えた。
「今度からはレオ姉の前以外じゃ飲まないし、もし飲み会誘われたらオレンジジュースにするから、だからさ、キスして」
「昼までに二日酔いを直すこと。それと今夜は寝かさないわよ」
手を掴んで緩く引き寄せながら昨晩と同じねだり方をすると玲央はベッドに方膝を乗せて顔をぐっと寄せてきた。
「はーい、……んっ」
機嫌よく答えれば目の前の玲央がふっと笑ってそっと唇が重ねられた。
昨日は自分から仕掛けておいたくせに自分から潰れた身だ。とりあえずこの頭痛を治すところから始めよう。
END