Helianthus Annuus | ナノ
死神の呪い [ 21/156 ]


それは世界を股に掛ける大船、バンエルティア号がまだかの大海賊────アイフリードの手に渡ってなかった頃、異界探索のために出航していた日に起きた出来事だった。


神秘の種族の聖隷であるアイゼンは「死神の呪い」という加護を与えた相手に負の影響を与えるひねくれた呪いが生まれながらにあった。

元々、聖隷は「加護」を与えることによりその恩恵を受けた人、家、土地、国を反映させる事を可能とする種族だがアイゼンの場合、その呪いのおかげで彼の大事な妹すらまともに守れず、しかも何度も大怪我まで負わせてしまった。
怪我をした等の妹は、彼がいなくなる事の方を恐れ、彼を止めたがアイゼンはそんな自分が許せず、呪いを解くためにまだ見ぬ世界へ妹を残して旅に出ることにした。………事が始まりだった……が。……現在、その旅は早速難航していた。


「帆を張れー!!縄もしっかり結んどけよ!!」

「なんでこの船はこんなに厄航が多いんだ…!!やはりこの船は呪われて…」

「そんな事言っている暇があるなら手を動かせ!!馬鹿でかい嵐だぞ!!」


聖隷という種族は己を守る「器」がないと穢れてしまう。だがその「器」は何でもいいという理由ではなく、穢れがなく、清らかな物でなくてはいけない。
そこでアイゼンが目を付けたのは樹齢1000年のウキウ樹を使用して作られたこのバンエルティア号という船だった。探索の旅もできるので一石二鳥の清らかな器としてこの船に宿ったのはいいが……アイゼンの「加護」の呪いのせいで船は今日も今日とて荒波という波乱に愛された。


まず船長がこの航海に出た時に死んだ。その次は副長その次は船長代理も死んだ。急な病死と当時の船医は言っていたが原因は確実に俺のせいだろう。とアイゼンは頭を抱えたがそう簡単に他に器が見つかるはずもなく、日々荒波に揉まれて叫ぶ全員達を見守る事しかできなかった。


バタバタと走り回り嵐に備える船員たちを以前は嵐の際人手が足りてなかったので手伝ったが「縄が空中に浮かんでるー!!」「お化けだー!!」等と聖隷は人には見えない種族の為、手伝ったことが仇となってしまい、沈みかけた記憶もあるので人手は足りないが今この騒がしい中手伝うわけには行かなかった。
とりあえず人目に付かない物資の補強だけはしておこう。そのくらいならばバレないはずだ。と食料が詰め込まれた箱を荒波によって移動しないように縄で補強していた時、一際でかい船乗りの声が響いた。


「でかい波が来るぞー!!捕まれー!!!!」

「っ……!!?」

ガゴォン!!大きく揺れた後重い大砲がぶつかり合う音が響く。慌てて今補強したばかりの積荷に捕まるが結びが甘かったのか(いやそんな事は普通は有り得ないがそういう事が起きてしまうのが彼の呪いだ)簡単に縄は解け、物資事体が宙に浮かぶ。


宙に浮いた瞬間に直ぐに船に向かって聖隷術で構成した鎖を飛ばすが一緒に飛ばされた物資が邪魔をして鎖が反れ、アイゼンの聖隷術は船にではなく、海に刺さってしまいそのまま体が鎖に引っ張られて海へと沈んでしまった。


「グっ…ゴボッ…!!」

死神の呪いとはいえここまでの不運は本当に笑えない。
地の天族、なので浮かないという事もあるが彼はとことん水に嫌われていて泳げなかった。慌てて水面に上がろうと手足を動かすが右足が思い通りに動かせない。
暗い視界の中右足を見ると海藻が複雑に絡んでいた。
くそっこれだから水は嫌いだ!!どう足掻いても俺を溺れさせたいらしい……!

何とか聖隷術を使い絡まった藻を振り払うが全部ははらえず、泳ぎにくい事には変わりない。
既に息も限界が近づいており、遠くなる水面と意識に流石に死を覚悟する。



















すまない………ドナ……俺は…












ゴポリ。空気が大きな気泡を作ったのを最後に、意識を手放す瞬間に見たのは水色に靡く綺麗な髪だった気がした。











「ねぇ大丈夫?」




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