黒バス夢 | ナノ


▽ なにがご所望?



俺はあまり他人の誕生日だとか、気にしたことはない。
軽音部にいるだけで女はわらわらと集まってきたし、その一人一人を気にすることほど面倒なことはないから。
でも、そこに問題が生じた。

その問題とは、今日のことだった。
今日は黒子の誕生日らしい。
それを、バスケ部主将の日向から聞いた。
それが一限目後のことだった。
本人から聞いたわけでもないから気にすることはない…とは思うのだが、仮にも恋人で…そもそも恋人である俺にそれを報告しない黒子もだが…誕生日だと教えられてスルーできるほど冷たくできていない。

「誕生日プレゼントとか…あいつ何が欲しいんだ」

多分、本とかバスケ用品とかだろうなと予想はつく。
だが、本は欲しいものがあると自分で買ってしまうし、バスケ用品に関しては仲のいい火神とかが用意するだろうし…。
となると、俺ができることはなんだ?
黒子とは正反対と言っていい俺。
黒子のことを理解するには少し時間が足りない気がする。

「本人に聞くか…」

少しばかり格好悪い気もするが、あげたものをいらないと言われるよりいいかもしれない。
あいつがほしいものをあげれる、それは一番いいことなんじゃないだろうか。




と言うことで放課後、部活が終わり次第黒子のいるバスケ部へと向かった。
行けば、もう練習は終わっていて部室からおめでとう、と声が響いてきた。

「そっか、あいつらお祝いしてるんだ」

入ろうとして足を止めた。
自分は何もプレゼント用意してないのだから、みんなの時間を取ることはない。
明日にでも聞くことにしよう、と身体の向きを変えたときカタリと音がした。

「あ、順平」
「名前、きたな。伊月こい」
「合点承知っ」
「はっ!?なにすんだよ、俺は帰るんだって」

順平に見つかったと思えばいきなり腕を掴まれる。
振り払おうとしても無理で、呼ばれて俊がきてガムテープで腕を拘束された。
ちょっと冗談じゃないっ

「なんだよ、俺が何したって言うんだよっ」
「まぁまぁ、落ち着け。悪いようにはしねーから」

その笑顔が信用ならねぇんだよっ。
順平の怖いぐらいの笑みに頬が引きつった。
俺の抵抗も虚しく、腕をぐるぐるまきにされてしーっと伊月は人差し指をたてた。

「今日は黒子の誕生日なのはしってるだろ?」
「…まぁ、そこのやつに教えられたからな」
「それを知ってれば上出来だ」
「日向くん、伊月くん何してんのよ。早くしないとバレちゃうじゃない」

場つなぎも限界だと部屋を出てきたリコは言った。
だから、俺は状況が飲み込めてないわけで…。
なんなんだと口を開こうとして一つの可能性に思い当たり嫌な予感を覚えた。

「まさか、お前ら」
「はいはい、四の五のいわず中はいる」

ニヤリと息を合わせたかのような笑いに俺は予感が当たっていることに気づいた。
そして、入る直前に凛之助によって抵抗できない俺の首にご丁寧にリボンを巻き付けてくる。
背中を押されるまま部室に入れば、ケーキを切り分けている火神と目が合い、目的の男を探して部室を見回せばケーキを手に持つ黒子を見つけた。

「先輩…」
「あー、うー」
「ほら、早くっ」
「誕生日おめでとう、黒子」

物凄く不本意そうな顔でいってやった。
なんだこの、プレゼントは俺状態。
プレゼントを考えるのは良いが、俺まで巻き込まないでほしい。
まだ、あいつにプレゼント考えてやれてないのに。
すると、ガムテープが巻かれている手に黒子の手が触れた。

「ありがとう、ございます」
「お、おう」

見上げて少し恥ずかしそうにしながら礼を言われて不覚にも可愛いと思ってしまう。
黒子は男で、かわいいというより、外見に似合わず凛々しい性格をしているのだがこの時ばかりは後輩らしさを見てしまったのだ。

「手、大丈夫ですか?」
「ああ、べたべたしてるだけだしな」
「私たちのプレゼント気に入ってくれたかしら?」
「お前ら何二人の世界作ってんだよ。そういうのはケーキを食ってお持ち帰りされてからしろ」
「俺を物みたいにいうなっ、これじゃあケーキを食えやしねー」

けっと吐き捨てると凛之助が抑えて抑えてとでも言うように宥めてくる。
伊月は火神を手伝ってるようだ。
それにしてもケーキがでかい。なんだか手作りのような気がするのは気のせいか?

「火神が作ったのか?」
「っす。こいつの好み知ってんの俺だからな…です」
「ああ、どうりで」
「僕が食べさせても良いですか?」
「なんでそうなる」

いきなりの申し出にピクリとする。
ここが公衆の面前だってわかってんのか。
見下ろすとスッとガムテープをなぞる。

「これじゃ食べれません」
「いや、持って帰ればいいじゃん」
「プレゼントの管理するのは僕ですよ」

聞き分けねー…こうなったらこいつはやるまで押してくるから性質が悪い。
まっすぐみてくる黒子にそれ以上の抵抗なんてできるはずもなく、俺は受け入れることにした。
周りの雰囲気も少し俺が哀れに思われているようだ。

「じゃあ、食わせてやれ」

火神ぃ…黒子にフォークまで渡しているのを見てしまえばため息しか出ない。
みんなが止めないなら…いいか。
こうなったら覚悟を決めるしかない。

「名前先輩座ってください」
「お前恥ずかしくないの?」
「嬉しいですよ」
「そーですか」

なんで観衆の面前でケーキ食わされなきゃならんのか。
恥ずかしさでいっぱいだったが、みんなは我関せずといった風に装いだしたのでこうなればヤケだ。
近くのベンチに座ると自ら口を開けてみせる。

「先輩このあと本当にいいんですか?」
「いいよ、泊めてくれんなら」
「それは大丈夫です」

ケーキを口に運ばれて咀嚼しながら問いかけに答える。
黒子の部屋に行くのは片手で足りるほどしか行ったことがない。
黒子の家に行くことは、それこそ自分から食われに行くのと同義だからだ。

「食ったら適当に解散な」
「俺は自主練するかな」
「なら、俺も片付けたらすっかな」
「火神くんがするなら僕も…」
「黒子、お前は帰れ。先輩命令な」
「…はい」

順平、俊に続いて火神までとなると黒子が残りたそうにするが順平に止められた。
その間俺が暇になるからだろう。
正直暇だが、黒子がやりたいならやらせてやりたいと思うわけで…。

「やってってもいーぞ、待ってるし」
「なら、お言葉に甘えて」

ふわりと笑うその笑顔は天使のようだ。

「ったく、甘やかしやがって」
「いーだろ、部活は全身全霊をかけるもんだ」

それにあいつらは一年、俺たちよりももっと練習を積まなければいけないはず。
呆れた順平にニッと笑ってやり、ケーキを食べ終えた後一時間だけ、と体育館へ走っていった。

「つーか、このままかよ」
「献上品だからな、よかったな。バック肩掛けで」
「はぁ…俺だってギター弾くんだぞ。腕がどうかなったらどうする」
「そこは問題ない。巻かれるときにちゃんと自分で庇っただろ?」
「そこまで計算済みかよ」
「名前のことだからな」

俊が人のいい顔でそんなことを言った。
まったく、嫌な奴らだ。
まぁ、プレゼント何にしようか迷ってたのもあるからありがたいと言えばそうなのだが…。

「練習みるか」

こうしてても暇なだけだ。
自主練へと出て行く面子をみると熱心な奴らが多いんだなと感心する。
体育館へ行けば火神と連携の練習をしているらしかった。
シュートが入らないと言った黒子。
信じられず、十本勝負をしてみたのだが…勝ってしまった。
こんなやつでもレギュラー扱いかと思ってしまったのだが、パス回しをみて、あいつのミスディレクションを見て、納得した。

「影…か」

光がいてこそ力が発揮できる。
まさにその通りだとは思うが、あんなに頑張っているのだ。
そのうち、あいつにも術が見つかると思う。
そんなことを思いながら見ていると黒子は不思議な体勢からシュートを放った。
しかも、それが見事に入ったのだ。

「順平っ、なんだあれ」
「ああ、お前は知らなかったのか。黒子は自分でシュートも入れれるようになったんだ。まぁ、シュート率は並だけどな」
「すげーな」

近くにいた順平も、一年がいいとこばかりとっていきやがると悪態をついていた。
でも、俺には喜ばしい限りだ。あいっの持ち味がまた一つ増えたのだから。

「んとに、お前ら惚れすぎだ。キモイ」
「差別だぞー」

いいながら奴も俺と同類なのでただ茶化したいだけだと言うのはわかってる。
それに、惚れてるんだから仕方ないだろと口から出そうになった言葉もそっと抑えた。





「あー、楽しかった」
「先輩僕のことみえてました?」
「ちゃんと見えてたって」

自主練をきっちり一時間で切り上げた黒子は俺の荷物を持ち、二人きりで帰路についている。
このあと黒子の家に行くつもりなのだが…。

「いいかげん、手とってくんね?」
「ダメです、せっかくラッピングしてもらったので。開けるのは僕の部屋ですよ」
「っ…お前、こんなとこでそんな声出すな」

人差し指を唇に当てて囁くように潜めた声に俺はつい、反応してしまう。
あの声はベッドを予想させる。

「僕の誕生日なんです。名前さんも、覚悟しておいてください、ね」
「ったく、性質わりぃなっ」
「褒め言葉として受け取っておきます」
「誉めてねーよ」

なんだって気弱そうなのに神経図太いんだこいつはっ。
潔すぎて時々こっちが可笑しいのかと思ってしまう。
そして、案の定言ったとおり黒子は部屋に入るまで手の拘束を解くことはしなかった。



「ちょっ、いきなり押し倒すな。まずはこっち」
「嫌です」

ベッドがギシリと軋んで黒子が見下ろす。
いつもと変わらないが瞳に宿る熱に気づいてしまえば、慌てて目の前に腕を差し出した。
いくら俺でもこれでは服が脱げないし、触りたいのだ。
だが、黒子はきっぱりと切り捨てた。

「なんでだ」
「抵抗されると、なにもできませんから」
「抵抗しねぇからっ」
「それに僕、結構好きですよ。緊縛プレイ」
「わーっ、止めろマジ止めろっ。俺はそんなの許さねーっ」

黒子から言われたとんでもない一言に暴れた。
が、そんな抵抗も気にならないのか黒子の手は俺の制服に伸び、開けられた。
そこからシャツのボタンを外されて腕を上に持っていくと無防備に胸が開いた。

「やっ…黒子…っ」

止めてくれと訴えるのに顔を埋めその小さな突起を温かな口に含まれる。
ビクッと震えれば楽しそうに吸いついて、時々刺激を与えるように歯が掠めた。
もう片方も指がキュッと摘んで指先で頃がされる。

「っ…黒子、くろこっ」
「リボンまでされて、本当に名前さんは僕を誘うのが上手ですね」

それは水戸部がしたんだっ、叫びたいのに断続的に与えられる快楽に、俺の口から溢れるのは自分でも引くほどの甘い喘ぎ声。
上ばかりでは、足りない。
俺は下肢が苦しくなってるのを知って黒子の身体から距離をとろうとモジモジと動く。

「もうですか?」
「違うっ…アッ」
「我慢しなくてもいいんですよ?」

柔らかく微笑んでズボンの上から自身になぞられる。
思わず腰が物欲しげに揺れてしまって顔に熱が集まった。

「黒子、離せ」
「……」
「抱きしめらんないだろ」

少し強い口調で言えば、悩んで付け加えるとガムテープをようやく外しはじめる。
数時間ぶりの開放感に手首をならしたあと、目の前で待っている黒子を引き寄せた。

「わっ…名前さん、苦しいです」
「気にすんな。誕生日おめでとう、黒子」

くしゃりと頭を撫でて言ってやれば顔を上げて見つめてくる。
その丸く見開かれた瞳が珍しくてクスリと笑った。
そして、ギュッと俺の胸に顔を埋めて、小さくありがとうございますって聞こえた。
こんな俺の言葉で喜んじゃうお前ってなんなの?
ホント、カワイイ奴。

「黒子、続き。残さず食えよ?」
「はい」

チュッと可愛いキスをして、行為の再開を促せば嬉しそうに笑って頷いた。




「ヒァッ…ぁあっ、く…」
「苦しい、ですか?」
「い、から…早くしろ」

十分慣らして入れるが最初は苦しさを伴う。
けれど、この先の快楽を知っているから身体は自然と和らいで、むしろ誘うようにざわめき始める。
じらされるようなことはされてないが、身体を重ねるのは久々で早く早くとせっつくように疼き出して自分でも抑えが効かない。
黒子の背中に爪を立てて、中を締めつけてしまうのを耐えていると優しいキスが顔に落とされた。

「なまえさん、なまえさん、僕のこと…みててくださいね」
「み、てんだ、ろ…」
「ずっとです、見失わないで」

ふわりと笑って、中を埋めてくる。
目を閉じようとすると名前を呼ばれる。
ロマンチックな言葉かと思いきや、そういう意図かよと少し呆れた気分になるが嫌だと思わないあたり俺も相当やられている。
腰を打ちこまれるたび声が漏れ、それに連動するみたいに黒子も気持ちよさそうな顔をする。
時々たまらないって顔するのが俺は結構好きだ。
俺の身体で気持ち良くなってる証拠だから。

「くろこ、きもちーか?」
「っ…はい、名前さんの…なか、さいこー、です」
「ぅあっ…ふぁ、あぁっ…やめ、そこっ」
「名前さん、よゆうみたいなので…ほんき、だしますよ」

いきなり感じるところを突き上げられて、腰が逃げを打つ。
だが、引き寄せられて尚もそこを擦りあげられ、シーツを握りしめた。
黒子は俺の手首を見るなりそこに口付け、少し痕が残ってしまいましたね、なんて呟きながら腰の動きを加速していった。
それは、黒子も限界が近いことを表していて、俺は黒子をまっすぐ見つめて気持ち良く白よと目だけで言った。

「はい…名前さん、いっしょに」

なんで、わかるんだろ。
わかると思っている俺もおかしいのかもしれないが、それをちゃんとわかる黒子も黒子だ。
どこまでいっても生意気な後輩。
自身を握られて、一緒に扱かれたらひとたまりもなく、身体を震わせて果てると中に熱いものを注がれた。

「はぁ、はっ…あ、ちぃ…」
「それは、中のことですか?」
「ちっげぇよ、ばか」
「知ってます。今日は、ありがとうございました」

まだ中に入ったまま、黒子は泣きそうに顔を歪めて俺を抱きしめてきた。
俺の方が身体が大きいから必然的に抱きついているように見えるが、そこは寛大な目で見てほしい。
俺は黒子の頭を撫でて、小さくまた誕生日おめでとさんと呟いた。
今年の誕生日はいつもと違う、人一倍嬉しいものになればいいと思うのは少し高望みしすぎだろうか。

「ぼく、こんな誕生日初めてで…嬉しすぎて、どうにかなりそうです。明日隕石が降ってきても幸せだと思います」
「そりゃねぇだろ。明日も明後日も、俺の近くに居ろよ」
「…はい」

ぐりぐりと頭を押し付けてくる黒子が楽しくて、もっと甘えろと抱きしめた。
今日ぐらいは、なにしても許してやる。
そんな気分を抱くが、それは口にしないままそっと過ぎゆく時間を大切に思っていた。




END




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