愛,逢,哀 | ナノ
未来形の『愛している』



ホウエン地方、トクサネのとある別荘に"その女性"はいた



「ダイゴさん,ちょっといいですか?」

「ああ、なんだい?」

ホウエン地方「元」チャンピオンのダイゴはホウエン地方では知らない人がいないほどの超有名人だ,そしてそんな彼には世間には公開していない婚約者がいた


「あ,ちょっと熱いかもしれないです」

「いや,これぐらいがちょうどいいよ、ありがとう」

ダイゴの婚約者はキッチンから淹れたてのコーヒーを持って来ると,長い髪を結い上げ,ダイゴの隣に座る


「…ダイゴといると落ち着きますね」

「それは嬉しい言葉だね,僕も君の赤い瞳を見ると落ち着く」


ダイゴは婚約者の髪を一すくいし,キスをする,相変わらず綺麗な髪だ

「それはルビーみたいだからですか?」

「いや,どちらかといえばガーネットかな」
どっちにしろ石じゃないか,という婚約者のツッコミを苦笑いしてかわしたダイゴは誤魔化すようにコーヒーを一口飲む

「綺麗な色なのは変わらないだろう?」

「…私は嫌いです,血の色みたいで」

(あ,やばいかも知れない…"スイッチ入った"かな…)

婚約者は持っていたコーヒーのカップを机に置き,ダイゴの瞳を見つめた




ダイゴは有名人だ
『元』チャンピオンで大企業の御曹司,
そんな彼が婚約者を明かしていない理由は



「私には"好きな人がいました"。」

「…知ってるよ」

「その人と結ばれるには,ちょっとどころではないほどのハードルがたくさんありました。」

「うん。」

「でも,どうしても好きだったんです」

「…うん。」

「ハードルを越えようと1295回も粘ったんです。」

「随分具体的な数字だね。」

「ええ,…でも"駄目だったんです"」

「だから,僕で"妥協"したんだろう?」

「いえ、妥協ではないです,私は,」



「私は人を愛することに疲れたのです。」




















精神が病んでいる女性だからだ。



(彼女の"夢物語"はコレで何回聞かされたかなぁ…)






ごめんなさいね

1295人目の"スイクンのミズキ"
私は1296人目には成りたくないの



未来形は『あいしてる』
過去形はもう『夢物語』でしかない。





『私が死ぬか,私を殺すか,ミナキを殺すか』
3択しかないなんておかしいわよ
その選択肢から1296人目の私は"逃げた"


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