黒バス夢 | ナノ


▽ 孤独な支配者



ちりちりと外から虫の鳴き声が聞こえる。
今日は比較的涼しくてクーラーより窓を開けたら結構風が通って心地いい。
勉強の手がはかどるなと感じながら時間を見れば十時を回ろうかというところ。

「そろそろ、か」

やつの生活スタイルは変化がない。
俺は椅子を立ち上がり玄関に向かう。
洛山の寮というのは、一部屋二人で先輩と後輩が一緒にされる。
聞く話によれば先輩と後輩を一緒にさせて社会勉強も兼ねているんだとか。
だが、俺の部屋の相手は社会勉強なんてものは平気で突っぱねるようなことをする男だった。

「おかえり、赤司」
「ただいま、名前。珍しいな、出迎えなんて」
「玲央からメール来てて、今ひと段落ついたところだったからな」

ついでだ、と笑えば奴はそうかと一言だけ返して疲れたような顔を一瞬見せるもすぐにいつもの顔に戻り部屋へと入ってくる。
荷物を降ろして制服を着替えようとするところに俺は後ろから抱き締めることでそれを邪魔した。

「僕の邪魔をするな」
「邪魔してないだろ、いつもみたいに強硬手段使えるし」

使えないのをわかっていての挑発。
明らかにイラついた雰囲気を纏わせてくるのに構わず俺は脱ぎかかった服の中へと手を差し入れる。

「名前、いい加減にしろ」
「疲れてるって、正直に言えよ」
「…確かに疲労しているが、今から寝れば問題ない」
「そんな風にツンケンしてると俺が煽られるだろ」
「……つくづく思うが、僕はお前のスイッチがわからないよ」

真剣な表情で俺を見ればそんなことを言ってくる。
それはそれで大歓迎だ。
だって、何にしても先を読む赤司にそんなことを言わせたというのはなにやら優越感。
嬉しがっていると途端に鳩尾に肘が入るのを俺は少し身体を離すことで避ける。
そうして、赤い髪にちゅっとキスをする。
玲央にあんたはどこまでも征ちゃんに甘いんだから、なんて言われるけれど…全くその通りだろう。
いや、命令に逆らおうものなら何が飛んできてもおかしくない状態に陥ることはわかっているのだが、人間本能に逆らうことができないものだ。
赤司の身体がそっと預けられるのを知る。

「俺はお前のスイッチが手に取るように分かるよ」

身体は快楽に従順だ。それは俺が赤司の身体に教えた定義だが、それは本当だと思う。
現に赤司の想いとは裏腹に心臓が大きく脈打っているのが聞こえる。
こんなにも興奮する赤司を誰も知らないだろう。

「僕は疲れてると言っているのに…」
「疲れると身体は快楽を欲するようにできてるんだぞ?」
「…本当か?」

悪戯で嘘を言ってみると、赤司は知らなかったのかこちらを向いて首を傾げている。
その純粋な行動につい、きゅんと胸が締めつけられた。
なんつーか時々そんなことされるから放置なんてしておけない。
俺はソファに押し倒し赤司の唇を貪るように奪った。
舌を絡め、唾液を注ぎ込む。

「ん…く……ふ」
「今日は最後までするから」

唇を離して決定事項を述べれば赤司は揺らぐことない強い眼差しで俺を見てきた。
了承を得て服を脱がしにかかる。
シャツは汗で少し張り付いていて、毎日のように練習するこいつはやっぱり凄いなと思う。
俺は何の部活にも所属していないが、バスケ部の噂は常々聞いている。
主に玲央からなのだが…。
玲央と小太郎は二人揃って仲が良い。その二人と一緒にいることが多い俺はなんとなく一緒になった赤司の噂話を聞く度にうわ、と声を漏らせずにいられなかったのだ。
自分に厳しく、仲間にも当然同じ厳しさを向ける。
でも、それは勝つためなのだと言われて玲央も小太郎も赤司の本気をくみ取った。
だからこそ、赤司は一年で主将をやっている。
洛山高校でも異例のことだったが、それを受け入れたのはやはり赤司の存在に皆が魅入られたのだと思う。

「お前はすごいよな」
「なんだ、突然」
「いや、天才様は違うな…と思って」

けれど、知っている。
天才故の孤独というものを…。

「そうか」

一言だけ漏らされた言葉に俺は顔をあげた。
顔をそむけてこれからの行為を受け入れようとする赤司。
本気になればこんな拘束力のないこと、赤司ならすぐに突っぱねるのにそれをしない。

「赤司…こっちむけよ、あと足あげて」

命令ともつかないことも従順に従って見せる。
俺は別に抑えつけたりなんてことはしない、ただ赤司がこれを望んでいるのを知ってしまっただけだ。
あげられた足からズボンを引き抜き下着も取り去った。

「なまえ…」

心もとなさそうな声は一瞬だけ俺の名前を呼ぶことに使われて、強い視線がこちらを射ぬく。
強がりか、諦めか…なんでもいい、孤独なこいつの心の足しになるなら。
ちゅっと胸にキス、その間に開かせた足の間に唾液を纏わせた指を触れさせる。

「っ…」
「赤司、俺がいるんじゃダメか?」
「…こんなことをしておいて、何をいう?」

指を入れて中を広げるように動かした。
ただ、赤司の近くにいてやりたい。たまに戻ってきては休むその瞬間にでも傍にいれたらいいのにと考えた結果がその言葉だった。
けれど、赤司から向けられたのは少し拗ねたような怒ったようなそれ。
失敗したと同時に、その怒る理由を見つけて以外にも俺は赤司の傍を許されていたのだと実感した。

「そうか…うん、ごめん。ちょっと勘違い」
「わかったならいい」

説明がなくて楽だと、赤司は前に言ったことがある。
大概察しのいい俺は、言葉もなくわかってしまうことが良くあったが、赤司のことは普通の人間より良くわかる。
一緒にいる時間が長いからか、何なのか…。
ただ、赤司は寂しいのだと一緒に暮らし始めて一ヵ月ぐらいに思っていた。
だからこそ、こんな行為をしようと言ったのもあるし、それ以前に俺はこいつのことが好きだというのは大前提の話しだが…。
それにこいつはとんだ猫かぶりだというのも同時に知った。
玲央と小太郎から聞く赤司はどれも人物像が異なる。二人はそれを赤司らしいと呼び、なにも気にした様子はなかった。
俺も気にしないが、それはなんでだろうかとその日以来赤司の存在が頭から離れなくなった。
それは赤司がそうするようにさせた結果かなんなのか、今でも俺はわからない。

「名前…早く、しろ…それに、考えるのも止めろ」

頭が高いぞ、とお決まりのセリフを言われて、ごめんと謝った。
赤司にも俺の頭は見えるようで、それはなんだかとても波長が合うような、そんな感じなのだろうか。

「じゃあ、お言葉に甘えて…満足させてもらおうかな」
「さっさとしろ、僕はもう待てない」

焦らし過ぎていたらしい、いつもと同じぐらいなのにと思って多分最近ご無沙汰だったからだといきついた。
俺は素早く自身をとりだすとゴムをつけ、そのままゆっくりと挿入した。
赤司は上手く呼吸をして俺のものを飲み込む、慣れているのかと思ったがそうではない。
多分、俺とこういう関係をもつにあたって知識をつけたのだ。
健気というか、なんというか…でも、その中には自分が痛くないようにというのも含まれているのだからこちらを気遣っているという妄想はない。

「アッ…ふっ…ぅ」
「声、だしていいぞ。辛くなるのは、赤司なんだから」
「く、あぁっ…はっ、ぅあ…」
「征…」
「なまえ…ぁ、ふぁ」

抑えるなと唇を撫でれば突き上げるたびに声を聞かせてくれる。
抱くときにしか呼ばない名前を囁けば、俺の肩を掴んでくる。
痛いぐらいに握られるそれは、傷つけたくてしているのではなく加減がわからなくなっているのだと思う。
腰を掴み中を好き勝手に擦り上げ、突き上げると耳元の喘ぎがますます甘くなる。
ここを…こう、して…
何度も身体を重ねるうちに見つけた、赤司の性感帯。
好きなように動くのも赤司はまったく何も言わないが、どうせなら二人気持ち良くなる方が良い。

「ひあぁっ、あぁっ…やめ、ろ…なまえ、あっ…」
「やめる?これでか?」

自身を撫でてやればだらだらと零れる先走りを撫でる。
ピクリと反応したそれを扱きながら言ってやればきっと睨みつけられる。
はいはい、調子に乗りましたすみません。
もっとしていいの合図なのはわかっているよ。
言葉なくそういってさっきと同じところを突き上げた。
それに安心したのか赤司は目を閉じ感じ入っているようだ。

「イきたかったら、いえよ」
「んんっ、ふ…はぁっ、あぁっ…もう…」

赤司の言葉と共に自身の先端をぐりっと指先で撫でると同時に最奥を突き上げた。
途端に指先に溢れる白濁、俺のはゴムの中へと吐き出した。
ゴムをするのは赤司を気遣ってだ、次の日は当然のように部活がある。
毎日のように人知れず練習する姿を俺は見たことがないが、縦横無尽に走れなくなるのは多分嫌なのだろうな。
中から自身を抜けば、ゴムを引き抜き処理しようとしているその手を赤司がとった。

「何?」
「貸せ」
「いや、いやそれはダメだろ。つか、なにしようとしてんの?」
「なんだ、僕がしようとすることも予想できないのか?」

ゴムをとり上げて、することって言えば一つしかないんじゃないか。
でも赤司にそんなことしてほしくないというのがあるから、俺はそうやって止めているわけで。
俺が予想した通り、赤司は口を開ける。
赤司の腕をとり、それ以上の行為を止めさせた。

「やめなさいって、頼むから」
「なんだ、好かれている自覚はいらないのか?」
「自覚あるから。つか、どうしてそう解釈したのお前」

きょとんと首を傾げる赤司に、こいつが本当にわからなくなる瞬間だ。
時々みせる天然な瞬間、それは誰にも予想できない。

「いつまでも僕の中に出せないのはきついだろう、ならば僕がそのまま飲めば問題ない」
「いや、そっちのが色々と精神的な問題ある。止めてくれって頼むから」

赤司の手からゴムをとりあげればそれを素早く縛り、ゴミ箱へと投げいれた。
心臓がドキドキと煩い。寿命が縮む思いをして、とりあげたのだが赤司は気にしてない様子でため息を一つ吐くと立ち上がった。
よろりとよろめくのを手を貸そうか迷って、そっと見守ることにした。

「名前、寝室に来い」
「は?」
「次は飲んでやる」
「だから、そういう気づかいいらないって」
「僕も名前のことが好きだ、だから普通なら僕の中にいれるのが当たり前だろ?」

それをいつまでもしないから、腹が立つ。
捨てられるように吐かれた台詞はなんとも赤司に似つかわしくない。
俺の想いは、結構伝わっていたのか。
思ったのはそんなことで、ふらりとよろけながらも制服をハンガーにかけるため引きづりながら寝室に入っていく赤司に苦笑を浮かべて俺も後を追った。
孤独な支配者は孤独を愛するわけではない。
どこかに縋るものを求めていて、俺はその手をそっと引き寄せるようにした…ただ、それだけだ。

「征、好きだ」
「言葉にしなくても、伝わってる」




END




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