黒バス夢 | ナノ


▽ 紫原くんの憂鬱2



朝食を食べた後、食休みを挟みつつ筋トレをすると各自ポジション練習に当てられた。
俺はポジションすら決まってないけど…。

「よし、やるか名前」
「いいけど…そろそろボール扱えるようになってきたし、チーム戦してみたい」

もちろん力は劣るから1on1ではないけれど。
青峰にそういうと少し複雑そうな顔をしてみせた。
そりゃ、ここまで一緒にやってくれてたし二人でやるのも楽しかったけど、明日には合宿が終わってしまう。
だったら、一回でいいからやらせてほしい。

「わかった、なら適当に…」
「じゃあ、俺紫原のつけたあだ名ちんにつくー」
「敦…いいのか!?」
「うんっ、紫原のつけたあだ名ちんとなら俺頑張れるし」
「では、青峰くんは僕ですね」
「お前らどこから湧いてでた!?」
「偶然聞いてたんです」
「やった、ならやろう」

後ろから抱きついてきた紫原を見上げていると、黒子も入ってきた。
これで2on2ができる。ありがとうと紫原に言ってやれば、いいよーとまた抱きしめられた。
そして、その話を聞きつけ、赤司がみてくれることになった。

「敦はどうしたい?」
「峰ちんにつくのが妥当っしょー?」
「そうだな、青峰は俺じゃ無理だ。ジャンプボール頼む」
「ほいきた」
「パスのとき、好きなとこ投げろ。視線合わせるだけ隙になっから」
「それ大丈夫?」
「大丈夫、俺を信じてくれたら勝てる」

実戦経験はないけれど、みんなのプレイを赤司の解説付きでこれでもかと言うほど見せられてきた。
あとは思ったように足が動けば問題ない。
なにもかも青峰より劣る、けど黒子になら…並べるはずだ。

「十分間対抗戦、始めっ」

勢いよく投げられたボールを先にとったのは紫原だった。ジャンプボールは背が高い方が有利だからだ。
こちら側に飛んできたボールを受け取りそのまま走る。
当然青峰に追いつかれるが、突っ込むことはせず、同じく走ってくる紫原にパスをだした。
が、黒子に阻まれる。

「青峰くんっ」

素早く上がった青峰は黒子のパスを受け取るなり紫原を抜き、ダンクで決めた。

「敦、速攻っ」

黒子を振り切るなり声をかけた。すぐさま飛んできたボールを受け、すっかり板についたドリブルで走る。
青峰がまた走ってきているのがわかり、今度は3Pラインからシュートを放つ。
腕が伸びてきたが届かず、ボールはゴールに入った。

「よっしゃ」
「気ぃ抜いてんじゃねーよ。テツ」

このまま行かせるかと、いつも黒子がだすパスコースへと走る。
案の定、ピンポイントで受け取りゴール下に待ちかまえていた紫原にパスをだす。
難なく入ったボールに俺は確かな手応えを感じた。
だが、それで青峰に火をつけてしまったのか、そのあと少し入れるも青峰と黒子に圧倒された。
さすが、注目されるだけある…か。
ブザーが鳴り響き十分間の試合は終わった。

「負けた、ごめんな敦」
「負けたのは悔しーけど、紫原のつけたあだ名ちんあれどーやったの?」
「あれ?あれってなに?」
「俺が出したいとこ、必ず紫原のつけたあだ名ちんいるじゃん、マジ感動したんだけどー」

終わるなり紫原が目を輝かせて俺を抱きしめてきた。いきなりで苦しいと背中を撫でてやりつつ、何もしてないよと笑みを浮かべた。

「敦が出そうと思ったとこにいただけ」
「それってすげーじゃん」
「そうか、ならよかった」

いつも試合はつまらなそうにしている紫原がかつてこんなに楽しそうにしているのを俺は知らない。
満足させられたようで何よりだと紫原の頭を撫でる。
すると、後ろから不意に身体を引かれ、紫原もよろけていた。

「なんだ?って青峰」
「赤ちん、俺頑張ったよ〜」

向こうは赤司が転ばせたらしい。なんとも思ってないのかのほほんと返事を返している。
青峰は青峰でなんだか複雑そうな顔のままだ。

「俺じゃ相手にもならなかったな。やっぱ青峰も黒子も強いな」
「あんなの、どこで覚えやがった?」
「今の?」

ムスッとしたままいわれた言葉は黒子のパスと青峰のパスをことごとくカットしたことを言っているのかと首を傾げれば頷いてみせる。
別に、なにをしていたわけじゃない。本当に黒子が出すパスと青峰が出すパスをわかっていただけにすぎないのだ。

「うーん、秘密」

大部分は赤司の口添えがあったからなのだが、ここは言わなくてもいいだろう。
唇に人差し指を当てて笑うと、むにっと頬を抓られた。

「僕からみても凄いと思います」
「そう?なんか悔しさにじみ出てるみたいだけど、負けたの俺ら」

むむっと眉間にしわ寄せて何を言うかと思えば…。
かわいいなぁ、黒子。
俺はなんだか和やかな気分になって黒子の頭を撫でてやる。
大人しく撫でられてくれるのはきっと黒子と紫原くらいだ。

「苗字、合宿はやって意味のないことじゃなかったということだ」
「…まぁ、そうなる…のか?」
「そうなる、俺の言うことはすべて正しい」
「うん、まぁ…そういうことにするよ」

実際赤司の言うことに間違いは今のところ見つけられないので、頷くしかない。
そうと決まればさっそく続きだと練習の再開を促された。
途中から観戦していたらしい緑間はクイッと眼鏡をあげるなり、途中だったシュート練習を続け。
黄瀬は黄瀬でなんだか納得したような顔をしてドリブル練習をしていた。
それぞれが力をつける、俺はそれができただろうか。
俺は、いつかこいつらと肩を並べる日がくるのだろうか。
わからないが、もう少しこの皆が楽しく笑う空間が続けばいいと思う。
そんなこんなで合宿が終わりをつげ、夏休みの宿題に追われつつもひと夏も終わっていく。
微かな変化も一緒に連れて…。







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