黒バス夢 | ナノ


▽ 甘やかし癖、甘え癖

重い…
後ろから私にのし掛かるように抱きついている男に舌打ちをするも、無視だ。
私が寮の部屋に入り、部活終わりで一息つこうと思ったら、こいつが入ってきた。
鍵はかけてなかったし、私とこいつはまぁそういう関係だからいつ入ってきたとしたって別に取り立てて何かあると言うわけでもない。
それに、こいつは入ってしっかり鍵をかけていた。
私が珈琲を入れて適当な場所に座れば、これだ。
無言でいたと思っていたら、抱きついたまま離れるようすはない。

「いい加減、口きいたらどうなのよ?」
「…れお」

問いかければ小さな声で返事があった。
名前を呼ばれたからなんだと返すが、無言。
どうしたのかと口を開きかけたとき、そういえば委員会の書類整理がどうのこうのと聞いていたことを思い出す。
だから、最近会えていなかったし、こっちも部活があるからこちらから様子を見に行くことも出来ていなかった。
この様子で、限界がきたのかと推測する。

「疲れたんなら、そういいなさいよ。私はそこまで察しがいいわけじゃないんだからね」

言いながらそっと私を抱きしめて離さない名前の手を握った。
冷たくなった指先に、徹夜を繰り返しているからだと知る。
学生が夜更かしなど宜しくないというのに、加減を知れと時々思う。
いや、知っているからこそ限界までやるのか。
ため息を吐いて、珈琲のマグをテーブルに置くと、後ろの重みを振り切るように立ち上がった。
縋ろうと伸ばしてくる手を取り、口付ける。

「…にがい」
「子供なあんたには、ちょうどいいもの作ってあげるわよ」

くしゃりと焦げ茶の髪を梳いて、少し笑うと牛乳を温める。
牛乳なんてものは、私はいらないのだが名前の為に置いてある。
棚から、緑の袋のココアを取り出してスプーンですくうと、マグにいれる。
お湯で作ってもいいそれを牛乳にするのは名前のこだわりだ。
子供舌だから仕方ない。
ちらりと様子を窺えば膝を抱えて座っている。
毛足の長いラグは相当気に入っているようでソファはいつも綺麗なままだ。

「まったく、少しは自分に甘くなりなさいよ」

独り言のように呟いて、温まってきたそれをそそいだ。
茶色く染まる牛乳にカカオの良い香りが足される。
スプーンで混ぜると、それを持って名前に差し出す。

「はい、飲みなさい」
「ありがと」

両手で受け取りそっと口をつける名前に仕方ないと考え、背後に回ると座って、同じ男なのに書類整理ばかりやってるせいで筋肉はつかないし、適度に食べないせいで肉もついていない自分より小さい身体を抱きしめてやる。

「れお」
「あんたのそれは鳴き声ね」

すりっと嬉しそうにする名前に笑って少し伸びてきた髪を撫でた。
背は征ちゃんと同じぐらいだから十センチほど違うが、疲れた身体はそれだけで小さく見える。
糖分を摂取したからか、暖かくなったからかだんだん血色が戻ってきた。

「れおは大きいな」
「あんたが小さいの、そのうち押しつぶすわよ?」
「ふふっ、それはないって」

からかう言葉も返事をしてくる。
ようやく戻ってきたらしい。
高さがちょうど良い肩に顎を乗せると痛いよ、と言いながらも離れようとしない。
そろそろ、甘やかしても良い頃か。
腹の辺りに腕を回して、引き寄せつつ足を組み替えて胡座をかくと足の上に座らせた。

「重いって」
「いーの、また軽くなってるじゃない。しっかり食べてるの?」
「食べてるよ、記憶ねーけど」
「昼休み、私のとこにきなさいよ」
「え?玲央は葉山たちと食べてるじゃないか」
「あんたがしっかり食べるか見張ってあげるのよ。逃げたら許さないから」
「…はい」

小さく笑う気配がして、名前の心臓がトクトクと早まっていく。
期待されているのを知れば、誘うように白い項にキスをした。

「ひぁっ…ん、冷たい」
「名前が暖めさせてくれなかったんでしょ?」

冷めていっている珈琲のことを言ってやれば、それをとって私に渡してきた。
受け取って、一気に飲み干すと少しだけ暖まる。
名前をぎゅっと抱きしめて、小さく息を吐くとお疲れ様、と言われた。
お疲れ様は自分のくせに、バカな子。

「生徒会も大変でしょ?」
「うーん、玲央達ほどじゃないよ」
「うちは征ちゃんがいるからうまく回ってるわよ」
「俺もそこら辺うまくやれたら良いんだけどな…」

頭が良くて、気が利いて、性格も悪くない。
なんでも気前よく引き受けてしまうところが、名前の欠点だろうか。
付き合いだしたのは、半年ぐらい前だ。
わがままを言わない名前は、私にだけ気を許すことを誓った。
他人の前では欠点なく振る舞う名前は私の前では違う。
だから、こうして甘やかせるのは私だけの特権。

「まぁ、疲れたらちゃんと私のとこにきなさい」
「はぁい」

子供のような返事をしながらココアを飲み干し、向かい合うように体勢を変えてきた。

「玲央、俺さ…よっきゅーふまん」
「元気になったとたんそれかっ」
「いったいっ…さっきまで甘やかしてくれてたのに」

にっこりといたずらっ子のような顔をして言われたのは、なんとも不似合いな一言。
思わず上げた手のひらを受けつつ涙目で頬を膨らます。
かっこいい、と噂される顔はどこへやら、今はニヤリと何かを企み油断できない。

「その性欲塗れた性格どうにかしなさいよっ」
「えー、でもこれが本当の俺だから…どうにもならないよ」

吹っ切れたように言う名前は私の肩を撫で、制服に手をかけている。
ネクタイを解きボタンを外し、見えた素肌に吸い付くのだ。
ホント、私の前では取り繕うことすらしないんだから。

「は…れお、お願い…」
「擦り付けるな」
「だって、もう…むり」

勝手に身体を熱くさせ、腰を揺らす。
思わず反応してしまい、嬉しそうに笑う名前の顔が見えた。
チッと舌打ちすると私はベルトを外し、名前のも同じようにして自身を取り出すと二つを重ねた。
小さく上がる悲鳴のような喘ぎは感じやすい名前のもの。
名前の私より小さい手が上に重なり扱きだす。

「ふ、うぁ…んっ、れお…れお」
「名前、あんたはいつも勝手に…」
「ひっ、先っぽやっ…やぁっ、あっあっ」

グチュグチュと卑猥な音が響いて二人分の手を先走りが濡らしていく。
ビクビクと肩を揺らして感じながら名前は舌を出して顔を上げた。
こちらも舌を出して絡めるとチュウチュウと吸ってきてもっとくれと催促してくる。
手を速めると目を見開き顔が離れ背を反らせる。

「イッ…ぁあっ…ーっ」

先に手に白濁を放った名前は、肩で息をしながら凭れてくる。
私はとりあえず手を拭こうと自身から手を離してティッシュをとったのだが、思わぬ刺激に息を詰めた。

「っ…なにしてんの」
「玲央はまだイってないし、我慢は身体に悪いしね」
「いいってば」
「いーからいーから、出して?玲央の、欲しいよ」

両手で扱きながら耳元で吹き込まれる言葉。
いつもは他人に向けて使われるそれが、いつもより色気を増す。
呑まれそうになるのを唇を噛むことで抑えようとするが、そう簡単にはさせてくれない男だ。
唇を舐めて、キスを強請る目をする。
そうだ、元より甘やかすと決めたのだからここは身を任せた方が良い…という言い訳をした。
唇を重ねて好きにさせながら扱く手に神経を集中させる。
何が楽しくて、一人でイくことになってしまったのか。
大体、名前が早すぎるのだ。
まぁ、自分で感じてもらえていると思うと悪い気もしないのだが。

「はっ、なまえ…」
「れお、いってもいいよ。だして、たくさん…だして」

ちゅっと音をたてた可愛いキスをして、誘うような声を出す。
いやらし過ぎて、頭が煮えそうだ。
息をつめて、見られているのがわかっても耐えることなどできない。
最後の抵抗に、引き寄せて深く口付け喘ぎ声を出すことだけは避けた。
名前の掌が受け止めて、それを徐に自分の口に持っていこうとして私は思わず止めた。

「なにしてんの」
「玲央のほしいって言っただろ」
「それはいらないから」

まったく油断も隙もない、ティッシュをとって拭いてやりながら勿体ないという顔をする。
心臓に悪い。
少し甘やかすとつけあがるんだから、そう思いながらも止められない自分を知る。

「で、機嫌は直ったの?」
「ん…やっぱり玲央の近くが一番いーや」

いそいそと自身をしまって、言ってやればへへっと笑う名前。
甘やかしてやっているんだから、それぐらいいってもらわないと困る。
ぎゅっと抱きついてくる名前を抱きしめ返して、そのうち眠くてぐずりだす前に風呂にいれないと、と頭の隅で考える。

「そろそろ消灯時間よ?」
「玲央、俺が帰らないのわかってて言ってるだろ?」
「言っても帰らないんでしょ」

退いて、と声をかけて名前を置いて風呂の準備をする。
もちろん、入り浸っているので服の心配などしなくても置いてある。
だんだん増えていく名前の私物に、苦笑いが浮かぶ。
あと三カ月もしたら、こっちに住みそうな勢いね。
生徒会長なのでそこら辺は、職権乱用してくるのだろうか。

「名前ならやりかねないわ」

私限定で我儘が発揮される恋人に、呆れつつも嬉しく思っている自分がいてどうしようもない。

「こっちがいい」
「あんたの都合は聞いてないわよ」
「えー、フルーツの香りってヒノキより美味しそう」
「匂いだけよ」

入浴剤にまで口を出す名前をあっちにいってと追いやって暫く考えたのち、最初にいれようとしていたヒノキの湯ではなく、小太郎に面白がって渡されたフルーツの香りの入浴剤をいれたのだった。




END


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