キスして
※烏煉とくないのリレー小説。
色分けはしてません。
ぐーるぐる。
ぐーるぐる。
地球が回る。
まぁ、地球は回らないと死んじゃうんだし回ってなきゃ困るんだけど。
あっちへよろよろ、こっちへよろよろ。
誰もいない路上をふらふらと歩きながら空を見上げれば今日はなんだか月が凄くぴかぴかしていた。
街灯だってふにゃふにゃだ。
「ふ、はははは!あでっ!!――い゛っづ!!って〜…」
なんだかとてもいい気分で笑いながら歩いているとゴインと電柱に頭を強かにぶつけてしまった。
目の前に星が散ったかと思った瞬間頭に走った痛みに若干涙を滲ませながら俺はその場に蹲って額を押さえた。
せっかくいい気分だったというのに頭をぶつけたせいで台無しだ。暫く身動き一つ取れずにそうしているとズキズキと鈍い痛みは走るものの、頭をぶつけた直後に比べたら幾分か痛みは和らいでいて俺はむくりと立ち上がってぶつけた痛みで滲んだ涙を片腕で拭った。
「あーいたーいなー」
誰に言うわけでもなく、まだ寒すぎる春の深夜をふらふらと、自分のアパートの方向とは真逆の方向に進む。
やがて到着したのは黄色の外壁の三階建てのアパートだ。来慣れたアパートの前に立って三階のある部屋を見上げる。
窓には青いカーテンが引かれていて室内がどうなっているのかを外から確認する事は出来ないが、カーテンの隙間から人工的な灯りは漏れておらず、家主が眠りについているだろうと言う事が窺われる。
この間まで五月上旬並みの暖かさだったというのに、どういう気象状況なのかまた真冬並みの寒さに逆戻りしてしまった。店を出た時には温かかった体も薄着でここまでふらふらと歩いてきたせいで完全に冷え切ってしまっている。
「うー、寒ぃ」
自分の両腕で己の体を抱きしめてぶるりと身震いをする。ずっと鼻水を啜って腕をさすってからアパートの階段を軽快な足取りで駆けあがる。一階の階段をトントンとリズムよく駆けあがって三階に上がる為にUターンする。
「うわっ…とととっ」
一段、階段に足をかけるとそのまま後ろにひっくり返ってしまいそうになって慌てて手すりを掴む。電柱にぶち当るだけならまだしも階段から落っこちでもしたら大怪我になりかねない。さすがに焦って目を大きく見開いたまま自分の胸に手を押し当てた。バクバクと心臓が脈打っている。とりあえず踏み外さなくて良かった。もし、それでバスケができなくなってしまったらそれほど人生つまらないものはない。ふう、と安堵の息を吐いて二の舞を踏まないように今度は手すりを掴んでゆっくりと階段を上がる。
二個目の階段を上がってすぐの部屋が俺が会いたい人物の部屋だ。
表札に見慣れた綺麗な手書きの文字で書いてある「実渕」という文字を見ただけでへらりと表情が崩れてしまう。俺は上着の袖から少し出た僅かに悴んだ両手をさすさすと擦り合わせてからインターフォンを一回押す。俺の部屋と似たり寄ったりな音が響いてうきうきと体を揺らしながらドアが開くのを待ったものの、どれだけ待ってもドアは開かない。
試しにドアノブを握ってガチャガチャと回してみるものの案の定鍵がかかっていてドアが開く事はなかった。
「むーっ」
この鉄の扉一枚を隔てたすぐ向こう側には玲央がいるというのに、鍵が閉まっているせいで中に入る事ができない。思い通りにならずに地団駄を踏んでから連続してインターフォンを押しまくる。数秒間ブスブスと人差し指で押し続けていると中からどこか怒り気味な足音が近づいてきた。それだけで背筋はシャキッと伸びてしまう。ガチャリと解錠される音がしてバンと勢いよくドアが開いた。
「ちょっともう、何時だと思ってるの?!」
「ふへへ、レオ姉〜」
ドアの向こうの会いたかった人物は明らかに怒っているもののそんなの気にもせずにばしっと両手で抱きついて肩口に顔を埋めてすりすりと鼻を擦り寄せる。温かな体温が心地よくてつい目が細くなった。
「なっ…!小太郎?!あんたこんな時間に一体どうしたのよ」
「んー?レオ姉に会いたくなったから来たっ、およ?」
求めていた穏やかな体温がすぐそこにあって、ヘラヘラと笑いながら答えると、まるで猫をつまむように服の首後ろを掴まれてべりっと体から引き離されてしまった。
「レオ姉、れーおーねーえー」
「深夜なんだから少しは静かにしたらどうなの?くさっ…!ちょっと、酔っ払いに用事は無いわよ」
手を伸ばして肩をぽふぽふと触っていると、俺の酒が鼻を掠めたのか玲央は整った顔を不愉快そうにくしゃりと歪めて空いている反対の手で自分の鼻を抓んだ。
「えっ、俺そんなにくさい?」
「くさいも何も歩いているだけで職質されたら駐在所に連れて行かれるレベルじゃないの」
「うっそだー、そこまでじゃないと思うんだけど」
眉間に皺を寄せた玲央にキョトンとしながら返して両手で鼻を囲って『はーっ』と息を吐き出してみるものの自分ではどうにも分からない。うーんと唸りながら首を傾げていると目の前の玲央から深い溜め息が零れた。
「酒の匂いなんて自分じゃ分からないものよ。あんたのアパートそう離れてないんだからもう帰りなさい」
酒が回った頭では言われた言葉をなかなか理解できなくて一瞬動きが止まってしまう。次いで脳が玲央の言葉を理解して俺は頭をぶんぶんと左右に振った。
「やだ!やだやだやだやだ!!だってさぁ、せっかくレオ姉が夕飯食べに行きましょって誘ってくれたのに、俺今日新歓の飲み会だしさぁ。すっげーレオ姉に会いたかったんだって」
「ちょっ…、小太郎っ…たた」
無理やり手を首裏から外させて勢いよく抱きつくと、そう身長差がないせいで玲央はバランスを崩して土間から一段上がった廊下に後ろ向きに転んだ。その上からのしかかるような形で抱きついていると放っておかれたドアが背後でバタン!と音を立てて閉まる。
強かに腰をぶつけてしまったのか痛そうな声が玲央から上がったものの、それ以上に離れたくはなくて玲央に回した二の腕に一層力を込めた。
「そんなに言うくらいなら新歓の飲み会は断ればよかったじゃないの」
「無理だったんだって。先輩達には来なかったら覚悟しとけよとか言われるしさぁ。レオ姉との約束の方が最初だったら俺絶対レオ姉を優先したのに」
ぶっそりとした表情のまま玲央の胸元に頭をぐいぐいと押しつけていると頭に五指をくしゃりと通された。それだけでなんだか嬉しくてすんすんと鼻を鳴らして匂いを嗅ぐ。玲央のにおいだ。
「飲んだ割に楽しくなかったのね」
「んーん。それなりに楽しかったけど、レオ姉に会いたかった気持ちの方が大きかったんだって」
どこか諭すような口調にしっかりと反論したものの、どこか俺をたしなめるような口調に体を離されてしまうと思って、玲央に回した腕に力を込める。子供がするように嫌々と首を横に振れば玲央から「ああ、もう」と声が上がった。
「来た理由は分かったからもう自分のアパートに帰ったらどうなの」
「やだ。」
「そんなこと言われたって酔っ払いに用事は無いわよ」
若干ふてくされながら答えると玲央から完全に呆れ返った声が上がった。肩に手を置かれていよいよ離されそうになってしまい、羽交い締めという言葉がふさわしいくらい玲央に抱き着く。
「俺!さっき階段踏み外しそうになったんだけど。ここに来る途中だって電柱に頭ぶつけたし。いいの?俺一人で帰したら絶対どこかで行き倒れる自信あるんだけど。そしたら、私が小太郎を一人で帰らせたばっかりに…!ってレオ姉は俺の葬式で後悔することになるんだ」
首筋に顔を埋めたままぶつぶつと一人ごちるように告げると玲央は参ったと言わんばかりに天井を仰ぎ見た。俺が来て執拗にインターフォンを押されるまで気持ち良く眠っていたのだろう。室内は暗いままで抱きついているせいで玲央の表情までもは分からないが高校三年間を一緒に送ったせいでだいたいどんな表情をしているのかは何となく分かる。
多分凄く面倒だなって顔をしている。
「葬式って…仮にもしそうなったとしても、小太郎の自業自得じゃないの」
「えっ、なにそれ!例えば俺がふらふら歩いててダンプに轢かれて死んでも線香の一つもあげてくんないの?!」
「嫌よ、面倒くさい」
「酷い!もう、なんでレオ姉はそんなことしかいってくんないのっ。俺のこと構ってよ、甘やかしてよぉ」
駄々をこねるとますます深いため息が聞こえた。
それでも、中にいれてくれない様子に俺はとうとう痺れを切らした。
靴を脱いで、強引に中へと足を踏み入れたのだ。
「ばかっ、なにしてんのよ」
「こうなったら、レオ姉と一緒に寝ないとヤダ」
「何がヤダなのよ。こら、待ちなさい」
バタバタと夜にもかかわらず追いかけてくる手をすりぬけて寝室のドアを開ける。
そこは玲央の匂いに満ちていて、なんだか抱きしめられたような気分になった。
俺は勢いよくベッドにダイブすると、小太郎と怒った声が背中にかかった。
「っ…レオ姉ぇ」
「甘えた声出しても駄目なものはダメ」
「そんなこと言うなら、俺が食っちゃうよ」
ムッと俺は唇を尖らせると身体を起こしベッドの近くにきた玲央の手を掴むとそのまま引き寄せた。
油断した玲央は当然のように俺の方に倒れてきて、勢いのまま口付ける。
歯がガチリと音を鳴らしたけれど、構わず玲央の唇を舐めてちょうだいと催促するように唇の割れ目をなぞる。
「ん…」
「は、んむ…」
玲央の舌が入りこんできて吸われると身体に熱が灯る。
離れようとするのを肩を掴んで引き留め、一瞬空気が揺らぐ。
それに無視をして俺は下肢へと手を滑らせた。
「ちょっ…」
「やだ、したい…れおねえ」
「〜っ…あんた、飲み会いったじゃない」
「行ったけどっ…れおねぇがいい」
ぼうっとしてくる頭の中で、増えていくのは玲央に会いたいという気持ちばかりだった。
飲んでいくうちに玲央のことばかりで、つい口から名前を出してしまっていたかもしれない。
それほどに、玲央のことが気になったし会いたかったし…だから、ここにきたとき追い返されそうになった時は一瞬泣きそうになった。
アルコールを摂取しているから尚更涙腺は壊れやすくなっていて、甘えた声になってしまうのも仕方ないと思う。
駄々をこねるように玲央の肩に鼻をくっつけた。
匂いが身体に入ってきて感情が高ぶってくる。指先でそこを押し揉めば硬さが押し返してくる。
「勃ってきた」
「…こたろう」
「いーじゃん、ね…れおねぇ、きすして」
玲央の肩を押して、俺が上に乗る。足を跨いでだんだんと硬くなってきているそこに顔を伏せて、中から自身を取り出した。
やめろと言ってくるけれど、本気じゃない上に俺がなにするか見てる。だから、このまましちゃってもいいよね?
俺は口に唾液を溜めると頂きますとパクリと咥えた。
「あんた、ちょっとねぇ」
窘めるような声が上がって俺の頭にくしゃりと手が差し込まれる。ちらりと上目遣いで玲央を見上げると、どこか困りがちな色を湛える瞳と視線が交錯した。瞳をかち合わせたまま見せつけるように根元から先端に向かってねっとりと舐め上げ、伏せ目がちに先端にちゅうっとわざと音を立てて吸いつくと玲央の片足がビクリと跳ねて玲央自身が更に硬さを増した。
「ふっ…そんな事言って、れおねぇだって実はノリノリじゃん。んっ…ふ、ほらかたくなってきた」
「――はっ。小太郎、いい加減にしないと怒るわよ。第一キスするんじゃなかったの?」
言葉に耳を傾けないまま、はむっと甘く歯を立てて先端の穴に舌先に力を入れてグリグリと抉ると僅かに苦いものが口腔に広がってくる。
半勃ちぎみだった所からしっかりと勃起してくれた事が満足で、ふふふと笑んで自分の唇を一舐めしてから喉奥まで熱く猛ったものを迎え入れた。頭をゆっくりと上下させながら玲央自身に舌を絡ませてやれば、玲央から短い声が上がる。感じてくれているのが嬉しくて額をぐいぐいと押しのけられてもそれ以上に玲央自身にむしゃぶりつけば頑として譲らない俺の態度に段々苛々してきたのか口調が先ほどよりも尖ったものに変わった。
普段の俺ならここで引き下がってしまうかもしれないが、今日は違う。とにかく玲央が欲しくて欲しくてたまらない。
窘められた言葉にじんわりと涙が滲んで俺はずっと鼻を啜った。
玲央自身は俺の口淫に反応しているというのに、視線を向けた玲央の目はきつく咎めるような色を醸し出している。
それがなんだか俺ばかりが好きみたいで悲しい。
(出掛けようって言ってくれて嬉しかったのに、先約のせいで行けなくて悲しんでるのも俺だけなのかよ)
ムカムカするやらなんだか悲しくなってくるやらで俺は玲央自身から口を離して腕で口の周りについた粘液を拭った。
額に宛がわれている手を退けさせて、馬乗りになったままの姿勢で玲央の手のひらを伏せ目がちに舐め上げる。指の付け根をそっと啄んでそのまま舌を這わせて爪にカリッと歯を立てて、片手を玲央自身に滑らせる。
片手で玲央自身を緩く扱きあげていると案の定俺の手を止めるべく手首を掴まれてしまった。
「レオ姉だってこんなになってるのになんで分かってくんないの。いいよ、もう一人でするから」
「一人で、ってあんた何する気よ。第一酒弱いんだから寝なさっ、んぅっ」
ぶすくれたまま告げて玲央の言葉を遮るように唇を重ねる。ぐいぐいと唇を押しつけたまま僅かな隙を見計らってポケットから、あるものを取りだす。
素早く玲央の両手を掴んでカシャン、カシャンと小さな金属音を立てて施錠をしてしまう。
「―――なっ、ちょっとこれどうしたのよ?!」
頭を勢いよく後ろに引かれて唇から逃げられてしまう。それが少しつまらなくて唇を尖らせたものの、自分の両手に取りつけられた金属の手錠にギョッとしている玲央は悪くなくてむふふと満足げな笑い声が漏れてしまう。
手錠を見て、俺を見て、また手錠を見て。そんな玲央に身を乗り出してにまにまと笑いながらぐっと顔を近づける。
「飲み会で当たったんだー。レオ姉ノリ気じゃないみたいだし、おれがぜんぶするからいいよ」
「全部って…あんた、自分で中に指も入れられない癖によく言うわよ」
「ホントに、自分でできないと思ってたの?」
にやりと笑って驚いた顔をする玲央にもう一度、今度はちゅっとかわいらしい音を立ててキスをした。
自分でできないと言っていたのは玲央の前だけで、離れて暮らしている分待ちきれず自分でしたことは何度かあった。
自身の刺激よりも中で感じることが哀しくなるから言われなかっただけで…。
(だって、そんなこといったらレオ姉絶対からかってくるんだもん)
俺は俺で恥ずかしいことなのに、それで笑われたら立ち直れなくなると思って口にすることはできなかった。
けれど、アルコールの効果で俺の口は軽くなっているらしい。
思ったことをそのまま口にしてしまって、やばいなと感じたのは一瞬。
玲央の動きを封じて、驚いた顔を見たらますます止まらなくなってくる。
腕をクロスさせて服を脱ぎ、同じくズボンと下着も脱いでしまいベッド脇にぱさりと落として玲央の上に跨り直した。
「ね、みてて」
「小太郎…」
ベッドヘッドからローションに手を伸ばして取り、目の前で自分の掌に出す。
いちごの匂いがして、この前やった時のことを思い出す。
このローションは玲央が好みで、俺も気に入っているから使い続けている代物だ。
ネバネバしすぎず、乾きにくいそれが俺にはぴったりで、匂いは玲央が選んだもの。
それを温めて自分で後ろに塗っていく。
いつもなら、足を開いて前から指をいれていたがこの体勢でそれをやるのは気が引ける。
後ろ手でやるのもやりにくかったが、背に腹は代えられない。
「ん…は…」
「本気?」
「嘘ついてるように見える?」
玲央は俺のことを見てきていて、一方的に見られているのは恥ずかしく肩に顔を埋めた。
額を押し付けて玲央の視線から逃げながら一本をいれれるようになると二本目をいれる。
二本合わせてかき回したら、気持ち良くて足から力が抜けそうになった。
前かがみになった拍子に俺の自身と玲央のそれが触れあって息を乱す。
「れおねぇ、ん…ねばねばしてる」
「チッ…ったく黙って見てれば好き勝手して」
「あは、レオ姉がキレてるの好きだよ…?」
時々垣間見せる男くさいところが、俺は秘かに好きだった。
首筋や耳たぶを舐めて楽しみながら指を三本入れるころには自分から自身に擦りつけていた。
足には力が入らずぺたりと座りこんで、指も満足に動かせていない。
中はさっきから食むように蠢動していて、玲央を欲しがっている。
「ほしい、よ…ねぇ、れおね…」
「自分から手錠かけたくせに、ホント勝手」
玲央の腕が俺の背中に回ってきて俺は易々と胸に抱き寄せられていた。
ますます身体が密着して熱い吐息を吐きだすと、後ろに回った玲央の手が俺の手に触れる。
そうして、なぞるように動いたと思ったら三本咥えているところに玲央の指が入ってきた。
「わ、ちょっ…れ、れおっ」
「なぁに?こうしたかったんじゃないの?」
「ひっ…そ、うだけど四本はきっ…つ、」
熱い吐息と共に耳元で囁かれ、びくりと肩を竦めると内部に侵入してきた長い指がぐるりと中を掻き回しにかかってきた。ローションで濡れそぼったそこからはぐちゅぐちゅと卑猥な音が聞こえてきて耳からも侵されているみたいだ。
玲央の指に巻き込まれて奥に埋めたまま動く事を止めていた俺の指も俺の意思に反して動かされてしまう。
何度も抱かれた事がある体は玲央を欲しがって、指が内壁を擦るだけでゾクゾクとしたものが込み上げてきて完全に勃ちあがり切った自身はビクビクと震え、中を押し広げては奥を探ってくる玲央の手に合わせて緩く腰が揺れる。
「普段から馬鹿だとは思っていたけど、まさかここまで馬鹿だっただなんて」
「んっ、んんっ、なにっ…が、」
深夜にベッドの上には二人きり。
そしてこんな状態だというのに馬鹿だと連発されて気を悪くしない奴がいたら見て見たい。
ぶすくれながら玲央をギッと睨むと薄くて形の良い唇が意地悪く弓なりに弧を描いた。
「せっかく手錠をつけるなら身動き取れないように体の後ろで手錠をかけるのが普通でしょ。それがなんの捻りもなく体の前面で。これじゃ普段と大して変わらないわよ。ほんと、馬鹿な子」
言われている言葉は酷いものなのに、『馬鹿な子』と言った玲央の口調はどこか優しいもので釈然としないものが込み上げてきてぷうっと頬を膨らますと、玲央は中から指を引き抜いて俺の首裏に手を回してきた。それと同時に中に埋めていた俺の指も抜けてしまい、質量を失った内部は違うものを求めるかのように蠢いた。
「ばかばかって、そんなにばかって言わなくてもいいのにっ、わっ!……っふ、」
そのまま勢いよく手前に引き寄せられて声を上げて上体に力を入れたものの玲央の体に上から体を重ねるような形で招かれて下から唇を重ねられた。はむ、と下唇を食まれて軽く引き下げられ、開けろと言わんばかりの合図に唇をそっと開いて重ね直すとすぐに玲央の舌が口腔に滑り込んできた。
「ふっ…う…んっ、んくっ」
待ってましたとばかりに率先して舌を絡ませに行けば、ふっと玲央が小さく笑ったのがわかった。
玲央の手は先ほどまで後ろに回っていた手だ。襟足を長い指がつっと撫でて、汚れるなと酒が回った頭にぼんやりと思ったもののそんな事はどうでもいい。角度を変えて玲央を求めれば首裏で繋がれた玲央の手錠がカシャンと小さく音を立てる。直接金属が肌に当たって皮膚が粟立ったものの、それを超すくらいに玲央の舌は温かい。
ねっとりと絡ませられて、甘く吸われ、それに応えるように角度を変えて唇を押しつけていると首裏に回っていた玲央の手が背骨を伝って下がってきた。
熟れた襞を長い指がそっと押され、きゅうっと軽く収縮してしまう。半ば指に腰を押し付けるようにすれば左右から玲央の指が内壁を割って侵入してくる。
「ふぁっ、あっ…」
緩慢な仕草ながらも自分で挿れた時よりも深く侵入してくる指に唇から逃げて軽く背を反らせば顎をカリッと甘く齧られた。
「――は、ふ。酒くさ」
不愉快そうな声音に下を向くと玲央はその整った顔をどこか機嫌悪そうに歪めていた。その表情がなんだかむくれた子供のようで、ついふはっと小さく吹き出してしまう。
「んっ、ふっ…んー?そりゃ酒飲んできたからね」
「ビール一缶でいい気分になれる奴が飲み会なんて早いのよ」
「むーっ、行けばいいじゃないって言ったのはれおねぇなの、にっ、んんっ」
内壁を探られながらの傍若無人な言葉に言い返せばキッと見据えられた後奥をグリッと強めに抉られた。その反動で玲央の指をきゅうっと締めあげるとねじ込むように三本目の指が中に侵入してきた。
「酔った顔晒して来たんでしょ。お子様はオレンジジュースでも飲んでればいいの」
「あっ、――んっ、ははっ。なにそれ、れおねぇやきもちやいてるみたい」
ふふーと笑いながら顔を覗き込めば整った眉が片方ぴくりと跳ねた。それと同時に中に埋められていた指が激しくばらばらに動き出す。音を立てて中を広げられ抜き差しをされ、中を弄られて気持ちいいのに直結したものには明らかに繋がらなくてそれ以上を求めるように腰が揺れる。
「腰なんか揺すっちゃっていやらしい子」
意地悪く囁かれて違うとばかりに緩く頭を左右に振る。いつもならとっくに一番感じる部分に触れてくれる頃あいだ。絶対に分かっていて玲央はその場所に触れていない。
「だって、れおねぇがイイ場所触ってくんないからっ、あっ、ンンっ、ふ…、んっ――んぁあっ!ひっ…、あっ、……へ?」
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