くるわされてる愛情
今,気を失っているユウリは確かに彼女は言った「サクヤ」と。
ソレは私の名前,だったもの。そしてその名前のとき「サクヤ」と呼ぶのはごくわずかしかいない。
そして名を呼ばれたとき同時に感じたのは親近感と嫌悪感。
私はコレを知っている。
アレが「サクヤ」と名前を呼ぶ度に嫌悪した,前世の記憶が叫んでいた。つまり,アレは……ユウリが、姉上様。
ああああああああ!!気持ち悪い!!アレは,こんなに近くで転生していたのか!!はやく、早くあの御方を探さなきゃ!姉が!アレが!あの御方に触れる前に!!
発狂しそうになるが,抑える。
私がコレを殺すべきは今ではない。今ではないのだ。
あくまでも冷静にユウリに抱き着かれて戸惑う少年から無理矢理彼女を引き剥がして、軽くドアを叩く。
「なんだ?お前は確か入団希望者だったな」
「はい。それより彼女、思い出せないみたいで記憶が混乱してるようです。"見てあげて"くれませんか?」
「ん?ああ"またか"。仕方がない、テスト用にでも使うか」
門番は慣れた手つきで気を失ったユウリを抱えて連れていく。アレは頑丈だったからそう簡単に死なないと思うが、多少痛い目に会えばいい、ざまぁみろと鼻で笑った。
Я
「アスラ様!」
小柄な女はその名を呼び,長い髪と着物の裾を靡かせながらアスラへと近づく
「おお…サクヤか。ちょうど良かったガクヤはどこにいる?」
「え…あ,姉上様ですか?…何故アスラ様がお探しなのでしょうか?」
「此度の戦……カグヤの策のお陰で犠牲者はほとんど出なかったのだ。褒美をくれてやろうと思ってな…」
「そう,ですか…私には姉の場所は存じません。申し訳ありません……」
そう告げたサクヤにそうか。と短く返事を返したアスラはそのままサクヤに見向きもせずにガクヤを探しに歩を進めた。
(アスラ様の口から出てくるのはいつもイナンナか姉の話題ばかりイナンナ,カグヤ,イナンナ,カグヤイナンナカグヤイナンナカグヤイナンナああ何て憎たらしい。)
そしてそんなアスラの背を見送るサクヤの頭を撫で,愛しいそうに笑う女がいた。
「嗚呼そうよぉ…!可愛いサクヤ,貴女はね,姉が大っっ嫌いでしょお?ねぇそうなの!その感情は正しいモノなの!」
「ええ…ええ!憎い憎いの…!イナンナもアイツも…!!」
脳に直接響き渡るその声にサクヤは対した抵抗は見せない。
サクヤの抵抗が少ないことにソレはまた笑う。
「そうよ!憎くてたまらないはずよ?貴女が大好きで大好きでたまらないアスラを取ったのよ」
「ああああ!アスラさま…!アスラさまぁ!!」
「そう,カグヤは,貴女の姉上様はイナンナと同じく最低な女なの。」
「姉上様…いや!カグヤ…!ああああああああ!!!」
「嗚呼可愛いサクヤ。私のお人形さん。貴女は自分の意思なんて無くていいの」